今回は援助についてです.皆さんにとって新たな発見が多かったのではないでしょうか.
【授業の内容】
まずLive AidとLive8の画像を見てもらいました.どちらも世界的な貧困救済イベントであり,Live8については知っている人もいるでしょう.これらのイベントは貧困を減らすことに繋がったのでしょうか.
さて援助ですが,今回はドナーの中でも特に国際機関を中心に取り上げました.国際機関が果たしてきた役割や成果を歴史を追って見ていきました.
1940年代,ブレトン・ウッズ体制の誕生です.中心人物には皆さんがマクロで学んだケインズもいます.ブレトン・ウッズ体制で欧州は戦争の傷跡から復興しますが,その後,そこでの成功体験をそのままアフリカに期待するという失敗もしています.また当時,アフリカは2大大国のヘゲモニー争いの場にもなっています.
1960年代,アフリカの時代と呼ばれたこの時期,アフリカの多くの国が独立を果たしますが,独立後も旧宗主国との結びつきは切れておらず,旧宗主国からの援助(特にインフラ等の大規模産業プロジェクト)が特徴的です.
1970年代,アフリカへの援助は大きな転換を迎えます.これまでのインフラ重視の援助の行き詰まりから,貧困対策が大きなウェイトを占めるようになります.
1980年代,累積債務問題が深刻化し,IMFや世銀による構造調整政策が行われます.構造調整とは,条件(コンディショナリティー)つきの融資であり,その条件とは,経済の自由化,開放化であり,新古典派的な市場の競争力に重きを置いた政策を理想としています.この構造調整を受け入れたアフリカや東欧の多くの国が経済にブレーキを掛けてしまった一方で,構造調整を受け入れなかった東アジアの諸国は後に「東アジアの奇跡」と呼ばれる急成長を遂げます.
この構造調整政策が失敗した理由はいくつか指摘されています.スティグリッツは途上国それぞれの発展段階を無視し,画一的な条件を課してしまったためであると批判しています.それ以外にも,ファンジビリティ(資金の流用可能性),コンディショナリティーが破られた場合にも融資が続けられたためにインセンティブが働かなかった等の原因が指摘されています.
1990年代にはレシピエント側のガバナンスが注目を集めました.Burnside and Dollar (2000)は受入国のガバナンスが良好な場合に限り援助は有効に働くという研究を発表しました.この研究によりガバナンスの重要性がより一層注目されることになりました.
最後に1990年代以降注目を集める参加型開発についても触れました.これは,ドナーからの一方的な援助ではなく,レシピエント,特に現地住民の意見を開発政策に採り入れるべきであるという考え方です.
皆さんにはこれまでの知識を踏まえ,「どんな援助は貧困を削減できるのだろうか?」という問いを考えてもらいました.
2011年6月25日土曜日
開発経済学 第11回(6/24)
ミクロ経済学ベイシックⅠ 第11回(6/24)
今回も引き続き生産者理論です.
【授業の内容】
前回,価格と限界費用が等しくなるように生産することで利潤が最大となるような生産量がわかることを確認しました.今回はこれを用いて,どのような価格だと利潤が出るかを図で確認しました.
それを理解するために,平均総費用(ATC)と平均可変費用(AVC)という新たな費用を紹介しました.ATCは生産量1単位当たりにかかる総費用であり,総費用を生産量で割ったものです.式ではATC=TC/xで表されます.ここから,TC=ATC×xも導くことができます.またAVCは生産量1単位当たりにかかる可変費用のことで,可変費用を生産量で割ったものです.こちらも式ではAVC=VC/xで表され,VC=ATC×xが導かれます.
このATCとMCが交差する点を損益分岐点と呼びます.この点の価格よりも高く売れれば利潤はプラス,つまり黒字になり,この点より価格が低ければ赤字となります.
ただし,この授業で確認したとおり,赤字だからと言って生産しないわけではありません.赤字でも生産したほうがマシな場合があります.なぜなら生産する前に固定費用(サンクコスト)がかかっているからです.そのため,生産前ですでに赤字は発生しており,生産することによってこの赤字が減るのであれば生産します.逆に生産すると赤字が増えてしまう場合もあるでしょう.この場合には生産自体を止めたほうが良いですね.これを見分けるポイントを操業停止点と呼びますが,その話はまた来週です.
配布した練習問題をしっかりしておきましょうね.
【今回出てきた重要語句】
平均総費用(ATC):総費用を生産量で割ったもの.生産量1単位当たりの総費用.
平均可変費用(AVC):可変費用を生産量で割ったもの.生産量1単位当たりの可変費用.
ラベル: 2011, ミクロ経済学ベイシックⅠ
経済学A 第10回(6/21)
今回は為替と貿易についてです.
【授業の内容】
まず円高と円安の説明です.よく考えれば当たり前なのですが,いきなり言われると間違えそうですね.現在はおよそ1ドル=80円ですが,これは1ドルを購入するために80円かかることを示すので,1ドル=100円になると1ドルを購入するために100円かかるようになります.つまりこの変化は,1ドルの価値が上がったことであり(ドル高),もちろんそれは円と比べてのことなので,円の価値が下がったこと(円安)でもあります.つまりこの変化は円安ドル高です.逆に1ドル=60円になれば円高ドル安です.
さて,一般に,円高は日本経済にとって良くないと言われます.なぜ日本円の価値が上がる円高が悪いことなのでしょう.結論から言うと,私たち消費者にとっては円高は悪いことではありません.むしろメリットの方が多いです.私たちが持っているお金(円)の価値が上がるので,外国の製品を安く買えることになるし,海外旅行も安く行けます.
しかし,日本経済を支える輸出企業にとっては円高はありがたくないものです.なぜなら円高はドル安であり,ドルの価値が下がることなので,アメリカ人にとっては日本製品を買う時にたくさんのドルが必要になるため,なかなか買いづらくなります.日本の企業の輸出品が売れなくなるのです.日本の企業の国際競争力が落ちると言っても良いでしょう.
このように為替は企業にとって大きなリスクでもあるのですが,為替はどうやって決まるのでしょう.為替は外貨の価格ですので,これまでも何度も説明してきたように需要と供給のバランスによって決まります.みんなが円を欲しがりドルを売りたがれば円高ドル安になります.
この為替相場なのですが,値動きがあるため,投機目的で為替を売買する人も存在します.現在では輸出・輸入で使うお金よりも投機のために売買されるお金の方がはるかに巨大です.1997年のアジア通貨危機の発端も,投機目的のためにタイの通貨バーツが売買されたためです.
後半は外貨預金について説明しました.外貨預金はその響きから「安全」であると勘違いされがちです.確かに日本の銀行に対する預金は非常にリスクが低いのですが(その分,リターンも低い),外貨預金には為替リスクが存在します.リターンが高い背景には,やはり高いリスクが隠れていました.
ここ数年よく聞くようになったFX取引についても少し説明しました.「FXは儲かる!」,「FXで大金持ちに!」という甘い話に騙される人も少なくありません.しかし以前に話したように「リターンが高い(大金が稼げる)金融商品はリスクも高い」のです.FXは,高いレバレッジで行えば,あっという間に元本すべてを失い,さらに借金を背負ってしまう可能性もあります.レバレッジにもよりますが,FXは様々な金融商品の中でもリスクの高い商品です.知り合いに「上手くいくから一緒にやろう」と誘われても,簡単に応じてはいけませんよ.
最後に為替制度について説明しました.今回説明したように,日本円は,為替レートが刻々と変化する変動相場制なのですが,中には為替レートを固定している通貨もあります.かつては日本も1ドル=360円の時代がありました(僕は生まれてませんが).また,固定相場制を基本として,上下数%の変動を認めるペッグ制を採る通貨もあります.
次週はアンケートでみなさんの要望が多かった少子化と結婚の経済学を説明します.