2008年11月27日木曜日

経済学Ⅰ 第11回

 今回はグローバリゼーションについて講義しました.

【授業の内容】
 グローバリゼーションは,僕個人としては非常に興味深いし,皆さんの生活にとっても将来的に非常に重要なテーマであると思っているのですが,興味深く感じる人と,まったく興味が持てない人にはっきり分かれるようです.

 授業の冒頭は,前回の続きを少し話しました.リカードの比較生産費説における絶対優位,あるいは比較優位はどのようにして生まれるのかを考察しました.
 また自由貿易の形態についていくつか説明しました.現在の日本はFTAと呼ばれる2国間あるいは他国間の自由貿易協定を進めています.ちなみに日本政府はFTAよりEPA(経済連携協定)という言葉の方がお好きなようです.EPAの方がより包括的ではあるようですが,似たようなもんだと思って良いでしょう.
 さらに国と国の経済が近くなれば,EUやメルコスールのような共通市場(ヒト,モノ,カネの移動が自由)に発展するでしょうし,さらに経済政策まで共通するような経済同盟になるかもしれません.

 また,前回の補足として,日本はなぜ固定相場制ではなく変動相場制を選んでいるのかを説明しました.結論だけ言えば,独自の金融政策を放棄したくないからです.

 さて,グローバリゼーションですが,経済のグローバル化は別に最近始まった事ではありません.大航海時代だってグローバル化です.インドとヨーロッパの国が結びついたわけですしね.また日本で言えばペリー来航もグローバル化のきっかけと言えるかもしれません.あるいは自動車,鉄道,飛行機の発明も国と国の距離を縮めて来ました.これらのグローバル化と近年の(2000年以降の)グローバル化はどこが違うのでしょう.
 それは2000年以前のグローバル化はモノとヒトのグローバル化であったのに対して,近年のそれは,サービスのグローバル化という質的な違いがあります.またこれまでのグローバル化によって少しずつ縮められてきた距離が,一気に,劇的に縮められたという量的な違いでもあるでしょう.
 モノのグローバル化によって日本では,モノ作りの拠点が中国などの賃金が安い国に移転してしまうと言う産業の空洞化を経験しました.私たちはこれから,サービス産業の空洞化を経験する可能性があります(というより,まず間違いないでしょう).
 もちろんすべてのサービス産業が空洞化するのではなく,海外でも供給できるサービスだけですけどね.例えば美容院やタクシーといった仕事は,いくらネットが発展してもその場にいなければできない仕事です.

 最後に単純化した日本と中国の数値例を使って,完全なグローバル化が起きれば,日本と中国の頭脳労働者と肉体労働者の賃金にどのような変化が起きるかを考えました.今日の話は本当に重要です(と僕は思っている).皆さんも漫然と職業を選ぶのではなく,その職業の10年,20年後も見据えて選びましょう.

総合政策演習B1② 第10回

 今回は費用逓減産業,情報の非対称性,所得分配についてです.どれも内容をきっちり理解しようと思うと時間はかかりますが,公務員試験と割り切れば非常に簡単です.

【授業の内容】
 費用逓減産業とは,ガス,電力や通信のように,最初の埋没費用はとてつもない額になるけど,限界費用は下がり続ける,つまりスケールメリットがある産業です.
 このような産業では,価格と限界費用が等しくなるように生産すると赤字が発生します.そのため対処法として限界費用価格形成原理と平均費用価格形成原理の2つがあります.名前が長いですね.
 限界費用価格形成原理とは,通常の完全競争市場のように,価格と限界費用が等しくなるように生産するものです.ただし,この場合は赤字が発生するので(限界費用よりも平均費用の方が高いため),その赤字分を政府が補填します.この方法のメリットは社会的に最適な資源配分が実現できることです.デメリットは赤字になること.
 平均費用価格形成原理は,価格と平均費用が等しくなるように生産するものです.こちらは平均収入(つまり価格)と平均費用が等しいことからもわかるように赤字は発生しません.つまり採算がとれるので,政府に頼らずとも持続的に企業を操業することが可能だというメリットがあります.逆にデメリットとしては,社会的に最適な水準よりも過小な生産,高い価格となる点です.つまり社会的に最適な資源配分が実現できないのです.

 情報の非対称性についの問題では,逆選択とモラルハザードの区別についてよく出題されるようです.確かに似てるので紛らわしいのですが,逆選択は「ある性質を持った人(企業)ばかりが集まってしまうこと」を意味しており,モラルハザードのように「性質が変化してしまうこと」とは明確に異なります.これだけ分かっていれば問題なさそうです.

 最後にローレンツ曲線の見方とジニ係数について説明しました.これはまあ覚えるだけですね.

ミクロ経済学ベイシックⅡ 第11回

 今回はリスクと不確実性についてです.メインは来週で,今回は基礎知識です.

【授業の内容】
 今回は,期待値,リスク,不確実性についてきっちりと理解することが目的でした.

 期待値については経済数学入門ですでに説明済みなので,説明は省略しました.私たちは未来に何が起こるかわかりません.しかし,予測をすることは可能です(当たるかどうかは別として).例えばサイコロを1回振ると,1~6のいずれかの目が出ますが,何度も振ればその平均は3.5に近づくであろうと予測できます.このように,未来に起こる出来事の結果と,それが起こる確率を掛け合わせたものが期待値です.確率的な予測値と言えそうです.
 世間で行われているギャンブルには共通点があります.すべてこの期待値がマイナスである点です.ギャンブルというのは胴元が儲かるようなシステムになっているので当たり前です.しかし実際には多くの人が宝くじを買っています.
 人間は期待値だけで選択をしているわけではないことの説明に,サンクトベテルスベルグのパラドックスの説明をしました.このゲームの期待値は無限大になりますが,まともな人なら誰もこのゲームに挑戦したいとは思わないでしょう.
 なお,近年の実験経済学,心理経済学などと呼ばれる分野の研究から,実際の確率と人々が認識する確率との間に乖離があることがわかってきました.宝くじのように非常に確率が低いものは実際よりも高く,逆に確率が高いものについては実際よりも低く認識してしまうようです.つまり宝くじは確率で考えれば当たるとは思えないけど,我々は「ひょっとしたら当たるんじゃないか?」と甘く考えてしまうのです.なんとなく思い当た人も多いんじゃないでしょうか.

 続いてリスクですが,これも経済数学入門でリスクとは危険度ではなく,分散の大きさ,つまり結果のばらつきの大きさであることを説明しています.
 そのため,リスクへの対処方法について説明しました.1つは分散投資であり,もう1つは保険です.前者については,株を例に取り,簡単なリスクヘッジの方法を説明しました.
 後者については自動車の損害保険を例に考えました.なぜ保険会社が儲かるのかと言うと,事故が起こる確率とその時の保険金の支払額から期待値を計算して,それを上回る保険料を課しているからです.ただし,前回説明したように保険には,情報の非対称性があり,逆選択,あるいはモラルハザードといった問題が発生する恐れがあります.保険各社はこの情報の非対称性を解消すべく,様々な取り組みをしています.

 ここで気分転換に,確率についてのお遊びとして,モンティーホール問題を紹介しました.事前の確率と,情報が公開された後の確率が異なることを説明しました.
 この問題の詳しい説明は,ネットで検索するとたくさん出てくると思います.

 最後に不確実性を説明しました.リスクとの違いは,リスクという言葉を用いるときは様々な結果の起きる確率が分かっている場合であるのに対し,不確実性は,何がどのような確率で起きるのかすらわからない時に用います.人間関係などは不確実性ですが,宝くじはリスクです.
 多くの人間はリスクを嫌いますが,(こちらも近年の研究より)リスクよりも不確実性を嫌うことも分かってきました.授業ではその一例を紹介しました.

経済数学入門 第10回

 今回は,中間テストの返却と,直線,曲線の移動についてでした.

【授業の内容】
 まず,総合政策学部のどんな講義で数学が必要とされるのかを説明しました.経済学系の科目は当然として,金融,統計などの講義でもある程度の数学的知識が必要となります.また公務員試験,そして就活でもある程度の数学力は求められます.

 さて今回は,直線のシフト,傾きの変化が経済学の文脈において,どのように用いられるかを紹介しました.数学的には特に難しいことはないと思います.自分が持っているお金を使って,2種類の商品をどのような組合せで購入することが可能かをグラフに示しました.この時,相対価格の変化が傾きの変化を,所持金の変化が直線のシフトを,それぞれもたらすことがわかりました.
 これまでは無味乾燥だったx,yに,意味を持たせました.
 ちなみに2次関数の放物線でも同じような作業をすることで,平行移動することができました.ワンパターンだから簡単ですね.

【中間テストについて】
 中間テストについては以下の通り.必ず返却されたテストを持って行きましょう.また,これまでの課題を持って行くと便利だと思います.
http://mizunoue.blogspot.com/2008/11/blog-post_23.html

2008年11月23日日曜日

経済数学入門 中間テスト結果

 中間テストの採点が終わりました.配点は20点としました.よって期末テストは80点満点です.

 6割未満は全学共通教育センターに来るように,ということでしたが,6割未満だったのはちょうど半数です.最高点は20点でした.
 解答用紙は11月25日の講義時間内に返却します.6割未満だった学生は,その解答用紙を持って全学共通教育センターに行きましょう.月曜は僕が担当していますが,火,金曜日は松本先生が担当されています.どちらでも良いので,都合の良い日に行き,苦手なところがなくなるまで,しっかり勉強して下さい.

2008年11月20日木曜日

経済学Ⅰ 第10回 

 今日は前回の為替に関連して貿易について説明しました.特にリカードの比較生産費説と呼ばれるものの中身を数値例で説明しました.

【授業の内容】
 今日は,貿易を行うことが,両国にとってどのような影響を及ぼすのかを考えました.

 まず,互いに得意な生産物が異なるケースとして,漁師と農家を例に,自給自足(国で言えば鎖国状態)と物々交換をする場合(貿易)を比較して,両者が豊かになることができるか確認しました.大方の予想通り,両者とも幸せになることができそうでした.この例は,互いに絶対優位にある生産物が異なるケースにおいて,絶対優位にある財の生産に特化し,貿易することで両国とも豊かになる可能性を示唆しています.

 続いて比較優位のケースです.今度は,テレビと自動車の生産に秀でている日本と,どちらも苦手なイギリスとの貿易を考えてみました.事前のアンケートでは,「貿易するとイギリスは豊かになるが日本には損失が発生する」と予想する学生がほとんどでした.
 しかし,具体的な数値例で確かめてみると,鎖国状態と比べて両国とも豊かになるような生産,貿易が存在することがわかりました.この結果は意外なものであったと思います.

 さて,このように両国とも豊かになれる(Win-Win関係)という素晴らしい貿易ですが,現実の世界では関税や輸入割当などにより自由な貿易は妨げられています.その理由は,自由な貿易により国全体は豊かになるものの,国際競争力のない産業はその規模縮小を余儀なくされるためです.皆さんだって,「あなたは失業しますが,日本は豊かになります」という政策には賛成しませんよね….

 来週はグローバル化について講義したいと思います.

総合政策演習B1② 第9回

 今回はエッジワースボックスの続きと,外部性についてでした.

【授業の内容】
 エッジワースボックスの見方について,そしてパレート改善,パレート最適と契約曲線については前回説明しました.今回はそれに相対価格を付け加え,その相対価格の下で財が均衡するかどうかを確認しました.またオファーカーブについても説明しました.

 後半は外部性について,主にコースの定理を中心に説明しました.簡単な計算問題もやりましたね.

 風邪が流行っているようなので皆さん気をつけましょう.

2008年11月19日水曜日

基礎総合演習B 第9回

 今回は各チームの動向の発表と,次回の発表についての準備をしました.

【授業の内容】
 まず,各チームに先週からの売買の報告と,その理由を説明してもらいました.売買の理由ですが,「~なので~を買った」という考え方は良いのですが,まだちょっと甘いですね.「本当にそのような関係があるのか?」,「そのような関係があるとすれば,こちらの企業の方が良いのではないか?」ということを自身の中で問いかけ,ある程度の答えを出しておいてください.いずれの発表もやや説得力に欠ける印象を受けました.

 さて後半は,「同一業界の中では,どの企業の株価が上がりそうか?」を考えてもらいました.アンケートの結果,コンビニ業界が題材となり,チーム毎に1つの企業を選んでもらいました.
 来週は「この企業が一番株価が上がりそうな理由は,○×だ.それに対してその企業は△□という理由でダメだ!」というように,自分たちが選んだ企業の株価が将来性があるというプレゼンをしてもらいます.

経済学A 第9回

 前回の為替と関連して,今回は貿易とグローバリゼーションについて講義しました.といっても,貿易で時間を取ってしまったので,グローバリゼーションについては,次週に持ち越しです.

【授業の内容】
 日本の経済は世界の経済と密接に絡みついており,切り離して考えることは不可能です.以前にやった株を例にとっても,日経平均の値動きは前日のニューヨークダウ,あるいは為替レートの影響を強く受けます.
 さて,このようなグローバル化した経済は今後どのように変化していくのでしょう?またそれは皆さんの生活にどのような影響を与えるのでしょうか?

 まずグローバル化と反グローバル運動について少し触れました.我々経済学者は「グローバル化(特に自由な貿易の促進)は良いものだ,なぜ反対するのだろう…?」と悩んでしまいます.そもそもグローバル化自体はどんなに反対してもその流れは止められないのです.
 色々調べてみると,反グローバルと言っても,スティグリッツ氏のように「グローバル化自体に反対ではないが,現在のようなグローバル化に反対」という人もいれば,グローバル化すること自体に拒否反応を示す人まで様々です.「先進国の一握りの企業が,途上国の子供たちを劣悪な状況で働かせることで儲けている,つまり子供たちを搾取している」というのも反グローバル運動でよく聞く話です(その是非はともかく).
 ちなみに著名な言語学者であるチョムスキー氏は「半グローバルという言葉自体が,レッテルである」という指摘をしています(小泉政権下の抵抗勢力という言葉のようですね).

 さて,今回は経済学におけるより良い状態をまず定義し(パレート改善),その後,貿易により国々が幸せになれるかどうかを数値例で確認しました.

 より良い変化の目安であるパレート改善とは,「他の人を不幸せにすることなく,ある人が幸せになるような変化のこと」です.このような変化であればとりあえず良い変化だとして,今回は話をしました.もちろん両者とも幸せになれば言うことなしですよね.

 では実際に単純化した例により,貿易を行うと幸せになれるかを確認しました.まずは,両者ともそれぞれ相手より得意な生産物があるケース(絶対優位)です.この場合,多くの人が予測するように,貿易することで両者とも幸せになりました.
 続いて,相手国よりすべてにおいて秀でている国と,すべてにおいて劣っている国の2国が貿易することで何が起こるかを確認しました.微妙な変化ではありましたが,予想に反して(?),両国とも幸せに,つまりパレート改善したようです.

 このように貿易は国レベルで見ると,両国とも豊かになれるという素晴らしいものです.しかし,現実の世界には自由な貿易に反対する人は多く存在します.なぜ彼らは自由貿易に反対するのでしょう?
 それは相手国より優位にある(比較優位)生産物の生産者は規模を拡大できますが,劣位にある生産物の生産者は自由な貿易により,生産規模が減少します.つまり解雇されたり,倒産してしまうのです.

 さて,皆さんと直接関係なさそうなこの話,皆さんの将来を占う上でも多くの示唆に富んでいます.グローバル化する経済で我々の生活はどうなるのか,次回考えましょう.

【参考文献】
 今回の授業で紹介した本は以下の通りです.多くは図書館にあります.
トーマス・フリードマン(2006)「フラット化する世界㊤㊦」日本経済新聞社★とくにオススメ!★
梅田望夫(2006)「ウェブ進化論」ちくま新書
ピエトラ・リボリ(2006)「あなたのTシャツはどこから来たのか?」東洋経済新報社
ドン・タプスコット,アンソニー・ウィリアムズ(2007)「ウィキノミクス」日経BP社

2008年11月17日月曜日

ミクロ経済学ベイシックⅡ 第10回

 今日は情報の非対称性についてでした.

【授業の内容】
 完全競争市場の条件の1つに完全情報というものがありました.今回は取引を行う経済主体の一方が不完全な情報しか持っていない場合(情報の非対称性)に何が起こるかを説明しました.

 まず,財についての情報を消費者が入手可能かどうかで,財を3つに分類しました.
探索財:事前に情報を入手可能なもの
経験財:購入後に情報を入手可能なもの
信用財:購入後も情報を入手不可能なもの

 さて,買ってみないと当たりか外れかわからないような財である中古車の市場(レモン市場)では何が起こるのでしょうか.
 売り手は財の品質について十分な情報がありますが,買い手は車の品質の良いのか悪いのかわかりません.ただし,良い車と悪い車がどれぐらいの割合で存在しているかだけは知っているとします.すると買い手は,目の前の車に対し,良い車である確率と悪い車である確率から,車の評価の期待値を計算します.価格がその期待値を下回れば購入し,上回れば購入しません.
 授業の数値例では,結果として品質の悪い中古車しか流通しないことが明らかになりました.

 さて次は,逆に生命保険市場の様に,買い手は十分な情報を持っており,売り手は情報をあまり持っていない場合を考えてみました.
 こちらでは健康に問題のある人ばかりが生命保険に加入するという問題が起こりました.この2つの例のように,情報の非対称性により,特定の売り手,買い手ばかりが集まることを逆選択と呼びます.

 逆選択と混同されやすいものとして,モラルハザードがあります.モラルハザードとは,ある取引の前後で経済主体の行動が変化してしまうことです.例えば,それまでは安全運転をしていた人も,任意の自動車の損害保険に入ったことで安心し,「事故しても保険会社が払ってくれる」と運転する際の危険回避を怠るかもしれません.これは逆選択とはまったく異なる現象です.
 元々事故を起こしやすい人が集まってくるのが逆選択であり,保険に入ったことで危険な運転をするようになるのがモラルハザードです.前者は運転手の行動は変化していませんが,後者では変化しています.

 ちなみに授業で例として出した交通違反保険ですが,ネットで調べて見ると現在も存在するようです.(Googleで「交通違反 保険」で検索)
 ある企業の例だと,保険料は年間6000円だそうです.逆選択の問題をどうやって解決するのだろうかと思い調べてみると,後述の評判(reputation)を使っていました.初年度の会費は高く,無違反だと年々保険料が安くなるようです.採算が取れるんかな?と心配しましたが,あんまり違反を重ねていると,免停になるので,保険金はある程度限られるのでしょうね.それにしても6000円で採算が取れるのかなぁ…?
 ちなみに金融庁から指導が入り廃業というニュースも見つかりましたし,無認可共済ですので,この保険に入りたい人はよく考えてからにしましょう.

 さて,このような情報の非対称性の問題をどうやって解決するのでしょうか.対策としては次の2つがあります.

1.シグナリング
 これは,その財そのものの品質がわからないときは,その財の品質と関係しているであろう手がかりで判断するというものです.例えば,3年間の品質保証が付いている中古車は,付いていない中古車よりも品質が良さそうです.なぜなら,すぐに壊れるかもしれない中古車の修理を保証するにはコストがかかりすぎるからです.
 また学歴別の賃金もこのシグナリングで説明することが可能です.

2.評判
 これは過去の購入,あるいは他者の購入から,その財の品質を予想できるというものです.観光客が来るだけで,地元の常連客が来ない飲食店は,別に美味しい料理を提供する必要はありません.なぜなら美味しかろうと不味かろうと,その客は一度来るだけなので,どっちでも良いのです.こういう戦略はひき逃げ戦略と言います.
 ただし,地元の人が集まる店は(例えば大学近くの定食屋)そうはいきません.不味いとわかれば,もうその客は二度と来ないでしょう.こういう店ではひき逃げ戦略は使えません.
 皆さんは宝石を買う場合,百貨店で買いますか?それとも露店で買いますか?百貨店に店舗を出している店の場合,偽物を売るわけにはいきません.今後の商売に響くからです.ただし,露店では偽物を売っても(法的にはともかく)経済学的に問題ありません.なぜなら,もう二度とその客と会うこともないからです.
 授業では年功序列も,評判を用いた情報の非対称性への対処方法だと説明しました.

経済数学入門 第9回

 今回は中間テストでした.

 中間テストは採点して,来週の授業で返却します.点数が6割未満だった学生は全学共通教育センターで理解できるまで勉強しましょう.

 中間テストを受けていない学生は,早急に僕の所に来るように!

2008年11月14日金曜日

経済学Ⅰ 第9回

 前回までしばらく金融でしたが,今回は「円高はなぜ悪い?」と題して,為替と貿易について説明しました.

【授業の内容】
 まず為替レートの確認です.円高,円安というのはややこしいですよね.「1ドル100円が80円になった」と聞くと,「100円→80円だから円安だ」という風に間違えそうになります.しかし100円から80円になったのは,1ドルという商品の値段であり,1ドルが(日本円と比較して)安くなったのです.つまりドルが安くなったのですが,それは円と比較して安くなったので,相対的に円は高くなっています.これが円高(ドル安)です.
 さて円高のどこが悪いのでしょう?日本円が高くなったということは,世界的に見て,私たちが持っている円の価値が高くなったということなので,外国の商品を安く買うことができます.そのため外国から輸入する原油や食料品なども安くなるはずです.円高にだってメリットはあるようです.
 しかし,外国から見ると(ここではアメリカとしましょう),日本円の価値が上がるということは,ドルの価値が下がることなので,アメリカ人にとっては日本から輸入するモノ,例えば日本製の自動車やデジカメなどは高く感じることでしょう.そのため,当然日本からの輸出は減少します.授業では円高,円安のメリット・デメリットをまとめて比較しました.

 さて,ではこのような為替の変動はどういった要因で起こるのでしょう.その理由は実に多様ですが,授業では,前回からの関連で利子率に焦点を当てて説明しました.
 現在のように日本の利子率が低く,他の国の利子率が高いとどういうことが起こるのでしょう.手元にあるお金を日本で預けても利子があまりもらえないから,海外の銀行に預けようという人もいるでしょう.その際に,日本円のままでは預金できないので,日本円を売って,外貨を買うという取引が行われます.つまり外貨の需要と日本円の供給が行われます.
 為替相場も普通の財と同様に需要と供給のバランスで決まるので,上記のケースでは日本円が下がり,外貨が高くなるでしょう.
 さらに抜け目ない人は,手元にお金がなくても,日本の銀行で円を借りて(貸し出す際の利子率も低い),日本円を売り,外貨で運用するかもしれません.このケースでもやっぱり日本円は売られるので円安になりそうです.結局,お金というのは一番儲かりそうなところに向かって動く習性があるようです.

 さて,この為替相場の変動は日本の景気にどういう影響を及ぼすのか,マクロ経済の図を用いて,その因果関係を確認しました.

 最後に小テストを実施しましたが,ほとんどの人は正解でした.

総合政策演習B1② 第8回

 今回は関税が余剰に与える効果と,パレート最適についての問題を解きました.

【授業の内容】
 前半は小国の仮定の下での,自由貿易,さらに関税が課せられた場合の余剰について説明をし,問題を解きました.結構わかっていたようなので,特に問題もありませんでしたね.グラフで死荷重を答える問題はワンパターンなので,一度覚えれば見ただけで問題が解けそうです.

 後半はエッジワースボックスを使ったパレート改善,パレート最適の問題です.エッジワースボックスは,2人の無差別曲線をくっつけた図です.2人の間での資源配分について分析するときに威力を発揮します.次週はこの続きをやります.

基礎総合演習 第8回

 バーベキューは残念でしたね.また改めて何かしましょう.

【授業の内容】
 今回は各チームの運用方針を説明してもらいました.どのチームもそれぞれしっかり考えてきたようでした.結果的に,各チームの運用方針は似てきましたが,では具体的にどうやって銘柄を選ぶのか,何を指標とするのか,まで突き詰めて考えているか,には少し差が出たようです.
 皆さんは勉強のために勉強しているわけではなく,運用するために勉強しているので,理想を高くすることも大事ですが,どうやって実用化するかも大事です.
 また,人の言うことを鵜呑みにせず疑ってかかるべき,というのはこれまでも言ってきましたが,改めて注意しました.騙されないようにとことん疑ってください.

【課題】
 次週から毎回,各チームのうち1人ずつにレポートを提出してもらいます.そのためにもちゃんと売買してくださいね.

経済学A 第8回

 今回は「円高はなぜ悪い?」と題して,為替と貿易について説明しました.

【授業の内容】
 まず為替レートの確認です.円高,円安というのはややこしいですよね.「1ドル100円が80円になった」と聞くと,「100円→80円だから円安だ」という風に間違えそうになります.しかし100円から80円になったのは,1ドルという商品の値段であり,1ドルが(日本円と比較して)安くなったのです.つまりドルが安くなったのですが,それは円と比較して安くなったので,相対的に円は高くなっています.これが円高(ドル安)です.

 さて円高のどこが悪いのでしょう?日本円が高くなったということは,世界的に見て,私たちが持っている円の価値が高くなったということなので,外国の商品を安く買うことができます.そのため外国から輸入する原油や食料品なども安くなるはずです.円高にだってメリットはあるようです.
 しかし,外国から見ると(ここではアメリカとしましょう),日本円の価値が上がるということは,ドルの価値が下がることなので,アメリカ人にとっては日本から輸入するモノ,例えば日本製の自動車やデジカメなどは高く感じることでしょう.そのため,当然日本からの輸出は減少します.実際に,円高でトヨタ利益が6900億円も吹っ飛んだという新聞の記事を読みました.
 授業では円高,円安のメリット・デメリットをまとめて比較しました.

 後半は前回の資産運用の続きとして,外貨預金について説明しました.外貨"預金"と聞くと,株とは違って安全そうな気がしますが,実際には結構リスクのある選択肢でした.現実の数値を使って,架空の100万円をオーストラリアドルで1年間運用すると儲かるのかを検証しました.まぁ何事も美味い話ばかりではありません.儲かる可能性があるということは損する可能性もあるのです.学生のうちにFXなどに手を出すのはやめておいた方が良いと思います.責任を取れるように自立してからにしましょう.

 最後に3つの為替制度を紹介しました.変動相場制,固定相場制とペッグ制でしたね.

ミクロ経済学ベイシックⅡ 第9回

 今回は外部性について説明しました.

【授業の内容】
 外部性とはある経済主体による経済活動が,それとは無関係の第3者に与えるなんらかの影響のことです.このような市場の失敗が起こると,最適な資源配分が実現されません.そのため何らかの対策が必要になります.外部性の典型例としては公害や環境破壊が存在します.例えば,先進国がこれまでに100年以上に渡って消費してきた石油燃料のせいで地球温暖化,そして海面の上昇が進んだとすると(この説が本当かどうかは僕の専門外なのでわかりません.あくまで例です),海面上昇により国土が小さくなってしまい,大きな被害を受けているツバル共和国のような国にとってはまさにとばっちりです.これが外部性です.

 さて,外部性は第3者に与える影響が良い影響か,悪い影響かで区別することができます.前者は外部経済,後者は外部不経済と呼ばれます.
 また第3者に与える影響が市場を通じたものか,そうでないのか,によって金銭的外部性技術外部性,というように区別されることもあります.

 授業では採り上げませんでしたが,ここでは外部性の例として教育を考えてみます.教育も外部性を持っています.例えば皆さんが受けている大学教育について考えてみると,大学教育は学生(というより学生の保護者?)と大学法人との間の取引です.保護者は学費を支払い,大学は教育サービスを提供します.
 さて保護者(と学生)と大学は取引の関係者なので内部ですが,この取引は外部にも影響を与えています.例えば総合政策学部の卒業生はある程度の法律や経済などの知識を持っているでしょうから,卒業生を雇う企業にとってはそれらの知識を教える必要がありません.企業にとっては人材育成コストがかからないので,大学教育は企業に外部経済を与えていると捉えることができます.
 余談ですが,大学などの高等教育が上記のような効果,つまり労働者としての価値を高めているかどうかについては経済学者の中でもコンセンサスはありません.「高等教育が人的資本(労働者としての能力)を高めるんだ!」という人もいますし,「企業は学歴を能力のシグナルとして使っているだけで,大学で学ぶことに期待などしていないよ」という人もいます.どっちでしょうね?大学関係者としては前者であると期待したいところですが….

 さて,このような教育は学生自身にとって有益であるだけでなく(大卒は給料が高い),企業にとっても有益なので,社会全体から見るとより有益です.そのため,政府がお金を出して教育費を安くして,より多くの人が大学で教育を受けられるようにすることが合理的です.また実際にそれは実現されています.旧国公立大学(現在は独立行政法人ですが)には国からの援助があるので学費は安く設定されていますし,私立大学にも私学助成金という形で(旧国公立大ほどではないにしても)援助されているので,実際にかかっているコストよりも学費は低いはずです.
 まとめると,外部経済がある場合は,社会的収益率の方が私的収益率よりも高いので,社会的に見て最適な水準よりも少なく(過小に)生産されます.そのため政府などが援助する必要があります.
 また逆に外部不経済がある場合は,社会的限界費用の方が私的収益率よりも高いので,社会的に見て最適な水準よりも多く(過剰に)生産されます.そのため政府によるなんらかの規制が必要です.

 さてこのような外部性への対処ですが,3つの方法があります.
1.課税・補助金(ピグー税)
 まず課税や補助金により最適な生産量を実現するという方法があります.最近導入が検討される炭素税もこれにあたります.またタバコ税もそうなのかもしれませんね.
2.内部化
 外部に効果が漏れるのが問題なら,漏らさないようにしようというのが,この内部化です.授業では駅ビルの建設によって,駅の集客能力を外に漏らさないようにすることを説明しました.
3.交渉
 内部と外部で交渉することでも,最適な資源配分が達成できることもあります.ただしその条件は「取引コストがほとんどかからないこと」です.これはコースの定理と呼ばれています.これについてはテキストに詳しい説明もあります.

 最後に消費における外部性として,スノッブ効果バンドワゴン効果を説明しました.

経済数学入門 第8回

 テスト範囲は今回までです.

【授業の内容】
 前半は最大値・最小値問題を説明しました.経済学は様々な最大化・最小化問題を解かねばなりません.例としては,企業にとっての利潤最大化や費用最小化,あるいは家計(私たちのこと)にとっての効用(幸せのようなもの)最大化問題などです.
 ややこしそうですが,公務員試験程度の経済学では,ほとんどの問題がワンパターンなやり方で解けます.

 さてそのワンパターンな解法ですが,次の手順を踏みます.
Ⅰ.問題の目的と,その実現を妨げる制約が何かを理解し,それぞれを数式で表現する.
Ⅱ.制約の式を変形し,目的の式に代入する.この代入をする意味は,(おそらく)目的の式は複数の変数の関数になっているので,その変数の種類を減らすためです.
Ⅲ.すると目的の式が1つの変数の関数になっているので(大抵は2次関数),その最大値,もしくは最小値を探す.

 以上の解法でほとんどの問題が解けるはずです.どんな問題に対しても有効というわけではありませんが,まずはこれを会得しましょう.
 いずれにせよ,目的と制約をはっきりと意識することはとても大事です.

 後半は偏微分のやり方と,直感的なイメージを説明しました.やり方は「ある変数で偏微分するときは,その他の変数はただの数値であると思い込んで微分する」というだけでした.
 偏微分のイメージは,他の変数が一定であるとして(ただの数値であるとして),ある変数で微分したときの傾きと思ってくれれば良いです.授業では3次元の山のようなものを想定して説明しました.言葉ではなかなか説明しづらいですね.

 さあ月曜日は中間テストです.きっちりと復習しておきましょうね.

2008年11月6日木曜日

ミクロ経済学ベイシックⅡ 第8回

 今日の前半は,完全独占市場の余剰分析を,後半は公共財の説明をしました.

【授業の内容】
 前半は,完全競争市場と比較した場合の,完全独占による死荷重を計算しました.しばらく独占市場ばかりやってたので,完全競争市場のことを忘れてしまったかもしれません.
 完全競争市場とは,企業に価格の決定権はありません.企業は市場で決まった価格を受け入れるだけの価格受容者(プライステイカー)です.この状況下では,企業は価格と限界費用が等しくなるように生産をします.つまりP=MCですね.
 対して,完全独占市場では,独占企業は当然ながら,自分で好きなように価格を設定できます.つまり価格決定者(プライスメイカー)です.

 さて,完全競争市場においては社会的余剰が最大になることは前期に学んだとおりですが,完全独占市場という市場の失敗が起こると,その社会的余剰は小さくなってしまいます.それを具体的な数値例を基に計算しました.この問題はこれまでの総復習としてちょうど良いので,期末試験にも(僕がぼんやりしてなければ)必ず出しますので,必ず復習しましょう.

 後半は公共財について説明しました.
 これまでも様々な財(の分類方法)が出てきました.今回は財の利用について,私的財と公共財(と準公共財)に分類しました.
 公共財とは次の2つの性質を兼ね備えた財のことです.

非競合性:ある人の消費が他の人の消費の妨げにならないこと.つまり複数の人が同時に使っても支障がないこと.

非排除性:特定の個人の利用を妨げることができないこと.つまり誰でも利用できること.

 逆に上記のどちらの性質も満たさない,言い換えれば競合性と排除性を持つ財を私的財と呼びます.また非競合性と非排除性のどちらか一方しか満たさない財は準公共財と呼ばれます.
 これらの公共財は,フリーライド(ただ乗り)できるため,営利を目的とする民間企業は供給しません.そのために政府が供給します.公共財と呼ばれる所以でしょうね.
 例外は花火大会やTVの民放(地上波)です.花火は非競合性と非排除性を持っていますが,民間企業が供給しています.もちろんあれはタダで供給しているわけではなく,(少なくとも僕が知っている花火大会は)企業の広報活動の一環として開催されてそうなので,経済学的には厳密に言うとタダではないですね.

経済数学入門 第7回

 今日は高次関数のグラフの描き方でした.

【授業の内容】
 前回,微分を用いた2次関数のグラフの描き方を説明しました.その方法は,3次以上の関数にも応用できます.

 くどいぐらい言いましたが,ある関数を微分すると,元の関数の傾きが出てきます.それを利用して,傾きが0である点(極値)を求めることでグラフを描いていきます.
 さらに理解を深めるため,増減表と呼ばれるものを書きました.2次関数の時に増減表を使わなかったのに,3次関数では使った理由は,2次関数はU字型か山型のどちらかしかありませんでしたが,3次関数やそれ以上の高次関数では,どのような形になるか,増減表を書いてみないとわかりにくいからです.3次関数はN字型や逆N字型になることが多いですが,必ずそうなるわけではありません.

 授業では結構時間がかかったのに,文章にするとあっという間ですね.

お知らせ
 授業内に告知したとおり,11月17日の講義時間内に中間テストをします.点数が6割に満たなかった学生は全学共通教育センターでしっかり勉強してもらいますよ.そちらではマンツーマンに近い形で教えるので,苦手な人も理解できるよう説明する自信はあります.ぜひ来てください.

2008年11月5日水曜日

総合政策演習B1② 第7回

 今日は余剰分析の続きです.

【授業の内容】
 小テストは独占市場における余剰の計算でした.

 授業は,独占によって発生する死荷重の計算,独占時に従量税を課した時の余剰などをやりました.また,政府が生産者から高く買い取り,消費者に安く売るという二重価格についても計算しました.

 独占時に従量税を課す問題は,これまでの内容を理解しているか確認するのに都合が良いので,来週小テストをします.解けるかどうかだけではなく,スピードも意識しましょう.

基礎総合演習B 第7回

 今回も株価の分析をしました.

【授業の内容】
 今回の題材は,資生堂です.過去の株価の変動についての説明は,なかなか説得力がでてきましたね.
 今回皆さんに新たに指摘した点は,企業の決算日と決算内容です.これは企業が自らが業績,引いては配当について情報を公開するので,非常に重要です.まぁ,これで皆さんある程度,株について理解できてきたのではないでしょうか.

 次週は,各チームが今後,どういう方針に則って株を売買するのかを発表してもらいます.各チーム5分程度を予定しています.チーム内でしっかり話し合ってください.

 最後に今週末のバーベキューの役割分担などを決めました.晴れると良いですね.

経済学A 第7回

 今回は前回に引き続き,資産運用についてでした.

【授業の内容】
 前回のファンダメンタル分析を復習した後,効率的市場仮説について説明しました.簡単に言うと,すでに知られている情報が株価に影響を与えることはない,というものでした.それまでに公表されている情報は株価に織り込まれているという言い方もします.

 さて,株式とギャンブルはどこが違うのでしょうか?株でお金を儲けることと,ギャンブルでお金を儲けることはどちらが合理的なのでしょう?
 世の中には様々なギャンブルが存在しますが,あらゆるギャンブルに共通するのは,賭け手(私たち)がギャンブルする時は平均すれば確実に損をするという点です.1万円をどんなギャンブルに使っても,その期待値は必ず1万円を下回ってしまいます.ヴォルテールが「宝くじは頭が悪いことに対する税金である」と言ったように,確率的に考えれば決して合理的な選択肢とは言えません.もちろん採算度外視でお金を賭けること自体に喜びを感じる人にとっては合理的な選択なのかもしれませんが,少なくとも資産運用の手段としては誤っています.

 対して株式を期待値で考えれば長期的にみれば(少なくともこれまでは)お得な選択肢です.長期的なリターンは結構高いようです.
 しかし,株式にはリスクがあるので,損をすることもあります.ただし,株式は株の選び方により,リスクを軽減することができます.このリスクヘッジの方法を単純化した例で確認しました.

 後半は株式以外の資産運用の方法(金融商品)を,リスクとリターンという観点から紹介・比較しました.

・銀行預金
 銀行預金はリターンは低い(利子率が低い)ですが,リスクも低いという特徴があります.ペイオフやインフレというリスクはありますが,株式に比べればリスクは非常に小さなものです.

・国債(地方債)
 これらも非常にリスクが低いという特徴があります.一方,利回りは銀行預金に比べればやや高めです.近年は個人向け国債も発売されているので,比較的身近になりましたね.

・投資信託
 いわゆる投信,ファンドと呼ばれるものです.我々個人投資家が1万円からという少額で投資することができます.我々から集めたお金をプロが運用します.様々な銘柄に分散投資するのでリスクは小さくなりますし,そもそもプロが運用してくれるので信頼できるような気がします….
 ただし,投資したお金の1%ぐらいが手数料として毎年かかるのがマイナスポイントです.
 ちなみに変わったファンドとしては,ワインに投資するワインファンド,映画ファンドなども存在しますし,不動産に投資するRIET(リート)は結構有名ですよ.

 この他,外貨預金,FX,金(きん),土地,商品先物など様々な資産の運用方法がありますが,いずれも,リターンが高ければリスクも高い,リスクが低ければリターンも低い,というのは共通した法則です.リスクが低いのにリターンが高い,つまり「確実に儲かりますよ!」という言葉が嘘であることがわかりますね.皆さんも甘い言葉に騙されないように,確実に大儲けすることができるには,インサイダー情報で株を買うなど違法行為だけです(当然ですが,違法行為をしろという意味ではありませんよ).

 以下は資産運用に興味がある人にオススメの図書およびサイトです.
【図書】
日本経済新聞社編(2005)「なっとく!マネー塾」日本経済新聞社
日本経済新聞社編(1990)「ベーシック株式入門」日本経済新聞社
ジョン・A・パウロス(2004)「天才数学者、株にハマる」ダイヤモンド社
【サイト】
野村證券のバーチャル株式投資倶楽部
http://my.nomura.co.jp/virtual/app