2008年12月26日金曜日

経済学Ⅰ 第14回

 今回はIS・LM分析の基礎の前編です.IS・LMの説明と同時にこれまでの復習を兼ねています.

【授業の内容】
 前半は,ちょうど前日にFRBが利下げをし,ゼロ金利政策を採るというニュースが流れたため,これまで説明してきた金融の知識を使って,このニュースを解説しました.これまで学んできたことは確かに現実の世界を反映しているということを理解してもらうためでした.
 後半はIS曲線,つまり財市場が均衡するような利子率とGDPの組合せを導き出すための下準備でした.三面等価の原則,有効需要の原理,需要の内訳など基礎的な事柄を確認しました.本当はIS曲線を描くところまで行きたかったのですが,前半に時間を割きすぎたため,来年に持ち越しです.

 今回は小テストをしました.「日銀が利下げをすると何がおきるか?」というものです.多くの人はきちんとした答えを書いていました.

総合政策演習B1② 第13回

 今回は市場理論と余剰分析についての復習でした.

【授業の内容】
 というわけで,復習なので取り立てて説明することもありません.坦々と問題をこなしました.
 小テストは完全独占と従量税でした.

2008年12月25日木曜日

基礎総合演習B 第12回

 今回は皆さんに「どんな企業に就職したいか?」を考えてもらいました.皆さんにとって企業とはCMで見るもの,商品を売ってる所,というイメージだと思います.世の中には実に多くの知られざる企業が存在します.

【授業の内容】
 というわけで,今回は1人1人にどんな企業に就職したいか,その理由はなぜかを問いかけました.「これまでやってきた話とどんな関係があるんだ?」と思ったかもしれませんが,就職することと株を買うことは少し共通点があることに気づいたと思います.

 また最後に,消費者向けの企業と企業向けの企業が存在することを指摘しました.前者は我々にとって身近な企業(トヨタ,キリンビール,ユニクロ)なので大学生は就職したがりますが,企業向けの企業の中にも優良企業は多数存在します.今回配った生涯賃金ランキングの中にも聞いたことのない企業が多く掲載されていたと思います.キーエンスやアドバンテストは,就活を始めるとようやくわかりますが,社会人にとってはかなり知名度の高い企業です.

経済学A 第12回

 今回はちょうど今,話題になっている日本の財政と税について説明しました.2009年度の歳出が過去最大になる,条件付きで2011年には消費税が10%になる,など,ニュースを見てると財政の話が非常によく出てきます.果たして消費税の税率アップは皆さんの将来にどのような影響を及ぼすのでしょう…?

【授業の内容】
 まずは,国の財政を家計に置き換えて説明しました.こうすると,財政がどれだけ大変な状況にあるかイメージできると思います.月収40万円の家計と考えると,毎月毎月借金が18万円ずつ増えていて,借金の総額が4600万円のようなものです.ただし,普通の家計ならとっくに破産ですが,日本が破産という話は聞きませんね.どうしてでしょう?
 破産しないとしても,この財政赤字はよろしくないので,政府としても借金を減らそうという方向には進んでいます.それが「骨太の方針2006」です.その中身は2011年までにプライマリーバランスを黒字化することだったのですが,昨今の世界的な金融恐慌のために,骨太の方針を転換するのではないかと話題になっています.将来のことを考えて赤字を減らすべきなのか?それとも目の前の不景気を打開すべく政府支出を増やすべきなのか(赤字は増えます)?
 そういう議論のために,ここで大きな政府と小さな政府について復習しました.市場への介入について両者の意見は異なります.市場の不完全性(市場の失敗)を問題視して積極的に介入する大きな政府派と,市場の効率性を重視し最低限の介入しか行わない小さな政府派,これは負担は多いけれど面倒を見てくれる政府と,負担は軽いけれど自己責任を唱える政府という選択にもつながる話です.
 さて続いて,2008年度の当初予算のグラフを参考に,国の収入(歳入)と支出(歳出)の内訳を確認しました.日本政府は何にお金を使っているのでしょう?ニュースでは公務員が無駄遣いしているという話を聞きますが本当なのでしょうか?
 歳出で最も大きな項目は社会保障費でした.社会保障とは,年金,健康保険,介護保険など,困った人をみんなで助ける仕組みのことです.少子高齢化が進む現状では,なかなか社会保障費を削るのは簡単ではないでしょう.
 一方の歳入において最も重要な,税金というのはどんな性質を持っているのでしょう.
 まず,3つの点から税金を分類しました.国税と地方税,直接税と間接税,一般税と目的税です.近年の日本では直接税を減らして間接税を増やす方向に進んでいるようですが,果たしてなぜなのでしょう?またどのような未来になるのでしょうか?「税金はどれも一緒だ!」という乱暴なくくりではなく,それぞれの税の特徴を見てみましょう. 税を評価するための概念として,公平性と公正性を紹介しました.どちらもよく聞く言葉ですが,厳密にそれぞれの意味を確認しました.その上で改めて,直接税の代表である所得税と,間接税の代表である消費税の税率変更が持つ意味を説明しました.

 今後もニュースでは財政の話が多く採り上げられると思います.日本の将来の道筋を占う上でも,少しだけ関心を持つこと(持ち続けること)を意識してください.

ミクロ経済学ベイシックⅡ 第14回

 通常の講義の最終日にテストを行うため,今回でミクロの講義は終了です.その分,1回講義回数が減ってしまうので,補講を行います.(最後に説明します)

【授業の内容】
 前回に引き続き国際貿易のミクロ理論を説明しました.

 前回は2国間の自由貿易によりパレート改善が達成できることを,比較生産費説で説明しましたが,今回は余剰分析で自由貿易のメリットを確認しました.鎖国時に比べ,自由貿易を行うことで,消費者余剰,生産者余剰,社会的余剰がどのように変化するかを図で確認しました.また,自由貿易により生産者余剰が減少することから,現実の世界ではしばしば関税が導入されます.この関税の効果も併せて確認しました.テストでも余剰が計算できるようにしてくださいね.
 また今回の話はすべて小国の仮定と呼ばれる前提条件に基づいて説明したので,その仮定についても要確認ですよ.

 後半は,講義のまとめとして,完全競争市場と不完全競争市場の比較を行いました.またミクロ経済学を現実にどう活かすかの具体例として,就職活動を採り上げました.就活はまさに情報の非対称性の分析対象と言えます.皆さんが今後の人生でミクロ経済学の知識を活用することを期待しています.

【補講について】
 補講は1月14日(水,ただし金曜日の授業)の5限に23502教室で行います.内容はこれまでの復習です.教材として,2007年度の中間テスト,期末テストを用います.HPからダウンロードできるので,各自でわからない所を確認しておきましょう.

経済数学入門 第13回

 更新がかなり遅れました.失礼.
 今回は確率と統計の基礎を説明しました.

【授業の内容】
 まず前回の補足としてΣの説明をしました.Σは数列のある項からある項までを足し合わせるという記号なので,前回のSに似ていますね.

 さて本題ですが,確率と統計は社会科学を学ぶ上でも必須と言って良いと思います.社会科学には細分化された様々な分野が含まれますが,その多くで統計的なデータが使われます.そんなに詳しく知る必要はありませんが,ある程度は,用語の意味を把握する必要はあります.

 では,用語の説明ですが,今回出てきた主な用語は以下の通りです.
事象,試行,和事象,積事象,期待値,平均値,分散,標準偏差

 和と積の違い,平均値と期待値の違いは必ず理解しなければなりません.対して分散と標準偏差は,どちらもバラつきの大きさを示すんだ,ぐらいで構わないでしょう.どうせ定義はまた忘れます….

 先日,4年生の優秀卒業研究発表会がありましたが,データを用いた発表は非常に説得力があります.まぁその分だけ,データには騙されやすいので注意も必要ですが….授業では,喫煙率と死亡率のデータを使って皆さんを騙すにはどうすれば良いか,その裏には何が隠されているかを解説しました.

2008年12月11日木曜日

【お知らせ】JICA職員採用説明会

 JICA四国さんから平成22年度職員採用説明会(キャリアセミナー)についてのお知らせが届きました.

日時:12月13日(土)14:00-16:00(受付13:30-)
場所:JICA四国支部(高松)
 参加希望者は事前にメールあるいはFAXでの連絡が必要です.

 時間的余裕はほとんどありません.興味のある人は早急に.
http://www.jica.go.jp/shikoku/recruit/index.html

経済学Ⅰ 第13回

 今日は前回の財政に関連して,税について説明しました.

【授業の内容】
 財政赤字の解消のためには,税収を増やすか,歳出を減らすしかないわけですが(実質的に減らすためにはインフレを起こすというのもありますが…),誰しも税金が増えるのは嬉しくないでしょう.さて,この税金というのはどんな性質を持っているのでしょう.

 まず,3つの点から税金を分類しました.国税と地方税,直接税と間接税,一般税と目的税です.
 近年の日本では直接税を減らして間接税を増やす方向に進んでいるようですが,果たしてなぜなのでしょう?またどのような未来になるのでしょうか?「税金はどれも一緒だ!」という乱暴なくくりではなく,それぞれの税の特徴を見てみましょう.

 税を評価するための概念として,公平性と公正性を紹介しました.どちらもよく聞く言葉ですが,厳密にそれぞれの意味を確認しました.その上で改めて,直接税の代表である所得税と,間接税の代表である消費税の税率変更が持つ意味を説明しました.

 最後に税負担の軽重を測る目安として国民負担率,潜在的国民負担率を紹介し,先進諸国で比較しました.日本は比較的,国民負担率の低い,小さな政府であるようですね.当たり前ながら,長い目で見れば私たちが納めた税金以上のお金が政府から帰ってくるわけはありません.手厚い保障を政府に望むのであれば重い負担にも耐えなければならないのです.もちろん行政の無駄を省くことが期待されるのは言うまでもありませんが.

総合政策演習B1② 第12回

 今回から復習に入ります.というわけで,ゲーム理論と独占市場について復習しました.

【授業の内容】
 ゲーム理論,完全独占市場についての問題をいくつかこなしました.復習だけに特に記述することもありません….

 小テストは比較生産費説でした.

 来週は第4章を中心に復習します.

基礎総合演習B 第11回

 今回はコンビニ業界3社の今後について,各チームから発表してもらいました.

【授業の内容】
 コンビニ業界の中から,各チームが選んだ3社(ローソン,セブンイレブン,ファミリーマート)を採り上げ,それぞれの株価が上がるであろう根拠を説明してもらいました.
 発表から,3社ともそれぞれ独自の経営戦略,あるいは特色があることがわかりました.思っていたより各企業のカラーが対照的でしたし,僕自身も知らないこともいくつかありました.また,コンビニという学生にとって身近な企業であるだけに,学生の視点からの各企業像についても聞くことができました.
 欲を言えば,ディベート方式にしたかったのですが,そこまでには行きませんでしたね.

 というわけで僕も楽しめたし,みんなの発表もなかなか良かったので,業界を変えてもう一度発表してもらおうと思ったのですが,残念ながらみんなの不評をかったので(結構大変なのかな?),クリスマスプレゼント代わりに取り止めました.おかげで来週何をやるか考えなければなりません….

2008年12月10日水曜日

経済学A 第11回

 今回はちょっと趣向を変えて,現実というより,抽象的なテーマでした.抽象的であるということは,言い換えれば様々な例に応用可能であるはずです.駆け引きを学ぶことはなかなかないでしょうから,頭のトレーニングにもなったのではないでしょうか?


【授業の内容】
 今回は駆け引きの学問でもあるゲーム理論の入門編です.入門編ではありますが,そのエッセンスは充分に伝わったのではないでしょうか?

 まずは囚人のジレンマというプレイヤーが同時に戦略を決定するゲーム(同時手番ゲーム)を例に,ゲームとは何かを説明しました.ゲームとは複数のプレイヤーが存在し,あるプレイヤーの行動が他のプレイヤーに影響を及ぼすような状況のことです.囚人のジレンマゲームでも相手がどのような行動を取るかを予想しなければなりません.プレイヤーが選ぶことができる選択肢のことを戦略,またその結果にもたらされる状況を利得と呼びます.
 続いて,少しややこしくなった利得表で,戦略の逐次消去を学びました.自分が持つ戦略のうちで,使い途がないもの(正確に言うと,どんな状況においても,他のある戦略と比べて同等以下の結果しかもたらさないような戦略)をどんどん捨て去ることでした.

 さて,この戦略の逐次消去でも解けない問題もあります.そんな問題を解決してしまう考え方がナッシュ均衡です.ナッシュ均衡とは,「あるプレイヤー(A)の戦略が他のプレイヤー(B)の戦略に対する最適反応になっており,Bの戦略がAの戦略に対する最適反応になっているような戦略の組合せ」です.直感的に分かりやすく言えば,「お互い,これ以上相手の裏をかけないような状況」と言えます.
 立地ゲームはナッシュ均衡の考え方をつかむのに適当なゲームだと思います.

 最後に,時間の流れがあるゲーム(逐次手番ゲーム)の解き方を説明しました.後ろ向き帰納法と呼ぶのですが,その中身は一番最後に戦略を決定するプレイヤーの行動から順に,時間をさかのぼって戦略を決定していくことでした.

ミクロ経済学ベイシックⅡ 第13回

 今回と次回に渡ってミクロ貿易理論を説明します.

【授業の内容】
 まずリカードの比較生産費説を説明しました.1年次の経済系科目で聞いているようでしたので,なるべくコンパクトに説明しました.
 両国にそれぞれ絶対優位となる財が存在する場合,大方の予想どおりの結果となりました.つまり両国が互いに得意な財の生産に特化し,それを輸出しあうことで両国とも幸せになる(パレート改善)ことが可能でした.
 続いて一方の国に絶対優位となる財が偏っている場合を検証しました.つまり何の生産でも得意な国(A国)と,すべての財の生産において劣っている国(B国)の両国の貿易についてです.この場合,A国はすべての財の生産が得意だとしても,B国と比べると圧倒的に優位にある財もあれば,ほぼ一緒だけれど少しは優位にあるという財もあるでしょう.その場合,より得意な財の生産に特化します.逆にB国は苦手なものばかりだとしても,「まだ少しはマシかな?」という財もあるでしょうから,その財の生産に特化します.このように,「より得意だ」,あるいは「まだマシだ」という状態を比較優位と呼びます.A,B国はそれぞれ比較優位にある財の生産に特化し,それを輸出することで,今度も両国とも豊かになれます.これが貿易が持つ素晴らしい長所です.
 ただし,数値例では「良かった,良かった」で済みますが,現実の経済では特化することで血が流れます.つまり特化により生産量が増える企業もあれば,自由貿易の結果,生産量を減少させる(生産規模が縮小してしまう)企業があります.リストラや倒産が数字の裏には隠れています.そのため,リカードがこの比較生産費説を唱えて約200年が経ちますが,いまだに自由な貿易を妨げる障壁がいくつも残ったままです.

 最後に貿易三角形を紹介しました.生産可能性フロンティア,相対価格と無差別曲線から,その国の輸出,輸入がグラフ上の三角形で表現されました.

経済数学入門 第12回

 今回は数列について説明しました.
 数列は,経済学関係では金融について学ぶ上で必須の知識です.また,経済学以外でも,数字の羅列から法則性を見つけ出すことはSPIなどでも役立つことでしょう.

【授業の内容】
 まず等差数列から始めました.等差数列とは,1次関数のように,同じペースで数字が増え続け(あるいは減り続け)ていくような数字の列です.(細かい話をすると連続か離散かという違いはありますが…)例としては,5,8,11,14,17,20…という数字の列があります.
 等差数列がわかった後は,この等差数列の一般項(第何列目の場合も当てはまる項)を見つけました.先ほどの数列では,第1項(最初の数字,初項)と第2項との差は3です.第1項である5に(+3)を足すと第2項になり,つづいて第2項に同じく(+3)を足すと第3項になります.つまり,第3項は初項である5に,(+3)を2回足した数字です.この事を利用して,第n項を求めました.この例では(+3)ずつ足していますが,この数は公差と呼ばれます.
 続いて,このような等差数列の和(Sn)を求めました.これは,等差数列の最初の項と最後の項,そして第2項と最後から2番目の項,をそれぞれ足すと同じ数字になることから導き出せました.

 さて,後半は等比数列の一般項,そして和の導出方法を説明しました.等比数列とは,同じ割合で増え続けていく数字の列です.例えば1,2,4,8,16,32,…というのも等比数列です.この場合は初項が1であり,増加の割合は(×2)です.どんどん2倍し続けています.この増加(減少する場合もありますが)の割合を公比と呼びます.
 この等比数列は,銀行に預けたお金に利子が付いて増えていく過程を考える上で利用できます.銀行にお金を預けると,翌年には元本に一定割合(1+利子率)をかけたものになります.その翌年にはさらにもう一度(1+利子率)をかけたものになりますが,これは正に等比数列そのものです.
 最後にこの等比数列の和の出し方も説明しました.アンケートがあったので少々駆け足になりました.わかりにくかったという人は全学共通教育センターに来てください.説明します.

2008年12月8日月曜日

経済学Ⅰ 第12回

 今回と次回の2回に渡り,財政と税について説明します.

【授業の内容】
 今回は日本の財政について説明しました.日本の財政赤字については,皆さんもニュース等でなんとなく知っていることでしょう.果たして,日本は何にお金を使って,どれだけ赤字なのでしょう?

 まずは,国の財政を家計に置き換えて説明しました.こうすると,財政がどれだけ大変な状況にあるかイメージできると思います.月収40万円の家計と考えると,毎月毎月借金が18万円ずつ増えていて,借金の総額が4600万円のようなものです.ただし,普通の家計ならとっくに破産ですが,日本が破産という話は聞きませんね.どうしてでしょう?
 破産しないとしても,この財政赤字はよろしくないので,政府としても借金を減らそうという方向には進んでいます.それが「骨太の方針2006」です.その中身は2011年までにプライマリーバランスを黒字化することだったのですが,昨今の世界的な金融恐慌のために,骨太の方針を転換するのではないかと話題になっています.将来のことを考えて赤字を減らすべきなのか?それとも目の前の不景気を打開すべく政府支出を増やすべきなのか(赤字は増えます)?

 そういう議論のために,ここで大きな政府小さな政府について復習しました.市場への介入について両者の意見は異なります.市場の不完全性(市場の失敗)を問題視して積極的に介入する大きな政府派と,市場の効率性を重視し最低限の介入しか行わない小さな政府派,これは負担は多いけれど面倒を見てくれる政府と,負担は軽いけれど自己責任を唱える政府という選択にもつながる話です.

 さて続いて,2008年度の当初予算のグラフを参考に,国の収入(歳入)と支出(歳出)の内訳を確認しました.日本政府は何にお金を使っているのでしょう?ニュースでは公務員が無駄遣いしているという話を聞きますが本当なのでしょうか?
 歳出で最も大きな項目は社会保障費でした.社会保障とは,年金,健康保険,介護保険など,困った人をみんなで助ける仕組みのことです.少子高齢化が進む現状では,なかなか社会保障費を削るのは簡単ではないでしょう.
 歳入のうち税金については来週説明するものとして,公債金収入に着目しました.ちょうど今,冬の個人向け国債のCMがテレビで流れています.国債については金融政策の回でも説明しましたね.

 次回は税金について説明します.

総合政策演習B1② 第11回

 今回はミクロ貿易理論でした.久々に全員揃いましたね….

【授業の内容】
 ミクロ貿易理論ということで,リカードの比較生産費説と貿易三角形について説明しました.
 比較生産費説では,絶対優位と比較優位の区別が必要となります.貿易三角形は,一旦,図の見方が分かればワンパターンですね.しかし,生産可能性集合(生産可能性曲線)は初めて出てきたので要注意ですね.エッジワースボックスの時と同様に,直線の傾きが相対価格を表していますが,そろそろ慣れてきた頃かもしれませんね.

 小テストでは,費用逓減産業についての問題を出しました.

 来週からは復習に入ります.

2008年12月2日火曜日

基礎総合演習B 第10回

 今日は授業の代わりに4年生の優秀卒業研究候補の発表会に行きました.

 3年後にあんな発表ができるか不安になった人もいるようです.皆さんもぜひあの場で発表できるようにがんばってください.

経済学A 第10回

 前回に引き続き,貿易とグローバル化についてです.1週間空くと,やりづらいですね.

【授業の内容】
 まず,前回の復習をしました.前回,リカードの比較生産費説と呼ばれるものを説明しました.ポイントは,まったく同じ双子のような国同士でない限り,貿易をすることによって両国とも豊かになれる,というものでした.比較優位しかない場合の貿易は,わかりにくかったかもしれないので,今日,改めて説明しました.

 さて,このように貿易には大きなメリットがあるのですが,現実の世界では自由な貿易を妨げる動きがあるのは前回指摘したとおりです.関税,輸入割当などの障壁が存在します.
 しかし,もちろん自由貿易を進めていこうという動きもあります.WTOなどで,世界的な取り組みもありますし,個別の国による貿易協定もあります.授業は貿易協定をいくつか紹介しました.

 後半はグローバル化についてです.普段の授業とは異なり,いくつかの具体的なエピソードを紹介することで,グローバル化する世界に何が起きつつあるのかを伝えたかったのですが,伝わったでしょうか?
 僕の考える重要な点は,これまでのモノの貿易だけでなく,サービスの自由貿易が始まりつつあるということです.これまでは海外との競争をあまり意識していなかったのだけど,今後は(一部の)サービス業も,海外の企業との競争に晒されるでしょう.また,日本について言えば,どうやら外国人労働者の受け入れを増やす方向に,しかも単純労働の担い手を増やす方向にあるのではないかと思います.僕は前者は特に問題だとは思いませんが,後者は方向性を間違えていると感じます.

 さて,労働者が流入すると,あるいはサービス業が国際競争に晒されると何が起こるのか,かなり単純化した極端な例で考えてみました.結論として,日本人の賃金は下がる,ただし,どのような職業に就いているかによってその度合いは大きく異なることがわかりました.ここまで極端な結果にはならないにせよ,かなり高い確率でそちらの方向に進むのではないでしょうか.(ただし経済学者に限らず,未来予想というのはあまり当てにならないモノです…)

*追加12/3*
 授業で話した参考図書を忘れていました.
【参考図書】
トーマス・フリードマン(2006)「フラット化する世界㊤㊦」日本経済新聞社
ピエトラ・リボリ(2006)「あなたのTシャツはどこから来たのか?」東洋経済新報社ドン・タプスコット,アンソニー・ウィリアムズ(2007)「ウィキノミクス」日経BP社
梅田望夫(2006)「ウェブ進化論」ちくま新書
NHKスペシャル取材班(2007)「インドの衝撃」文藝春秋

2008年12月1日月曜日

ミクロ経済学ベイシックⅡ 第12回

 今日は前回に引き続きリスクです.特にリスクと効用の関係,そしてリスクの測定について説明しました.

【授業の内容】
 まず,皆さんがリスクについてどのようなタイプであるか調べてもらいました.収入と効用との関係から,リスク回避者,リスク中立的,リスク愛好者の3タイプに分かれました.
 リスク回避者とは,2つの選択肢があり,どちらを選んでも期待値が同じだとすればリスクが少ない方を選ぶ人のことです.逆にリスク愛好者は期待値が同じであればリスクの高い方を選びます.リスク中立的な人は,リスクの有無には関心を持ちません.そのため,効用関数は線形(直線)になりました.

 授業では,
A:1/2の確率で年収1000万円受け取れるが,1/2の確率で年収0円となる仕事
B:確実に年収500万円を受け取れる仕事
 これら2つのどちらを選ぶかを,リスク回避者,リスク中立的,リスク愛好者の3者でそれぞれ具体的な数値例を使って説明しました.
 ポイントはAの仕事を選ぶと得られる効用の期待値と,Bを選んで得られる効用を比較することでした.Aは結果にばらつきがあるので(リスクがあるので),期待値しかわかりません.

 続いて,自動車保険を例に,リスクプレミアムを図で確認しました.リスクプレミアムとは,リスクを避けるために払っても良いと考える金額のことです.自動車保険に入らなければ,事故を起こしたときに大金を支払わなければならないリスクがあります.そのリスクを避けるために我々は保険に入っています.
 保険の説明をしながら,「ちょっとこれはわかりにくいかな?」と思ったので,前半に説明した例の職業Aを使ってリスクプレミアムを再度説明しました.いくら年収の期待値が500万円と高いとは言え,このようなリスキーな仕事は嫌という人は多いでしょう.では,このリスクがなくなる代わりに,年収が減って○万円を確実にもらえるようになるとすれば,いくらまで年収が下がることを我慢できますか?これがリスクプレミアムです.
 最後に,期待値が低くなると分かっていてもギャンブルをしてしまうリスク愛好者にとっての負のリスクプレミアム(リスクを選ぶためにどれだけ損しても構わないか)を図で表現しました.

 このリスクプレミアムの説明はテキストにもあります.わかりにくかったという人は(少なくないでしょう),必ずテキストを読んで復習して下さい.

経済数学入門 第11回

 今日はオペレーションズ・リサーチの基礎として,線形計画法を説明しました.

【授業の内容】
 メインは線形計画法でしたが,これまで説明する機会がなかったので円を示す方程式も説明しました.円の方程式は,実はピタゴラスの定理とか三平方の定理と呼ばれるものに過ぎません.ある点からの距離が一定であるような点の集合が円です.

 さて,線形計画法ですが,すでに学んだ不等式を確認する作業から始めました.
 今回説明した2つの問題はいずれも,ある条件を満たした上で,最大値や最小値を求める問題でした.以前に「最大化・最小化」の回にも,制約の中で目的となる関数を最大化する作業を行いました.その回とは異なり,今日の問題では1次関数しかでてきませんでした.ただし,制約の数が複数ありました.
 問題の解法は次の通りでした.
Step.1 制約(条件)を図示する
Step.2 目的となる関数を適当な変数で表現する
Step.3 最大値・最小値を探す
 この3ステップで問題を解きました.Step.2で目的を適当な変数に置き換え,それが最大(あるいは最小)となる点を見つけるのがもっとも重要なポイントです.

 課題は提出義務はありませんが,各自でやっておきましょう.