2009年5月12日火曜日

経済学A これまでのアンケートまとめ

 これまでの第2~4回アンケートで記述してもらった「あなたの興味のあること」のうち,今後取りあげてみたいものと,これまでに取りあげたものをまとめてみます.

【今後,ほぼ確実に取りあげるもの】

  • 年金:圧倒的に多いです.来週説明しようと思います.健康保険も.
  • 税金:これは第12回(財政の回)ぐらいに取りあげます.
  • 金融危機(サブプライムローン問題):今日やろうと思ったのですが,また折を見てやります.
  • 円高・円安,世界経済,IMF:為替の回(来月初め?)にやります.
  • 株式:これも今回の名目値,実質値に絡んでくるので,今後やります.
【すでに取りあげたもの】
  • 定額給付金
  • 仕事(就職):第2回でもやりましたが,また機会があれば説明します.

【できれば取りあげたいもの】

  • 食パンはなぜ4, 5枚切りより6枚切りの方が高いのか?

 この他にもいくつかおもしろそうな質問があります.授業で取りあげられなければ,このブログで取りあげたいと思います(予定).

経済学A 第5回

 今日は名目値と実質値の違いを説明しました.

【授業の内容】
 最近,またデフレのニュースを耳にするようになりました.昨年までは原油高騰によるインフレが懸念されていましたね.インフレとは持続的な物価上昇,デフレとは同じく物価下落のことです.
 今日の名目値と実質値の違いをテーマとして取りあげたのは,このような物価の変動に惑わされない目を持つためです.

 まず,物価とは何かを説明しました.「景気とは何か?」の時と同様に,「これが物価だ!」というものはなく,様々な指標を使って物価を測定します.今回はそのうち代表的な指標である消費者物価指数(CPI)を説明しました.
 CPIは平均的な家庭が生活していく上でどれだけお金がかかるのかに注目した指標です.総務省統計局による詳しい説明はこちら.http://www.stat.go.jp/data/cpi/index.htm
 紙オムツからPTAの会費まで,実に様々な支出(585品目)が調べられています.
http://www.stat.go.jp/data/cpi/zuhyou/hinmokuc.xls(品目一覧,Excel)

 さて,この物価ですが,時間によって,地域によって大きな差があります.実は最近,マクドナルドでも地域別で価格に差をつけるようになりました.知っていましたか?同じ日本でもビッグマックセットの値段は560~640円と差があります.そのため,最近はマクドナルドのウェブサイトを見ても値段が載っていません(前は載っていたんですが…).
 物価はどうして変動するのでしょうか?僕が子どもの頃(20数年前)は週刊少年ジャンプが170円,カルビーのポテトチップスが100円ぐらいだったような記憶があります.調べてみると,今はジャンプも240円ぐらいするんですね.ポテトも150円ぐらいではないでしょうか.意外と値上がりしてないような気もしますね.逆に電化製品の多くは値下がりしています.僕の父親が1980年代に初めてパソコンを買ってきた時は50万円ぐらいしたそうですが,今はそれとは比べものにならないぐらい高性能のものが数万円で手に入ります.皆さんもご両親に昔の値段について聞いてみてください.きっと色々語ってくれるのではないでしょうか.
 物価が変動する要因は,価格の決まり方について思い出してみるとわかります.ダイヤモンドの値段は需要と供給で決まりましたよね.それから考えると,需要が高まることで物価が高くなるということもありますし,生産するための費用が(供給側)高くなることで物価が高くなることも考えられます.前者をDemand Pull Inflation,後者をCost Push Inflationと呼びます.

 ようやく名目値と実質値です.
 名目値とは我々が普段目にする値です.具体的には学生が受け取るバイト代や僕の給料は名目所得です.しかし名目所得は必ずしも豊かさを反映していません.なぜなら名目所得が同じでも物価が下がれば豊かになりますし,物価が上がれば貧しくなります.高度経済成長期の日本は物価も上がっていましたが,それを上回るペースで賃金が上がっていました.そのため,物価が上がっても豊かになっているという実感が得られたのでしょうね.現在は,物価が下がっている(あるいはあまり上がっていない)ので,実際にはあまり貧しくなっていないのかもしれませんが,賃金カット,ボーナスカットというニュースをよく聞くせいで非常に貧しくなっているような気がしますね.
 授業では,名目所得と実質所得,名目GDPと実質GDPを計算しました.ポイントは所得やGDPから物価の変動を差し引いてやることでした.

 ちなみにインフレによる犠牲者(デフレにより恩恵を受ける人)は皆さんではなく,年金やこれまでの貯蓄で暮らしている高齢者です.なぜだか考えてみてください.

2009年5月9日土曜日

開発経済学 第5回

 今回は工業化と貿易,特に輸入代替工業化政策と輸出指向工業化政策の違いについて説明しました.

【授業の内容】
 意識しなければなかなか気づきませんが,近年,各国はFTA呼ばれる自由貿易協定を競うように結んでいます.なぜ自由な貿易を目指すのでしょう?ミクロ経済学ベイシックではリカードの比較生産費説を学びましたが,どうやら理由はそれだけではないようです.

 第二次世界大戦後,独立したてのアジア諸国の多くはモノカルチャー経済というスタート地点から経済成長を目指しました.かつてはモノカルチャー経済から経済成長を進め,先進国へと仲間入りした国々もありましたが(アメリカやカナダなど),その当時と異なり合成品・代替品の発明により必ずしも特産品が国際市場で高く取引されるとは言えません.また先進国の保護貿易主義もあり,モノカルチャー経済を押し進めての経済成長は困難でした.
 いくつかの国々は保護貿易主義的な工業化である輸入代替工業化政策を採ることで,経済成長を目指しましたが,輸入代替工業化政策には思わぬデメリットがありました.保護貿易を採ることにより幼稚産業の育成を目指したのですが,為替を自国通貨高に誘導したことで輸出条件は悪化したため,国内で生産した財の販売先が国内市場に限定されます.ある程度の中流階層がおり,購買力のある国ならそれでも良いのかもしれませんが(現在の日本の携帯電話のように),当時のアジア諸国は貧しく,さらに貧富の差もあったため,国内市場だけを相手にして生産していたのではスケールメリットが生まれません.また輸入品をシャットアウトしていたため,海外の優れた財との競争も生まれませんでした.そのため,なかなか輸入代替工業化は進みませんでした.
 一方,シンガポール,韓国,台湾,香港などは,自由な貿易による輸出指向工業化政策を採りました.これらの国々が高い経済成長を成し遂げたことにより,その他の国々も多くは1980年代には輸出指向工業化政策へと転換しました.
 輸出指向工業化政策はどこが良かったのでしょうか?輸入代替とは逆に競争が促進されたことに加え,技術伝播による学習効果もあったと考えられます.
 技術移転に関連しては,ヴァーノンのプロダクト・ライフ・サイクル論も紹介しました.これは様々な財で実現していますね.日本もかつては繊維産業が隆盛を極めましたが,日本の前はイギリスでした.しかしイギリスが豊かになり労働者の賃金が高くなると,より賃金の低い日本へと生産の中心が移ってしまいました.しかし,日本も経済成長するに従って,安い賃金を売りにできなくなりました.より賃金の安い国(中国など)へと仕事を奪われました.そして中国の労働者の賃金が高くなると,さらに賃金の安い周辺国へと移っていくのは必然とも言えます.ちょうど前回の二重経済の所で,中国の余剰労働が枯渇してきて賃金が上昇してきた,という話をしましたね.