2009年12月20日日曜日

経済数学入門 第13回

 前回に引き続き数列でした.

【授業の内容】
 前回は等差数列で終わりました.今回も馴染みのある等比数列です.

 等比数列とは,1,2,4,8,16,・・・などのように,一定の割合(公比:r)で変化していく数列のことです.等比数列は,金融において利子率の計算などで,またマクロ経済学で,財政政策の乗数効果,あるいは貨幣の信用創造などで必要となる知識です.今は何のことかわからなくても,2年次以降に役立ってくるはずです.

 さて,その等比数列の一般項(an)は次のように表されます.
an=a×r^(n-1)  ←rのn-1乗のつもりです.うまく表現できませんでした.
 つまり,第n項目は,初項にrをn-1回かけたものです.

 続いて等差数列の和(Sn)の計算ですが,こちらは公式を暗記するよりも導出方法を覚えてもらいたいものです.そんなに難しくありませんしね.とは言え,ここで文章で説明するのは大変なので省略します.

 なお,中間テストの結果による呼び出しですが,ほとんどの学生が(滑り込みも含め)全学共通教育センターに来ました.

経済学Ⅰ 第11回

 今回は授業の振り替えで,全学共通教育センターの数学のテストを受けてもらいました.

ミクロ経済学ベイシックⅡ 第13回

 今回はリカードの比較生産費説,貿易のミクロ理論について説明しました.

【授業の内容】
 まず絶対優位と比較優位について説明しました.絶対優位とは,他国に比べ,ある財をより効率的に生産できることです.逆にある財の生産が他国より苦手な場合は絶対劣位と呼びます.例としては,日本はアメリカと比べ自動車の生産に関して絶対優位を持っているでしょう.しかし多くの農作物については絶対劣位にあるはずです.

 さて,このように絶対優位はわかりやすい概念ですが,次の比較優位はややわかりにくいかもしれません.
 比較優位とは,ある国が他国に比べ,A財の生産についても,B財の生産についても絶対優位(絶対劣位)にある場合,より効率的に生産できるのはA財とB財のどちらか,というものです.逆により非効率的な生産しかできない財は比較劣位にあるといいます.

 世界中の多くの国は他の国と比べ絶対優位にあるなんらかの財を持っているでしょう.その場合,その国は絶対優位にある財の生産に集中します.これを特化と呼びます.その財の生産に特化して,それを輸出する.また,絶対劣位にある財は国内で生産することを諦め海外から輸入します.
 そうすることで,貿易前に比べ自国が豊かになるだけでなく,貿易の相手国も豊かになります.まさにパレート改善です.
 また絶対優位にある財がなくても,比較優位にある財の生産に特化し,貿易することでもパレート改善できることを数値例で確認しました.
 ただし,今回の話は海外への輸送にコストがかからないという仮定で話しました.日本から南米やアフリカに輸出するよりも,アジアに輸出する方が多いのはこれで説明できます.

総合政策演習B1② 第13回

 今回はミクロ貿易理論でした.

【授業の内容】
 リカードの比較生産費説および貿易三角形についての説明をしました.貿易三角形については,図の見方を知っておけば,難しいものではないでしょう.

 また需要の価格弾力性についての質問があったのでそれに答えました.僕は見たことない形式の問題でしたが,需要の価格弾力性の定義式を変形してあてはめることで答えを導けました.テキストの解説には解法となる公式を暗記するように書いてありましたが,その必要はないと思います.定義式を変形してもほとんど手間は変わりません.

 とりあえずテキストの範囲は一通り終わりました.残りの2回は皆さんからの質問を受け付けることにしましょう.それでミクロは完璧にして,本番までは他の科目に集中できると良いですね.

2009年12月19日土曜日

経済学A 第12回

 今回は日本の財政と税について説明しました.日本ではちょうど国債発行額,あるいは財政規模について議論されていますね.


【授業の内容】
 この授業で理解してもらいたいのは,
・何のために税があるのか?
・日本の財政状況
・税の種類と特徴
 の3点です.特に最後は,税金はただ単にお金を取られるだけではなく,国の性質を作り上げるものだということを理解してほしいです.

 以前に,大きな政府と小さな政府について説明しました.大きな政府とは,市場を信頼しておらず,積極的に市場に介入する政府であり,小さな政府は対照的に最低限の介入しか行いません.そのため,当然ながら,大きな政府は大きな財政規模(政府の収入と支出のこと)を必要とするし,小さな政府の財政規模は小さくなります.

 さて,現在の日本の財政を見てみると,いびつな状況になっていることがわかります.収入をはるかに超える支出をしているため,膨大な収入不足を借金(国債発行)でなんとかまかなっている状況です.一般家庭なら,お金を借りられないような状況ですが,国にはまだ信頼があるため,市場からお金を借りることができています.
 余談ですが,「このような膨大な借金総額(国債発行残高)を抱えて大丈夫なのか?」ということについて,以前から論議されています.楽観的な人は,「日本には国債発行残高をはるかに超える資産がある(国民の預貯金などの資産です)ので,まだまだ借金より資産の方が多いから問題ない.また借金の貸し手も日本の企業,あるいは日本の個人がほとんどなので,子供が自分の親にお金を貸してるようなものだから心配ない」と言います.確かにもっともらしい話ですが,では「国債発行残高はいくらまでなら大丈夫」なのでしょうか?おそらく今の10倍になれば誰も日本政府にお金を貸さなくなるでしょうが,2倍なら大丈夫なのか?3倍なら大丈夫なのか?はっきりとはわかりませんが,どこかに臨界点があるはずです.それを超えると,一気に市場は日本政府を見放し,日本政府は誰からもお金を借りられず破産してしまうでしょう.
 それはまだ先の話かもしれませんが,少なくとも日本の財政状況の未来には明るい兆しはありません.思っているほど先ではないかもしれません….

 さて,余談がながくなりましたが,本題に戻ります.国の収入の根幹は税金です.基本的に,政府は,国民,あるいは国内の企業から税金を集めて,それを使っています.例えば一般道路は無料ですが,無料であるので儲かりません.そのため民間企業は作ろうとしません.それでも道路は必要なので政府が代わりに作ります.警察や消防なども同じですね.

 その重要な税ですが,日本にも様々な種類の税があります.それらを分類しました.まずは国税と地方税ですが,これらは単に国に納めるか,地方に納めるかの違いだけでした.もう1つの分類方法は,直接税と間接税です.直接税とは,税の負担者がそのまま納税するタイプの税であり,所得税や住民税,法人税などがこれにあたります.もう1つは間接税です.こちらは税の負担者が直接納めるのではなく,負担者と納税者が異なります.例としては消費税があります.消費税の負担者は我々消費者ですが,納めるのは小売店などです.

 なぜ税が国の性質を決めるのかは,直接税と間接税の違いによります.直接税である所得税は,累進課税性という性質があり,貧しい人には負担は軽く,豊かな人には重い負担を与えます.そのため,貧富の差が縮小するという,公正な税です.相続税なども同じく貧富の差を縮小する直接税です.ただし直接税は脱税できるという欠点を抱えています.サラリーマンなどの給与所得者は所得を把握されやすいため脱税は困難ですが,自営業者などは比較的脱税がしやすくなります.
 一方の間接税の代表である消費税は脱税が不可能です.そういう意味では完璧な税ですが,ただし貧困層と高所得層に同じ税率を課すことになり,相対的に貧困層にとって負担が大きくなります.

 最後に,日本が大きな政府か小さな政府かを判断するために,国民負担率と潜在的国民負担率を紹介しました.どちらで見ても,日本は小さな政府であると言ってよいでしょう.

経済数学入門 第12回

 先週の授業でしたが,すっかり書くのを忘れてました.この回から数列です.

【授業の内容】
 この回から数列ですが,まずは一番基本的な等差数列を説明しました.数列は,他の範囲との絡みが少ないためか,数学が得意な学生も結構忘れてることが多いところです.しかし,数列は金融,あるいはマクロ経済学でも出てくる重要な分野です.

 さて,等差数列とは,0,3,6,9,12,・・・というように,ある項と次の項との差が等しい(等差)数列のことです.言い換えれば,ある数に同じ数字をどんどん足していく,もしくは引いていくことで出来上がる数列です.ちなみに最初の項を初項(第1項)と呼び,aa1)で表します.また,ある項と次の項との差を公差と呼び,dで表します.
 このような等差数列の一般項an,n列目の項)は次のように表わすことが可能です.
 an=a+(n-1)d

 また,等差数列の和の計算もしました.かのガウスが少年時代にしたように,等差数列の和(Sn)を求めるには,その数列の和と,数列の並びをひっくり返したものを足すことで計算できました.公式を覚えるのではなく,授業で説明したようなやり方で良いと思います.なぜなら手間もほとんど変わらず,公式を間違えて覚えるリスクを避けられるからです.とはいえ,一応公式も書いておくと,
 Sn=n(a+an)/2

 次回は等比数列を説明しました.

2009年12月10日木曜日

経済学Ⅰ 第10回

 前回に関連して貿易の話です.リカードの比較生産費説,そして自由貿易について説明しました.

【授業の内容】
 貿易は国全体としてみると非常に良いものです.それを絶対優位,比較優位の説明と共に紹介しました.
 絶対優位の例として,漁師と農家を挙げました.魚釣りの得意な漁師,米作りの上手い農家は,それぞれ魚,米の生産に関して絶対優位を持っています.魚釣りについては漁師に絶対優位があり,米作りについては農家に絶対優位があるといいます.逆に漁師は米作りに絶対劣位にあり,農家は魚釣りに絶対劣位にあります.
 このようなケースでは,両者は絶対優位にある財(モノやサービスのこと)の生産に集中し(特化),それを相手と交換することで,自給自足の場合より,両者とも豊かになれます.それを数値例で確認しました.つまり分業は効率的なのです.

 続いて,上のケースと異なり,一方の国はなんでも得意だけど,もう一方の国はすべて苦手,というケースを考えました.それぞれ得意な分野があればよいのですが,それがない場合です.
 この場合,一方の国に絶対優位がなくても,(クローンのような国同士でない限り)必ず比較優位はあります.比較優位とは,どちらの財の生産も得意だけど,より得意なもの,あるいは,どちらも苦手だけど,まだましなものを示しています. 絶対優位がない場合でも,それぞれの国が比較優位にある財の生産に特化して,それを輸出しあうことで,両国とも豊かになれます.これが貿易の持つ素晴らしい力です.戦争とは違い,勝者と敗者は生まれません.

 このようにすばらしい自由貿易ですが,現実には自由な貿易を妨げる様々な障壁が存在します.関税や輸入割り当てなどです.なぜ輸入障壁が存在するのかというと,自由貿易を行うと国際的に優位にある財の生産規模は大きくなりますが,逆に劣位にあり,他国より生産効率の悪い産業は衰退してしまうからです.

 ただ,国全体としてみると自由貿易により豊かになれることはわかっているため,各国はFTA(自由貿易協定)を競って結んでいます.

 次週は全学共通教育センターのテストのためお休みです.

2009年12月9日水曜日

ミクロ経済学ベイシックⅡ 第12回

 今回は前回から続いてリスクの話です.特にリスクの計測,リスクプレミアムの話が中心です.

【授業の内容】
 まず個人のリスクに対する好みを調べました.様々な所得と,それに対応する効用の水準を調べることで,自分がリスク回避者(risk-averter)なのか,リスク中立的(risk-neutral)なのか,それともリスク愛好家(risk-lover)なのかがわかります.
 それ以外にも,その効用曲線の形状は実にいろいろな情報を伝えてくれます.

 続いて,A(50%の確率で年収が1000万円だが,50%の確率で年収0円)という仕事と,B(確実に年収500万円)という仕事について考えました.
 どちらも年収の期待値は同じく500万円です.違いはリスクが存在するかどうかです.リスク回避者の効用曲線からは,Aの仕事から得られる効用の期待値(年収の期待値ではない)が,Bの仕事から得られる効用よりも低いことがわかりました.逆にリスク愛好家の効用曲線は,Aの仕事から得られる効用の期待値が,Bの仕事から得られる効用よりも高いことを示しています.
 リスク回避者の効用曲線についてもっと考えてみると,Aの仕事と同じ効用を持つのは,確実に何万円をもらえる仕事なのか,ということもわかってきます.言い換えれば,リスクを避けるために年収をどれぐらい下げられるかです.この金額はリスク・プレミアムと呼ばれます.逆にリスク愛好家が,リスクを背負うために犠牲にできる金額は負のリスク・プレミアムと呼ばれます.

 我々,リスク回避者は,リスクを避けるために様々な保険に入ることがあります.例えば自動車保険です.これも確率的に考えれば平均的な個人は,保険に入ってももとがとれません.つまり平均的には受け取る金額より支払う金額の方が大きいのです.ではなぜそのような保険に入るかというとリスクを避けるためです.リスクプレミアムより安い金額であれば,人は保険に入ることで効用を高めることができます.その理由を図を使って説明しました.また,保険に入ることは,保険会社にとっても利潤が増えるので,加入者,企業どちらにとっても喜ばしいことです.保険の発明はまさにパレート改善ですね.

 ただし,前回も少し触れたように,問題は我々が確率をきちんと把握できていない点です.我々はめったに起きない事象の確率を過剰に高くとらえる傾向があるようです.事故を起こすことも確率から考えると,必要以上に高い保険に入っているのかもしれません.
 怖がりすぎるのではなく,また怖がらなさすぎるのでもなく,確率通りに適切に怖がるというのはなかなか難しいものです.

総合政策演習B1② 第12回

 今回は,情報の非対称性の問題,所得配分の問題とミクロ貿易理論の説明をしました.

【授業の内容】
 情報の非対称性も,市場が完全競争市場(つまり最適な資源配分)となるのを妨げる要因の1つです.情報の非対称性が存在すると,逆選択という,特定の取引ばかりがなされる現象が発生します.よく出てくる例としては,中古車市場(レモン市場)における情報の非対称性により,品質の悪い中古車(レモン)ばかりが流通するとか,生命保険における情報の非対称性により,健康に不安のある人ばかりが保険に入る,といった話があります.
 逆選択と混同されやすいのがモラルハザードです.モラルハザード(道徳的危険)とは,ある取引により,その経済主体の行動が変化してしまうことを指します.例としては,生命保険に入った人が,健康に注意を払わなくなるような変化があります.
 なお,情報の非対称性による問題をなくすためには,情報を対称的にすること,つまり情報が少ない経済主体に情報をなんらかの方法で伝えることがあるでしょう.学歴が能力のシグナル(能力そのものではない)として使われるのもこの理由によるものです.

 続いて,ローレンツ曲線およびジニ係数の説明をしました.これは,所得の不平等度などを調べるときに使われます.貧しい人から豊かな人を一列に並べ,その累積所得比率を縦軸にあらわしたものです.ジニ係数は0から1の値をとり,不平等度の目安となります.

 最後に残った時間でミクロ貿易理論の手始めとしてリカードの比較生産費説を説明しました.次回はこの続きをやりましょう.

2009年12月8日火曜日

経済学A 第11回

 今回は前回との関連で貿易について説明しました.

【授業の内容】
 まず前回のアンケートの質問に答えました.「大臣のコメントが為替に影響を与えることはあるか?」ですが,あります.外国為替市場で売買しているのは,投機目的の機関投資家が多く,彼らは常に市場の動向を探り,将来を予想できるヒントを探しています.一国の大臣のコメントは,政府による介入があるかどうかを占うかなり重要なヒント(あるいは答えそのもの)だからです.

 続いて,前回も少しふれた貿易ですが,貿易は国全体としてみると非常に良いものです.それを絶対優位,比較優位の説明と共に紹介しました.
 絶対優位の例として,漁師と農家を挙げました.魚釣りの得意な漁師,米作りの上手い農家は,それぞれ魚,米の生産に関して絶対優位を持っています.魚釣りについては漁師に絶対優位があり,米作りについては農家に絶対優位があるといいます.逆に漁師は米作りに絶対劣位にあり,農家は魚釣りに絶対劣位にあります.
 このようなケースでは,両者は絶対優位にある財(モノやサービスのこと)の生産に集中し(特化),それを相手と交換することで,自給自足の場合より,両者とも豊かになれます.それを数値例で確認しました.つまり分業は効率的なのです.
 また,経済学的に良い状態の目安として,パレート最適(パレート改善)という概念を紹介しました.やや消極的な判断ですが,パレート改善が良い変化であることには多くの人が賛成するでしょう.それぞれが絶対優位を持つ場合,分業・交換することでパレート改善が可能でした.

 続いて,上のケースと異なり,一方の国はなんでも得意だけど,もう一方の国はすべて苦手,というケースを考えました.それぞれ得意な分野があればよいのですが,それがない場合です.
 この場合,一方の国に絶対優位がなくても,(クローンのような国同士でない限り)必ず比較優位はあります.比較優位とは,どちらの財の生産も得意だけど,より得意なもの,あるいは,どちらも苦手だけど,まだましなものを示しています.
 絶対優位がない場合でも,それぞれの国が比較優位にある財の生産に特化して,それを輸出しあうことで,両国とも豊かになれます.パレート改善が可能なのです.これが貿易の持つ素晴らしい力です.戦争とは違い,勝者と敗者は生まれません.貿易に関与した両国がともに勝者になれる(Win-Win関係)のです.
 僕は大学時代,この話(リカードの比較生産費説と言います)を聞いて,目から鱗が落ちるように驚いたのですが,皆さんも少しは驚いてくれましたか?

 今回もアンケートです.携帯からアクセスできない場合は次のリンクを選んでください.
http://enq-maker.com/ard4Zxy

2009年12月4日金曜日

経済数学入門 第11回

 今回は数学というより,経済学に近い内容でした.1次関数,2次関数の平行移動,そして1次関数の傾きの変化がどのような意味を持っているかを説明しました.

【授業の内容】
 今回,説明のため,予算線というものを紹介しました.自身の所得で買うことができる商品の組み合わせを示すものでした.この予算線はどのような時に傾きが変わるか,そしてどのような時に平行移動するのか,を説明しました.

 数値例で確認したとおり,傾きの変化は実は相対価格の変化を示しています.また平行移動は(実質)所得の変化を示していました.これらの内容は2年次配当のミクロ経済学ベイシックⅠで改めて説明することになります.

 また,平行移動のやり方も説明しましたね.1次関数でも2次関数でもやり方は同じでした.ワンパターンだし,覚えやすいですね.

 最後に円の描き方もすこし説明しました.経済学では別に出てこないのですが,まぁ教養として知っておいてもよいでしょう.

注意!
 何度も言いますが,呼び出しを受けた人は全学共通教育センターに通い,年内に担当教員から「OK」を受けてください.本当に苦手な人は複数回になるので,早めにいきましょう.「OK」が年内に得られなければ期末試験の受験資格を失います.

経済学Ⅰ 第9回

 今回は日経新聞を題材に,前回まで説明してきた金融政策を復習し,その後,為替について説明しました.こちらも実は金融政策と大きなかかわりがあることがわかりました.

【授業の内容】
 ちょうど今,日銀は貨幣供給量を急増させています.貨幣供給量の増加は経済にどのような効果を持つのか,これまでの説明を振り返ってみます.
 大きく分けて,その効果は2つです.1つは物価上昇です.現在のようにデフレ傾向がある場合には,デフレを止める効果があるかもしれません.
 もう1つの効果は,利子率を低下させ,それにより民間投資を増やし,結果として景気を回復させることです.前回までの話ではこのような効果がありました.しかし,今回,新たな第3の効果について説明しました.それはまた後ほど.

 為替レートとは,ある国の通貨と他の国の通貨を交換する時の比率(レート)です.テレビのニュースでは,最後に日経平均と並んで,1ドル=100円とか,説明していますね.あれが為替レートです.最近は急激に円高になったとよく報道されています.さて円高とはどのような変化でしょう.
 円高・円安というのはわかっているようで間違えやすいです.ポイントは1ドル=100円が意味する100円は,1ドルを買うために必要な金額である,ということです.だから1ドル=80円になれば,1ドルの値段が安くなった(ドル安)ことであるし,80円で買えるようになったということは円の価値が上がった(円高)ことでもあります.
 つまり円高とは(通常はドルと比べ)円の価値が高まったことであり,相対的に他国の通貨が安くなったことを意味しています.

 さて,どうして円高,つまり我々が持っているお金の価値が高まることが不景気につながるのでしょう.実は私たち家計にとっては円高は(直接的には)それほど悪いことではなく,むしろ海外の商品を安く買えるため,メリットの方が大きいようです.海外旅行に行くときには,特に円高のありがたみがわかるでしょう.
 しかし日本経済の屋台骨とも言える自動車や家電などの輸出企業にとってみれば,円高は恐ろしいものです.なぜなら1ドル=100円の時,日本で3万円のデジカメはドルに直すと300ドルです.つまりアメリカでは300ドルで販売されているとしましょう.ここで円高になり,1ドル=80円になれば,このデジカメは375ドルです.25%も値上がりしてしまいました.すると,アメリカでは日本製のデジカメは割高となり,売上も落ちてしまうでしょう.
 また,少し見方を変えて,アメリカに進出し,現地で生産し,現地で販売している日本企業のことを考えてみましょう.ある年には現地で300万ドルを稼いだとします.このお金は,1ドル=100円の時(円安)には日本円に直すと3億円ですが,1ドル=80円の時(円高)には2億4000万円になります.つまり円高になったせいで,海外で稼いだお金が日本円に直すと減少してしまうのです.

 このように円高は我々消費者にはメリットがありますが,輸出企業にとってはデメリットになります.ただし,企業の利益が減ると,我々家計の所得も減るでしょうから,間接的には消費者にとっても望ましくないことかもしれません.

 では為替と金融政策にはどのような関係にあるのでしょう.実は金融政策は為替レートにも影響を与えます.
 例として,今回のように日銀が貨幣供給量を増加させると,日本では様々な金利が低下するでしょう.すると,海外の投資家にとっては,日本の銀行に預けてもあまり利子が増えないので,魅力がなくなります.そのため,円を売り,他国の通貨(たとえばドル)を買って,その国の銀行に預けるようになるでしょう.この過程で円が売られ,ドルが買われるため,円安ドル高が進むでしょう.そうすると,日本の輸出企業にとっては条件が良くなります.いいことづくめですね.

 来週は貿易について説明します.

2009年12月2日水曜日

ミクロ経済学ベイシックⅡ 第11回

 今回から,リスクと不確実性です.本題は次回なのですが,今回は必要な知識の確認として,期待値,リスク,不確実性などの説明をしました.

【授業の内容】
 我々の生活は様々なリスクや不確実性に囲まれています.リスクとは,期待値とは,不確実性とは?それらの定義をきちんと確認しました.

 まず期待値ですが,期待値と平均値は紛らわしいですが別物です.平均値とは,すでに起こった事象についての平均をとったものです.例えば国民所得の平均値は,国民が受け取った所得の平均ですよね.最新のものであっても,過去の値です.
 対して期待値は,まだ起きていない事象の確率的な予測値と言えます.これから起こりうる事象と,その事象が起きる確率がわかっている場合に計算することができます.計算は簡単だし,経済数学入門でもやったので,みんな大丈夫ですよね?

 続いてリスクですが,日常で使う意味とは違うので要注意です.リスクとは,危険性のことではなく,結果のばらつきの大きさのことです.確率・統計の知識がある人には,分散(あるいは標準偏差)の大きさのことだと言えばわかりやすいでしょう.
 またリスクヘッジの方法についても少し説明しました.

 最後に不確実性についてですが,不確実性とは,何が起こりうるのか,またどんな確率で起こるのかもわからないことです.例えば,「あなたは将来,50代の10年間でどんな病気にかかると思いますか?」という設問は僕にとって不確実性です.病気に関する知識が少ないので,どんな病気にかかるのか,またその確率はどれぐらいなのかがまったくわかりません.ただしお医者さん,あるいは病気に関する知識が豊富な人にとっては不確実性というよりリスクに近いのでしょうね.

 おまけとしてモンティーホール問題を紹介しました.僕の説明で十分に納得できなかった人は,Wikipediaを参考にどうぞ.
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%BB%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%AB%E5%95%8F%E9%A1%8C

総合政策演習B1② 第11回

 今回は,前回中途半端な説明になったコブ=ダグラス型生産関数です.

【授業の内容】
 コブ=ダグラス型を説明していて思ったのですが,事前に指数法則を少し復習しておけばよかったですね.あんまり出てこないので,ややこしい計算はわすれてしまったかもしれません.

 コブ=ダグラスの計算問題を解く上では,偏微分の知識,そして指数法則をきちんと理解していることが要求されます.後は,規模に関して収穫一定(逓増,逓減),資本(労働)に関して収穫一定(逓増,逓減)ということが,数式としてどのように表現されるかの見方を覚えておけばよいでしょう.
 コブ=ダグラスを説明するのが慣れてないので,今回も我ながらいまいちだったかなぁ,と反省しています.

 来週はテキストに戻って,情報の非対称性です.

経済学A 第10回

 今回は為替について学びました.ちょうどタイムリーな話題ですので,今後もニュース等でよく耳にすると思います.

【授業の内容】
 まず,為替レートの見方を説明しました.円高・円安というのはわかっているようで間違えやすいですからね.ポイントは1ドル=100円が意味する100円は,1ドルを買うために必要な金額である,ということです.だから1ドル=80円になれば,1ドルの値段が安くなった(ドル安)ことであるし,80円で買えるようになったということは円の価値が上がった(円高)ことでもあります.
 つまり円高とは(通常はドルと比べ)円の価値が高まったことであり,相対的に他国の通貨が安くなったことを意味しています.

 さて,最近,円高で景気が悪化しているというニュースをよく聞きますが,どうして我々が持っているお金の価値が高まることが不景気につながるのでしょう.実は私たち家計にとっては円高は(直接的には)それほど悪いことではなく,むしろ海外の商品を安く買えるため,メリットの方が大きいようです.海外旅行に行くときには,特に円高のありがたみがわかるでしょう.
 しかし日本経済の屋台骨とも言える自動車や家電などの輸出企業にとってみれば,円高は恐ろしいものです.なぜなら1ドル=100円の時,日本で3万円のデジカメはドルに直すと300ドルです.つまりアメリカでは300ドルで販売されているとしましょう.ここで円高になり,1ドル=80円になれば,このデジカメは375ドルです.25%も値上がりしてしまいました.すると,アメリカでは日本製のデジカメは割高となり,売上も落ちてしまうでしょう.
 また,少し見方を変えて,アメリカに進出し,現地で生産し,現地で販売している日本企業のことを考えてみましょう.ある年には現地で300万ドルを稼いだとします.このお金は,1ドル=100円の時(円安)には日本円に直すと3億円ですが,1ドル=80円の時(円高)には2億4000万円になります.つまり円高になったせいで,海外で稼いだお金が日本円に直すと減少してしまうのです.

 このように円高は我々消費者にはメリットがありますが,輸出企業にとってはデメリットになります.ただし,企業の利益が減ると,我々家計の所得も減るでしょうから,間接的には消費者にとっても望ましくないことかもしれません.

 さて,この為替相場なのですが,値動きがあるため,投機目的で為替を売買する人も存在します.現在では輸出・輸入で使うお金よりも投機のために売買されるお金の方がはるかに巨大です.1997年のアジア通貨危機の発端も,投機目的のためにタイの通貨バーツが売買されたためです.

 後半は外貨預金について説明しました.外貨預金はその響きから「安全」であると勘違いされがちです.確かに日本の銀行に対する預金は非常にリスクが低いのですが(その分,リターンも低い),外貨預金には為替リスクが存在します.リターンが高い背景には,やはり高いリスクが隠れていました.

 来週はこの関連で,貿易について説明したいと思います.