2009年10月31日土曜日

経済数学入門 第6回

 今回は前回の続きである指数と,新たに微分の説明をしました.

【授業の内容】
 指数法則は前回説明していたのですが,今回はルートの説明です.ルートは指数としては1/2乗で表現できました.その理由も簡単に説明しましたね.

 さて,このように指数についてある程度理解もした上で,n進法を紹介しました.デジタル化,デジタル社会という言葉を聞きますが,デジタルとは2進数のことです.というわけで,皆さんが携帯からメールを打つときも,文字は一旦デジタル化,つまり2進数に翻訳されて送信されます.そして着信先で2進数から文字へと復元されるのです.ほんの一例ですが,我々の生活のあらゆる場面に2進数は忍び込んでいます.そのため,どんなものかぐらいは知っておいて良いでしょうし,実利的な話をすると,公務員試験や民間企業の筆記試験でもn進法が問われる場合もありますし,知っておきましょう.
 授業ではn進法の数え方,そして10進法からn進法へ,n進法から10進法へと,それぞれ変換するやり方を説明しました.非常に簡単ですよね?

 そして授業の後半は,経済数学入門でもっとも重要な微分を少しだけ説明しました.経済数学入門は,もともと微分をみんなにわかってもらいたい,ということで生まれた科目です.微分を知っておかないと経済学を理解するのにかなり遠回りをしなければなりません.そして遠回りであるだけでなく,曖昧な理解になってしまうのです.
 今回はとりあえず微分の意味はわからなくても,とりあえず微分の計算ができるようになることを目的としました.全然難しくないでしょ?

 今回配った課題は再来週に提出してもらいます.なくさないようにね.

経済学Ⅰ 第5回

 今回は失業についてです.マクロ経済学の目的の1つは失業を減らすことです.最近,失業率が上がっていると報じられていますが,果たしてあの失業率は何を意味しているのでしょう?

【授業の内容】
 現在の完全失業率は5.5%です(2009年8月,厚生労働省「労働力調査」).「ふむふむ5.5%の人が失業しているのだな」とわかりますが,果たして失業者とはどんな人なのでしょう?学生の皆さんは失業者ですか?フリーターは?家事手伝いは?おじいさんやおばあさんは?ニートは?
 厚生労働省の定義によると,完全失業者とは次の3つの条件を満たした者のことです.(厚生労働省「労働力調査」http://www.stat.go.jp/data/roudou/pdf/definit.pdf
①仕事がなく調査期間中に少しも仕事をしなかった
②仕事があればすぐに就くことができる
③調査期間中に,仕事を探す活動や事業を始める準備をしていた
 「会社が倒産してしまい,しばらくの間仕事を探していたが,当面の生活費を得るためにコンビニのバイトをしている人」は我々のイメージからすると失業者ですが,完全失業者の定義にあてはめると,条件の①に該当しないため失業者ではありません.このように考えると,完全失業率における失業者とは,我々が考える失業者のほんの一部のようです.実際には5.5%よりずいぶん多い割合の人々が仕事を探していると考えられます.
 ちなみに完全失業率の計算は,上記の完全失業者数を労働力人口で割り,%で表示したものです.

 さて,どうして失業が発生するのでしょう?古典派とケインズ派それぞれの主張をまとめてみましょう.
古典派:(労働)市場は完全に機能している.そのため失業者は自発的失業者だ(働きたくないから働いていないのだ).より低い賃金を受け入れさえすれば失業者はいなくなる.
ケインズ派:(労働)市場は不完全である.失業者が多くても賃金が下がらないため,失業は減らない.つまり非自発的失業が発生している(働きたくても仕事がない人がいる).
 ケインズ派の賃金が下がらない(下がりにくい)という主張は,賃金の下方硬直性と呼ばれています.

 賃金の下方硬直性を説明する仮説はいくつかあります.授業では次の4つを説明しましたね.
・労働組合の存在
・相対賃金仮説
・効率賃金仮説
・インサイダー・アウトサイダー仮説

 しかし,現実には近年,賃金が下がっているような気がします.といっても,正社員の賃金ではなく,労働者全体の賃金が,です.なぜならフリーター,パート,派遣社員といった非正規労働者の割合が増加しているからです.総じて,非正規労働者は正社員に比べ賃金が低いため,非正規労働者の割合が増加すると,日本全体として労働者の平均賃金が下がることに他なりません.
 なぜこのような非正規労働者が増えたのかについては諸説ありますが,僕の見る限り,少なくとも「正社員として縛られたくないので自由な派遣社員・フリーターを選んだ」のではなく,「正社員としての採用を得られないので,仕方なく派遣社員・フリーターをやっている」人が多いように思います.つまり労働者のニーズによるものではなく,企業側の都合のように思えます.
 背景には1999年の法改正により,以前は専門的な一部の業種にのみ認められていた派遣が,一部の業種を除いて全面的に派遣が可能になったという,法的な側面があることは間違いありません.結果として雇用する企業側,そして人材派遣会社は儲かったでしょうが,日本にワーキング・プアー,貧困という問題を発生させる一因となったと考えられます.

ミクロ経済学ベイシックⅡ 第6回

 今回は複占におけるクールノー均衡の説明をしました.

【授業の内容】
 複占とは,ある財の売り手が2社のみである状態のことです.今回はこのような市場を,同時手番,非協力ゲームとして解く方法を説明しました.2社による駆け引きなので,ゲーム理論におけるゲームとして捉えるとクールノー均衡もより深く理解できるでしょう.クールノー均衡とは,2社がそれぞれ自社の利潤を最大とするように生産量を決定する場合のナッシュ均衡です.そのため,クールノー均衡は,クールノー・ナッシュ均衡とも呼ばれます.クールノー均衡がナッシュ均衡であるということは,両企業は相手の戦略(生産量)に対する最適反応を持っており,それぞれの最適反応が一致する点(相手の裏をかくことができない均衡点)で生産を行う,ということを意味しています.

 さて,理屈はこれぐらいにして,取りあえず計算問題を解きましょう.計算問題は,背後にあるメカニズムに比べれば簡単です.これまで通り,自社のMRとMCが等しくなるように生産量を決定するのです.そのため,均衡を導くまでのステップとしては,
Step.1 両企業のMR,MCを導出する.
 これについては特に説明は必要ないでしょう.完全独占の場合と同様にやりましょう.ただし,企業が2つになったために,それぞれの企業の生産量を示す記号が増えますね.
Step.2 それぞれの企業別に,「MR=MC」の式から最適反応を導く.
 MR=MCの式を立てると,両企業が(相手の生産量を踏まえて)生産量をいくらにすべきかが式の形で出てきます.相手企業の生産量はまだ決まっていませんが,それさえわかれば自社の生産量がわかるところまできました.
Step.3 両企業の最適反応の連立方程式を解く.
 これにより両企業の生産量が具体的な数値として表れます.
(おまけ Step.4 価格も計算する.)
 Step.3で出てきた生産量を需要関数に入れると価格もわかります.

 ちなみに,クールノー均衡は複占を非協力,同時手番ゲームとして解いたときの均衡でしたが,協力,同時手番ゲームである場合や,非協力,逐次手番ゲームとして解くことも可能です.これらについては公務員試験(行政職)で出題される場合があるので,3年次配当科目の総合政策演習B1②で説明します.

 クールノー均衡も慣れればそれほど難しくないので,配った例題で復習しましょうね.ちなみに,次のテキストに複占の詳しい説明があります.わかりにくかったという人はぜひ読んでみましょう.図書館にありますよ.
N.G.マンキュー『マンキュー経済学①ミクロ編』東洋経済新報社

 次回は寡占と独占的競争を説明します.

【中間試験について】
 そうそう,皆さんの希望を尊重して,中間試験をすることになりました.
日時:11月11日(水)4限(ミクロの授業内にて)
範囲:ゲーム理論,独占市場(完全独占,複占,寡占,独占的競争)
配点:30点(期末の配点は70点)
持ち込み:一切不可

総合政策演習B1② 第6回

 今回は余剰分析です.

【授業の内容】
 余剰分析の基本的なパターンとしては,完全競争市場における社会的余剰と,政府による介入(課税,補助金,数量・価格制限)や市場の失敗(独占)が発生した時の社会的余剰を比較するというものがあります.もちろん前者の方が大きく,後者の(前者と比較したときの)社会的余剰の減少分は死荷重と呼ばれます.

 今回はこのような基本的なパターンのうち,特に課税による死荷重の発生についての計算をしました.公務員試験で出題される課税方法は,従量税(ガソリン税のように,量当たりいくら,の税金を課す方式)と,従価税(消費税のように,価格に対して何%,の税金を課す方式)がよく出てきます.どちらの方式であっても,限界費用にある操作をすることで課税を表現できます.
 また,補助金についての問題も少しだけ説明しました.かつての日本では米についてこのような補助金による農家保護政策が採られていましたが,現在は米価は自由化されています.

 来週も余剰分析の続きです.予習・復習を忘れずに.

2009年10月28日水曜日

経済学A 第6回

 今回のテーマは年金です.皆さんの人生で避けて通れない話題なので,きちんと理解しておきましょう.

【授業の内容】
 まず言っておきますが,この授業の目的は年金の具体的な話ではありません.「いくら払うのか?」,「いつからもらえるか?」,「どれぐらいもらえるか?」という話は,社会に出ると知る機会はいくらでもあります.
 この授業ではむしろ大枠を理解してもらうことを目的としています.つまり「社会保障とは何か?」,「年金とはどのような制度なのか?」,「賦課方式と積立方式はどのように違うのか?」を理解することです.もちろん,20歳になると強制的に加入するシステムなので,直近の話として「在学中はどうするべきか?」については具体的に説明しましたね.

 まず社会保障とは何かですが,大雑把に言うと,困っている人を社会全体で助けるシステムと思って良いでしょう.年金もかつては存在しませんでした(全国民が年金に加入することになったのは1961年のことです).「それまでは老人は生きていけなかったのか?」というと,もちろんそんなことはなく,家族あるいは所属する共同体が老人を養っていました.しかし,近代になり核家族化が進み,一人暮らしの老人も増えてきました.そのため,年金などの公的な社会保障システムにより経済的・社会的弱者を救済する必要が出てきたのです.
 社会保障のやり方は2種類あります.保険的方法と扶助的方法です.年金は前者です.というのも,我々は「年金」と呼んでいますが,正確には「国民年金保険」と言います.この他,保険的方法による社会保障の例としては,健康保険,介護保険,失業保険などがあります.いずれも,保険料を支払った人だけが利用できます.つまり受益者負担なのです.一方の扶助的方法の例としては,児童福祉,生活保護,災害援助などがあります.こちらは保険料を支払う必要はなく,(救済すべき人であると認定されれば)誰もが利用できます.年金も社会保障の1つであると考えれば,扶助的方法,つまり保険料収入に頼らず,すべて税金から賄うべきであると考えることもできます.実際,消費税率を上げて社会保障のための目的税にすべきだという意見は以前からあります.

 このように年金保険とは,保険料(+国庫負担)として集めたお金を,高齢者に年金として給付する仕組みになっています.ただ,この保険料の徴収と給付のやり方は,2つのパターンに分けられます.1つは積立方式,もう1つは賦課方式です.
 積立方式とは,積立貯金のように,各自が保険料を将来の自分のために積み立て,老後に給付を受けるというものです.一方の賦課方式は,現役世代が払った保険料をその時代の高齢者にそのまま給付するというものです.
 前者は少子高齢化の影響を受けませんが,デメリットとしてインフレに弱いという特徴があります.わずかなインフレも年金のように,納付から給付まで長期に渡る場合では大きな影響を受けます.そのため積立方式はあまり年金向けとは言えません.また積立方式なら,政府に頼らずとも民間の金融機関で同じサービスを受けることができるので,わざわざ政府がやる必要性は少ないでしょう.
 後者の賦課方式は,インフレの影響を受けませんが,デメリットとして少子高齢化に弱いという特徴があります.そのため,現在の日本のように急速な少子高齢化が進む状況では,現役世代の負担を大きく,もしくは給付を少なくせざるをえません.

 このように年金の仕組みを理解した上で,年金に入るべきかどうかを考えてみましょう.まだ判断できない,という人も,とりあえずは20歳になったら学生納付特例制度を使って,払う意思があることを示しておきましょう.実際に払うかどうかは,就職してからでも考えましょう.

2009年10月26日月曜日

ミクロ経済学ベイシックⅡ 第5回

 今回は完全独占の復習(および完全独占のケースの余剰分析)と,次回の複占の予備知識として偏微分のやり方を確認しました.

【授業の内容】
 前回とほとんど同じような独占の計算をわざわざしたのには理由があります.それは次回の複占,そしてその先に待ちかまえる寡占や独占的競争においても,同じ考え方が必要となるため,基礎をしっかり固めて欲しいと思ったからです.
 その考え方とは,「利潤を最大にするためには限界収入と限界費用が等しくなるように生産するべき」ということです.これを計算できることが(取りあえず期末テストのことを考えれば)必須です.

 また,このように完全独占の場合,完全競争市場と比べて,どれだけ社会的余剰が減少してしまうのか(死荷重が発生するのか)という計算もしました.わかりにくかった点もあると思うので,また例題を用意したいと思います.

 次回は複占(売り手が2社の場合の独占)を説明します.ここがおそらくこの講義の山場だと思います(難易度の点で).以前に学んだゲーム理論のナッシュ均衡の考え方,そして偏微分も出てきます.

総合政策演習B1② 第5回

 今回はゲーム理論の混合戦略におけるナッシュ均衡の説明をした後,価格メカニズムの問題を解きました.

【授業の内容】
 混合戦略のナッシュ均衡は,「なぜそのような計算をするか」を理解するのは少々ややこしいのですが,取りあえず答えを導き出すことを目的とするのであればそれほど難しくありません.期待値の計算さえできれば大丈夫です.ミクロ経済学ベイシックⅡでは計算の意味について説明しました.もし気になれば,ゲーム理論についての入門的なテキストを読むと良いでしょう.図書館にも何種類かのテキストがあります.

 価格メカニズムは前回の独占市場に比べれば非常に簡単です.ワルラス型,マーシャル型,クモの巣理論の区別さえできれば良いのですが,皆さん,少し説明したら問題なく理解していたようですね.後は定期的に復習さえすれば点を稼ぎやすい分野でしょう.

【課題】
・テーマ15の復習
・テーマ16の必修問題,および設問2と3を解けるように

2009年10月23日金曜日

基礎総合演習B 第3回

 今回は株について少し学びました.また各チームに発表してもらいました.

【授業の内容】
 まず,「はてな」の「グループウェア」の使い方を説明しました.

 続いて,チーム花山に「はてな」の使い方を,チームCocoaに「野村のバーチャル株式投資倶楽部」のルールについて,最後にチーム文理に「(チーム文理が買った株が)なぜ上がるのか?」について,それぞれ発表してもらいました.

 初めての発表であったので,声が小さかったり,文章を読み上げる形になったりで,発表の中身ではなく,そのやり方には改善すべき点がいくつかありました.今後,他のチームの発表を見て,良い点を取り入れていきましょう.

 次回からは毎回の内容は「はてな」の「グループウェア」の方に書くことにします.

【課題】
・(はてなを使う練習として)各自がyoutubeのオススメ動画を紹介する.
・(チーム文理は)トヨタ自動車の過去1年の株価の変動について,なぜ値上がり・値下がりしたのか理由を考えてくる.

【株価について今回わかったこと・考えたこと】
・業界最大手は株価が上がるのでは?
・売上げが増えている企業の株価は上がるのでは?
・サブプライムローン問題(→景気低迷)によって株価が下がった?
 それぞれ本当でしょうか?今後調べていきましょう.

2009年10月22日木曜日

経済学A 第5回

 今回は物価とは何か,そして名目値と実質値の違いを説明しました.最終的には,インフレは良いのか?それとも悪いのか?を理解できるようになったと思います.今回の内容は,次回の年金について理解するためのステップになっています.

【授業の内容】
 まず,物価とは何かを説明しました.「これが物価だ!」というものはありません.というのは,同じ財(モノやサービス)をとっても,我々消費者にとっての価格だけでなく,メーカーが販売するときの価格もありますし,問屋が小売店に売るときの価格,など様々な価格があるからです.そのため,物価を測るためには以下のような複数の指標が用いられます.
・消費者物価指数(CPI, Comsumer Price Index)
・企業物価指数
・GDPデフレータ など

 物価というのは固定したものではありません.場所により,時代により変化しています.場所による違いを横断面の違い,時代による違いを時系列の違い,と呼ぶことがあります.それぞれの具体例をいくつか紹介しました.
 では,なぜそのように物価は変動するのかについて理解するためには,第2回に学んだ「ダイヤモンドはなぜ高いのか?」が役に立ちます.その結論は,需要と供給のバランスにより価格が決まるということでした.そのため,当然ながら,物価の変動の原因は,需要と供給のいずれか,もしくは両方が変動したためでしょう.需要の増加による物価上昇はDemand Pull Inflation,供給側のコスト上昇による物価上昇はCost Push Inflationとそれぞれ呼ばれます.

 さて,本題である名目値と実質値の違いですが,授業では,所得とGDPを例にとり,それぞれの違いを説明しました.我々は普段,名目値に目を奪われがちですが,本質的な理解のためには実質値に目を向けなければなりません.
 名目所得と実質所得の例としては,徳島と東京に住む人のどちらが豊かなのかを考えてみましょう.名目所得で言えば圧倒的に東京です.東京は全国の都道府県の中でも飛び抜けて県民1人あたりの所得が高いです.徳島は全国22位と中位です.(2005年のデータ,総務省統計局「統計でみる都道府県のすがた2009」http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001016650&cycode=0
 しかし,実際に人々の生活が豊かなのかを考えるためには,この比較だけでは不十分です.なぜなら東京と徳島では物価,とくに住宅費が大きく違うからです.そのため,それぞれの地域の物価の違いを考慮しなければ実質的な豊かさ(実質所得)はわかりません.計算してみると,やっぱり東京の方が実質所得も高いのですが,差はある程度縮まります.また,東京は所得格差が大きいと推測できるので,20代のサラリーマンなどで比較すると実質所得にあまり差はないように思います.

 最後にインフレやデフレは良いのか,悪いのかを立場を変えて考えました.働いていて収入がある層にとってはある程度のインフレは害はないでしょう.物価に比例して賃金も増加するためです.ただし,すでにリタイヤしており,過去の貯蓄で生活している高齢者にとってはインフレは貯蓄額を実質的に減らしてしまう(貯蓄の価値を失わせる)というデメリットが大きいです.一方,借金を抱えている人にとってはインフレはありがたい現象です.なぜなら物価の上昇は借金の実質的な価値を減らしてくれるからです.

 来週は年金について説明します.

2009年10月17日土曜日

経済数学入門 第5回

 今回は指数です.

【授業の内容】
 メインは指数だったのですが,前回の残りの,1次不等式と2次不等式のグラフが残っていたので説明しました.とはいえ,1次関数と2次関数が理解できていれば困ることはないはずです.

 さて,指数ですが,2年次以降のマクロ経済学でも出てきますし,指数を利用したn進法は就職活動時に筆記試験で問われることがありますから,全員できてほしいところです.
 まずは素因数分解からいきましょう.指数を理解するためには素因数分解ができることが不可欠です.
 素因数分解ができれば後は指数法則に則って変形していくだけです.慣れると難しくはないのですが,慣れないだけに,勘でやると間違いますよ.

【呼出】
 前回の小テストの件で呼び出された人はきちんと全学共通教育センターに来ましょうね.来なかったら再度呼び出しますよ.

総合政策演習D 第5回

 今回で僕の担当は終わります.みんなのやる気をどこまで起こすことができたのか,やや心配が残っています.

【授業の内容】
 いつも通りに問題を解きました.フローチャートやブラックボックスなどは,慣れないだけに戸惑うかもしれませんが,ひねりがないのですぐに得意になると思います.

 さて,11月3日のリクナビですが,参加希望者は48名になったそうです.そのため,費用は1人あたり3000円を少し上回るぐらいでいけそうです.これについては,また改めてキャリアサポートから連絡があると思います.注意しておいてください.

 好評なようなので,今後もバスを出せたらいいですね.参加者が多ければ,可能性はあると思います.またキャリアサポートと相談してみます.

経済学Ⅰ 第4回

 今回は需要の内訳について説明しました.

【授業の内容】
 まず前回の復習として,名目GDPと実質GDPについて説明しました.名目GDPはその年の物価で測ったものであるのに対して,実質GDPは基準年の物価で測るので,物価変動の影響を受けない,というものでした.

 さて,今日は需要の内訳である,消費,投資,政府支出,輸出入について説明しました.

・消費 
 何が消費を決めるのかについては,以下の3つの仮説を説明しました.
1.ケインズ型消費関数 
2.恒常所得仮説 
3.ライフサイクル仮説
 いずれも所得が増えると消費は増えるのですが,恒常所得仮説は,変動所得と一時所得に分類,ライフサイクル仮説は人生のどの時点にいるかで消費行動が変わる,という特徴がありました.

・投資 
 投資についても,その原因となる3つを説明しました. 
1.利子率 
2.アニマルスピリッツ 
3.将来予測
 このうち,利子率と投資の関係はぜひ覚えましょう.利子率はお金のレンタル代です.お金のレンタル代が安いときは,企業がお金を借りやすいので,様々なプロジェクトに投資するでしょう.一方,利子率が高いときは収益率がよっぽど高くないと投資しないでしょう.つまり利子率が下がると投資は増えるのです.

・政府支出
 政府支出は政府がその大きさを決めるわけですが,果たしてなぜ必要なのでしょう.その理由としてここでは2つを挙げました.
1.市場の失敗による公共財の供給 
2.需要不足
 景気が悪いと政府支出が増えることが多いのですが,絶対ではありません.

・輸出と輸入
 最後に輸出と輸入の大きさを決めるものを考えました.輸出と輸入は立場が異なるだけで,ある国からある国へと輸出することは変わりません.そのため,一方さえわかれば,もう一方は簡単に推測できます.
 というわけで,日本の輸出を決めるものだけ考えれば良いのですが,それは2つありました. 
1.輸出先の景気 
2.為替レート

 このうち,為替レートについては今後,時間を取ってしっかりと説明します.

ミクロ経済学ベイシックⅡ 第4回

 今回から独占市場です.独占市場のうち,複占のところでゲーム理論を使うから,ナッシュ均衡がどんな概念だったか忘れないでくださいね.

【授業の内容】
 独占市場とは,売り手の数(もしくは買い手の数)が少ない市場のことです.授業では売り手独占(売り手の数が少ない場合)をとりあげます.独占市場には様々な形態があり,売り手が1社だけの場合を完全独占(狭義の独占)と呼び,その他,売り手が2社の複占,売り手が数社の寡占(かせん),売り手が多数(だけど一時的な独占である)独占的競争に分類されます.

 今回は上記のうち,基礎となる完全独占について学びました.完全独占と対極にあるのは完全競争市場です.完全独占は売り手が1社だけなので競争はまったくありません.対して完全競争は(その名の通りですが)競争は熾烈です.
 完全競争市場では企業には,価格の決定権はありません(価格受容者).市場で決まる価格を受け入れることしかできません.対して完全独占では売り手が,自分にとって最も都合が良いように(利潤が最大になるように)好きな価格をつけることができます(価格決定者).
 さて,では利潤が最大になる価格とはどんな価格なのでしょう.これを考えるときに必要となるのが限界収入と限界利潤という概念です.限界収入とは「新たにもう1単位生産したときの収入の変化分」のことであり,限界費用は「新たにもう1単位生産したときの費用の増加分」のことです.この2つを比較することで最適な生産量がわかります.なぜなら,限界費用より限界収入が高いのであれば,生産すればするほど利潤が増えるからです.逆に限界費用より限界収入が低いのであれば,生産を減らした方が利潤は増えます.つまり,これらから「限界収入と限界費用が等しくなるように生産する」ことにより,利潤が最大になります.また,独占企業は,この生産量分の需要があるような価格をつけることになります.
 後は,数値例を使って,最適な生産量,そして最適な価格を導き出せるか,ということですが,みんなの様子を見る限りだと,だいたいできてそうでしたね.

総合政策演習B1② 第4回

 今回は複占の続きからです.

【授業の内容】
 複占の解法は,クールノー均衡,シュタッケルベルグ均衡,共謀の3種類が必要となるようです(ベルトラン均衡はあまりでないみたいです).
 クールノーはゲーム理論で言えば,同時手番,非協力ゲーム,シュタッケルベルグは逐次手番,非協力ゲーム,共謀は同時手番,協力ゲームという位置づけです.それぞれ解法が似ていて紛らわしいので,違いに注意しましょう.

 また,独占市場のうち,寡占と独占的競争の問題も解きました.それぞれ,セッティングだけでなく,グラフの意味も理解しましょうね.

基礎総合演習B 第2回

 今回から本格的に演習ですね.

【授業の内容】
 この演習の目的は「自分の頭で考えること」と「コミュニケーション能力を養うこと」です.特に前者は,みんな「自分の頭で考えてるよ」と思いながらも,これまでの教育過程で,どうしても暗記中心になっているきらいがあります.「どこかにある答えを探す」のではダメです.なぜなら現実の多くの問題は本やネットで探しても答えがないからです.

 さて,ではどうやって自分の頭で考えるか,ですが,この演習では株を使いましょう.株価については「確実に上がる株」や「確実に下がる株」なんてありません.(あったら僕ももっと豊かなはずですし…)演習では「野村のバーチャル株式投資倶楽部」を利用して,資金を運用してもらいます.さて,演習内でのルールは,
1.3人1チームとしてエントリーする
2.100万円を演習最終日まで維持することを目的とする
3.常に1万円以上を株式として持つこと
4.演習最終日に100万円を切って,かつ最下位のチームにはペナルティー

 また,チーム間,そして演習メンバー内でのコミュニケーション手段として「はてな」を利用しましょう.というわけで,はてなには全員が登録しました.

【次回までの課題】
Aチーム(チーム文理):買った株のプレゼン「なぜこの株は上がるのか?」
Bチーム(チーム花山):「はてな」をどんな風に利用できるか?どこがおもしろいか?
Cチーム(チームココア):「バーチャル株式投資倶楽部」のルール,使い方の説明

経済学A 第4回

 前回は古典派の誕生,そして古典派が世界大恐慌に直面して有効な政策を提示することができなかったところまで説明しました.

【授業の内容】
 さて,その時に経済学の表舞台に現れたのがケインズ派です.ケインズ派の代表格は,名前の通りケインズです.
 古典派とケインズ派は,経済の根本の理解が大きく異なります.古典派は供給(総生産)の大きさが需要(総支出)を決める「セイ法則」を信じていましたが,一方のケインズ派は需要の大きさが供給を決めるという「有効需要の原理」を信じていました.この違いは現実の政策に大きな違いをもたらします.セイ法則によれば,需要は供給の結果として生まれるので,重要ではありません.経済を成長させるためには,とにかく生産能力を高めれば良いのです.一方,有効需要の原理によれば,需要の大きさは供給の大きさ(つまりGDP)を決めるため,非常に重要です.つまり,経済成長(や景気回復)させるためには需要を大きくしないといけないわけです.この考えの下,アメリカではルーズベルト大統領がニューディール政策を実施し,大不況から抜け出すことに成功します.
 もう1つ,古典派とケインズ派の大きな違いがあります.それは「市場に対する信頼」です.古典派は「神の見えざる手」に象徴されるように,市場の機能を信頼しています.そのため,政府は最小限の介入しかしないことになります.一方のケインズ派は市場を信頼していません.市場は不完全なもの(市場の失敗)であるため,政府が積極的に介入すべきだと考えています.
 大恐慌以来,ケインズ派は経済の主役であったと言っても良いかもしれませんが,一部の国ではその座から引きずりおろされることになります.その国とはケインズを生んだイギリス,そしてアメリカや日本などです.

 ケインズ派の積極的な介入は,経済の下支えの役割を果たすことに成功しましたが,長期的に見ると弊害ももたらします.短期的には有効な薬なのですが,長期的に薬を飲み続けることによって,その薬の副作用である,財政赤字が蓄積され,巨額なものになってしまいました.政府が積極的にお金を使うと景気は回復するかもしれませんが,その財源は税収です.税金が足りない場合には国債を発行して(国の借金)賄います.借金である以上,時期がくれば返済しなければなりませんね.あまりに返済額が多くなると,税金を集めてもその多くは返済に充てられることになり,有効に活用することができなくなります.
 このように巨額の財政赤字を抱えた国々はケインズ派を捨て,改めて古典派(新古典派)に回帰します.つまり,政府の役割を最低限にし,民間の活力に期待するのです.その考えの下,日本でも1980年代には,国鉄,電電,専売の3公社が民営化されました.また規制緩和により,民間同士の競争が促進された時代でもあります.
 新古典派は,市場における競争を重視します.ただし,競争は勝者だけでなく敗者も生み出します.そのため,新古典派的な政策を良しとする小泉政権下で貧困や格差が社会問題として顕在化したのも当然かもしれません.

 さて,結論としてケインズ派と新古典派,言い換えれば大きな政府と小さな政府,これらのどちらが良いのでしょうか?その答えは「何を目的とするか?」によって異なるでしょう.おそらく「あまり経済成長しなくても,とにかく平等な社会が理想的だ」と考える人は大きな政府が良いと考えるでしょうし,「少しぐらい格差が生まれても,自由な競争により経済が成長することが理想的だ」と考えれば小さな政府が良いのかもしれません.
 僕個人としては,大きすぎる政府には反対です.やはり新しい技術やサービスは,自由で公正な競争があってこそ生まれるだろうと考えるからです.結果として貧困が生まれること,格差ができてしまうこと,これらは望ましいことではありませんが許容されると思います(ここは意見が分かれると思いますが).許容してはいけないのは,格差や社会階層が固定してしまうことです.つまり,一度貧困層になってしまうと努力しても抜け出すチャンスがない社会,貧しい家庭に生まれると十分な教育を受けられない社会,このような社会であってはいけません.それは思想の問題ではありません.そのような社会は,全体として効率の悪い,劣った社会であるからです.ただ,残念ながら日本は少しずつ,そのような社会になってしまうのではと危惧しています.

2009年10月11日日曜日

経済数学入門 第4回

 今回も関数です.2次関数のグラフを中心に説明しました.

【授業の内容】
 冒頭に紹介したように,民間企業の筆記試験でも2次関数のグラフの問題が出ることがあります.今からであれば,全員十分に対応できるので,しっかり授業についてきてくださいね.

 前回は2次関数の放物線とx軸との交点の出し方(2次方程式の解)の所まででした.今回は2次関数の頂点の導出方法を説明し,グラフを描いたり,2次関数に具体的な数字を入れてみたりしました.

 そして最後にミニテストをして,わかっていないと思える人は全学共通教育センターに呼び出しました.個別に学習すればすぐ理解できるので,恐れず来てください.

 今回は課題はありません.

総合政策演習D 第4回

 演習Dももう第4回,僕の担当も来週で終わってしまいます.それまでにみんなが積極的に活動を始める姿を見たいものです.

【授業の内容】
 今回も問題を解きました.資料解釈などは社会に出てからも実際に必要となりそうですね.

 今回はAERAの記事にあった「落ちても『いい』会社」を紹介しました.「落ちても特に困らない,どうでもいい会社」という意味ではなく,「たとえ落ちても,受けることにメリットのある会社」という意味です.学生からは「どこを受けて良いかわからない」という声をよく聞きますが,この記事に取り上げられていた全ての企業をまず受けてみてはどうでしょう?

 また,リクナビのイベントのバスの話をしましたが,現在,キャリアサポートで受付中です.また先着50名程度で締め切るので,火曜日にぜひ申し込んでください.

経済学Ⅰ 第4回

 今回は名目値と実質値について説明しました.

【授業の内容】
 前回の後半に物価の話をしましたが,その続きです.物価は時系列に変動しますし,横断面で見ても違いがあります.それらの具体例をいくつか紹介しました.また,物価はなぜ上昇するのかを,ディマンド・プル・インフレーションコスト・プッシュ・インフレーションとに分類しました.

 さて,本題は名目値実質値の違いです.中身の説明の前に,数値を使った具体例で,名目所得と実質所得の違い,名目GDPと実質GDPの違いについて説明しました.それらの具体例からわかったことは,我々はついつい名目値に目を奪われがちですが,所得やGDPの本質をつかむために実質値にも目を向ける必要があります.
 名目所得の例は,労働者が受け取る賃金です.この賃金が10%増えると,労働者は10%豊かになったと断言することはできません.なぜなら賃金が増える間に物価はどのように変動したかがわかっていないからです.賃金が10%増えたとしても,その間に物価が20%増えていたとすれば,賃金の名目値は増えますが,この労働者の生活は貧しくなってしまいます.我々が所得に注目するとき,それは豊かさを測るモノサシにするためでしょう.しかし,名目値の変化を見ても豊かになったかどうかはわかりません.
 同様にGDPについても名目値ではなく実質値に着目する必要があります.名目GDPは物価が変動することで増えたり減ったりするため,名目GDPだけを見ても,その国の本当の経済力がどんなものなのか,昨年と比べて経済成長をしたのか,などについて正確なことがわかりません.そのため,物価変動の影響を受けない実質GDPも併せて見る必要があります.

 今回は確認のためのミニテストとして,実質GDPと物価の関係を問う問題を出しました.正答率はもう少し高いかと思ったのですが….

2009年10月10日土曜日

総合政策演習B1② 第3回

 今回から複占に入ります.ミクロで最も難しい(ややこしい)のがここだと思います.そのため,じっくり時間をかけて説明します.

【授業の内容】
 売り手が少数である独占市場は,売り手の数によって4つに分類されます.
1社:完全独占(狭義の独占)
2社:複占
数社:寡占
多数:独占的競争
 最後の独占的競争は実際には独占ではありませんが,一時的に独占状態になるので,独占市場について考える際に一緒に説明されるようです.

 さて,今回はこのうち,売り手が2社である複占です.この複占が難題で,問題の解き方が複数あります.それぞれの特徴をきちんと理解することが大事になってきます.今回はそのうち,2社が同時に生産量を決定するクールノー均衡と,1社が先に生産量を決定し,それを見てもう1社が生産量を決定するシュタッケルベルグ均衡という2種類の問題と解きました.紛らわしいので,必ず復習しましょう.

ミクロ経済学ベイシックⅡ 第3回

 今回もゲーム理論です.

【授業の内容】
 今回はまず,いきなり難題である混合戦略のナッシュ均衡を説明しました.確率が入ってくるのでややこしくなりますが,これで解ける問題の範囲が飛躍的に増えます.が,ちょっと難しいでしょうから期末テストには出さないことにしましょう.

 続いて,ミニマックス戦略を説明しました.これも同時手番ゲームでした.ただし,以前にやった問題とは異なり,目的は利得の最大化ではなく,最悪の場合にいかに利得を増やすか,です.そのため,ナッシュ均衡とは必ずしも答えが同じになるとは限りません.

 ここまですべて同時手番ゲームの説明でしたが,最後に逐次手番ゲーム(時間の流れがあるゲーム)を説明しました.トランプのババ抜きなども逐次手番ですね.
 逐次手番ゲームでは,最後に行動するプレイヤーの戦略を決定し,そこから時間を遡って戦略を決定していくという「後ろ向き帰納法」という解法を用います.おまけとして1万円配分ゲームもやりましたが,ここでも「後ろ向き帰納法」を使って解きました.

 次回から,ナッシュ均衡の考え方を使って複占(2社による独占)の問題を考えます.かなり手強いので覚悟してくださいね.

基礎総合演習B 第1回

 今回は演習メンバーの顔合わせです.みんな結構話が弾んでいたようなので何よりです.

【授業の内容】
 今回はチーム分けをして,チーム名やリーダーを決めてもらいました.このチーム名で野村のバーチャル株式投資倶楽部にエントリーします.

 というわけで,各チームでエントリーしておいてください.またメンバー全員がはてなに登録しておくように.
 次回からは「はてな」の方に授業の内容を書くことにしますね.

経済学A 第3回

 今回はマクロ経済学をとりあげました.マクロ経済学とは,一国の経済全体を俯瞰して捉える経済学の主要な分野の1つです.なお,来週も引き続き,マクロをやります.

【授業の内容】
 まず,景気や経済成長の指標であるGDPとは何かを説明しました.GDPとは,何をどれだけ作ったかではなく,どれだけ付加価値を産み出せたかを示しています.例として日本の自動車産業を用いました.そんなに難しいものではありませんでしたよね?また日本のGDPの大きさは,約500兆円ということだけは覚えておいてください.マクロ経済の話をしていると,金額の単位が大きすぎてイメージしづらいので,GDPの大きさをモノサシにしましょう.

 続いて,経済学(と経済)の歴史について説明しました.大きな政府と小さな政府や新自由主義って何か?なぜ規制緩和するのか?政府が道路を造るとどんな効果があるのか?など様々な知識を,歴史と一緒に説明します.
 今回は経済学の誕生として,古典派の人たちが何を考えていたかを主に説明しました.古典派の人たちの主張を簡単にまとめると,「市場の働きを信頼しており,政府が市場に介入すると,そのメカニズムが乱されてしまう.そのため,政府は何もしない方が良い」というものでした.政府は最低限だけの役割(警察,国防,消防など)を行い,後は民間に任せるというものです.
 しかし,このような古典派経済学は,1920年代後半に起きた世界大恐慌に際して無力でした.大不況であることがわかっても,有効な解決策がないからです.そこで,このような非常時に有効な薬をケインズたちが提示します.
 ということで,次回はケインズの登場から話します.

経済数学入門 第3回

 第3回について書くのを忘れてました.第3回は関数の続きで,1次関数,2次関数の確認です.

【授業の内容】
 前回は関数とは何かについて説明しましたが,今回は具体的に1次関数と2次関数を取り上げました.といっても,確認程度で,1次関数のグラフの描き方,そして2次関数のグラフを描くために,2次方程式の解の求め方について説明しました.

 今回の内容は「問題ない」と思っている人も多いでしょうが,関数に意味を持たせること,グラフの意味を読み取ること,は高校までの数学ではそれほど重視されてなかったでしょうから,新たに学ぶこともあるのではないでしょうか.
 今回で言えば,特に1次関数の傾きは経済学で非常に重要です.傾きとは,ある変数が1単位変化したときに,もう1つの変数がどれだけ変化したかという割合のことです.これは経済学では「限界」という言葉で表現されます(例:限界費用,限界効用など).
 また,2次関数に関連して,2次方程式の解は何を意味しているのか,2次関数の頂点の導出と2次方程式の解とがゴチャゴチャになっている人が多いので,今回は2次方程式の解の求め方,そしてそれがグラフにおいて何を意味しているかを確認しました.

2009年10月4日日曜日

総合政策演習D 第3回

 今回もテストを行い,解説しました.

【授業の内容】
 というわけで,演習系科目はあまり書くことがないですね.

 ともかく,就活サイトが10月に入ってリニューアルし,全国的に一気に就活モードに入りました.昨日も,3年生対象の説明会の様子をニュースで見ました.みなさん出遅れないようにしましょうね.
 ちなみに後期に入って,これまで行ったテストの平均点ですが,昨年度に比べるとちょうど1点低いです.10点満点ですので,ちょっと心配しています.世間では就職が厳しいからと,気合いを入れ直している3年生が多いなかで,ちょっと危機感に乏しいのではないでしょうか?今できること,やらなければならないことはたくさんあるはずですが,皆さんがそれをやっているようには見えません.何をやるべきか自分で考えましょう.自分で考えても何をやって良いかわからなければ,次はどうするべきですか?

 次回の範囲はテキストのpp.124-155です.

経済学Ⅰ 第3回

 今回は前回に引き続き,経済学の流れを説明しました.また物価についても説明しました.

【授業の内容】
 前回はケインズ派の台頭まで話しましたね.今回はその続き,ですが,せっかくなので復習も兼ねて古典派から振り返りました.
 市場を信頼し,最低限の介入しかしない古典派は世界大恐慌に際して,有効な打開策を見つけることができませんでした.その時,積極的な財政支出を唱えたケインズ(ケインズ派)が脚光を浴びます.ケインズ派は市場を信頼しておらず,市場が上手く働かない場合(市場の失敗)には,政府が積極的に介入すべきだと考えます.有効需要の原理と呼ばれる,需要の大きさが供給(GDP)を決めると考えを持っているので,景気が悪いとき(GDPが伸び悩んでいるとき)は需要が不足していると考えます.そのため,需要が足りないのなら,景気回復策として政府がその需要を補うように支出することになります.
 さて,このようにケインズ派は世界大恐慌以来,経済学の世界のみならず,現実経済にも大きな影響を持っていたわけですが,ケインズ派の積極的な財政支出は,日米などで巨額の財政赤字(政府の借金増大)という副作用をもたらしてしまいました.そこで改めて注目されたのは,市場を信頼する(政府に頼りすぎない)古典派です.復権した古典派(新古典派)によれば,政府による経済活動は効率が悪いだけでなく,民間企業の活力を削いでしまうという欠点があります.そのため,政府は最低限の経済活動だけを行うべきとして,公営企業の民営化を進め,また民間企業の活力を生むべく規制緩和を行って企業間の競争を促しました.日本でも1980年代には,国鉄(→JR),電電公社(→NTT),専売公社(→JT)の3公社が民営化されることになりました.またその後,バブル後の失われた10年を経て誕生した小泉内閣においても,郵政民営化が実現したことは記憶に新しいですね.
 このように,民営化とは民間企業ができることは民間にやらせることです.その根拠は民営化した方が効率的だから,という理由なのですが,実際に鉄道,電信の両分野は民営化後にずいぶん効率が良くなりました.新古典派のもとでは,政府は最低限の経済活動しか行わないので,財政支出が少ない分だけ税金も少なくて構いません.このような低負担・低福祉を基調とする政府は,小さな政府と呼ばれ,税金が高い代わりに福祉水準も高い(高負担・高福祉大きな政府派としばしば比較されます.
 新古典派は経済の活力を重視するため,企業による競争も活発になり,経済全体の成長力も高まるでしょう.しかしデメリットとしては,激しい競争により敗者(貧困層)が生まれることです.日本において,貧困,格差社会,ワーキング・プアーという言葉が目立つようになったのも小泉政権以降のことですね.
 大きな政府と小さな政府はどちらが正しい,間違っているというものではありません.我々がどちらが望ましいと考えるか,我々はどんな世界に住みたいのか,という好みの問題であると言って良いかもしれません.税金は安いけれど,福祉はしっかりしてくれる(低負担・高福祉)政府というのは理想的ですが,現実的ではありません(産油国などの例外は別として…).我々は闇雲に税率アップに反対するのではなく,税金が高くなった代わりに政府は何をしてくれるのか,税金が有効に使われているかに注目すべきだと,僕は考えます.

2009年10月2日金曜日

ミクロ経済学ベイシックⅡ 第2回

 今回は本格的にゲーム理論に入りました.

【授業の内容】
 今回は,同時手番ゲームを「支配される戦略の逐次消去」と「ナッシュ均衡(純粋戦略)」で解きました.
 前回,少しゲームについて説明しましたが,今回はきちんと定義しました.

用語説明
ゲーム:相手がおり,それぞれの行動が互いに影響を及ぼすような状況のこと.
戦略:それぞれのプレイヤーが選ぶ行動のこと.
利得:ゲームの結果,プレイヤーが得る利益
同時手番:プレイヤーが同時に戦略を決定すること(⇔逐次手番)
逐次手番:プレイヤーが順に戦略を決定すること(⇔同時手番)
完備情報:それぞれのプレイヤーが利得表の中身を知っており,またそれぞれが知っていることもわかっている状態(⇔不完備情報)
完全情報:(逐次手番ゲームにおいて)過去のそれぞれのプレイヤーの行動を知っていること(⇔不完全情報)
非協力ゲーム:それぞれのプレイヤーは利己的であること(協力ゲーム)

 今回は,同時手番,完備情報,非協力ゲームを考えました.まず,このゲームの解き方として,前回の囚人のジレンマゲームで使った,「支配される戦略の逐次消去」という考え方(解法)を説明しました.「相手がどんな戦略を選ぼうとも,戦略Aよりも戦略Bの方が同等以上の利得を得られる」場合には,使い途のない戦略A(これを支配される戦略と呼ぶ)は選ばないはずです.つまりこのような戦略は消去しても構いません.これを繰り返すことで,それぞれのプレイヤーが取るべき戦略が1つに定まることがあります.これを「支配される戦略の逐次消去」と呼びます.
 ただし,「支配される戦略の逐次消去」の力は限的的です.解けるゲームもありますが,解けないゲームもあります.そこで,「支配される戦略の逐次消去」で解けるゲームはすべて解け,さらに「支配される戦略の逐次消去」で解けない問題も(場合によっては)解けてしまうという,よりパワフルな解法が「ナッシュ均衡」です.
 「ナッシュ均衡」の定義は,「プレイヤーAの戦略はプレイヤーBの戦略に対する最適反応であり,プレイヤーBの戦略はプレイヤーAの戦略に対する最適反応であるような状態のこと」です.直感的に言えば,それぞれのプレイヤーが相手の裏をかくことができなくなった状態とも言えます.ずいぶんややこしい説明ですが,問題を解くことに限れば非常に簡単に解けたはずです.

 来週は,ミニマックス原理,ナッシュ均衡(混合戦略)および,逐次手番ゲームについて説明したいと思います.
 今回はゲームの課題がありました.来週の講義で提出してください.

総合政策演習B1② 第2回

 今回は完全独占の確認とゲーム理論の問題を解きました.

【授業の内容】
 完全独占については,前回は計算問題ばかりやりましたが,今回はその計算の中身を図で確認する作業です.

 続いてゲーム理論のうち,支配される戦略の逐次消去とナッシュ均衡(純粋戦略)で解ける問題を解きました.

 次週はゲーム理論のつづきと,複占について少しやりたいと思います.今回配った計算基礎の問題はきちんとやってきてください.またテキストのゲーム理論の問題のうち,必修問題,および問題1,2,3を考えてきてください.

 今回みたいに新しく教えることがない時は,この文章も短くなってしまいますね….