2011年11月11日金曜日

ミクロ経済学ベイシックⅡ 第6回(11/2)

今回は独占市場のうち,複占,寡占について説明しました.

【授業の内容】
 前回も説明しましたが,複占は,2社が同時に生産量を決定する同時手番ゲームです.このゲームのナッシュ均衡をクールノー均衡と呼びます.
 さて,企業はどのように生産量を決めるのでしょうか.その決定方法は完全独占と同じく,限界収入=限界費用(MR=MC)です.解法は次の通り.
①MR=MC
 2社を企業A,Bとすれば,まず企業AについてMR=MCを作ります.この式を,企業Aの生産量について解けば,企業Aの最適な生産量がわかります.ただし,企業Bの生産量が未定なので,まだ具体的に決まるわけではありません.ここでわかるのは,企業Bの生産量がわかれば,それに応じて自分がどれだけ作るべきか,という最適反応がわかるのです.クールノー均衡がナッシュ均衡であるというのを実感するためには,ナッシュ均衡の混合戦略の計算方法を思い出してみましょう.
 同様に企業BについてMR=MCを作れば,企業Bの最適反応がわかります.
②最適反応の連立方程式
 ①で得られた両企業の最適反応を連立方程式として解きましょう.ここまで来て,ようやく両企業が具体的にどれだけ生産すべきかというクールノー均衡がわかります.

 続いて寡占です.寡占とは売り手の数が少数である市場です.例としては,ビール業界,携帯電話業界などがありそうですね.このような市場では企業の価格決定に次のような特徴がありそうです.
 例としてビール業界を考えましょう.この市場には5社のビール会社があるとします.財は同質的と仮定します(どの企業も同じようなビールを売っています).現状は,どの企業もビールを200円で売っているとします.もしここで,1社だけが値上げしたらどうなるでしょう.おそらく他の4社は値上げに追随せず傍観するでしょう.なぜなら他の4社にとっては今まで通りの値段で売れば,自然と売上が増えそうだからです.値上げした1社のビールに対する需要が落ち込み,その需要が他の4社に流れると考えられます.
 一方,1社が値下げした場合はどうなるでしょう.この場合は他の4社は値下げに追随するはずです.なぜなら値下げしなかったら,値下げした1社のビールに対する需要が急増し,シェアを奪わるからです.よって全社が値下げに追随するので,先に値下げした1社にとっては残念な結果となります.なぜなら,ライバル企業が追随しないで今まで通り200円で売ってくれれば,需要が急増し,儲かるはずですが,ライバルも値下げしたので,思ったより需要が増えないからです.
 結果,需要曲線は現状を境として,屈折した形になり,もちろんそれに応じて限界収入も2段階に屈折した形になります.寡占市場でも企業はMR=MCに従って生産量を確定するので,限界費用が多少増減しても生産量に変化が出にくいという特徴を持つことになります.

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