2011年11月26日土曜日

経済学A 第8回(11/15)

今回と次回は株式を含めた資産運用の基礎について説明します.とはいえ,今回は僕が説明した内容がどのように株とつながるのかわかりにくかったかもしれませんね.


【授業の内容】
 まず,今のお金と未来のお金の関係を考えました.時間がずれるとお金をどのように評価して良いのかわからなくなりそうですね.しかし,利子率で考えてみるとはっきりわかるようになります.
 今現在の100万円は銀行などに預けておけば未来(例えば1年後)には増えますね.それを105万円であるとすれば,現在の100万円と1年後の105万円が同じ価値ということになりますね.現在の100万円が未来になるに従って増えていくというのはみんなイメージしやすいでしょう.でもその逆はなかなか考えた機会はないでしょうね.現在の100万円と1年後の105万円が同じ価値なら,1年後の105万円の現在の価値は100万円ということになりますね.つまり未来のお金を現在の価値に直す場合は,少し減ってしまうのです.これを割引現在価値と呼びます.利子をつける,そして割り引く,それぞれの計算をしてみましたね.
 続いて,期待値の説明をしました.期待値は未来の平均値と考えるとよいでしょうね.確率的にどれぐらいの結果になるのかを計算したものです.計算方法は,結果とそれが起こる確率をかけ合わせたものを,すべての結果について足しあわせたものです.例としてサイコロを1回振った時に出る目の期待値は,1×(1/6)+2×(1/6)+…+6×(1/6)=7/2=3.5となります.
 さらにリスクの説明をしました.リスクとは,皆さんがイメージする「危険」とはあまり関係ありません.正確には結果のばらつきの大きさのことです.統計学の言葉で言えば「分散」あるいは「標準偏差」の大きさのことです.
 この期待値とリスクは次回の内容に大きく関わってきます.

 最後にリスクへの対処を説明しました.
 リスクへの対処の王道は「卵は分けて持て」.つまり資産を分散させることです.皆さんがすべての資産をある1種類の株に投資すると,その企業に不祥事やトラブルが発生して倒産の危機が訪れたら,皆さんは無一文になってしまうかもしれません.そのため,その企業の株価が下落したら,逆に株価が上昇する企業の株も持つべきでしょう.これをリスクヘッジと呼びます.

経済学A 第7回(11/8)

今回のテーマは年金です.皆さんの人生で避けて通れない話題なので,きちんと理解しておきましょう.

【授業の内容】
 まず言っておきますが,この授業の目的は年金の具体的な話ではありません.「どんな年金に加入するのか?」,「いくら払うのか?」,「いつからもらえるか?」,「どれぐらいもらえるか?」という話は,社会に出ると知る機会はいくらでもあります.
 この授業ではむしろ大枠を理解してもらうことを目的としています.つまり「社会保障とは何か?」,「年金とはどのような制度なのか?」,「賦課方式と積立方式はどのように違うのか?」を理解することです.ただし,20歳になると強制的に加入するシステムなので,直近の話として「在学中はどうするべきか?」については具体的に説明しましたね.

 まず社会保障とは何かですが,大雑把に言うと,困っている人を社会全体で助けるシステムと思って良いでしょう.年金もかつては存在しませんでした(全国民が年金に加入することになったのは1961年のことです).「それまでは老人は生きていけなかったのか?」というと,もちろんそんなことはなく,家族あるいは所属する共同体が老人を養っていました.しかし,近代になり核家族化が進み,一人暮らしの老人も増えてきました.そのため,年金などの公的な社会保障システムにより経済的・社会的弱者を救済する必要が出てきたのです.
 社会保障のやり方は2種類あります.保険的方法と扶助的方法です.年金は前者です.というのも,我々は「年金」と呼んでいますが,正確には「国民年金保険」と言います.この他,保険的方法による社会保障の例としては,健康保険,介護保険,失業保険などがあります.いずれも,保険料を支払った人だけが利用できます.つまり受益者負担なのです.一方の扶助的方法の例としては,児童福祉,生活保護,災害援助などがあります.こちらは保険料を支払う必要はなく,(救済すべき人であると認定されれば)誰もが利用できます.年金も社会保障の1つであると考えれば,扶助的方法,つまり保険料収入に頼らず,すべて税金から賄うべきであると考えることもできます.実際,消費税率を上げて社会保障のための目的税にすべきだという意見は以前からあります.
 このように年金保険とは,保険料(+国庫負担)として集めたお金を,高齢者に年金として給付する仕組みになっています.ただ,この保険料の徴収と給付のやり方は,2つのパターンに分けられます.1つは積立方式,もう1つは賦課方式です.
 積立方式とは,積立貯金のように,各自が保険料を将来の自分のために積み立て,老後に給付を受けるというものです.一方の賦課方式は,現役世代が払った保険料をその時代の高齢者にそのまま給付するというものです.
 前者は少子高齢化の影響を受けませんが,デメリットとしてインフレに弱いという特徴があります.わずかなインフレも年金のように,納付から給付まで長期に渡る場合では大きな影響を受けます.そのため積立方式はあまり年金向けとは言えません.また積立方式なら,政府に頼らずとも民間の金融機関で同じサービスを受けることができるので,わざわざ政府がやる必要性は少ないでしょう.
 後者の賦課方式は,インフレの影響を受けませんが,デメリットとして少子高齢化に弱いという特徴があります.そのため,現在の日本のように急速な少子高齢化が進む状況では,現役世代の負担を大きく,もしくは給付を少なくせざるをえません.
 後半は少しですが,具体的な話もしました.まず,年金は2階建てになっていることから説明しました.1階部分には誰もが加入しなければならない国民基礎年金部分があり,その上に,職業によって異なる2階部分の年金(厚生年金,共済年金,国民年金基金など)があります.
 1階部分は全国民が共通した条件ですが,2階部分は収入などにより保険料および受け取ることができる年金額も様々です.まぁこの辺りは就職してからしっかり聞いてください.
 最後に世代間不公平の話もしました,またその背景には,政治家にとって若者よりも高齢者向けの政策をしたほうが合理的であることも説明しました.高齢者に嫌われてでも若者向けの政策(あるいは世代間で公平な政策)を選ぶインセンティブが政治家にはありません.なぜなら若い人は人数としても比較的少ない上に,選挙にもあまり行かないからです.そのためか,現在の年金システムは現在の高齢者世代にとっては払った以上にしっかり給付を受け取れますが,皆さん(僕も)がどれだけ払うかはある程度計算できますが,どれぐらい受け取れるかは不透明です.どう考えても将来財源は不足するので,年金の支給開始年齢を遅らせるか,あるいは支給額を減らすか,またはその両方になるでしょうね.

 このように年金の仕組みを理解した上で,年金に入るべきかどうかを考えてみましょう.まだ判断できない,という人も,とりあえずは20歳になったら学生納付特例制度を使って,払う意思があることを示しておきましょう.実際に払うかどうかは,就職してからでも考えましょうね.

経済数学入門 第7回(11/14)

今回が中間試験前最後の授業です.最大化と最小化の説明をしました.また偏微分についても説明しました.

【授業の内容】
 今回の中心は最大化・最小化問題です.経済学ではしばしば出くわす問題なのですが,今回は公務員試験の専門試験に出てくるタイプまでを取り上げました.経済学の大学院に行こうと思ったら,もうちょっとだけ数学の知識が必要ですが,公務員試験なら国家一種でもこの程度です.

 さて,最大化・最小化問題を見たら,
1.まずはとにかく目的と制約をはっきり見分けましょう.
 どれを最大化・最小化することが目的なのか,そして最大化・最小化を妨げる制約は何かを確認するのです.ここがいい加減だと問題が解けません.
 例えば僕が寝ることが大好きなら,睡眠時間の最大化が目的となるでしょう.しかし,1日は24時間しかない,あるいはずっと寝てるとクビになってしまう,などが制約です.

2.続いて変数を減らそう.
 制約の式を変形させて,ある変数(例:y)を他の変数(例:x)で表現します.例えば,2x+y=10という制約があったとすれば,y=10-2xと変形します.これにより,yの代わりに10-2xを使うことができるのです.なぜこんなことをするのかと言うと,数学というのは(経済学も一緒だけど),変数が1つ増えると飛躍的に問題がややこしくなるからです.そのため,上記のような変形をして,使う変数がxだけで済むようにしたいのです.

3.制約の式を目的の式に代入しよう.
 2.である変数を他の変数で表現する式が得られました.その式を目的の式に代入します.これにより,多変数だった目的の式も,さっぱりとした1変数だけの式に変わります.経済数学入門の授業やミクロ経済学の授業,および公務員試験などでは,この代入により,目的の式が1変数の2次関数となることがほとんどです.こうなれば後は簡単.2次関数の最大化や最小化はこれまでにやってきましたね.グラフを描いて,最大,あるいは最小となる点(頂点や底)を見つければ良いだけです.

4.最後に
 出てきた値を2.で導いた式に代入すると(元々の制約の式でも可),もう1つの答えも出てきます.

 学部で出くわすほとんどの最大化・最小化問題は上記の手順で解けます.

 おまけに偏微分も説明しました.偏微分は2変数以上の関数において微分する方法です.これまでの微分は1変数の関数における微分でした.偏微分のやりかたは,ある変数で偏微分するときは,他の変数をただの数字(係数)であると扱ってやって,普通に微分するだけです.計算自体は簡単です.
 さて,その意味は,となるとなかなかややこしいところです.大雑把に言うと,他の変数が変化せず一定であるとした上で,ある変数について微分するということなんですが,わかりにくいですね.具体的なイメージとして眉山の頂上を求める話もしたのですが,理解できたでしょうか?

2011年11月11日金曜日

総合政策演習BⅠ 第7回(11/9)

今回はワルラスの法則と外部性でした.小テストはパレート改善でした.

【授業の内容】
 前回グダグダだったワルラスの法則ですが,今後の時間的にも余裕があるので,実際にお菓子を使ってワルラスの法則を実験してみました.2チームに2種類のお菓子を配分し,お菓子間の相対価格(交換条件)を提示し,超過需要と価格の積の和が0になることを体感してもらいました.どうなんんでしょう?わかりやすかったのか,わかりにくいのか?

 後半は外部性ですが,こちらは覚えるだけですし,そんなに難しいところはないかもしれませんね.

ミクロ経済学ベイシックⅡ 第7回(11/9)

今回は独占的競争の後,外部性の説明をしました.

【授業の内容】
 独占的競争とは売り手の数が多数の場合に,各企業がいかにして利潤を得るかを説明するものです.売り手が多数の場合,同質的な財を生産していては利潤は出ません.なぜなら似た様な財を多数の企業が売っていれば,消費者は価格が最も低い企業の財を選ぶため,結果として価格の値下げ合戦になってしまうからです.それは前期に学んだ内容ですね.そのため,利潤の最大化を目的とする企業は財を差別化し,一時的な独占状態を築こうとします.缶コーヒーのノベルティグッズなども差別化の一例でしょう.またユニクロが暖かい下着(?)などを販売するのも差別化ですね.


 しかしこの独占状態は永遠ではありません.なぜなら新規参入が可能なので,1社が儲けているとわかれば,どんどん他の企業が参入して同じような財を販売し始めるからです.これにより長期的には完全競争市場となり,どの企業も利潤を得られません.ユニクロの下着も1年も経たないうちに,似た様な商品が他の企業から販売されました.

 このように独占的競争においては利潤をだすためには常に新たな差別化をしなければなりません.ファッション業界で毎年新たな流行が生まれ,あっという間に廃れていくのは,上記のような企業の論理が背景にあるのかもしれませんね.

 さて,独占市場はこれで終りですが,売り手の数により,完全独占,複占,寡占,独占的競争と4パターンに分かれます.それぞれの違いを確認しておきましょうね.来週の中間テストの範囲はここまでです.

 後半は外部性です.外部性とはある経済主体による経済活動が,それとは無関係の第3者に与えるなんらかの影響のことです.このような市場の失敗が起こると,最適な資源配分が実現されません.そのため何らかの対策が必要になります.外部性の典型例としては公害や環境破壊が存在します.例えば,先進国がこれまでに100年以上に渡って消費してきた石油燃料のせいで地球温暖化,そして海面の上昇が進んだとすると,海面上昇により国土が小さくなってしまい,大きな被害を受けているツバル共和国のような国にとってはまさにとばっちりです.これが外部性です.外部性は第3者に悪い影響を与える場合だけでなく,良い影響を与える場合もあります.前者は外部不経済(あるいは負の外部性),後者は外部経済(あるいは正の外部性)と呼ばれます.
 また第3者に与える影響が市場を通じたものか,そうでないのか,によって金銭的外部性技術的外部性,というように区別されることもあります.

 良い外部性,つまり外部経済の例としては教育があります.例えば皆さんが受けている大学教育について考えてみると,大学教育は学生(というより学生の保護者?)と大学法人との間の取引です.保護者は学費を支払い,大学は教育サービスを提供します.
 さて保護者(と学生)と大学は取引の関係者なので内部ですが,この取引は外部にも影響を与えています.例えば総合政策学部の卒業生はある程度の法律や経済などの知識を持っているでしょうから,卒業生を雇う企業にとってはそれらの知識を教える必要がありません.企業にとっては人材育成コストがかからないので,大学教育は企業に外部経済を与えていると捉えることができます.

 余談ですが,大学などの高等教育が上記のような効果,つまり労働者としての価値を高めているかどうかについては経済学者の中でもコンセンサスはありません.「高等教育が人的資本(労働者としての能力)を高めるんだ!」という人もいますし,「企業は学歴を能力のシグナルとして使っているだけで,大学で学ぶことに期待などしていないよ」という人もいます.どっちでしょうね?大学関係者としては前者であると期待したいところですが….
 さて,このような教育は学生自身にとって有益であるだけでなく(大卒は給料が高い),企業にとっても有益なので,社会全体から見るとより有益です.そのため,政府がお金を出して教育費を安くして,より多くの人が大学で教育を受けられるようにすることが合理的です.また実際にそれは実現されています.旧国公立大学(現在は独立行政法人ですが)には国からの援助があるので学費は安く設定されていますし,私立大学にも私学助成金という形で(旧国公立大ほどではないにしても)援助されているので,実際にかかっているコストよりも学費は低いはずです.
 まとめると,外部経済がある場合は,社会的収益率の方が私的収益率よりも高いので,社会的に見て最適な水準よりも少なく(過小に)生産されます.そのため政府などが援助する必要があります.
 また逆に外部不経済がある場合は,社会的限界費用の方が私的収益率よりも高いので,社会的に見て最適な水準よりも多く(過剰に)生産されます.そのため政府によるなんらかの規制が必要です.

 さてこのような外部性への対処ですが,3つの方法があります.
1.課税・補助金(ピグー税)
 まず課税や補助金により最適な生産量を実現するという方法があります.導入が検討される炭素税もこれにあたります.またタバコ税もそうなのかもしれませんね.
2.内部化
 外部に効果が漏れるのが問題なら,漏らさないようにしようというのが,この内部化です.授業では駅ビルの建設によって,駅の集客能力を外に漏らさないようにすることを説明しました.
3.交渉
 内部と外部で交渉することでも,最適な資源配分が達成できることもあります.ただしその条件は「取引コストがほとんどかからないこと」です.これはコースの定理と呼ばれています.これについてはテキストに詳しい説明もあります.

経済数学入門 第6回(11/7)

今回は微分の続きです.

【授業の内容】
 前回微分のやり方と意味を説明しました.さて,ではこの微分をどのような時に使うのでしょう.微分を使うと,これまで計算が面倒だった2次関数の放物線の頂点や底が簡単に求められます.
 頂点や底というのは,傾きが負から正に,あるいは正から負に変わるポイントですね.そしてその点はちょうど傾きが0となる点です.さて,元の放物線を微分すると傾きが得られます.「微分=傾き」と覚えておきましょうね.
 このことから,2次関数を微分して,それを0と置くことで頂点(か底)のx座標が出てきます.さらにそのxの値を元の2次関数に代入すると頂点(か底)のy座標も得られます.
 これまでは平方完成をしていたので計算が面倒で,計算ミスも多いのですが,微分の方がはるかに計算が簡単です.

 このやり方は3次関数以上の場合も有効です.授業では3次関数のグラフの描き方も説明しました.2次関数と同様に,
①元の関数を微分して0と置く.
②それを解けば(3次関数の場合は2次方程式になる),極値のx座標が2つ(1つや0の場合もある)出てきます.
③得られたxを元の関数に代入するとそれぞれの極値に対応したy座標が得られます.
④2つの極値を元に増減表を書きましょう.

 さて,11月21日は中間テストです.しっかり復習して準備してくださいね.

総合政策演習BⅠ 第6回(11/2)

今回はエッジワースボックスです.小テストは完全独占の余剰分析でした.

【授業の内容】
 エッジワースボックスとは,2人の間での2財の資源配分について示したものです.2人の無差別曲線を組み合わせたものなんですが,文章では説明に限界がありますね.
 ともかく,パレート改善について確認しましょう.パレート改善とは他者の効用を下げることなく,ある人の効用が改善するような変化のことです.また,これ以上パレート改善できない点をパレート最適と呼びます.さらに,このパレート最適となる点を集めた曲線を契約曲線と呼んでします.

 さて,このエッジワースボックスに相対価格を導入すると,超過需要,超過供給が発生します.そうするとワルラス型メカニズムにより相対価格が調整され,均衡が実現します.

 また,ワルラスの法則について質問があったので,説明したのですがグダグダでした.そのため次週に持ち越しにしました.

ミクロ経済学ベイシックⅡ 第6回(11/2)

今回は独占市場のうち,複占,寡占について説明しました.

【授業の内容】
 前回も説明しましたが,複占は,2社が同時に生産量を決定する同時手番ゲームです.このゲームのナッシュ均衡をクールノー均衡と呼びます.
 さて,企業はどのように生産量を決めるのでしょうか.その決定方法は完全独占と同じく,限界収入=限界費用(MR=MC)です.解法は次の通り.
①MR=MC
 2社を企業A,Bとすれば,まず企業AについてMR=MCを作ります.この式を,企業Aの生産量について解けば,企業Aの最適な生産量がわかります.ただし,企業Bの生産量が未定なので,まだ具体的に決まるわけではありません.ここでわかるのは,企業Bの生産量がわかれば,それに応じて自分がどれだけ作るべきか,という最適反応がわかるのです.クールノー均衡がナッシュ均衡であるというのを実感するためには,ナッシュ均衡の混合戦略の計算方法を思い出してみましょう.
 同様に企業BについてMR=MCを作れば,企業Bの最適反応がわかります.
②最適反応の連立方程式
 ①で得られた両企業の最適反応を連立方程式として解きましょう.ここまで来て,ようやく両企業が具体的にどれだけ生産すべきかというクールノー均衡がわかります.

 続いて寡占です.寡占とは売り手の数が少数である市場です.例としては,ビール業界,携帯電話業界などがありそうですね.このような市場では企業の価格決定に次のような特徴がありそうです.
 例としてビール業界を考えましょう.この市場には5社のビール会社があるとします.財は同質的と仮定します(どの企業も同じようなビールを売っています).現状は,どの企業もビールを200円で売っているとします.もしここで,1社だけが値上げしたらどうなるでしょう.おそらく他の4社は値上げに追随せず傍観するでしょう.なぜなら他の4社にとっては今まで通りの値段で売れば,自然と売上が増えそうだからです.値上げした1社のビールに対する需要が落ち込み,その需要が他の4社に流れると考えられます.
 一方,1社が値下げした場合はどうなるでしょう.この場合は他の4社は値下げに追随するはずです.なぜなら値下げしなかったら,値下げした1社のビールに対する需要が急増し,シェアを奪わるからです.よって全社が値下げに追随するので,先に値下げした1社にとっては残念な結果となります.なぜなら,ライバル企業が追随しないで今まで通り200円で売ってくれれば,需要が急増し,儲かるはずですが,ライバルも値下げしたので,思ったより需要が増えないからです.
 結果,需要曲線は現状を境として,屈折した形になり,もちろんそれに応じて限界収入も2段階に屈折した形になります.寡占市場でも企業はMR=MCに従って生産量を確定するので,限界費用が多少増減しても生産量に変化が出にくいという特徴を持つことになります.

経済数学入門 第5回(10/27)

今回は指数の続きと微分です.

【授業の内容】
 まず,前回やり残したn進数の説明です.n進数で表記された数を10進法に直す方法と,10進法で表記された数をn進法に直す方法を紹介しました.別にn進数は経済学で使うわけではありませんが,n進数は公務員試験でも民間企業の筆記試験でも出てきます.

 さて,メインの微分です.微分の意味は後回しにし,とりあえず微分の計算方法を説明しました.微分の方法は次の通り.
①変数の右肩についている数(指数)を係数にかける.
②指数から1を引く.
 これだけです.例としてxの3乗を微分すると,①3を前にもってきて3xになります.②3乗から1を引いて2乗にする.つまり3xの2乗です.このブログでは数式がかけないから説明しにくいな・・・.

 続いて微分の意味です.微分すると,元の関数の傾きが出ます.傾きとは,横軸(x軸)に+1移動すると,縦軸(y軸)にどれだけ移動するか,という割合を示しています.なぜ傾きを出さなければいけないのか,というと傾きは経済学的に重要な意味を持っているのです.
 例えば,ある人はクッキーを食べると幸せになるとします.1つ,2つと食べる量を増やすと,それに応じて幸せも増えるでしょうね.その幸せの変化量は正に傾きですよね.少し消費量を増やすと,どれだけ幸せが増えるのか,コストとそのリターンを示していますね.最初の1つを食べて幸せが10増えたとします.次の1つを食べて幸せが7増えたとしましょう.これは傾きが10から7に下がったことを示していますね.傾きは下がりましたが2こ目を食べても幸せは増えます.まだまだ食べ続けると幸せは増えるでしょうが,その増え幅(傾き)はどんどん小さくなりますね.そしていつかはこれ以上食べると幸せが下がるという,言い換えれば幸せが最大となるポイントがあるはずです.これまでは傾きはプラスですが,この点を越えると傾きはマイナスになりますね.つまり傾きを利用して幸せが最大になるポイントがわかるのです.

 次回も微分の意味と利用方法を説明します.

総合政策演習D 第5回(10/27)

今回で僕の担当は終りですが,そのまとめとしてテストをしっかりしました.

【授業の内容】
 まず,これまでの授業で説明していなかった「物の流れと比率」,「装置と回路」について説明しました.どちらも高校までの数学ではあまり学ばなかったテーマなので,なかなかとっつきにくいかもしれませんが,どちらも実際に数値例でやってみれば理解できるようになると思います.

 さて,授業の後半の40分を使い,しっかりテストをしました.30点満点のテストでしたが,平均点は20点弱ぐらいですかね.これまでにやった問題もあったので,7割ぐらいは取って欲しいところですけどね.

 僕の担当は終りなので,ゼミの学生以外とはなかなか話す機会もありませんが,皆さん就活がんばってくださいね.何度も言いましたが,スタートダッシュで失敗するとズルズル行ってしまいますよ.

総合政策演習BⅠ 第5回(10/26)

今回は税金と余剰分析です.小テストは価格メカニズムでした.

【授業の内容】
 まず税金ですが,税金の種類は一括税,従量税,従価税に分類できます.
 一括税は企業の生産活動に関係なく,企業に一定の税金が課されます.総費用に課税額がそのまま加わります.
 従量税は生産量に応じて課税されるものです.総費用関数に,生産量×課税額を加える形で表現されます.現実の世界ではタバコ税や酒税が従量税ですね.
 最後の従価税ですが,これは価格の一定割合が税として課されます.限界費用に(1+税率)をかけ合わせたものとして表現されます.

 さて,これらを用いて余剰分析の問題をいくつか解きました.まず社会的余剰の内訳ですが,次のようになります.
 社会的余剰=消費者余剰+生産者余剰+税収-補助金
 もちろん問題によって税収や補助金は出てこないこともあります.
 また,課税や数量制限などの政府による介入や,独占などの利用により社会的余剰が小さくなってしまうことがありますが,それを死荷重と呼びます.

 余剰分析は次週に続きます.

ミクロ経済学ベイシックⅡ 第5回(10/26)

今回も独占市場です.完全独占と複占の話をしました.

【授業の内容】
 完全独占の続きから始めました.完全独占市場における企業は,利潤を最大にするため,限界収入と限界費用が等しくなるように生産量を決定します.完全競争市場における社会的余剰と,完全独占市場における社会的余剰を比較すれば,なぜ完全独占が望ましくないのかがわかります.つまり死荷重が発生しているのです.
 完全競争市場と比較すると,完全独占市場では生産量が少なくなり,価格は高くなります.そのため消費者にとっては良い状況ではありません.ここで政府が課税をするとどうなるでしょう.授業では従量税(生産量に応じて課税する)を課すとどうなるかを確認しました.ちなみに従量税は次の例ように表記されます(財1単位あたり20の課税をするとする).
 課税前の総費用関数: TC=x^2+10x+100 (^2は二乗を示す)
 課税後の総費用関数: TC=x^2+10x+100+20x
 赤字で表現した部分が課税によるコストの増加を示しています.

 完全独占市場に続いて複占について説明しました.複占とは売り手が2社のみである市場のことです.
 ここでゲーム理論について復習しましょう.ゲーム理論では,プレイヤーが同時に行動(戦略)を決定するゲームを同時手番ゲームと呼びます.以前の授業で,同時手番ゲームの解法としてナッシュ均衡を説明しました.これは,各プレイヤーの選ぶ戦略が他のプレイヤーの戦略に対する最適反応である状況のことでした.
 複占市場に分析にはこのゲーム理論の考えを使います.複占市場が同時手番ゲームであるとして生産量を決める状況でナッシュ均衡を導き出します.この場合のナッシュ均衡を特にクールノー均衡(あるいはクールノー=ナッシュ均衡)と呼びます.

 複占における最適反応を導くためには偏微分の知識が必要です.そのため,経済数学入門でもやりましたが偏微分を復習しました.

 複占の計算の途中で終わったので,複占については次回のブログに書きます.