2010年5月11日火曜日

経済学A 第5回

 今回は名目値と実質値について説明しました.名目値と実質値自体も学ぶ価値があるものですが,次週の年金,その先に予定している資産運用について学ぶための基礎知識でもあります.

【授業の内容】
 皆さんは物心ついて以来,あまり物価が変動していない時代を過ごしているため,あまりインフレを実感できないかもしれませんが,今後の長い将来を考えると,物価の変動について知っておく必要があります.
 今回の授業はまず物価とは何か,からスタートしました.物価とは「これぞ物価」というものはなく,様々な指標があります.授業では主にCPI(消費者物価指数)の考え方を説明し,企業物価指数,GDPデフレータについては紹介するにとどめました.CPIとは,その名の通り,消費者から見た物価の総合的な変動を指標化したもので,基準時のCPIは100です.

 続いて物価の変動,違いについて説明しました.まずは時系列での変化です.同じ財でも時間によってどんどん価格は変化していきます.その例として,明治時代後期,1970年代の様々な価格を紹介しましたね.「1970年は40年も前のことだ」と思うでしょうが,皆さんも平均寿命まで生きるとすれば,あと60年ありますからね.これ以上の物価が変化があっても不思議ではありません.
 また同じ時代でも,地域によって価格には差があります.授業では世界各国のビッグマックの値段を紹介しましたが,同じ日本でも物価には違いがあります.僕は学生時代を京都で過ごしていたのですが,徳島に来て,食材の値段と家賃が安いのにずいぶん驚きました.

 さて,物価はどうして変化するのでしょう?その答えは,これまで学んだ知識である需要と供給にあります.物価が上がる(これをインフレ,インフレーションと呼びます)場合には,需要が上がったことによるもの(Demand Pull Inflation)と,供給側の事情によるもの(Cost Push Inflation)の2つが考えられます.

 後半はようやく名目値と実質値の説明です.我々は普段名目値ばかりに気をとられがちですが,実質値こそ注目すべきなのかもしれません.
 まず名目所得と実質所得について説明しました.皆さんは名目所得である賃金(例えばバイトの時給)には関心があるでしょうが物価の変動についてどれだけ意識しているでしょうか?バイトの時給が10%上がったとしても,その間に物価も10%上がったとすれば,まったく豊かになれません.なぜなら買うことができるモノの量は変わらないからです.しかし,我々はついつい名目所得に目を奪われがちですね.
 この考え方はGDPについても応用可能です.何をいくら生産したかで名目GDPは計算可能ですが(正確に言えば,どれだけ付加価値を生み出したかですが),一国の生産能力に注目すべきであれば,物価の変動を取り除かなければなりません.つまり,同じだけしか生産していなくても,もし物価が上がれば名目GDPは増えてしまいます.実際には生産能力は成長していないのに,経済成長したことになりますね.これでは実態を捉えていないかもしれないので,普段は名目GDPではなく実質GDPが使われることが多いです.実質GDPとは,基準となる年を決め,その時から物価が変動しないものとしてGDPを計算したものです.
 名目と実質という考え方は,物事の本質を見極めるために役に立つと思いませんか?

 さて今回はネットを利用したアンケートも行いました.結果はこちらから見ることができます.皆さんの意見・感想・疑問はなるべく今後の授業に反映させるつもりです.
http://enq-maker.com/result/1PPIKRi

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