2011年10月30日日曜日

経済学A 第6回(10/25)

 今回はゲーム理論の入門です.入門と言ってもこれで終りです.興味があれば図書館にゲーム理論の本が何冊かあるので読んでみてください.
 ちなみにゲーム理論は,前回のアンケートでもっとも皆さんからの要望が多かったテーマです.
【授業の内容】
 ゲーム理論は近年,経済学のみならず様々な分野で採りあげられているので,知っておいても良いかと思います.

 さて,このゲーム理論ですが,我々が普段イメージするゲームそのものではありません.ゲーム理論で分析対象となるゲームとは次の特徴を持ったものです.
・複数のプレイヤーが存在する
・あるプレイヤーの行動が他のプレイヤーの利得に影響を与える
 この2つの条件を満たせばすべてが分析の対象となります.この定義ではジャンケンもゲームですね.

 ゲーム理論では,利得というものが出てきます.利得とは,各プレイヤーがそれを最大化しようとする目的です.各プレイヤーが自分の利得を最大化することだけを考えます.そのため,他のプレイヤーの利得が大きいか,小さいか,自分と比べてどうか,ということは無視します.あくまで「どうすれば自分の利得を最大化できるか?」だけを考えます.他のプレイヤーの利得は無視してください.相手よりどうすれば利得を高くできるか,という勝ち負けではないのです.
 太字にした部分はゲーム理論で最初につまずくポイントです.ゲームと言っても相手のポイントとの大小関係ではない,ということを確認しましょう.
 最初のゲームとして,有名な「囚人のジレンマ」と呼ばれるゲームを説明しました.共犯者との駆け引きにより,どうすれば自分の懲役が短くなるかを考えます.このゲームでは,「相手がどんな戦略(選択肢のこと)を選ぼうと,この戦略よりはこちらの戦略の方が良い(利得が多い)」という合理的な考え方を身につけました.合理的であれば幸せになれるかどうかは別として(まさに囚人のジレンマ),合理的なモノの考え方を身につけました.

 これを発展させて,支配される戦略の逐次消去という考え方を説明しました.こちらも,使い途のない駄目な戦略(支配される戦略)を消していくことで,自動的に採るべき戦略がわかってきます.ただし,この解法はそんなに力強いものではありません.あるゲームでは通用しますが,通用しないゲームもあります.そのため,どんなゲームに対しても力を発揮する解法が必要となります.

 そこで出てきたのがナッシュ均衡です.ナッシュ均衡は,あるプレイヤー(A)の戦略が他のプレイヤー(B)の戦略に対する最適反応であり,Bの戦略がAの戦略に対する最適反応になっているというものです.このような状態は,まさに均衡,つまり相手の裏をかくことができません.
 と,なかなか抽象的でややこしいですが,実際に問題を解こうと思うと簡単です.相手の戦略に対する最適反応にチェックをつけていくだけですからね.
 このナッシュ均衡の考え方を用いて,利得表を用いないホテリングゲームも解いてみました.もちろんホテリングゲームは物事をかなり単純化していますが,それでもそのエッセンスは現実の謎に対しても十分応用可能だと思います.このホテリングゲームの話はどこで話しても結構興味を持ってもらえるようです.

 最後に逐次手番ゲーム(展開型ゲーム)を説明しました.ジャンケンのような同時手番ゲームではなく,ババ抜きや大富豪のように時間の流れがあるゲームです.
 このような逐次手番ゲームでは,後ろ向き帰納法という考え方が役立ちました.後ろ向き帰納法とは,一番最後に行動する(戦略を決める)プレイヤーの行動から確定していき,徐々に時間をさかのぼって,行動を確定していきます.
 このようなゲーム理論を現実にすぐに応用することはできないかもしれませんが,この新たな考え方を覚えておくことは,皆さんの思考に幅を持たせてくれるのではないかと思います.ゲーム理論に興味がある人は次の本が参考になります(図書館にもありますよ).

渡辺隆裕『図解雑学ゲーム理論』ナツメ社←わかりやすい
神戸伸輔『入門ゲーム理論と情報の経済学』日本評論社←ちょっとレベルは高いかも?

2011年10月21日金曜日

経済数学入門 第4回(10/20)

 授業回数の関係で今回は変則的に木曜日になりました.

【授業の内容】
 今回は,前回やり残した2次不等式の後,指数です.

 2次不等式ですが,前回説明した1次不等式と同様,まずは不等号ではなく等号として考えます.等号にすることで,単なる2次関数となるので,その放物線を描くことができますね.後は,その放物線で分割された2つの領域のうち,不等式が示すのはどちらなのかをチェックするだけです.簡便な方法も説明したのですが,きっちりやろうと思ったら,前回説明したように,明らかに一方の領域に含まれる具体的な点(原点などが望ましい)を不等式に代入し,矛盾が起きるかどうかで確認できました.詳しくは前回のブログを読んでください.

 さて,本題の指数です.指数はマクロ経済学に出てくるコブ=ダグラス型生産関数などを理解するために必要です.また,指数を説明する過程で出てきた素数と素因数分解,最大公約数と最小公倍数は公務員試験や民間企業の筆記試験(SPI2など)を解く上でも必要ですよ.特に公務員試験の教養試験では,このような数の問題は頻出のようです.
 まずは素数から説明しました.素数は授業でも触れたように皆さんの生活にも欠かせない暗号化の技術にも応用されており,私達の生活を影から支えています.また素因数分解により,整数を素数の積で表現することが可能になりましたね.

 指数は見慣れたものなので,ついつい直感的に計算してしまいがちです.最初は面倒だと思っても,レジュメにある指数法則を確認しながら計算しましょうね.

 さて今回と前回の小テストで引っかかった人はポータルサイトから連絡しています.28日までに課題を持って全学共通教育センターに行きましょうね.

総合政策演習BⅠ 第4回(10/19)

 今回は市場メカニズムでした.

【授業の内容】
 小テストはシュタッケルベルグ均衡でした.

 ベイシックⅠでも説明した価格メカニズムが中心でした.僕の授業ブログから引用すると,
 
 まずワルラス型価格調整メカニズムです.ワルラスは,まず価格が決まると考えました.その価格に応じて需要や供給が決まります.この時,需要が供給を上回れば超過需要,供給が需要を上回れば超過供給と呼びます.超過需要とは品不足のことなので,この場合は価格は上昇します.逆に超過供給は売れ残りを意味するので,当然価格は下落します.いずれにせよ,通常の,右上がりの供給曲線と右下がりの需要曲線の下では,価格がどこから始まっても均衡に向かって収束します.これを安定的と呼びます.
 続いてマーシャル型価格調整メカニズムについてです.マーシャルはワルラスと異なり,まず生産量が決まると考えました.生産量が確定した後,企業が売っても良い価格(供給価格)と,消費者が買いたい価格(需要価格)が決まり,供給価格が需要価格を上回ったら超過供給価格,下回れば超過需要価格が発生します.超過供給価格の発生は,消費者が買いたい値段より生産者が売りたい値段の方が高いので,生産者は次の生産量を減らします.逆に超過需要価格が発生した場合には企業は生産量を増加させます.
 くもの巣理論が取り扱うのは,生産までに時間がかかり,かつ保存が効かない財です.具体的には生鮮食料品,特に野菜がよく当てはまると思います.まず市場の均衡で決まる価格よりも高い値段で始まるとしましょう.すると,高く売れると考えた生産者はいつもより多く生産しようとします.しかし生産までに時間がかかるので,すぐにその値段で売れるわけではありません.実際に生産してみると,供給量が多いため,値段は下がります(豊作貧乏ですね).普段より安くしか売れないので,来期の生産量は減らすでしょう.しかし実際に生産してみると,供給量が少ないために価格は予想よりも高くなります.このように価格が高い,低いと変動を繰り返すのがくもの巣理論の特徴です.実際にスーパーで売られているキャベツなどの値段の変動幅は大きいですよね.それに引き換え,冷凍保存の効く牛肉などはそれほど変動がないはずです.

 ということです.まあ,公務員試験についてはとにかく一目で安定的かどうかを判断できなければなりません.そんなに難しくないので,ここは確実に点を稼ぎたいところですね.次週はこの価格メカニズムを小テストにします.

 また残り僅かな時間で余剰分析も復習しました.余剰は様々なテーマ(独占,貿易など)に絡んで出てくるので要注意!次週は余剰と税金を中心に説明します.

ミクロ経済学ベイシックⅡ 第4回(10/19)

 今回から独占市場です.独占市場が終わったら中間テストを予定しています.

【授業の内容】
 独占市場は売り手の数により次のように分類されます.
完全独占(狭義の独占)…売り手は1社
複占…売り手は2社
寡占…売り手は少数
独占的競争…売り手は多数

 今回はこのうち完全独占について説明しました.まず完全独占について明確に理解するために,完全競争市場と対比して説明しました.
 完全競争市場とは売り手が多数で自由に参入・退出できる市場です.そのため,競争が激しく,どの企業も利潤が出ません.もし利潤が出るようなら,新たに新規参入が起こり,価格が低下するからです.価格は利潤が出ることもなく,赤字も出ることもないようなギリギリのものになります(P=MC).つまり個別の企業は価格を決定できず,市場で決まる価格を受け入れるしかありません.これを価格受容者(Price Taker)と呼びます.
 対して,完全独占市場では,売り手は1社しかないため,企業は自分の好きなように価格を決めることができます.これを価格決定者(Price Leader)と呼びます.

 さて,独占企業はどのように価格と生産量を決定するのでしょうか.もちろん利潤が最大となるように決定します.どこで生産すれば利潤が最大になるか理解するために図を描きました.企業は限界収入と限界費用が等しい点で生産します.限界収入とは,生産量を1つ増加することにより収入がどれだけ変化するかを示すものです.限界費用は,生産量を1つ増加することにより新たに発生する費用のことです.そのため,企業は限界収入が限界費用を上回るのであれば生産すべきです.通常の企業では限界費用は長期的には増加し,限界収入は常に減少し続けるので,必ずいつかは限界費用と限界収入が等しくなります.ここが最適な生産量です.これで生産量が決まれば,それを需要関数に代入することで価格が決まります.
 ここで確認ですが,限界収入は収入を微分したものであり,限界費用は総費用を微分したものです.今回の数値例を使って何度も計算しましょう.

経済数学入門 第3回(10/17)

 今回も関数です.2次関数と,不等式を説明しました.

【授業の内容】
 前回は2次方程式の解法まで確認しました.2次方程式の解は横軸との交点を出すためのものだということを再度確認しましょうね.

 さて,今回説明した2次関数の平方完成は,放物線を描く2次関数の頂点(もしくは底)の座標を求めるために使います.平方完成のやり方は文章で説明しづらいので省略しますが,授業中に説明したStep.1~3のようにやれば,機械的に座標が出てきます.今回確認した程度の2次関数は経済学でも公務員試験でも民間企業の筆記試験(SPI2)でも必要となります.絶対にできるようにしましょうね.

 今回もちょっとしたお遊びでSPI2の問題を解いてもらいました.皆さん数学の問題(非言語問題と呼びます)はできましたが,言語問題(特に敬語)が苦手みたいですね….

 ここまでで1次関数と2次関数について復習しました.あとは1次と2次の不等式です.
 まずは1次不等式からです.不等号(<や>)ではなく等号(=)であるとすれば,見慣れた1次方程式なので,まずは1次方程式の直線を図に描きましょう.不等式はこの直線のどちらかの範囲を示しています.ではどちらなのかを判別するためには,明らかにどちらか一方に含まれる具体的な点(原点などが計算しやすいでしょうね)を不等式に代入してみましょう.もしそれで不等式が矛盾したものでなければ,代入した点を含む範囲が,不等式がの示す範囲です.もし矛盾したら(例:2>5),不等式の示す範囲はその点を含まない,ということがわかります.

 2次不等式も同じなので続けて説明したかったのですが,時間が足りなくなったので次回へ.

経済学A 第5回(10/18)

 今回は物価,名目値と実質値の話をしました.

【授業の内容】

 今回のメインテーマは名目値と実質値の違いです.まずはその前提となる物価について説明しました.

 「物価」とはよく聞く言葉ですが,厳密に言うと物価とは何でしょうか.物の価格が物価なのかもしれませんね.物の例として本を考えてみると,同じ本でも出版社が問屋に卸すときの値段,問屋が本屋に売るときの値段,そして私たちが本屋で買うときの値段と,同じ本に3つの異なる価格があります.物価の指標として最もよく使われる消費者物価指数(CPI)は最後の価格,つまり我々消費者が最終的に買うときの値段に注目しています.
 また,最近ガソリンが高いので物価は上がっていると言って良いのでしょうか.しかし薄型テレビは値下がりし続けていますね.我々が買う財(商品やサービス)はたくさん種類があるので,1つの財の価格だけを見ていてもわかりません.そのため,消費者物価指数では,平均的な家計が1ヶ月生活するのに必要な金額を計算することで,様々な財の価格を総合的に示しています.
 この物価ですが,横断面でも違いがあるし,時系列でも変化します.横断面とは,ある財の価格が,ある一時点に異なる地点でどのような違いがあるかをみたものです.時系列とは同じ財が同じ場所でどのように変化するのかをみるものです.授業では具体例をいくつか示しましたね.

 授業の後半は名目値と実質値の説明をしました.その例として所得,GDP,利子率などを取り上げました.
 所得については,皆さんがもらうバイト代,あるいは僕がもらう給与明細に書いてある金額は名目所得です.つまり名目所得とは世間一般でいう所得のことです.対して実質所得とは,名目所得から物価の変化を差し引いたものです.例えば,皆さんがもらうバイト代が一定なのに,そのバイト代で買う服が値下がりすれば実質的にはバイト代が増えたのと同じですね(より沢山の服が買えるようになったから).逆に値上がりすれば実質所得は下がることになります.
 GDPについては,以前にGDPの回に説明したものは正確には名目GDPです.ただし,名目GDPは必ずしもその国の生産力を示すものとは限りません.なぜなら生産力が同じでも物価が上がれば名目GDPは上がってしまうからです.そのため,物価が一定であるとしてGDPを計算したものが実質GDPです.
 最後の利子率ですが,利子率が3%なら預金の価値が1年間に3%上昇するとは限りません.なぜならその間に物価が上昇するかもしれないからです.例えば100万円が103万円に増えたとしても,その間に物価も3%増えれば預金の価値はまったく変化しません.物価がそれ以上に上がれば逆に預金の価値が下がることになってしまいます.そのため,銀行で提示される利子率(名目利子率)だけにとらわれるのではなく,それから物価の変化を差し引いた実質利子率に注意する必要があります.

 今回は最後にケータイを使ってアンケートをとりました.結果のうち,理解度については以下の通り.
とてもよく理解できた:12.1%
ある程度理解できた:77.6%
あまり理解できなかった:10.3%
まったく理解できなかった:0%

 興味のあるテーマについては,ゲーム理論が最も多かったので,次回はゲーム理論にします.

 個別の質問には今後の授業で答えていく予定です.

2011年10月16日日曜日

総合政策演習D 第4回(10/13)

 今回もいつも通りです.次回は僕の最後の担当なので,非言語問題のテストをがっちりします.予定では45分ぐらいです.

【授業の内容】
 損益算などをやりました.損益算は特に重要なのできっちり確認しましょう.原価(仕入れ値),定価,売価(売値)の3つをゴチャゴチャにしないようにしましょうね.

 さて,今回は皆さんが知らない優良企業についての記事の紹介です.大企業の有効求人倍率は低いのですが,中小は結構高いという情報も紹介しましたね.学生は企業について知らないので有名企業(≠大企業,優良企業)ばかり受けます.有名企業はBtoC企業と言っても良いでしょうね.その企業が優良企業であるかどうかに関係なく有名企業ばかり受けるので,競争倍率が高くなり,多くの学生が失敗するわけです.というわけで,ちゃんと企業研究しましょうね.
 じゃあどうすれば優良な中小企業を知ることができるか,ですね.その方法の1つは前にも言いましたが,日経の地方欄です.多くの人が知らないけれど特徴のある中小企業がよく出てきますよ.また,次のサイトもおすすめです.
中小企業庁「モノ作り中小企業300社」
http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/sapoin/monozukuri300sha/index.htm

総合政策演習BⅠ 第3回(10/12)

 今回も独占です.

【授業の内容】
 独占のうち最もややこしい複占の続きです.

(確認)
クールノー均衡:同時手番,非協力ゲーム.両企業が同時に生産量を決定する.

シュタッケルベルグ均衡:逐次手番,非協力ゲーム.1社が先に生産量を決め,それを見て他社が生産量を決める.
協力ゲーム:同時手番,協力ゲーム.両企業が両企業の利潤の合計が最大になるように生産量を同時に決定する.

 今回は同じ問題をこの3つの解法で解きました.3つの解法をもう少し具体的に説明すると,
・クールノー均衡
 企業A,Bとすると,企業AについてMR=MCを計算し,企業Aの最適反応計算します.同様に企業Bについても計算し,それぞれの連立方程式を解くと,両企業の最適な生産量がわかります.
・シュタッケルベルグ均衡
 企業Aが先行,企業Bが追随するとする.企業BについてMR=MCを計算し,企業Bの最適反応を導出し,それを需要関数に代入した上で,企業AについてMR=MCを計算すると企業Aの最適な生産量がわかります.またそれを企業Bがの最適反応に代入すると企業Bの最適な生産量もわかります.
・協力ゲーム
 企業A,Bとすると,企業A,Bの生産量の合計をXとする.両企業の収入の合計をXで表現し,Xで微分して限界収入(MR)を導出する.また,両企業の費用の合計を同じくXで表現し,Xで微分して限界費用(MC)を導出します.MR=MCから最適なXが得られる.このXは両企業の生産量の合計なので,Xを2で割ったものが企業A,Bそれぞれの生産量です.

 また残りの時間で,寡占と独占的競争についても説明しましたが,これらはベイシックⅡの復習で新しい内容はないので省略します.

ミクロ経済学ベイシックⅡ 第3回(10/12)

 今回もゲーム理論の続きで,ゲーム理論はここでひとまず終りです.混合戦略ナッシュ均衡はなかなか理解するのが難しいかもしれませんね.

【授業の内容】
 まず前回の復習をしました.前回の最後に説明した逐次手番ゲームを,利得表を使わないで考えてみました.最後通牒ゲームと呼びます.ここでもゲームの解法は「後ろ向き帰納法」を用います.つまり最後に行動する人の戦略を確定させ,そこからその1つ前に行動する人の戦略,さらに前の人というように逆順に戦略を確定させていくのです.

 最後通牒ゲームのルーツは次の通りです.
・プレイヤーは2人(AさんとBさん)
・AさんとBさんの目の前に1万円があり,これを2人で分けることになった.
・まず,Aさんが1万円をどのように分けるか,その配分割合を決める.
・その後,BさんがAさんの決めた配分を受け入れるかどうかを決める.
・Bさんが受け入れれば,Aさんの決めた配分通りに分ける.
・Bさんが受け入れなければ,その1万円は没収され,2人とももらえるお金は0円になる.
・AさんとBさんは利己的で,自身が受け取れる金額にしか関心がない.
・完備情報
・完全情報
 この場合,Aさんの合理的な戦略は(A,B)=(9999,1)となります.なぜなら,これを提示されたBさんは受け入れれば1円,受け入れなければ0円となるからです.

 さて,続いて混合戦略ナッシュ均衡を説明しました.話は戻って同時手番ゲームです.前回説明したナッシュ均衡は厳密には,純粋戦略ナッシュ均衡と呼びます.どれか1つの戦略だけを選ぶか場合です.今回説明するのは,複数の戦略に確率を振ることができる場合のナッシュ均衡です.


 混合戦略ナッシュ均衡は計算で解を求めるのでここでは表記しづらいので大まかな流れだけ説明します.プレイヤーAとBがおり,それぞれ(A1,A2),(B1,B2)という戦略を持っているものとします.
 まずプレイヤーAの立場になり,A1を選んだ場合の利得を考えます.しかし,相手がどちらを選ぶかわからないので,相手の戦略それぞれに確率をふります.例えば,B1にp,B2に1-pです.これによりA1を選んだ時の利得の期待値E(A1)が計算できます.同様にA2についても期待値E(A2)を計算し,どのような場合にE(A1)がE(A2)より大きいか小さいかを確認しましょう.
 続いてプレイヤーBの立場でも,最適反応を計算しましょう.
 この両者の最適反応を図示し,両者の最適反応が交差した点が混合戦略ナッシュ均衡です.

経済学A 第4回(10/11)

 前回に引き続き経済の仕組みと経済学の簡単な歴史を説明しました.今回は「大きな政府」と「小さな政府」の違いを理解することが目的です.
 大きな政府と小さな政府という考えが頭にあると,アメリカで今起こっている「99%のデモ」がどんな立場なのか,何を求めているのか,また「ティーパーティー運動」の支持者とどこが違うのかが見えてきますよ.

【授業の内容】
 前回は大恐慌に陥った話まででしたね.世界大恐慌の際,古典派経済学が有効な打開策を提示できなかったのです.この時に古典派に代わって檜舞台に立ったのがケインズ派経済学です.ケインズ派経済学は古典派とは異なり,市場(の機能)をあまり信頼していません.市場は完璧なものではなく,機能が上手く働かない場合(「市場の失敗」と呼ぶ)がしばしばあると考えています.そのため,政府が積極的に市場に介入すべきだと考えています.さて,その介入の仕方を説明する前に,ケインズ経済学が需要と供給の関係をどのようにとらえていたかを確認しましょう.


 古典派はセイ法則を信じていました.つまり供給の大きさが需要を決めると考えていました.しかし,ケインズは逆に需要の大きさが供給の大きさを決めると唱えました.これは有効需要の原理と呼ばれます.これまでの常識をひっくり返したので,ケインズ革命と呼ばれます.この考えに立てば,供給(GDP)を大きくすること,つまり経済成長するためには需要を大きくしなければなりません.不況の場合は需要が小さすぎる(需要不足)のが原因だと考えます.ちなみに需要の内訳は,民間消費,民間投資,政府支出,純輸出(輸出-輸入)です.

 そのため,不景気に対する政府の介入方法は,民間に代わって政府がお金を使うこと,つまり政府支出を増やすことです.需要が足りないので政府がその不足分を支出します.これにより需要が増加し,有効需要の原理によりGDPが増加し,三面等価の原則により所得も同額だけ増加します.所得が増加すると,その何割かの量だけ民間消費が増加します.民間消費の増加は需要の増加を意味しているので,先程と同様にGDP,所得を増加させ,またも民間消費が増えることになります.このループを繰り返すことで,当初,政府が使ったお金以上にGDPが増えることになり,景気回復します.この流れは,政府支出の乗数効果と呼ばれます.この話は重要なので,テスト前にはきっちり復習しておきましょうね.
 実際に大恐慌の際にはアメリカでは民主党のルーズベルト大統領が中心となり,大規模な公共事業を始めとするニューディール政策を採りました.世界史?の授業で習ったのではないでしょうか.
 ケインズ派が主導する政府は国民の負担が大きい代わりに福祉も大きい大きな政府です.積極的に市場に介入するため,結果として慢性的に政府が赤字(財政赤字)となりがちです.また,政府の介入が大きい場合にはもう1つの問題点があります.それは効率性の悪さです.例として郵政民営化を取り上げます.郵便局が行う郵便や郵便貯金などのサービスは国でなければできないものではありません.しかし国がやることのメリットは採算度外視のサービスができることです.ほとんど人のいない離島に郵便局を作ることは営利目的である民間企業にはなかなかできないことですが,国がやる場合には営利目的ではないので,赤字であっても郵便局を作りやすいでしょう.ただし,採算度外視でやる場合は,なんとか効率を良くしよう,無駄を省こう,サービスを向上しようというインセンティブに欠けるため,どうしても非効率的になってしまいがちです.長年赤字でもきちんと給料がでますからね.民間企業であれば赤字続きなら給料削減,もっとひどければ倒産,結果として仕事を失ってしまいます.逆に効率改善すれば給料が増えるでしょうから,がんばろうというインセンティブがあります.

 さて,ともかく1980年代には財政赤字の解消が大きな課題となったため,ケインズ派ではなく,市場の機能を重視する新古典派経済学が力を持つことになります.
 新"古典派"というだけあり,古典派と基本的な考え方は似ています.市場の機能,特に競争による成長を重視しています.そのため新古典派が採る政策は,民営化規制緩和といった競争を促す政策が軸となります.福祉に関する考え方も,国民の負担が低い代わりに福祉水準が低い,いわゆる小さな政府となります.小さな政府のメリットは,競争を重視するため,がんばった分だけ報われる社会になります.そのために活力と競争力のある社会になりそうです.
 1980年代の日本は3公社を民営化しました.それらは現在のJR,NTT,JTです.特に前者2つは分割民営化しました.最近だと郵政公社もそうですね.分割することにより互いに競争することが期待されるのです.
 さて日本は小さな政府でしょうか大きな政府でしょうか.今後紹介する国民負担率で評価すると,日本は国際的には国民の負担が低い,小さな政府です.しかしその割には政府の使うお金(歳出)が大きいです.だから財政赤字が膨らんでいくのでしょうね.
 さあ,「99%デモ」や「ティーパーティー」がどんな立場なのかがわかりましたか?また,皆さんも近いうちに選挙権を持つことになるので,人物の好き嫌いで選択しなくて済むように,どんな社会に住みたいのかを考えておきましょう.

2011年10月8日土曜日

総合政策演習D 第3回(10/6)

 今回もテストです.僕の担当もこれで折り返し,第5回はがっちりテストをします.

【授業の内容】
 まあテストについては目新しい話はないので省略します.

 今回は「落ちてもいい企業」を紹介しました.落ちてもいいとは,「どうせ受かっても行かないから」という意味ではなく,選考を受けること自体に意味があるので落ちてもいい企業ということです.
 企業は学生の落とし方にも気を使っています.なぜなら就活で選考に落とした学生は,特に面接,それも2次,3次,最終と後になればなるほど落とされた企業に悪い印象を持つ可能性が高いからです.学生は今後消費者になる可能性があるので,悪い印象にとって良いことではありません.そのため,落とした学生にも良い印象を持ってもらおう,少なくとも嫌われないように,と色々工夫をしているようです.
 面接の振り返りシートを書かせる企業や,面接時のアドバイスをくれる企業があるようです.僕が今回配布した資料は結構古いものなので,「みん就」などを使って最新の情報を確認しましょう.

 また,「見た目」の話をしました.これに関しては僕もキチンとしていないので人に言えた話ではないのですが,まあ少し人の目を意識してみましょう.特に男の子は外見に無頓着な傾向があるように思います.気をつけても別に急に顔が変わったりするわけではないですが,顔つきは変わります.意識して清潔感があり,好印象を持ってもらえるように努力しましょう.男の子の場合はまず間違いなく長髪よりは短髪の方が爽やかになるし,印象も良くなるでしょう(もちろん坊主頭は別だけど).また,スーツの着こなしも着慣れると変わってくるものです.たまにはスーツを着て,通学してみてはどうでしょう.どんなスーツが良いのかわからなければ,量販店に行って「これから就活なんですが・・・」と言えば相談にのってくれますよ.同じスーツやシャツと言っても,金融を受ける場合とアパレルを受ける場合ではなんとなくドレスコードも違いますからね.

総合政策演習BⅠ 第2回(10/5)

 今回はゲーム理論と独占市場のうち複占を主に説明しました.

【授業の内容】
 まずゲーム理論を少しだけ復習し,その後複占の説明をしました.複占の解法は次のように分類されます.
クールノー均衡:同時手番,非協力ゲーム.両企業が同時に生産量を決定する.
シュタッケルベルグ均衡:逐次手番,非協力ゲーム.1社が先に生産量を決め,それを見て他社が生産量を決める.
協力ゲーム:同時手番,協力ゲーム.両企業が両企業の利潤の合計が最大になるように生産量を同時に決定する.

 今回のようにどんどん皆さんに問題を解いてもらいます.わからない問題があれば言ってくださいね.

ミクロ経済学ベイシックⅡ 第2回(10/5)

 今回はゲーム理論の続きです.思ったより早く進みました.

【授業の内容】
 まず前回の復習として「支配される戦略の逐次消去」をやりました.ただし,この方法で解ける問題は限られています.この方法で解けない問題を解くためにナッシュ均衡があります.

 ナッシュ均衡とは「あるプレイヤーAの戦略はプレイヤーBの戦略に対する最適反応であり,プレイヤーBの戦略はプレイヤーAの戦略に対する最適反応となっている状態」のことです.互いに裏をかけない状況と考えて良いでしょう.
 利得表を使ってナッシュ均衡を導き出すやり方も説明しましたが,利得表を使わない立地ゲーム(ホテリングゲーム)でもナッシュ均衡の考え方を確認しました.このゲームの結論は一見非現実的に思えるかもしれませんが,実際の経済でもこれに近いケースはあることを紹介しました.

 続いてミニマックス戦略です.これまでのゲームはすべて「利得の最大化」を目的としていましたが,ミニマックス戦略の目的は「被害の最小化」です.
 各戦略は最悪の場合利得がいくらかを考え,そのうち最も利得が高い戦略を選びます.

 最後に逐次(ちくじ)手番ゲームも解きました.逐次手番ゲームとは,じゃんけんのように戦略を同時に決定するゲーム(同時手番ゲーム)ではなく,あるプレイヤーが戦略を決定し,その後他のプレイヤーが戦略を決定するというように時間の流れがあるゲームです.
 このようなゲームはゲームツリーで表現できます.このようなゲームの解法は,「後ろ向き帰納法(Backward Induction)」です.この解法では,まず最後に行動するプレイヤーの戦略を確定し,そこから順に時間を遡って,各プレイヤーの戦略を決定するのです.つまり,現実にはプレイヤーA→B→Cの順に戦略を決定するとすれば,プレイヤーC→B→Aの順に行動を確定させていくのです.

 さて,今回はメモと課題を渡しました.どちらも次回の授業で回収します.

経済学A 第3回(10/4)

 今回はマクロ経済学の入門編として,経済の仕組みの全体像を説明しました.
【授業の内容】
 今週と来週で経済の仕組みを大雑把に理解してもらいます.導入部分として,アメリカのオバマ大統領が掲げた「国民誰もが入れる健康保険」に反対する人がなぜいるのかを考えてもらいました.また,最近アメリカではかなり大規模なデモが起きています.このデモは何を訴えているのか,アメリカとはどんな国なのか,日本はどんな国なのかを学んでいきます.

 今回の話の前提条件として,経済学の目的は何かを説明しました.経済学は人々を幸せにすること,貧困を削減することを目的として誕生し,そのための目標値として,GDP成長率や,1人あたり所得などを用いることを説明しました.ポイントは「お金があることが幸せ」だと考えているのではなく,「幸せを測定するモノサシとして,(とりあえず)お金を使っている」点です.似たようなもんだ,と思うかもしれませんが,そこには大きな違いがあると,僕は考えています.
 というわけで,目標値であるGDPを説明しなければなりません.GDPとは,国民総生産のことですが,どれだけ商品を作ったかを示すものではなく,どれだけ付加価値を発生させたか,を示すものです.簡単な数値例で計算しましたね.
 ここから,経済学(と経済)の歴史について説明しました.今回は経済学の誕生として,古典派の人たちが何を考えていたかを主に説明しました.古典派の人たちの主張を簡単にまとめると,「市場の働きを信頼しており,政府が市場に介入すると,そのメカニズムが乱されてしまう.そのため,政府は何もしない方が良い」というものでした.民間に任せておいても,まるで神の見えざる手が存在するかのように,うまく物事を治まるというものです.政府は最低限だけの役割(警察,国防,消防など)を行い,後は民間に任せるというものです.これはレッセ・フェールと呼ばれます.

 古典派のもう1つの特徴として,セイ法則があります.これは,供給の大きさが需要の大きさを決めるというものです.ある経済を,生産(供給),支出(需要),所得の3つの側面から測っても大きさが同じであると言うことを三面等価の原則と言いますが,古典派はこのうちの生産を重視します.なぜなら生産が大きければ需要は勝手についてくると考えたからです.
 このような古典派経済学は,1920年代後半に起きた世界大恐慌に際して無力でした.大不況であることがわかっても,有効な解決策がないからです.そこで,このような非常時に有効な薬をケインズたちが提示します.ということで,次回はケインズの登場から話します.

 この流れとは接点があまりないのですが,少しだけマルクス経済学の話もしました.今となってはすでに歴史の遺物という感じですが,前世紀,皆さんが生まれる少し前までは一定の影響力のある思想?システム?でした.我々が普段当たり前だと思っている経済システムは市場経済と呼ばれます.財(モノやサービスの総称)の値段や取引される量は市場で決まるからです.対するマルクス経済学の影響下にある国の経済は計画経済です.計画経済では,供給量は市場によって決まるのではなく,政府の計画で決定します.みんなにとって必要と思われる量だけが生産され,平等に分配されます.平等という意味では理想的な社会でありますが,計画経済の最大の問題点はインセンティブが活かせないことでしょう.独創的な発明,効率化,消費者のニーズをつかむこと,これらがあまりメリットをもたらさない仕組みでは,人間はあまり努力しないものです.ほぼすべての財の生産は国や地方の公共団体がやるより,民間がやる方が効率的です.郵便局の窓口も民営化すると決まってから随分愛想が良くなったと思いませんか?

 今回は課題を配布しました.主要国の人口やGDPを調べてきてもらいます.次の授業で回収しますね.

2011年10月7日金曜日

経済数学入門 第2回(10/3)

 今回も関数です.1次関数と2次関数の確認をしました.

【授業の内容】
 どちらも高校までにやった内容ではありますが,経済学においても,公務員試験や民間企業の筆記試験においても,これぐらいがきっちり理解できていればあまり困りません.

 1次関数では,関数を読み取ってきちんとグラフに描けること,2次関数ではグラフを描けることと2次方程式を溶けることを確認しようと思ったのですが,2次関数は,2次方程式の解法をやったところで時間切れでした.

 また,今回からチーム制を始めたので,チーム内で教え合う雰囲気作りのためにクイズっぽい数学の問題をチーム毎に解いてもらいました.

 今回も小テストをしました.呼び出しがあった人は全学共通教育センターに来ましょうね.できれば木曜日に.また,今回も課題を出しました.次回までにやってきましょう.

総合政策演習D 第2回(9/29)

 今回も粛々と問題をこなしていきます.

【授業の内容】
 さて,今回はいつものテストに加えてアンケートをとりました.皆さんが夏休みに就活に向けてどのような活動をしたかを調査したわけですが,残念ながら予想通り皆さんは最低限のことしかしていないようです.周りと同じ事をしているから安心するのはもうやめて下さい.「周りと同じ事をしていたらダメなんだ!」ということを強く意識してください.「周りがしていないからOB・OG訪問してみよう」,「周りがしていないから公募のインターンシップの選考を受けてみよう」と思えるように意識改革しないと貴重な時間がもったいないですよ.
 あと,時事問題っぽいキーワードについてのテストもしましたが,こちらもよくありませんでした.先週僕が紹介したのだから知らなければ調べましょう.「知らないことは恥ずかしいことなんだ」と思えなければダメですよ.

総合政策演習BⅠ 第1回(9/28)

 後期から僕が総合政策演習BⅠを担当します.

【授業の内容】
 今回は独占市場のうち完全独占の確認をしました.独占市場は様々なパターンがあり,公務員試験のミクロでは最も大変なところでしょうね.

 次回から本格的に演習をしますが,今後は各自でテキストの予習範囲をしっかり解いてきましょうね.質問がなければどんどん先に行きます.皆さんのペースでやっていくので,積極的にやれば早くテキストが終わるでしょうね.昨年もそうだったので,テキストを一通り終えたら,テキストの順序にこだわらず様々な問題をやっていく予定です.

 とにかくこの演習は公務員試験に合格することが目的なので,ペースを落としたりしません.しっかり勉強してくださいね.
 

2011年10月4日火曜日

ミクロ経済学ベイシックⅡ 第1回(9/28)

 今回は前期の復習とゲーム理論の入門編です.


【授業の内容】
 まず前期の内容である完全競争市場を復習しました.前期は完全競争市場の5つの条件をすべて満たした非現実的な市場での家計や企業の行動を学びました.5つの条件により,企業はどんなにがんばっても利潤は出ません.

 一方,後期は不完全競争市場,つまり上述の5つの条件から外れた場合について考えて行きます.まずは「多数の売り手と買い手」ではない場合,つまり独占市場について学ぶのですが,そのための道具としてゲーム理論を説明します.

 さて,ゲーム理論とは,「プレイヤーが2人以上存在して」おり,「互いのプレイヤーの行動が他のプレイヤーに影響を与える」という状況(これをゲームと呼びます)における駆け引きについて学びます.
 まずGame.1として,囚人のジレンマを考えました.互いが利己的に行動すると逆に不幸になってしまう状況でしたね.
 続いてGame.2として,「支配される戦略の逐次消去」という解法を説明しました.

【ゲーム理論で用いる専門用語】
プレイヤー:プレイヤー(そのまま)
利得:ゲームの結果得られるポイント(のようなもの)
戦略:プレイヤーが持っている選択肢
同時手番ゲーム:同時に戦略を決定するゲーム(Ex.ジャンケン)
完備情報ゲーム:全プレイヤーがゲームのルールについて完全に知っていること

2011年10月3日月曜日

経済数学入門 第1回(9/26)

 経済数学入門は,2年次以降の経済学などの科目で必要となる数学的な基礎について学ぶ科目です.数学が苦手(というか嫌い!)という人も対象にしています.

【授業の内容】
 この授業はちょっと変わっているので,まず授業の仕組みから説明しました.
・評価は中間と期末の筆記試験の合計で決まる(ただし例外あり).
・中間試験の成績が6割に満たない場合は全学共通教育センターに通い,年内に担当者の了解を得る.
・チーム制であり,各チームはリーダーとメンバーで構成される.
・(ほぼ)毎回小テストと課題を出す.
・小テストの結果が悪ければ呼び出しがあり,呼び出しを受けたらその週のうちに全学共通教育センターに行く.

 今回は初回なので,チーム制は採りませんでしたが,早速小テストをしました.

 さて授業の内容ですが,今回は「関数とは何か?」を説明しました.
 関数とは,何かの数字を入れると,何らかの数字が出てくる箱のようなものです.今回はご飯の時に使う箸の本数を例に取り上げました.夕食を一緒に食べる人数が4人であれば,必要となる箸の本数は8本ですね.別に僕が計算方法を説明しなくても誰だってわかりますね.これをハシ関数と呼びましょう.するとハシ関数は次のように表現できます.
f(x)=2x
 ここでは人数をxとしています.f(x)のfはfunction,つまり関数を意味しています.f(x)は,xに数字を入れると,何かが出てくる関数だということです.xに4を入れれば,8が出てきます.
f(4)=2×4=8
という感じです.

 さて,続いてこのグラフも描いてみました.文章では表現しずらいので省略します.

 次回は関数のうち,1次関数と2次関数を復習します.

経済学A 第2回(9/27)

 ちょっと締め切りに終われてて更新が遅れてます・・・.さて,今回は,様々な経済学的な考え方を説明しました.

【授業の内容】
 まず課題であった「ダイヤモンドはなぜ高いのか?」を考えてみました.皆さんからも意見を聞きましたが,その過程で,需要と供給という言葉が出てきました.需要とは,消費者がある財(商品やサービスの総称)を欲しがる気持ちのことです.供給とは,生産者(企業)による生産そのものです.
 結論は,ダイヤモンドは供給よりも需要の方が大きいために,価格が高くなります.需要が大きくても,それより供給が多い場合は価格は安く(あるいはタダに)なります.例として,空気や水がありますね.価格は需要と供給,どちらか一方だけで決まるものではなく,両者のバランスで決まるということを覚えておきましょう.今回の授業の最後もこの考え方を応用しましたね.

 続いて,「大学進学は得なのか?」を説明しました.前回同様,それぞれの選択肢のメリットとデメリットを考え,それらを比較します.金銭面に限って言うと,大学進学は将来もらえる賃金が高い反面,高い学費を払わなければなりません.高卒として働く場合は,賃金が比較的低いというデメリットがあるものの,大卒よりも4年も早く働くことができます.
 ここでは機会費用という概念を説明しました.機会費用とは,ある選択肢を選んだことにより,選択を放棄した次善の選択肢から得られるもののことです.今回の例では,大学進学は,高卒として18-22歳の4年間に働いて賃金を受け取る機会を捨てることになります.つまり,大学進学にかかる費用には学費だけでなく,その4年間に受け取れたであろう所得も含めるべきなのです.この考え方は,聞いてみれば当たり前ですが,普段なかなか明確に意識できないことが多いのではないでしょうか.

 最後に,「どんな企業で働くと高い給料がもらえるのか?」を考えました.実はこれは,「なぜダイヤモンドは高い?」の結論が応用できます.ダイヤが高い理由は供給よりも需要が大きいことによる,ということでした.であるとすると,皆さんが労働力を売る時に高い値段で売るためには(高い給料をもらうためには),供給よりも需要が高い労働力を売れば良いのです.つまり欲しがっている企業は多いが,その能力を持っている学生は少ない,そんな学生になる必要があります.皆さんは大学に進学し,これから専門的な学習をしていくわけですが,企業にはどんな能力が求められているのか,という視点を持って勉強するのも面白いのではないでしょうか.

 さて次回は(といっても明日だけど・・・),経済の大まかな仕組みについて説明します.経済はどんな風に成り立っているのか,政策が皆さんの生活にどんな影響が出るのかがわかるようになるはずです.

【重要なキーワード】
・需要と供給
・機会費用