2010年1月25日月曜日

ミクロ経済学ベイシックⅡ 第15回

 テストを授業最終日に行うため,その振替として,土曜日に補講を行いました.

【授業の内容】
 内容は前回配った練習問題の解説だったので,特に書くことはありません.難しい内容にもしっかりついて来たみなさんなので,単位をきっちり取ってくれると信頼しています.がんばってください.

経済数学入門 第15回

 今回は行列について説明したのですが,最後までできませんでした.そのため,配布したプリントの3,4ページはテストの範囲から外します.

【授業の内容】
 たった90分で行列の説明するのは無理があるのですが,とりあえず行列がなんのためにあるのか,どのように使えるのかを理解してもらうのが狙いでした.高校で行列を習った人の多くは,行列をどのように使うべきかわからなかったのではないでしょうか.

 さて,とりあえず基本から説明しました.行列の名の通り,行列には行と列があり,それぞれが意味を持っています.
 その後,行列の足し算,引き算,掛け算,逆行列を説明しました.できれば逆行列を使った連立方程式まで説明したかったのだけど.

 今回で経済数学入門は終わりです.2年次以降,経済学を中心とする講義で数学の知識が必要になりますが,これまでの内容をきちんと理解していれば,対応できるはずです.途中でつまずいてしまったら,全学共通教育センターに来て,復習しましょう.せっかく学内にそういう施設があるのだから,使わないともったいないですよ.特に公務員試験を控えている人は,2年次からしっかり基礎を固めていきましょう.

経済学Ⅰ 第14回

 今回はこれまでの復習を行いました.

【授業の内容】
 前回配布した復習問題のうち,解説を希望する人が多いものから順に説明しました.例年のことですが,こういう時にはみんなすごい集中力を出すんですよね….普段は同じ内容を,時間をかけて丁寧に説明しているので,普段の講義の方がわかりやすいと思うんですけどね.

 今回やった問題と本番の試験問題はもちろん同じものではありませんが,難易度は同程度だと思って,しっかり準備してきてください.

 繰り返しになりますが,試験の際に持ち込めるのは自筆のA4用紙1枚だけです.

ミクロ経済学ベイシックⅡ 第14回

 今回はミクロ貿易理論のつづきでした.

【授業の内容】
 年をまたいだので,前回のリカードの比較生産費説を少し復習しました.この理論によれば,どんな国も貿易することにより豊かになることがわかりました(厳密には,あらゆる財の生産効率の相対比が同じであるというレアなケースを除く).

 さて,では貿易の利点をある小国を想定して図で理解しました.ここでいう小国とは,経済学でしばしば出てくる「小国の仮定」が意味する小国です.つまり,経済規模が非常に小さいため,その国の需要や供給が世界市場にまったく影響を与えないことを示します.この仮定を置くと,話が単純になるので,よく用いられます.
 まず,ある国の生産可能性フロンティア,および世界市場での相対価格を図で表現し,どの財をどれだけ輸出するか,輸入するかを理解しました.この図は,貿易三角形と呼ばれます.
 続いて,今度は,自由貿易の余剰分析を行いました.鎖国状態(閉鎖経済)と比べ,自由貿易(開放経済)を行うと,どれだけ社会的余剰が増えるのかを図で確認しました.また,自由貿易ではなく,輸入関税を課した場合に何が起こるかも確認しました.関税を導入すると,自由貿易時と比べ,社会的余剰が減少することがわかりました.
 なお,この内容を計算問題にしたものを練習問題として配りました.

2010年1月23日土曜日

総合政策演習B1② 第14回

 今回は質問を受け付けました.

【授業の内容】
 すでに前回までに公務員試験の範囲は終わったので,今回は皆さんからの質問に答えました.

 主にコブダグラス型生産関数についての解説を行いました.

 最終も質問に答えます.各自でわからないところがないか確認してください.

経済学A 第14回

 今回はこれまでに皆さんから受け取った質問のうち,回答していないものをまとめて説明しました.

【授業の内容】
 まず財の価格に関連した質問から.
・様々な職業の平均給料が知りたい
 これについては企業別生涯所得のランキングを資料として配布しました.そこから,どういう企業が上位にあるのかを考えてみましょう.

・ドン・キホーテはなぜ安い
 昨今,ドン・キホーテ,ユニクロ,ヤマダ電機やダイソーなど,低価格を売りにする小売店に人気が集まっています.これらの企業が安売りできる理由はなんでしょう.
 理由はいくつか考えられます.まずスケールメリットがあることです.街の電気屋さんと異なり,ヤマダ電機はメーカーから直接大量に仕入れることで,メーカーに対する交渉力を高め,安く仕入れられると考えられます.またユニクロも,日本中,そして海外にも販売店を広げることで,同じ製品を大量に生産することが可能になります.
 また仕入れ以外にも様々なコスト(流通,人件費など)を削減することで,安く売っても儲かる仕組みが出来上がっている可能性もあります.

・品物の原価はいくら?
 原価率がいくらであるかは,業種により,商品により異なるため一概には言えません.ただし,飲食店では原材料費が売上の4割弱というのが1つの目安だそうです.
 メガネやスーツのようにあまり量がさばけない商品は原価率がかなり低いでしょうね.そうでなければ商売が成り立たないでしょう.
 また,供給が少数の企業によって独占されている商品も原価率は低くなりがちです.なぜなら,ライバルが少ないため原価が低くても高く売りつけることが可能になるからです.マイクロソフトのOSなどがこれにあたるでしょう.

・コンビニとスーパーの値段はなぜ違うのか?
 これを説明するために,需要の価格弾力性という概念を説明しました.これは,価格が1%変化すると需要が何%変化するかを示したものです.弾力性が高いとは,消費者が価格の変化に敏感に反応することを示しているため,価格を下げることで売上を伸ばすことができます.
 おそらくコンビニに来る客とスーパーにくる客とでは,弾力性に違いがあるのでは,というのが僕の予想です.

・チロルチョコの20円のものは,10円のものと比べ,大きさが2倍もないのはなぜか?
 この着眼点は面白いですね.ほとんどは大きな商品の方が割安なのに,なぜチロルチョコは違うのか,ということですね.20円のものはコンビニに多く,10円のものは駄菓子屋に多いということから,弾力性の違いである可能性がありますね.

 続いて,経済全体の話.
・衰退している産業はどうすれば活気づくか?
 これは個別の産業によって異なるため,一般的な回答は難しいのですが,衰退の理由別に考えてみました.
 まず,代替品の発明などにより,その商品自体に対する需要がなくなってきた場合があります.経済は,新たな発明により既存の商品が価値を失うこと(創造的破壊)を繰り返してきました.薄型テレビが一般的になり,ブラウン管テレビが廃れていくように,その産業が価値を失ってしまったのなら,活気づけることは諦める方が良いでしょう.なぜなら,価値を生み出さない産業に労働者を従事させることは,その国に取って労働力を無駄遣いすることだからです.
 ただし,その商品自体に対する需要はあるけれど,他国に仕事を奪われて廃れてしまった場合にはやり方はあるでしょう.効率性の改善や,生産拠点の移動などで,他国との競争に対抗すべきでしょう.

 その他の話題では,
・高速道路の無料化は良いのか,悪いのか?
 これは誰に取って良いか,悪いかによって異なるでしょうが,とりあえず日本全体に取っての影響を考えました.
 経済学ではまず,無料化のメリットとデメリットを考え,比較します.無料化のメリットは,人々の移動が活発になり,消費が増えるかもしれません.また料金所付近での渋滞,また一般道路の渋滞が緩和され,環境にとって良い影響があるかもしれません.
 逆にデメリットとしては,人々が公共交通機関ではなくマイカーを使うことで2酸化炭素の排出量が増えるでしょう.また,高速道路の維持にかかる費用を日本全体で負担することになるので,受益者負担の原則に反しています.

 これ以外にも面白い質問があったので,春休み中にブログ上で回答したいと思います(予定).

2010年1月22日金曜日

経済学Ⅰ 第13回

 前回に引き続き財政と税,そのうち税の仕組みについて説明しました.

【授業の内容】
 税には様々な種類があります.ややこしいから所得税だけ,消費税だけでも良いのではないかと思うかもしれませんね.所得税だろうが,消費税だろうが,お金を取られるのは同じ,と考えるかもしれません.しかし所得税と消費税はまったく性質の異なる税であり,どちらで課税するかで,私たちの生活は大きく変わってきます.

 まず税の区分として,国税と地方税,直接税と間接税を説明しました.重要なのは直接税と間接税の違いです.直接税とは,税の負担者が直接納税する,つまり負担者と納税者が同じ税です.対して間接税とは,負担者と納税者が異なる税です.例としては消費税があります.私たちが物を買う時,代金に加え,消費税も一緒に払います.そしてそのお店が私たちの消費税を税務署に納めていますね.
 間接税の代表である消費税は公平な税,そして直接税の代表である所得税は公正な税であると言われます.まずは公平と公正の違いを理解しましょう.

 公平とは,だれもが同じ条件で競争することです.お金持ちの家に生まれたから私立の学校に通えるけれど,家が貧しいから私立には通えないという現象があるとすれば(ありそうですね),教育を受ける上で不公平が存在していることになります.つまり公平とは事前の平等,わかりやすく言うと,全員が同じ条件で競争することです.結果に差が生まれることは公平とは関係ありません.
 対して公正とは,事後の平等,つまり結果を平等にすることを意味します.努力しても収入が低い人もいれば,あまり努力せずとも高い収入を得られる人もいるでしょう.自由な競争をすれば当然,勝者と敗者が出てきます.その勝者と敗者の差を小さくすることが公正です.

 消費税は公平な税であると言われます.それはすべての人を平等に扱うからです.誰に対しても同じ税率を課しています.これは結果として,低所得層には厳しく,高所得層には負担の軽い税であると言えます.
 しかし,消費税には脱税できないという素晴らしい利点があります.

 対する所得税は公正な税と言えます.なぜなら,累進課税制を持っており,低所得層への税率は低く(あるいは課税せず),高所得になればなるほど高い税率を課しています.つまりお金持ちからたくさん税金を取ることで,貧富の差を小さくしています.
 ただ,貧困層に課税しないだけでは,貧困から抜け出せないという理由から,一定以下の所得層には所得給付をすべきというベーシック・インカムという考え方も広まってきました.
 所得税のデメリットとしては,職業によっては脱税しやすいという不備があります.そのため同じ年収500万円でも,職業によって税負担に差があるという不公平が生じます.

2010年1月21日木曜日

経済学A 第13回

 今回は少子化と結婚の経済学について説明しました.今回と言っても一週間以上前ですね….

【授業の内容】
 少子化が問題であると,よく聞きますが,はたしてどうして少子化は問題なのでしょう.また少子化の原因,解決策は何なのでしょう.
 少子化と結婚は切っても切り離せない問題なので,結婚についても経済学的観点から説明します.

 まず少子化とは何かを考える上で必要なキーワードである合計特殊出生率(TFR)を説明しました.先進国では人口を維持するためにTFRが2.08程度必要だそうです(これを置換水準と呼びます).しかし現在の日本は1.4を下回っており,このままでは日本の人口が減少し続けることは確実です.
 さて,少子化,そしてその結果人口が減少すると何が起こるのでしょう.それをメリットとデメリットに分けてみましょう.
 まず少子化のデメリットですが,なんといっても社会保障の問題に尽きます.これ以外はそれほど深刻な問題ではないでしょう.少子化は高齢化でもあるため,人口に占める高齢者の割合を増加させます.そのため,年金や健康保険,介護保険などにかかる費用が増加します.現在の年金制度は賦課方式をとっており,人口バランスが崩れると給付水準を維持することが困難になることは以前に年金の回に説明しました.
 この他には,労働力人口の減少により,GDPの減少,それに伴い国際的な存在感が小さくなることも考えられます.またクズネッツの才能原則も当てはまるかもしれません.

 逆に少子化のメリットとしては,1人あたり資本の増加により所得水準が上がることが考えられますし,環境負荷の軽減,人口過密の緩和なども考えられます.世界を見渡してみると,1人あたり所得の高い国は,ルクセンブルク,スイス,リヒテンシュタインなど人口の小さな国が多く,必ずしも「人口が多い」=「豊か」ではないようです.

 さて,少子化はなぜ起こるのでしょう.こちらも世界を見てみると,少子化が課題となっているのは先進国ばかりです.また先進国の中でも,日本,韓国を始めとするアジア,そしてイタリアやスペインなど南ヨーロッパで深刻な問題となっています.
 少子化が起こる原因を説明する仮説をいくつか紹介しましたが,現在の日本の状況を説明する説得力のある仮説としては,イースタリンの相対所得仮説があります.

 後半は結婚についての経済学的考察を行いました.経済力あるいは学歴が未婚率に大きな影響を持つことをデータから紹介しました.このあたりは,テレビなどではあまり触れられないかもしれませんね.

2010年1月9日土曜日

経済数学入門 第14回

 ここでは第14回と書いてあり,レジュメにも第14回と書いてありますが,どうやら本当は第13回のようです.勘違いなのか第2回を飛ばしてありました.まあわかりにくくなるので,このまま行きます.
 今回は確率と統計でした.社会科学をやるなら統計についての基礎的知識は欠かせません.2年次以降に統計関係の講義をぜひ受けてください.

【授業の内容】
 まずΣの意味を説明しました.期末テストでは特に必要ないのですが,今後統計の勉強をするなら必要です.
 続いて,平均値,分散と標準偏差の定義および,それらの計算をしました.平均値はいまさら説明するまでもありませんね.分散と標準偏差というのは,データの散らばりの大きさを測るものです.馴染みのある所では,偏差値にも標準偏差が用いされています(厳密に言うと正規化しなきゃいけないのですが).テストは電卓を持ち込んで構わないので,標準偏差も計算しましょう.
 後半は集合の和と積の説明や,期待値の定義の説明や計算などを行いました.ちなみに平均値と期待値の違いは,前者はすでに起きたこと,起きていることについての平均であるのに対して,後者はまだ起きていないことについての確率的な平均値(の予想)です.

2010年1月7日木曜日

経済学Ⅰ 第12回

 今日は日本の財政について説明しました.来週は税について説明します.

【授業の内容】
 財政とは国の収入(歳入)と支出(歳出)のことです.様々なデータを見ましたが,現在の日本は,歳出が税収を大きく上回っています.収入が少ないのに,借金をして身の丈に合わないお金を使っています.
 歳出と歳入の内訳を見ましたが,歳出でもっとも大きいのは社会保障費でした.社会保障費とは,年金や健康保険などにかかるお金のことです.少子高齢化が止まらない日本では,今後も社会保障費が増加することはなかなか止められないでしょう.
 財政の健全化,つまり毎年の赤字(国債発行額)を減らすためには,基本的には歳出を減らすか,歳入を増やす(増税),もしくはその両方が考えられます.自分が借金しているわけではないから国債残高が少なくても構わない,と思う人もいるかもしれませんが,国の借金を返すのは将来の私たちです.今,あまりに大きな借金を作っておくと,将来の私たち,そしてその子ども,孫の世代が苦しむことになります.

 そのように考えると,定額給付金のように現在政府からお金をもらっても,将来の増税という形で(利子をつけて)返さなければならないので,必ずしも喜んで良いものではないでしょう.実際,そのように先のことを見越した人は,お金をもらったからと言って無駄遣いをするはずがありません.結果,消費は増えず,景気も回復しないでしょう.これをリカード=バローの中立性命題と呼びます.

 さて,ところで日本は,財政規模が大きい“大きな政府”なのでしょうか,それとも“小さな政府”なのでしょうか.それを測る目安が国民負担率と潜在的国民負担率です.このいずれでみても日本は先進諸国の中では小さな政府であることがわかりました.

 来週は歳入の要である税について説明します.