2008年12月26日金曜日

経済学Ⅰ 第14回

 今回はIS・LM分析の基礎の前編です.IS・LMの説明と同時にこれまでの復習を兼ねています.

【授業の内容】
 前半は,ちょうど前日にFRBが利下げをし,ゼロ金利政策を採るというニュースが流れたため,これまで説明してきた金融の知識を使って,このニュースを解説しました.これまで学んできたことは確かに現実の世界を反映しているということを理解してもらうためでした.
 後半はIS曲線,つまり財市場が均衡するような利子率とGDPの組合せを導き出すための下準備でした.三面等価の原則,有効需要の原理,需要の内訳など基礎的な事柄を確認しました.本当はIS曲線を描くところまで行きたかったのですが,前半に時間を割きすぎたため,来年に持ち越しです.

 今回は小テストをしました.「日銀が利下げをすると何がおきるか?」というものです.多くの人はきちんとした答えを書いていました.

総合政策演習B1② 第13回

 今回は市場理論と余剰分析についての復習でした.

【授業の内容】
 というわけで,復習なので取り立てて説明することもありません.坦々と問題をこなしました.
 小テストは完全独占と従量税でした.

2008年12月25日木曜日

基礎総合演習B 第12回

 今回は皆さんに「どんな企業に就職したいか?」を考えてもらいました.皆さんにとって企業とはCMで見るもの,商品を売ってる所,というイメージだと思います.世の中には実に多くの知られざる企業が存在します.

【授業の内容】
 というわけで,今回は1人1人にどんな企業に就職したいか,その理由はなぜかを問いかけました.「これまでやってきた話とどんな関係があるんだ?」と思ったかもしれませんが,就職することと株を買うことは少し共通点があることに気づいたと思います.

 また最後に,消費者向けの企業と企業向けの企業が存在することを指摘しました.前者は我々にとって身近な企業(トヨタ,キリンビール,ユニクロ)なので大学生は就職したがりますが,企業向けの企業の中にも優良企業は多数存在します.今回配った生涯賃金ランキングの中にも聞いたことのない企業が多く掲載されていたと思います.キーエンスやアドバンテストは,就活を始めるとようやくわかりますが,社会人にとってはかなり知名度の高い企業です.

経済学A 第12回

 今回はちょうど今,話題になっている日本の財政と税について説明しました.2009年度の歳出が過去最大になる,条件付きで2011年には消費税が10%になる,など,ニュースを見てると財政の話が非常によく出てきます.果たして消費税の税率アップは皆さんの将来にどのような影響を及ぼすのでしょう…?

【授業の内容】
 まずは,国の財政を家計に置き換えて説明しました.こうすると,財政がどれだけ大変な状況にあるかイメージできると思います.月収40万円の家計と考えると,毎月毎月借金が18万円ずつ増えていて,借金の総額が4600万円のようなものです.ただし,普通の家計ならとっくに破産ですが,日本が破産という話は聞きませんね.どうしてでしょう?
 破産しないとしても,この財政赤字はよろしくないので,政府としても借金を減らそうという方向には進んでいます.それが「骨太の方針2006」です.その中身は2011年までにプライマリーバランスを黒字化することだったのですが,昨今の世界的な金融恐慌のために,骨太の方針を転換するのではないかと話題になっています.将来のことを考えて赤字を減らすべきなのか?それとも目の前の不景気を打開すべく政府支出を増やすべきなのか(赤字は増えます)?
 そういう議論のために,ここで大きな政府と小さな政府について復習しました.市場への介入について両者の意見は異なります.市場の不完全性(市場の失敗)を問題視して積極的に介入する大きな政府派と,市場の効率性を重視し最低限の介入しか行わない小さな政府派,これは負担は多いけれど面倒を見てくれる政府と,負担は軽いけれど自己責任を唱える政府という選択にもつながる話です.
 さて続いて,2008年度の当初予算のグラフを参考に,国の収入(歳入)と支出(歳出)の内訳を確認しました.日本政府は何にお金を使っているのでしょう?ニュースでは公務員が無駄遣いしているという話を聞きますが本当なのでしょうか?
 歳出で最も大きな項目は社会保障費でした.社会保障とは,年金,健康保険,介護保険など,困った人をみんなで助ける仕組みのことです.少子高齢化が進む現状では,なかなか社会保障費を削るのは簡単ではないでしょう.
 一方の歳入において最も重要な,税金というのはどんな性質を持っているのでしょう.
 まず,3つの点から税金を分類しました.国税と地方税,直接税と間接税,一般税と目的税です.近年の日本では直接税を減らして間接税を増やす方向に進んでいるようですが,果たしてなぜなのでしょう?またどのような未来になるのでしょうか?「税金はどれも一緒だ!」という乱暴なくくりではなく,それぞれの税の特徴を見てみましょう. 税を評価するための概念として,公平性と公正性を紹介しました.どちらもよく聞く言葉ですが,厳密にそれぞれの意味を確認しました.その上で改めて,直接税の代表である所得税と,間接税の代表である消費税の税率変更が持つ意味を説明しました.

 今後もニュースでは財政の話が多く採り上げられると思います.日本の将来の道筋を占う上でも,少しだけ関心を持つこと(持ち続けること)を意識してください.

ミクロ経済学ベイシックⅡ 第14回

 通常の講義の最終日にテストを行うため,今回でミクロの講義は終了です.その分,1回講義回数が減ってしまうので,補講を行います.(最後に説明します)

【授業の内容】
 前回に引き続き国際貿易のミクロ理論を説明しました.

 前回は2国間の自由貿易によりパレート改善が達成できることを,比較生産費説で説明しましたが,今回は余剰分析で自由貿易のメリットを確認しました.鎖国時に比べ,自由貿易を行うことで,消費者余剰,生産者余剰,社会的余剰がどのように変化するかを図で確認しました.また,自由貿易により生産者余剰が減少することから,現実の世界ではしばしば関税が導入されます.この関税の効果も併せて確認しました.テストでも余剰が計算できるようにしてくださいね.
 また今回の話はすべて小国の仮定と呼ばれる前提条件に基づいて説明したので,その仮定についても要確認ですよ.

 後半は,講義のまとめとして,完全競争市場と不完全競争市場の比較を行いました.またミクロ経済学を現実にどう活かすかの具体例として,就職活動を採り上げました.就活はまさに情報の非対称性の分析対象と言えます.皆さんが今後の人生でミクロ経済学の知識を活用することを期待しています.

【補講について】
 補講は1月14日(水,ただし金曜日の授業)の5限に23502教室で行います.内容はこれまでの復習です.教材として,2007年度の中間テスト,期末テストを用います.HPからダウンロードできるので,各自でわからない所を確認しておきましょう.

経済数学入門 第13回

 更新がかなり遅れました.失礼.
 今回は確率と統計の基礎を説明しました.

【授業の内容】
 まず前回の補足としてΣの説明をしました.Σは数列のある項からある項までを足し合わせるという記号なので,前回のSに似ていますね.

 さて本題ですが,確率と統計は社会科学を学ぶ上でも必須と言って良いと思います.社会科学には細分化された様々な分野が含まれますが,その多くで統計的なデータが使われます.そんなに詳しく知る必要はありませんが,ある程度は,用語の意味を把握する必要はあります.

 では,用語の説明ですが,今回出てきた主な用語は以下の通りです.
事象,試行,和事象,積事象,期待値,平均値,分散,標準偏差

 和と積の違い,平均値と期待値の違いは必ず理解しなければなりません.対して分散と標準偏差は,どちらもバラつきの大きさを示すんだ,ぐらいで構わないでしょう.どうせ定義はまた忘れます….

 先日,4年生の優秀卒業研究発表会がありましたが,データを用いた発表は非常に説得力があります.まぁその分だけ,データには騙されやすいので注意も必要ですが….授業では,喫煙率と死亡率のデータを使って皆さんを騙すにはどうすれば良いか,その裏には何が隠されているかを解説しました.

2008年12月11日木曜日

【お知らせ】JICA職員採用説明会

 JICA四国さんから平成22年度職員採用説明会(キャリアセミナー)についてのお知らせが届きました.

日時:12月13日(土)14:00-16:00(受付13:30-)
場所:JICA四国支部(高松)
 参加希望者は事前にメールあるいはFAXでの連絡が必要です.

 時間的余裕はほとんどありません.興味のある人は早急に.
http://www.jica.go.jp/shikoku/recruit/index.html

経済学Ⅰ 第13回

 今日は前回の財政に関連して,税について説明しました.

【授業の内容】
 財政赤字の解消のためには,税収を増やすか,歳出を減らすしかないわけですが(実質的に減らすためにはインフレを起こすというのもありますが…),誰しも税金が増えるのは嬉しくないでしょう.さて,この税金というのはどんな性質を持っているのでしょう.

 まず,3つの点から税金を分類しました.国税と地方税,直接税と間接税,一般税と目的税です.
 近年の日本では直接税を減らして間接税を増やす方向に進んでいるようですが,果たしてなぜなのでしょう?またどのような未来になるのでしょうか?「税金はどれも一緒だ!」という乱暴なくくりではなく,それぞれの税の特徴を見てみましょう.

 税を評価するための概念として,公平性と公正性を紹介しました.どちらもよく聞く言葉ですが,厳密にそれぞれの意味を確認しました.その上で改めて,直接税の代表である所得税と,間接税の代表である消費税の税率変更が持つ意味を説明しました.

 最後に税負担の軽重を測る目安として国民負担率,潜在的国民負担率を紹介し,先進諸国で比較しました.日本は比較的,国民負担率の低い,小さな政府であるようですね.当たり前ながら,長い目で見れば私たちが納めた税金以上のお金が政府から帰ってくるわけはありません.手厚い保障を政府に望むのであれば重い負担にも耐えなければならないのです.もちろん行政の無駄を省くことが期待されるのは言うまでもありませんが.

総合政策演習B1② 第12回

 今回から復習に入ります.というわけで,ゲーム理論と独占市場について復習しました.

【授業の内容】
 ゲーム理論,完全独占市場についての問題をいくつかこなしました.復習だけに特に記述することもありません….

 小テストは比較生産費説でした.

 来週は第4章を中心に復習します.

基礎総合演習B 第11回

 今回はコンビニ業界3社の今後について,各チームから発表してもらいました.

【授業の内容】
 コンビニ業界の中から,各チームが選んだ3社(ローソン,セブンイレブン,ファミリーマート)を採り上げ,それぞれの株価が上がるであろう根拠を説明してもらいました.
 発表から,3社ともそれぞれ独自の経営戦略,あるいは特色があることがわかりました.思っていたより各企業のカラーが対照的でしたし,僕自身も知らないこともいくつかありました.また,コンビニという学生にとって身近な企業であるだけに,学生の視点からの各企業像についても聞くことができました.
 欲を言えば,ディベート方式にしたかったのですが,そこまでには行きませんでしたね.

 というわけで僕も楽しめたし,みんなの発表もなかなか良かったので,業界を変えてもう一度発表してもらおうと思ったのですが,残念ながらみんなの不評をかったので(結構大変なのかな?),クリスマスプレゼント代わりに取り止めました.おかげで来週何をやるか考えなければなりません….

2008年12月10日水曜日

経済学A 第11回

 今回はちょっと趣向を変えて,現実というより,抽象的なテーマでした.抽象的であるということは,言い換えれば様々な例に応用可能であるはずです.駆け引きを学ぶことはなかなかないでしょうから,頭のトレーニングにもなったのではないでしょうか?


【授業の内容】
 今回は駆け引きの学問でもあるゲーム理論の入門編です.入門編ではありますが,そのエッセンスは充分に伝わったのではないでしょうか?

 まずは囚人のジレンマというプレイヤーが同時に戦略を決定するゲーム(同時手番ゲーム)を例に,ゲームとは何かを説明しました.ゲームとは複数のプレイヤーが存在し,あるプレイヤーの行動が他のプレイヤーに影響を及ぼすような状況のことです.囚人のジレンマゲームでも相手がどのような行動を取るかを予想しなければなりません.プレイヤーが選ぶことができる選択肢のことを戦略,またその結果にもたらされる状況を利得と呼びます.
 続いて,少しややこしくなった利得表で,戦略の逐次消去を学びました.自分が持つ戦略のうちで,使い途がないもの(正確に言うと,どんな状況においても,他のある戦略と比べて同等以下の結果しかもたらさないような戦略)をどんどん捨て去ることでした.

 さて,この戦略の逐次消去でも解けない問題もあります.そんな問題を解決してしまう考え方がナッシュ均衡です.ナッシュ均衡とは,「あるプレイヤー(A)の戦略が他のプレイヤー(B)の戦略に対する最適反応になっており,Bの戦略がAの戦略に対する最適反応になっているような戦略の組合せ」です.直感的に分かりやすく言えば,「お互い,これ以上相手の裏をかけないような状況」と言えます.
 立地ゲームはナッシュ均衡の考え方をつかむのに適当なゲームだと思います.

 最後に,時間の流れがあるゲーム(逐次手番ゲーム)の解き方を説明しました.後ろ向き帰納法と呼ぶのですが,その中身は一番最後に戦略を決定するプレイヤーの行動から順に,時間をさかのぼって戦略を決定していくことでした.

ミクロ経済学ベイシックⅡ 第13回

 今回と次回に渡ってミクロ貿易理論を説明します.

【授業の内容】
 まずリカードの比較生産費説を説明しました.1年次の経済系科目で聞いているようでしたので,なるべくコンパクトに説明しました.
 両国にそれぞれ絶対優位となる財が存在する場合,大方の予想どおりの結果となりました.つまり両国が互いに得意な財の生産に特化し,それを輸出しあうことで両国とも幸せになる(パレート改善)ことが可能でした.
 続いて一方の国に絶対優位となる財が偏っている場合を検証しました.つまり何の生産でも得意な国(A国)と,すべての財の生産において劣っている国(B国)の両国の貿易についてです.この場合,A国はすべての財の生産が得意だとしても,B国と比べると圧倒的に優位にある財もあれば,ほぼ一緒だけれど少しは優位にあるという財もあるでしょう.その場合,より得意な財の生産に特化します.逆にB国は苦手なものばかりだとしても,「まだ少しはマシかな?」という財もあるでしょうから,その財の生産に特化します.このように,「より得意だ」,あるいは「まだマシだ」という状態を比較優位と呼びます.A,B国はそれぞれ比較優位にある財の生産に特化し,それを輸出することで,今度も両国とも豊かになれます.これが貿易が持つ素晴らしい長所です.
 ただし,数値例では「良かった,良かった」で済みますが,現実の経済では特化することで血が流れます.つまり特化により生産量が増える企業もあれば,自由貿易の結果,生産量を減少させる(生産規模が縮小してしまう)企業があります.リストラや倒産が数字の裏には隠れています.そのため,リカードがこの比較生産費説を唱えて約200年が経ちますが,いまだに自由な貿易を妨げる障壁がいくつも残ったままです.

 最後に貿易三角形を紹介しました.生産可能性フロンティア,相対価格と無差別曲線から,その国の輸出,輸入がグラフ上の三角形で表現されました.

経済数学入門 第12回

 今回は数列について説明しました.
 数列は,経済学関係では金融について学ぶ上で必須の知識です.また,経済学以外でも,数字の羅列から法則性を見つけ出すことはSPIなどでも役立つことでしょう.

【授業の内容】
 まず等差数列から始めました.等差数列とは,1次関数のように,同じペースで数字が増え続け(あるいは減り続け)ていくような数字の列です.(細かい話をすると連続か離散かという違いはありますが…)例としては,5,8,11,14,17,20…という数字の列があります.
 等差数列がわかった後は,この等差数列の一般項(第何列目の場合も当てはまる項)を見つけました.先ほどの数列では,第1項(最初の数字,初項)と第2項との差は3です.第1項である5に(+3)を足すと第2項になり,つづいて第2項に同じく(+3)を足すと第3項になります.つまり,第3項は初項である5に,(+3)を2回足した数字です.この事を利用して,第n項を求めました.この例では(+3)ずつ足していますが,この数は公差と呼ばれます.
 続いて,このような等差数列の和(Sn)を求めました.これは,等差数列の最初の項と最後の項,そして第2項と最後から2番目の項,をそれぞれ足すと同じ数字になることから導き出せました.

 さて,後半は等比数列の一般項,そして和の導出方法を説明しました.等比数列とは,同じ割合で増え続けていく数字の列です.例えば1,2,4,8,16,32,…というのも等比数列です.この場合は初項が1であり,増加の割合は(×2)です.どんどん2倍し続けています.この増加(減少する場合もありますが)の割合を公比と呼びます.
 この等比数列は,銀行に預けたお金に利子が付いて増えていく過程を考える上で利用できます.銀行にお金を預けると,翌年には元本に一定割合(1+利子率)をかけたものになります.その翌年にはさらにもう一度(1+利子率)をかけたものになりますが,これは正に等比数列そのものです.
 最後にこの等比数列の和の出し方も説明しました.アンケートがあったので少々駆け足になりました.わかりにくかったという人は全学共通教育センターに来てください.説明します.

2008年12月8日月曜日

経済学Ⅰ 第12回

 今回と次回の2回に渡り,財政と税について説明します.

【授業の内容】
 今回は日本の財政について説明しました.日本の財政赤字については,皆さんもニュース等でなんとなく知っていることでしょう.果たして,日本は何にお金を使って,どれだけ赤字なのでしょう?

 まずは,国の財政を家計に置き換えて説明しました.こうすると,財政がどれだけ大変な状況にあるかイメージできると思います.月収40万円の家計と考えると,毎月毎月借金が18万円ずつ増えていて,借金の総額が4600万円のようなものです.ただし,普通の家計ならとっくに破産ですが,日本が破産という話は聞きませんね.どうしてでしょう?
 破産しないとしても,この財政赤字はよろしくないので,政府としても借金を減らそうという方向には進んでいます.それが「骨太の方針2006」です.その中身は2011年までにプライマリーバランスを黒字化することだったのですが,昨今の世界的な金融恐慌のために,骨太の方針を転換するのではないかと話題になっています.将来のことを考えて赤字を減らすべきなのか?それとも目の前の不景気を打開すべく政府支出を増やすべきなのか(赤字は増えます)?

 そういう議論のために,ここで大きな政府小さな政府について復習しました.市場への介入について両者の意見は異なります.市場の不完全性(市場の失敗)を問題視して積極的に介入する大きな政府派と,市場の効率性を重視し最低限の介入しか行わない小さな政府派,これは負担は多いけれど面倒を見てくれる政府と,負担は軽いけれど自己責任を唱える政府という選択にもつながる話です.

 さて続いて,2008年度の当初予算のグラフを参考に,国の収入(歳入)と支出(歳出)の内訳を確認しました.日本政府は何にお金を使っているのでしょう?ニュースでは公務員が無駄遣いしているという話を聞きますが本当なのでしょうか?
 歳出で最も大きな項目は社会保障費でした.社会保障とは,年金,健康保険,介護保険など,困った人をみんなで助ける仕組みのことです.少子高齢化が進む現状では,なかなか社会保障費を削るのは簡単ではないでしょう.
 歳入のうち税金については来週説明するものとして,公債金収入に着目しました.ちょうど今,冬の個人向け国債のCMがテレビで流れています.国債については金融政策の回でも説明しましたね.

 次回は税金について説明します.

総合政策演習B1② 第11回

 今回はミクロ貿易理論でした.久々に全員揃いましたね….

【授業の内容】
 ミクロ貿易理論ということで,リカードの比較生産費説と貿易三角形について説明しました.
 比較生産費説では,絶対優位と比較優位の区別が必要となります.貿易三角形は,一旦,図の見方が分かればワンパターンですね.しかし,生産可能性集合(生産可能性曲線)は初めて出てきたので要注意ですね.エッジワースボックスの時と同様に,直線の傾きが相対価格を表していますが,そろそろ慣れてきた頃かもしれませんね.

 小テストでは,費用逓減産業についての問題を出しました.

 来週からは復習に入ります.

2008年12月2日火曜日

基礎総合演習B 第10回

 今日は授業の代わりに4年生の優秀卒業研究候補の発表会に行きました.

 3年後にあんな発表ができるか不安になった人もいるようです.皆さんもぜひあの場で発表できるようにがんばってください.

経済学A 第10回

 前回に引き続き,貿易とグローバル化についてです.1週間空くと,やりづらいですね.

【授業の内容】
 まず,前回の復習をしました.前回,リカードの比較生産費説と呼ばれるものを説明しました.ポイントは,まったく同じ双子のような国同士でない限り,貿易をすることによって両国とも豊かになれる,というものでした.比較優位しかない場合の貿易は,わかりにくかったかもしれないので,今日,改めて説明しました.

 さて,このように貿易には大きなメリットがあるのですが,現実の世界では自由な貿易を妨げる動きがあるのは前回指摘したとおりです.関税,輸入割当などの障壁が存在します.
 しかし,もちろん自由貿易を進めていこうという動きもあります.WTOなどで,世界的な取り組みもありますし,個別の国による貿易協定もあります.授業は貿易協定をいくつか紹介しました.

 後半はグローバル化についてです.普段の授業とは異なり,いくつかの具体的なエピソードを紹介することで,グローバル化する世界に何が起きつつあるのかを伝えたかったのですが,伝わったでしょうか?
 僕の考える重要な点は,これまでのモノの貿易だけでなく,サービスの自由貿易が始まりつつあるということです.これまでは海外との競争をあまり意識していなかったのだけど,今後は(一部の)サービス業も,海外の企業との競争に晒されるでしょう.また,日本について言えば,どうやら外国人労働者の受け入れを増やす方向に,しかも単純労働の担い手を増やす方向にあるのではないかと思います.僕は前者は特に問題だとは思いませんが,後者は方向性を間違えていると感じます.

 さて,労働者が流入すると,あるいはサービス業が国際競争に晒されると何が起こるのか,かなり単純化した極端な例で考えてみました.結論として,日本人の賃金は下がる,ただし,どのような職業に就いているかによってその度合いは大きく異なることがわかりました.ここまで極端な結果にはならないにせよ,かなり高い確率でそちらの方向に進むのではないでしょうか.(ただし経済学者に限らず,未来予想というのはあまり当てにならないモノです…)

*追加12/3*
 授業で話した参考図書を忘れていました.
【参考図書】
トーマス・フリードマン(2006)「フラット化する世界㊤㊦」日本経済新聞社
ピエトラ・リボリ(2006)「あなたのTシャツはどこから来たのか?」東洋経済新報社ドン・タプスコット,アンソニー・ウィリアムズ(2007)「ウィキノミクス」日経BP社
梅田望夫(2006)「ウェブ進化論」ちくま新書
NHKスペシャル取材班(2007)「インドの衝撃」文藝春秋

2008年12月1日月曜日

ミクロ経済学ベイシックⅡ 第12回

 今日は前回に引き続きリスクです.特にリスクと効用の関係,そしてリスクの測定について説明しました.

【授業の内容】
 まず,皆さんがリスクについてどのようなタイプであるか調べてもらいました.収入と効用との関係から,リスク回避者,リスク中立的,リスク愛好者の3タイプに分かれました.
 リスク回避者とは,2つの選択肢があり,どちらを選んでも期待値が同じだとすればリスクが少ない方を選ぶ人のことです.逆にリスク愛好者は期待値が同じであればリスクの高い方を選びます.リスク中立的な人は,リスクの有無には関心を持ちません.そのため,効用関数は線形(直線)になりました.

 授業では,
A:1/2の確率で年収1000万円受け取れるが,1/2の確率で年収0円となる仕事
B:確実に年収500万円を受け取れる仕事
 これら2つのどちらを選ぶかを,リスク回避者,リスク中立的,リスク愛好者の3者でそれぞれ具体的な数値例を使って説明しました.
 ポイントはAの仕事を選ぶと得られる効用の期待値と,Bを選んで得られる効用を比較することでした.Aは結果にばらつきがあるので(リスクがあるので),期待値しかわかりません.

 続いて,自動車保険を例に,リスクプレミアムを図で確認しました.リスクプレミアムとは,リスクを避けるために払っても良いと考える金額のことです.自動車保険に入らなければ,事故を起こしたときに大金を支払わなければならないリスクがあります.そのリスクを避けるために我々は保険に入っています.
 保険の説明をしながら,「ちょっとこれはわかりにくいかな?」と思ったので,前半に説明した例の職業Aを使ってリスクプレミアムを再度説明しました.いくら年収の期待値が500万円と高いとは言え,このようなリスキーな仕事は嫌という人は多いでしょう.では,このリスクがなくなる代わりに,年収が減って○万円を確実にもらえるようになるとすれば,いくらまで年収が下がることを我慢できますか?これがリスクプレミアムです.
 最後に,期待値が低くなると分かっていてもギャンブルをしてしまうリスク愛好者にとっての負のリスクプレミアム(リスクを選ぶためにどれだけ損しても構わないか)を図で表現しました.

 このリスクプレミアムの説明はテキストにもあります.わかりにくかったという人は(少なくないでしょう),必ずテキストを読んで復習して下さい.

経済数学入門 第11回

 今日はオペレーションズ・リサーチの基礎として,線形計画法を説明しました.

【授業の内容】
 メインは線形計画法でしたが,これまで説明する機会がなかったので円を示す方程式も説明しました.円の方程式は,実はピタゴラスの定理とか三平方の定理と呼ばれるものに過ぎません.ある点からの距離が一定であるような点の集合が円です.

 さて,線形計画法ですが,すでに学んだ不等式を確認する作業から始めました.
 今回説明した2つの問題はいずれも,ある条件を満たした上で,最大値や最小値を求める問題でした.以前に「最大化・最小化」の回にも,制約の中で目的となる関数を最大化する作業を行いました.その回とは異なり,今日の問題では1次関数しかでてきませんでした.ただし,制約の数が複数ありました.
 問題の解法は次の通りでした.
Step.1 制約(条件)を図示する
Step.2 目的となる関数を適当な変数で表現する
Step.3 最大値・最小値を探す
 この3ステップで問題を解きました.Step.2で目的を適当な変数に置き換え,それが最大(あるいは最小)となる点を見つけるのがもっとも重要なポイントです.

 課題は提出義務はありませんが,各自でやっておきましょう.

2008年11月27日木曜日

経済学Ⅰ 第11回

 今回はグローバリゼーションについて講義しました.

【授業の内容】
 グローバリゼーションは,僕個人としては非常に興味深いし,皆さんの生活にとっても将来的に非常に重要なテーマであると思っているのですが,興味深く感じる人と,まったく興味が持てない人にはっきり分かれるようです.

 授業の冒頭は,前回の続きを少し話しました.リカードの比較生産費説における絶対優位,あるいは比較優位はどのようにして生まれるのかを考察しました.
 また自由貿易の形態についていくつか説明しました.現在の日本はFTAと呼ばれる2国間あるいは他国間の自由貿易協定を進めています.ちなみに日本政府はFTAよりEPA(経済連携協定)という言葉の方がお好きなようです.EPAの方がより包括的ではあるようですが,似たようなもんだと思って良いでしょう.
 さらに国と国の経済が近くなれば,EUやメルコスールのような共通市場(ヒト,モノ,カネの移動が自由)に発展するでしょうし,さらに経済政策まで共通するような経済同盟になるかもしれません.

 また,前回の補足として,日本はなぜ固定相場制ではなく変動相場制を選んでいるのかを説明しました.結論だけ言えば,独自の金融政策を放棄したくないからです.

 さて,グローバリゼーションですが,経済のグローバル化は別に最近始まった事ではありません.大航海時代だってグローバル化です.インドとヨーロッパの国が結びついたわけですしね.また日本で言えばペリー来航もグローバル化のきっかけと言えるかもしれません.あるいは自動車,鉄道,飛行機の発明も国と国の距離を縮めて来ました.これらのグローバル化と近年の(2000年以降の)グローバル化はどこが違うのでしょう.
 それは2000年以前のグローバル化はモノとヒトのグローバル化であったのに対して,近年のそれは,サービスのグローバル化という質的な違いがあります.またこれまでのグローバル化によって少しずつ縮められてきた距離が,一気に,劇的に縮められたという量的な違いでもあるでしょう.
 モノのグローバル化によって日本では,モノ作りの拠点が中国などの賃金が安い国に移転してしまうと言う産業の空洞化を経験しました.私たちはこれから,サービス産業の空洞化を経験する可能性があります(というより,まず間違いないでしょう).
 もちろんすべてのサービス産業が空洞化するのではなく,海外でも供給できるサービスだけですけどね.例えば美容院やタクシーといった仕事は,いくらネットが発展してもその場にいなければできない仕事です.

 最後に単純化した日本と中国の数値例を使って,完全なグローバル化が起きれば,日本と中国の頭脳労働者と肉体労働者の賃金にどのような変化が起きるかを考えました.今日の話は本当に重要です(と僕は思っている).皆さんも漫然と職業を選ぶのではなく,その職業の10年,20年後も見据えて選びましょう.

総合政策演習B1② 第10回

 今回は費用逓減産業,情報の非対称性,所得分配についてです.どれも内容をきっちり理解しようと思うと時間はかかりますが,公務員試験と割り切れば非常に簡単です.

【授業の内容】
 費用逓減産業とは,ガス,電力や通信のように,最初の埋没費用はとてつもない額になるけど,限界費用は下がり続ける,つまりスケールメリットがある産業です.
 このような産業では,価格と限界費用が等しくなるように生産すると赤字が発生します.そのため対処法として限界費用価格形成原理と平均費用価格形成原理の2つがあります.名前が長いですね.
 限界費用価格形成原理とは,通常の完全競争市場のように,価格と限界費用が等しくなるように生産するものです.ただし,この場合は赤字が発生するので(限界費用よりも平均費用の方が高いため),その赤字分を政府が補填します.この方法のメリットは社会的に最適な資源配分が実現できることです.デメリットは赤字になること.
 平均費用価格形成原理は,価格と平均費用が等しくなるように生産するものです.こちらは平均収入(つまり価格)と平均費用が等しいことからもわかるように赤字は発生しません.つまり採算がとれるので,政府に頼らずとも持続的に企業を操業することが可能だというメリットがあります.逆にデメリットとしては,社会的に最適な水準よりも過小な生産,高い価格となる点です.つまり社会的に最適な資源配分が実現できないのです.

 情報の非対称性についの問題では,逆選択とモラルハザードの区別についてよく出題されるようです.確かに似てるので紛らわしいのですが,逆選択は「ある性質を持った人(企業)ばかりが集まってしまうこと」を意味しており,モラルハザードのように「性質が変化してしまうこと」とは明確に異なります.これだけ分かっていれば問題なさそうです.

 最後にローレンツ曲線の見方とジニ係数について説明しました.これはまあ覚えるだけですね.

ミクロ経済学ベイシックⅡ 第11回

 今回はリスクと不確実性についてです.メインは来週で,今回は基礎知識です.

【授業の内容】
 今回は,期待値,リスク,不確実性についてきっちりと理解することが目的でした.

 期待値については経済数学入門ですでに説明済みなので,説明は省略しました.私たちは未来に何が起こるかわかりません.しかし,予測をすることは可能です(当たるかどうかは別として).例えばサイコロを1回振ると,1~6のいずれかの目が出ますが,何度も振ればその平均は3.5に近づくであろうと予測できます.このように,未来に起こる出来事の結果と,それが起こる確率を掛け合わせたものが期待値です.確率的な予測値と言えそうです.
 世間で行われているギャンブルには共通点があります.すべてこの期待値がマイナスである点です.ギャンブルというのは胴元が儲かるようなシステムになっているので当たり前です.しかし実際には多くの人が宝くじを買っています.
 人間は期待値だけで選択をしているわけではないことの説明に,サンクトベテルスベルグのパラドックスの説明をしました.このゲームの期待値は無限大になりますが,まともな人なら誰もこのゲームに挑戦したいとは思わないでしょう.
 なお,近年の実験経済学,心理経済学などと呼ばれる分野の研究から,実際の確率と人々が認識する確率との間に乖離があることがわかってきました.宝くじのように非常に確率が低いものは実際よりも高く,逆に確率が高いものについては実際よりも低く認識してしまうようです.つまり宝くじは確率で考えれば当たるとは思えないけど,我々は「ひょっとしたら当たるんじゃないか?」と甘く考えてしまうのです.なんとなく思い当た人も多いんじゃないでしょうか.

 続いてリスクですが,これも経済数学入門でリスクとは危険度ではなく,分散の大きさ,つまり結果のばらつきの大きさであることを説明しています.
 そのため,リスクへの対処方法について説明しました.1つは分散投資であり,もう1つは保険です.前者については,株を例に取り,簡単なリスクヘッジの方法を説明しました.
 後者については自動車の損害保険を例に考えました.なぜ保険会社が儲かるのかと言うと,事故が起こる確率とその時の保険金の支払額から期待値を計算して,それを上回る保険料を課しているからです.ただし,前回説明したように保険には,情報の非対称性があり,逆選択,あるいはモラルハザードといった問題が発生する恐れがあります.保険各社はこの情報の非対称性を解消すべく,様々な取り組みをしています.

 ここで気分転換に,確率についてのお遊びとして,モンティーホール問題を紹介しました.事前の確率と,情報が公開された後の確率が異なることを説明しました.
 この問題の詳しい説明は,ネットで検索するとたくさん出てくると思います.

 最後に不確実性を説明しました.リスクとの違いは,リスクという言葉を用いるときは様々な結果の起きる確率が分かっている場合であるのに対し,不確実性は,何がどのような確率で起きるのかすらわからない時に用います.人間関係などは不確実性ですが,宝くじはリスクです.
 多くの人間はリスクを嫌いますが,(こちらも近年の研究より)リスクよりも不確実性を嫌うことも分かってきました.授業ではその一例を紹介しました.

経済数学入門 第10回

 今回は,中間テストの返却と,直線,曲線の移動についてでした.

【授業の内容】
 まず,総合政策学部のどんな講義で数学が必要とされるのかを説明しました.経済学系の科目は当然として,金融,統計などの講義でもある程度の数学的知識が必要となります.また公務員試験,そして就活でもある程度の数学力は求められます.

 さて今回は,直線のシフト,傾きの変化が経済学の文脈において,どのように用いられるかを紹介しました.数学的には特に難しいことはないと思います.自分が持っているお金を使って,2種類の商品をどのような組合せで購入することが可能かをグラフに示しました.この時,相対価格の変化が傾きの変化を,所持金の変化が直線のシフトを,それぞれもたらすことがわかりました.
 これまでは無味乾燥だったx,yに,意味を持たせました.
 ちなみに2次関数の放物線でも同じような作業をすることで,平行移動することができました.ワンパターンだから簡単ですね.

【中間テストについて】
 中間テストについては以下の通り.必ず返却されたテストを持って行きましょう.また,これまでの課題を持って行くと便利だと思います.
http://mizunoue.blogspot.com/2008/11/blog-post_23.html

2008年11月23日日曜日

経済数学入門 中間テスト結果

 中間テストの採点が終わりました.配点は20点としました.よって期末テストは80点満点です.

 6割未満は全学共通教育センターに来るように,ということでしたが,6割未満だったのはちょうど半数です.最高点は20点でした.
 解答用紙は11月25日の講義時間内に返却します.6割未満だった学生は,その解答用紙を持って全学共通教育センターに行きましょう.月曜は僕が担当していますが,火,金曜日は松本先生が担当されています.どちらでも良いので,都合の良い日に行き,苦手なところがなくなるまで,しっかり勉強して下さい.

2008年11月20日木曜日

経済学Ⅰ 第10回 

 今日は前回の為替に関連して貿易について説明しました.特にリカードの比較生産費説と呼ばれるものの中身を数値例で説明しました.

【授業の内容】
 今日は,貿易を行うことが,両国にとってどのような影響を及ぼすのかを考えました.

 まず,互いに得意な生産物が異なるケースとして,漁師と農家を例に,自給自足(国で言えば鎖国状態)と物々交換をする場合(貿易)を比較して,両者が豊かになることができるか確認しました.大方の予想通り,両者とも幸せになることができそうでした.この例は,互いに絶対優位にある生産物が異なるケースにおいて,絶対優位にある財の生産に特化し,貿易することで両国とも豊かになる可能性を示唆しています.

 続いて比較優位のケースです.今度は,テレビと自動車の生産に秀でている日本と,どちらも苦手なイギリスとの貿易を考えてみました.事前のアンケートでは,「貿易するとイギリスは豊かになるが日本には損失が発生する」と予想する学生がほとんどでした.
 しかし,具体的な数値例で確かめてみると,鎖国状態と比べて両国とも豊かになるような生産,貿易が存在することがわかりました.この結果は意外なものであったと思います.

 さて,このように両国とも豊かになれる(Win-Win関係)という素晴らしい貿易ですが,現実の世界では関税や輸入割当などにより自由な貿易は妨げられています.その理由は,自由な貿易により国全体は豊かになるものの,国際競争力のない産業はその規模縮小を余儀なくされるためです.皆さんだって,「あなたは失業しますが,日本は豊かになります」という政策には賛成しませんよね….

 来週はグローバル化について講義したいと思います.

総合政策演習B1② 第9回

 今回はエッジワースボックスの続きと,外部性についてでした.

【授業の内容】
 エッジワースボックスの見方について,そしてパレート改善,パレート最適と契約曲線については前回説明しました.今回はそれに相対価格を付け加え,その相対価格の下で財が均衡するかどうかを確認しました.またオファーカーブについても説明しました.

 後半は外部性について,主にコースの定理を中心に説明しました.簡単な計算問題もやりましたね.

 風邪が流行っているようなので皆さん気をつけましょう.

2008年11月19日水曜日

基礎総合演習B 第9回

 今回は各チームの動向の発表と,次回の発表についての準備をしました.

【授業の内容】
 まず,各チームに先週からの売買の報告と,その理由を説明してもらいました.売買の理由ですが,「~なので~を買った」という考え方は良いのですが,まだちょっと甘いですね.「本当にそのような関係があるのか?」,「そのような関係があるとすれば,こちらの企業の方が良いのではないか?」ということを自身の中で問いかけ,ある程度の答えを出しておいてください.いずれの発表もやや説得力に欠ける印象を受けました.

 さて後半は,「同一業界の中では,どの企業の株価が上がりそうか?」を考えてもらいました.アンケートの結果,コンビニ業界が題材となり,チーム毎に1つの企業を選んでもらいました.
 来週は「この企業が一番株価が上がりそうな理由は,○×だ.それに対してその企業は△□という理由でダメだ!」というように,自分たちが選んだ企業の株価が将来性があるというプレゼンをしてもらいます.

経済学A 第9回

 前回の為替と関連して,今回は貿易とグローバリゼーションについて講義しました.といっても,貿易で時間を取ってしまったので,グローバリゼーションについては,次週に持ち越しです.

【授業の内容】
 日本の経済は世界の経済と密接に絡みついており,切り離して考えることは不可能です.以前にやった株を例にとっても,日経平均の値動きは前日のニューヨークダウ,あるいは為替レートの影響を強く受けます.
 さて,このようなグローバル化した経済は今後どのように変化していくのでしょう?またそれは皆さんの生活にどのような影響を与えるのでしょうか?

 まずグローバル化と反グローバル運動について少し触れました.我々経済学者は「グローバル化(特に自由な貿易の促進)は良いものだ,なぜ反対するのだろう…?」と悩んでしまいます.そもそもグローバル化自体はどんなに反対してもその流れは止められないのです.
 色々調べてみると,反グローバルと言っても,スティグリッツ氏のように「グローバル化自体に反対ではないが,現在のようなグローバル化に反対」という人もいれば,グローバル化すること自体に拒否反応を示す人まで様々です.「先進国の一握りの企業が,途上国の子供たちを劣悪な状況で働かせることで儲けている,つまり子供たちを搾取している」というのも反グローバル運動でよく聞く話です(その是非はともかく).
 ちなみに著名な言語学者であるチョムスキー氏は「半グローバルという言葉自体が,レッテルである」という指摘をしています(小泉政権下の抵抗勢力という言葉のようですね).

 さて,今回は経済学におけるより良い状態をまず定義し(パレート改善),その後,貿易により国々が幸せになれるかどうかを数値例で確認しました.

 より良い変化の目安であるパレート改善とは,「他の人を不幸せにすることなく,ある人が幸せになるような変化のこと」です.このような変化であればとりあえず良い変化だとして,今回は話をしました.もちろん両者とも幸せになれば言うことなしですよね.

 では実際に単純化した例により,貿易を行うと幸せになれるかを確認しました.まずは,両者ともそれぞれ相手より得意な生産物があるケース(絶対優位)です.この場合,多くの人が予測するように,貿易することで両者とも幸せになりました.
 続いて,相手国よりすべてにおいて秀でている国と,すべてにおいて劣っている国の2国が貿易することで何が起こるかを確認しました.微妙な変化ではありましたが,予想に反して(?),両国とも幸せに,つまりパレート改善したようです.

 このように貿易は国レベルで見ると,両国とも豊かになれるという素晴らしいものです.しかし,現実の世界には自由な貿易に反対する人は多く存在します.なぜ彼らは自由貿易に反対するのでしょう?
 それは相手国より優位にある(比較優位)生産物の生産者は規模を拡大できますが,劣位にある生産物の生産者は自由な貿易により,生産規模が減少します.つまり解雇されたり,倒産してしまうのです.

 さて,皆さんと直接関係なさそうなこの話,皆さんの将来を占う上でも多くの示唆に富んでいます.グローバル化する経済で我々の生活はどうなるのか,次回考えましょう.

【参考文献】
 今回の授業で紹介した本は以下の通りです.多くは図書館にあります.
トーマス・フリードマン(2006)「フラット化する世界㊤㊦」日本経済新聞社★とくにオススメ!★
梅田望夫(2006)「ウェブ進化論」ちくま新書
ピエトラ・リボリ(2006)「あなたのTシャツはどこから来たのか?」東洋経済新報社
ドン・タプスコット,アンソニー・ウィリアムズ(2007)「ウィキノミクス」日経BP社

2008年11月17日月曜日

ミクロ経済学ベイシックⅡ 第10回

 今日は情報の非対称性についてでした.

【授業の内容】
 完全競争市場の条件の1つに完全情報というものがありました.今回は取引を行う経済主体の一方が不完全な情報しか持っていない場合(情報の非対称性)に何が起こるかを説明しました.

 まず,財についての情報を消費者が入手可能かどうかで,財を3つに分類しました.
探索財:事前に情報を入手可能なもの
経験財:購入後に情報を入手可能なもの
信用財:購入後も情報を入手不可能なもの

 さて,買ってみないと当たりか外れかわからないような財である中古車の市場(レモン市場)では何が起こるのでしょうか.
 売り手は財の品質について十分な情報がありますが,買い手は車の品質の良いのか悪いのかわかりません.ただし,良い車と悪い車がどれぐらいの割合で存在しているかだけは知っているとします.すると買い手は,目の前の車に対し,良い車である確率と悪い車である確率から,車の評価の期待値を計算します.価格がその期待値を下回れば購入し,上回れば購入しません.
 授業の数値例では,結果として品質の悪い中古車しか流通しないことが明らかになりました.

 さて次は,逆に生命保険市場の様に,買い手は十分な情報を持っており,売り手は情報をあまり持っていない場合を考えてみました.
 こちらでは健康に問題のある人ばかりが生命保険に加入するという問題が起こりました.この2つの例のように,情報の非対称性により,特定の売り手,買い手ばかりが集まることを逆選択と呼びます.

 逆選択と混同されやすいものとして,モラルハザードがあります.モラルハザードとは,ある取引の前後で経済主体の行動が変化してしまうことです.例えば,それまでは安全運転をしていた人も,任意の自動車の損害保険に入ったことで安心し,「事故しても保険会社が払ってくれる」と運転する際の危険回避を怠るかもしれません.これは逆選択とはまったく異なる現象です.
 元々事故を起こしやすい人が集まってくるのが逆選択であり,保険に入ったことで危険な運転をするようになるのがモラルハザードです.前者は運転手の行動は変化していませんが,後者では変化しています.

 ちなみに授業で例として出した交通違反保険ですが,ネットで調べて見ると現在も存在するようです.(Googleで「交通違反 保険」で検索)
 ある企業の例だと,保険料は年間6000円だそうです.逆選択の問題をどうやって解決するのだろうかと思い調べてみると,後述の評判(reputation)を使っていました.初年度の会費は高く,無違反だと年々保険料が安くなるようです.採算が取れるんかな?と心配しましたが,あんまり違反を重ねていると,免停になるので,保険金はある程度限られるのでしょうね.それにしても6000円で採算が取れるのかなぁ…?
 ちなみに金融庁から指導が入り廃業というニュースも見つかりましたし,無認可共済ですので,この保険に入りたい人はよく考えてからにしましょう.

 さて,このような情報の非対称性の問題をどうやって解決するのでしょうか.対策としては次の2つがあります.

1.シグナリング
 これは,その財そのものの品質がわからないときは,その財の品質と関係しているであろう手がかりで判断するというものです.例えば,3年間の品質保証が付いている中古車は,付いていない中古車よりも品質が良さそうです.なぜなら,すぐに壊れるかもしれない中古車の修理を保証するにはコストがかかりすぎるからです.
 また学歴別の賃金もこのシグナリングで説明することが可能です.

2.評判
 これは過去の購入,あるいは他者の購入から,その財の品質を予想できるというものです.観光客が来るだけで,地元の常連客が来ない飲食店は,別に美味しい料理を提供する必要はありません.なぜなら美味しかろうと不味かろうと,その客は一度来るだけなので,どっちでも良いのです.こういう戦略はひき逃げ戦略と言います.
 ただし,地元の人が集まる店は(例えば大学近くの定食屋)そうはいきません.不味いとわかれば,もうその客は二度と来ないでしょう.こういう店ではひき逃げ戦略は使えません.
 皆さんは宝石を買う場合,百貨店で買いますか?それとも露店で買いますか?百貨店に店舗を出している店の場合,偽物を売るわけにはいきません.今後の商売に響くからです.ただし,露店では偽物を売っても(法的にはともかく)経済学的に問題ありません.なぜなら,もう二度とその客と会うこともないからです.
 授業では年功序列も,評判を用いた情報の非対称性への対処方法だと説明しました.

経済数学入門 第9回

 今回は中間テストでした.

 中間テストは採点して,来週の授業で返却します.点数が6割未満だった学生は全学共通教育センターで理解できるまで勉強しましょう.

 中間テストを受けていない学生は,早急に僕の所に来るように!

2008年11月14日金曜日

経済学Ⅰ 第9回

 前回までしばらく金融でしたが,今回は「円高はなぜ悪い?」と題して,為替と貿易について説明しました.

【授業の内容】
 まず為替レートの確認です.円高,円安というのはややこしいですよね.「1ドル100円が80円になった」と聞くと,「100円→80円だから円安だ」という風に間違えそうになります.しかし100円から80円になったのは,1ドルという商品の値段であり,1ドルが(日本円と比較して)安くなったのです.つまりドルが安くなったのですが,それは円と比較して安くなったので,相対的に円は高くなっています.これが円高(ドル安)です.
 さて円高のどこが悪いのでしょう?日本円が高くなったということは,世界的に見て,私たちが持っている円の価値が高くなったということなので,外国の商品を安く買うことができます.そのため外国から輸入する原油や食料品なども安くなるはずです.円高にだってメリットはあるようです.
 しかし,外国から見ると(ここではアメリカとしましょう),日本円の価値が上がるということは,ドルの価値が下がることなので,アメリカ人にとっては日本から輸入するモノ,例えば日本製の自動車やデジカメなどは高く感じることでしょう.そのため,当然日本からの輸出は減少します.授業では円高,円安のメリット・デメリットをまとめて比較しました.

 さて,ではこのような為替の変動はどういった要因で起こるのでしょう.その理由は実に多様ですが,授業では,前回からの関連で利子率に焦点を当てて説明しました.
 現在のように日本の利子率が低く,他の国の利子率が高いとどういうことが起こるのでしょう.手元にあるお金を日本で預けても利子があまりもらえないから,海外の銀行に預けようという人もいるでしょう.その際に,日本円のままでは預金できないので,日本円を売って,外貨を買うという取引が行われます.つまり外貨の需要と日本円の供給が行われます.
 為替相場も普通の財と同様に需要と供給のバランスで決まるので,上記のケースでは日本円が下がり,外貨が高くなるでしょう.
 さらに抜け目ない人は,手元にお金がなくても,日本の銀行で円を借りて(貸し出す際の利子率も低い),日本円を売り,外貨で運用するかもしれません.このケースでもやっぱり日本円は売られるので円安になりそうです.結局,お金というのは一番儲かりそうなところに向かって動く習性があるようです.

 さて,この為替相場の変動は日本の景気にどういう影響を及ぼすのか,マクロ経済の図を用いて,その因果関係を確認しました.

 最後に小テストを実施しましたが,ほとんどの人は正解でした.

総合政策演習B1② 第8回

 今回は関税が余剰に与える効果と,パレート最適についての問題を解きました.

【授業の内容】
 前半は小国の仮定の下での,自由貿易,さらに関税が課せられた場合の余剰について説明をし,問題を解きました.結構わかっていたようなので,特に問題もありませんでしたね.グラフで死荷重を答える問題はワンパターンなので,一度覚えれば見ただけで問題が解けそうです.

 後半はエッジワースボックスを使ったパレート改善,パレート最適の問題です.エッジワースボックスは,2人の無差別曲線をくっつけた図です.2人の間での資源配分について分析するときに威力を発揮します.次週はこの続きをやります.

基礎総合演習 第8回

 バーベキューは残念でしたね.また改めて何かしましょう.

【授業の内容】
 今回は各チームの運用方針を説明してもらいました.どのチームもそれぞれしっかり考えてきたようでした.結果的に,各チームの運用方針は似てきましたが,では具体的にどうやって銘柄を選ぶのか,何を指標とするのか,まで突き詰めて考えているか,には少し差が出たようです.
 皆さんは勉強のために勉強しているわけではなく,運用するために勉強しているので,理想を高くすることも大事ですが,どうやって実用化するかも大事です.
 また,人の言うことを鵜呑みにせず疑ってかかるべき,というのはこれまでも言ってきましたが,改めて注意しました.騙されないようにとことん疑ってください.

【課題】
 次週から毎回,各チームのうち1人ずつにレポートを提出してもらいます.そのためにもちゃんと売買してくださいね.

経済学A 第8回

 今回は「円高はなぜ悪い?」と題して,為替と貿易について説明しました.

【授業の内容】
 まず為替レートの確認です.円高,円安というのはややこしいですよね.「1ドル100円が80円になった」と聞くと,「100円→80円だから円安だ」という風に間違えそうになります.しかし100円から80円になったのは,1ドルという商品の値段であり,1ドルが(日本円と比較して)安くなったのです.つまりドルが安くなったのですが,それは円と比較して安くなったので,相対的に円は高くなっています.これが円高(ドル安)です.

 さて円高のどこが悪いのでしょう?日本円が高くなったということは,世界的に見て,私たちが持っている円の価値が高くなったということなので,外国の商品を安く買うことができます.そのため外国から輸入する原油や食料品なども安くなるはずです.円高にだってメリットはあるようです.
 しかし,外国から見ると(ここではアメリカとしましょう),日本円の価値が上がるということは,ドルの価値が下がることなので,アメリカ人にとっては日本から輸入するモノ,例えば日本製の自動車やデジカメなどは高く感じることでしょう.そのため,当然日本からの輸出は減少します.実際に,円高でトヨタ利益が6900億円も吹っ飛んだという新聞の記事を読みました.
 授業では円高,円安のメリット・デメリットをまとめて比較しました.

 後半は前回の資産運用の続きとして,外貨預金について説明しました.外貨"預金"と聞くと,株とは違って安全そうな気がしますが,実際には結構リスクのある選択肢でした.現実の数値を使って,架空の100万円をオーストラリアドルで1年間運用すると儲かるのかを検証しました.まぁ何事も美味い話ばかりではありません.儲かる可能性があるということは損する可能性もあるのです.学生のうちにFXなどに手を出すのはやめておいた方が良いと思います.責任を取れるように自立してからにしましょう.

 最後に3つの為替制度を紹介しました.変動相場制,固定相場制とペッグ制でしたね.

ミクロ経済学ベイシックⅡ 第9回

 今回は外部性について説明しました.

【授業の内容】
 外部性とはある経済主体による経済活動が,それとは無関係の第3者に与えるなんらかの影響のことです.このような市場の失敗が起こると,最適な資源配分が実現されません.そのため何らかの対策が必要になります.外部性の典型例としては公害や環境破壊が存在します.例えば,先進国がこれまでに100年以上に渡って消費してきた石油燃料のせいで地球温暖化,そして海面の上昇が進んだとすると(この説が本当かどうかは僕の専門外なのでわかりません.あくまで例です),海面上昇により国土が小さくなってしまい,大きな被害を受けているツバル共和国のような国にとってはまさにとばっちりです.これが外部性です.

 さて,外部性は第3者に与える影響が良い影響か,悪い影響かで区別することができます.前者は外部経済,後者は外部不経済と呼ばれます.
 また第3者に与える影響が市場を通じたものか,そうでないのか,によって金銭的外部性技術外部性,というように区別されることもあります.

 授業では採り上げませんでしたが,ここでは外部性の例として教育を考えてみます.教育も外部性を持っています.例えば皆さんが受けている大学教育について考えてみると,大学教育は学生(というより学生の保護者?)と大学法人との間の取引です.保護者は学費を支払い,大学は教育サービスを提供します.
 さて保護者(と学生)と大学は取引の関係者なので内部ですが,この取引は外部にも影響を与えています.例えば総合政策学部の卒業生はある程度の法律や経済などの知識を持っているでしょうから,卒業生を雇う企業にとってはそれらの知識を教える必要がありません.企業にとっては人材育成コストがかからないので,大学教育は企業に外部経済を与えていると捉えることができます.
 余談ですが,大学などの高等教育が上記のような効果,つまり労働者としての価値を高めているかどうかについては経済学者の中でもコンセンサスはありません.「高等教育が人的資本(労働者としての能力)を高めるんだ!」という人もいますし,「企業は学歴を能力のシグナルとして使っているだけで,大学で学ぶことに期待などしていないよ」という人もいます.どっちでしょうね?大学関係者としては前者であると期待したいところですが….

 さて,このような教育は学生自身にとって有益であるだけでなく(大卒は給料が高い),企業にとっても有益なので,社会全体から見るとより有益です.そのため,政府がお金を出して教育費を安くして,より多くの人が大学で教育を受けられるようにすることが合理的です.また実際にそれは実現されています.旧国公立大学(現在は独立行政法人ですが)には国からの援助があるので学費は安く設定されていますし,私立大学にも私学助成金という形で(旧国公立大ほどではないにしても)援助されているので,実際にかかっているコストよりも学費は低いはずです.
 まとめると,外部経済がある場合は,社会的収益率の方が私的収益率よりも高いので,社会的に見て最適な水準よりも少なく(過小に)生産されます.そのため政府などが援助する必要があります.
 また逆に外部不経済がある場合は,社会的限界費用の方が私的収益率よりも高いので,社会的に見て最適な水準よりも多く(過剰に)生産されます.そのため政府によるなんらかの規制が必要です.

 さてこのような外部性への対処ですが,3つの方法があります.
1.課税・補助金(ピグー税)
 まず課税や補助金により最適な生産量を実現するという方法があります.最近導入が検討される炭素税もこれにあたります.またタバコ税もそうなのかもしれませんね.
2.内部化
 外部に効果が漏れるのが問題なら,漏らさないようにしようというのが,この内部化です.授業では駅ビルの建設によって,駅の集客能力を外に漏らさないようにすることを説明しました.
3.交渉
 内部と外部で交渉することでも,最適な資源配分が達成できることもあります.ただしその条件は「取引コストがほとんどかからないこと」です.これはコースの定理と呼ばれています.これについてはテキストに詳しい説明もあります.

 最後に消費における外部性として,スノッブ効果バンドワゴン効果を説明しました.

経済数学入門 第8回

 テスト範囲は今回までです.

【授業の内容】
 前半は最大値・最小値問題を説明しました.経済学は様々な最大化・最小化問題を解かねばなりません.例としては,企業にとっての利潤最大化や費用最小化,あるいは家計(私たちのこと)にとっての効用(幸せのようなもの)最大化問題などです.
 ややこしそうですが,公務員試験程度の経済学では,ほとんどの問題がワンパターンなやり方で解けます.

 さてそのワンパターンな解法ですが,次の手順を踏みます.
Ⅰ.問題の目的と,その実現を妨げる制約が何かを理解し,それぞれを数式で表現する.
Ⅱ.制約の式を変形し,目的の式に代入する.この代入をする意味は,(おそらく)目的の式は複数の変数の関数になっているので,その変数の種類を減らすためです.
Ⅲ.すると目的の式が1つの変数の関数になっているので(大抵は2次関数),その最大値,もしくは最小値を探す.

 以上の解法でほとんどの問題が解けるはずです.どんな問題に対しても有効というわけではありませんが,まずはこれを会得しましょう.
 いずれにせよ,目的と制約をはっきりと意識することはとても大事です.

 後半は偏微分のやり方と,直感的なイメージを説明しました.やり方は「ある変数で偏微分するときは,その他の変数はただの数値であると思い込んで微分する」というだけでした.
 偏微分のイメージは,他の変数が一定であるとして(ただの数値であるとして),ある変数で微分したときの傾きと思ってくれれば良いです.授業では3次元の山のようなものを想定して説明しました.言葉ではなかなか説明しづらいですね.

 さあ月曜日は中間テストです.きっちりと復習しておきましょうね.

2008年11月6日木曜日

ミクロ経済学ベイシックⅡ 第8回

 今日の前半は,完全独占市場の余剰分析を,後半は公共財の説明をしました.

【授業の内容】
 前半は,完全競争市場と比較した場合の,完全独占による死荷重を計算しました.しばらく独占市場ばかりやってたので,完全競争市場のことを忘れてしまったかもしれません.
 完全競争市場とは,企業に価格の決定権はありません.企業は市場で決まった価格を受け入れるだけの価格受容者(プライステイカー)です.この状況下では,企業は価格と限界費用が等しくなるように生産をします.つまりP=MCですね.
 対して,完全独占市場では,独占企業は当然ながら,自分で好きなように価格を設定できます.つまり価格決定者(プライスメイカー)です.

 さて,完全競争市場においては社会的余剰が最大になることは前期に学んだとおりですが,完全独占市場という市場の失敗が起こると,その社会的余剰は小さくなってしまいます.それを具体的な数値例を基に計算しました.この問題はこれまでの総復習としてちょうど良いので,期末試験にも(僕がぼんやりしてなければ)必ず出しますので,必ず復習しましょう.

 後半は公共財について説明しました.
 これまでも様々な財(の分類方法)が出てきました.今回は財の利用について,私的財と公共財(と準公共財)に分類しました.
 公共財とは次の2つの性質を兼ね備えた財のことです.

非競合性:ある人の消費が他の人の消費の妨げにならないこと.つまり複数の人が同時に使っても支障がないこと.

非排除性:特定の個人の利用を妨げることができないこと.つまり誰でも利用できること.

 逆に上記のどちらの性質も満たさない,言い換えれば競合性と排除性を持つ財を私的財と呼びます.また非競合性と非排除性のどちらか一方しか満たさない財は準公共財と呼ばれます.
 これらの公共財は,フリーライド(ただ乗り)できるため,営利を目的とする民間企業は供給しません.そのために政府が供給します.公共財と呼ばれる所以でしょうね.
 例外は花火大会やTVの民放(地上波)です.花火は非競合性と非排除性を持っていますが,民間企業が供給しています.もちろんあれはタダで供給しているわけではなく,(少なくとも僕が知っている花火大会は)企業の広報活動の一環として開催されてそうなので,経済学的には厳密に言うとタダではないですね.

経済数学入門 第7回

 今日は高次関数のグラフの描き方でした.

【授業の内容】
 前回,微分を用いた2次関数のグラフの描き方を説明しました.その方法は,3次以上の関数にも応用できます.

 くどいぐらい言いましたが,ある関数を微分すると,元の関数の傾きが出てきます.それを利用して,傾きが0である点(極値)を求めることでグラフを描いていきます.
 さらに理解を深めるため,増減表と呼ばれるものを書きました.2次関数の時に増減表を使わなかったのに,3次関数では使った理由は,2次関数はU字型か山型のどちらかしかありませんでしたが,3次関数やそれ以上の高次関数では,どのような形になるか,増減表を書いてみないとわかりにくいからです.3次関数はN字型や逆N字型になることが多いですが,必ずそうなるわけではありません.

 授業では結構時間がかかったのに,文章にするとあっという間ですね.

お知らせ
 授業内に告知したとおり,11月17日の講義時間内に中間テストをします.点数が6割に満たなかった学生は全学共通教育センターでしっかり勉強してもらいますよ.そちらではマンツーマンに近い形で教えるので,苦手な人も理解できるよう説明する自信はあります.ぜひ来てください.

2008年11月5日水曜日

総合政策演習B1② 第7回

 今日は余剰分析の続きです.

【授業の内容】
 小テストは独占市場における余剰の計算でした.

 授業は,独占によって発生する死荷重の計算,独占時に従量税を課した時の余剰などをやりました.また,政府が生産者から高く買い取り,消費者に安く売るという二重価格についても計算しました.

 独占時に従量税を課す問題は,これまでの内容を理解しているか確認するのに都合が良いので,来週小テストをします.解けるかどうかだけではなく,スピードも意識しましょう.

基礎総合演習B 第7回

 今回も株価の分析をしました.

【授業の内容】
 今回の題材は,資生堂です.過去の株価の変動についての説明は,なかなか説得力がでてきましたね.
 今回皆さんに新たに指摘した点は,企業の決算日と決算内容です.これは企業が自らが業績,引いては配当について情報を公開するので,非常に重要です.まぁ,これで皆さんある程度,株について理解できてきたのではないでしょうか.

 次週は,各チームが今後,どういう方針に則って株を売買するのかを発表してもらいます.各チーム5分程度を予定しています.チーム内でしっかり話し合ってください.

 最後に今週末のバーベキューの役割分担などを決めました.晴れると良いですね.

経済学A 第7回

 今回は前回に引き続き,資産運用についてでした.

【授業の内容】
 前回のファンダメンタル分析を復習した後,効率的市場仮説について説明しました.簡単に言うと,すでに知られている情報が株価に影響を与えることはない,というものでした.それまでに公表されている情報は株価に織り込まれているという言い方もします.

 さて,株式とギャンブルはどこが違うのでしょうか?株でお金を儲けることと,ギャンブルでお金を儲けることはどちらが合理的なのでしょう?
 世の中には様々なギャンブルが存在しますが,あらゆるギャンブルに共通するのは,賭け手(私たち)がギャンブルする時は平均すれば確実に損をするという点です.1万円をどんなギャンブルに使っても,その期待値は必ず1万円を下回ってしまいます.ヴォルテールが「宝くじは頭が悪いことに対する税金である」と言ったように,確率的に考えれば決して合理的な選択肢とは言えません.もちろん採算度外視でお金を賭けること自体に喜びを感じる人にとっては合理的な選択なのかもしれませんが,少なくとも資産運用の手段としては誤っています.

 対して株式を期待値で考えれば長期的にみれば(少なくともこれまでは)お得な選択肢です.長期的なリターンは結構高いようです.
 しかし,株式にはリスクがあるので,損をすることもあります.ただし,株式は株の選び方により,リスクを軽減することができます.このリスクヘッジの方法を単純化した例で確認しました.

 後半は株式以外の資産運用の方法(金融商品)を,リスクとリターンという観点から紹介・比較しました.

・銀行預金
 銀行預金はリターンは低い(利子率が低い)ですが,リスクも低いという特徴があります.ペイオフやインフレというリスクはありますが,株式に比べればリスクは非常に小さなものです.

・国債(地方債)
 これらも非常にリスクが低いという特徴があります.一方,利回りは銀行預金に比べればやや高めです.近年は個人向け国債も発売されているので,比較的身近になりましたね.

・投資信託
 いわゆる投信,ファンドと呼ばれるものです.我々個人投資家が1万円からという少額で投資することができます.我々から集めたお金をプロが運用します.様々な銘柄に分散投資するのでリスクは小さくなりますし,そもそもプロが運用してくれるので信頼できるような気がします….
 ただし,投資したお金の1%ぐらいが手数料として毎年かかるのがマイナスポイントです.
 ちなみに変わったファンドとしては,ワインに投資するワインファンド,映画ファンドなども存在しますし,不動産に投資するRIET(リート)は結構有名ですよ.

 この他,外貨預金,FX,金(きん),土地,商品先物など様々な資産の運用方法がありますが,いずれも,リターンが高ければリスクも高い,リスクが低ければリターンも低い,というのは共通した法則です.リスクが低いのにリターンが高い,つまり「確実に儲かりますよ!」という言葉が嘘であることがわかりますね.皆さんも甘い言葉に騙されないように,確実に大儲けすることができるには,インサイダー情報で株を買うなど違法行為だけです(当然ですが,違法行為をしろという意味ではありませんよ).

 以下は資産運用に興味がある人にオススメの図書およびサイトです.
【図書】
日本経済新聞社編(2005)「なっとく!マネー塾」日本経済新聞社
日本経済新聞社編(1990)「ベーシック株式入門」日本経済新聞社
ジョン・A・パウロス(2004)「天才数学者、株にハマる」ダイヤモンド社
【サイト】
野村證券のバーチャル株式投資倶楽部
http://my.nomura.co.jp/virtual/app

2008年10月30日木曜日

経済学Ⅰ 第8回

 今日は金融政策の続きを説明しました.

【授業の内容】
 まず前回の復習です.小テストの結果が非常に悪かったです.集中して聴いていればおそらくそれほど難しくないと思うんだけどね.

 続いて,信用創造について説明しました.先々週に現金通貨の量と貨幣供給量が大きく異なることを確認しましたが,その理由は信用創造で説明できます.現金を基に貨幣が膨れあがっていく様子とその計算方法を説明しました.

 ここで,これまでのまとめとして,今日の日経新聞1面(追加経済対策)の記事を基に,これまで学んだマクロ経済学の知識と,現実経済をリンクさせました.今日の記事では定額減税の代わりに2兆円の給付金を支給する,政策金利を下げる,短期市場に資金投入,住宅ローン減税,など様々な政策が列挙されていました.それらが持つ意味をこれまで使ってきた,経済全体の図と重ね合わせて説明しました.
 また政策金利に関連して,無担保コール翌日物というものも説明しました.

 続いて個別の企業に貸し出す際の利子率の決定要因を説明しました.どのような企業が低い金利で借りられるか,そうではないかは,あなたがどんな友人に,どんな条件ならお金を貸しても良いかで考えればわかりましたね.
 利子率というのはお金のレンタル代だと考えることで,ちょっと身近になったのではないでしょうか.

 最後に流動性の罠についても少しだけ説明をしました.

 金融は,学生である皆さんにとってあんまり身近な話題ではないので,なかなかイメージしずらいテーマかもしれませんね.

総合政策演習B1② 第6回

 今回は価格メカニズムと余剰分析を説明しました.

【授業の内容】
 価格メカニズムについては,ミクロですでに説明済みなので簡単に復習だけです.ワルラス型,マーシャル型,クモの巣理論ばっかりなので,非常に簡単ですね.

 続いて余剰分析ですが,こちらも基礎的なものはミクロですでにやっています.というわけで,今回はこれまでもちょこちょこ出てきていた企業への課税をまとめて説明しました.一括固定税,従量税,従価税の3つです.それぞれどのように定式化するのか,図ではどのように表現されるか,生産量や価格にどのような影響が出るか(出ないのか)を比較しました.これでテキストの問題に取り組めるはずです.次回は解説が必要な問題を挙げてもらい,解説する予定です.

基礎総合演習B 第6回

 今回も株価の分析でした.

【授業の内容】
 今回のチームが採り上げたのは自動車のスズキでした.発表したチームの最大の疑問は,「スズキは売上も増えており,経営に問題はなさそうなのに,どうして株価がこんなに下がっているのだろう?」ということでした.
 日経平均との比較や,原油価格,サブプライムローンなど,様々な要因について説明してくれましたが,唯一抜けていたのは,為替相場の影響です.スズキのような国際的な企業,しかも日本で生産して海外に輸出するメーカーの経営にとって,為替相場は重要な要因です.

 次週のチームは資生堂について調べてくれるようです.

経済学A 第6回

 今回は資産運用のための基礎知識を説明しました.

【授業の内容】
 まず,利息の計算(複利計算)を確認した後,現在価値(現在割引価値)という概念を説明しました.現在の100万円は銀行に預けておけば,1年後にはわずかかもしれませんが増えています.例えばそれを101万円とすれば,現在の100万円は1年後の101万円は同じ価値と言えそうです.現在のお金を将来の価値に換算すると増えるんですね.
 さて,では逆に将来のお金は今の価値に直すといくらなのか,という考え方が現在価値です.時間が経てばお金が増えるのであれば,将来のお金を現在の価値に直せば(時間をさかのぼれば)お金は少し減るはずです.
 この考え方は株式について学ぶ際に,株価の分析方法の1つであるファンダメンタル分析を理解する上で必要です.

 続いて,期待値とリスクの説明をしました.期待値とは,(まだ起きていない出来事について)確率的にはどのような結果になるかを計算したものです.授業では実際に架空の宝くじの期待値を計算しました.一方,リスクとは,世間で用いられているような「危険度」のことではなく,「結果のばらつき(分散)」のことです.心理学科の学生はパッと理解できたのではないでしょうか.
 資産運用には様々な方法(金融商品:株,預金,外貨預金,国債などなど)がありますが,それらはリスクとリターンで比較することができます.ここでいうリターンとは,期待値のことです.

 さて,下準備が整ったところで株の話に入りましたが,まず「人々はなぜ株を買うのか?」を考えてもらいました.「安く買って高く売るためだ!」(これをキャピタルゲインと言います)という人もいますが,将来高くなる,あるいは売買されるには株式に何らかの価値があるのではないでしょうか.
 皆さんに聞いてみると,「配当がもらえる」(こちらはインカムゲインと呼ばれます)という意見がありました.そうです.本来株式とは,出資する(企業にお金を出すこと)代わりに,利益が出た場合に配当が受け取れる権利を示しているものなのです.

 最後にちょっとだけ株式の分析方法を説明しました.ファンダメンタル分析とテクニカル分析です.それぞれよく「株式入門」て感じの本に出てきます.テクニカル分析が好きな人に言わせればそれなりに根拠があるのかもしれませんが,テクニカル分析がこれだけ流行っている最大の理由は「とっつきやすいから」だと僕個人は思っています.

 アンケートの結果,来週も株の話をすることにしました.

2008年10月27日月曜日

ミクロ経済学ベイシックⅡ 第7回

 今日は寡占と独占的競争でした.

【授業の内容】
 寡占では,売り手が少数である場合の企業の行動を分析しました.同質的な財を少数の企業が生産している場合,しばしば次のことが起こります.

・ある企業が値上げしたとき
 この場合,ライバル企業たちは値上げをせず,これまで通りの価格で販売します.その結果,値上げした企業の財に対する需要は急激に減少することになります.
・ある企業が値下げをしたとき
 対称的に,この場合,ライバル企業たちは値下げに追随します.なぜなら,値下げしなければ急激に売上が減ってしまうからです.結果,すべての企業が値下げしたため,最初に値下げした企業の売上はさほど増えません.

 このように値上げと値下げに対してライバル企業は非対称的な動きをします.そのため,ある企業の個別需要曲線は現在の価格を境にして,屈折した直線となります.また,そのため需要曲線から導かれる限界収入は,2段階に折れた形になります.
 この限界収入の形状から,このような寡占市場では,わずかに限界費用が変化しても,それが生産量や価格に反映されないことがあります.またそれは現実の経済を上手く反映しているように思えます.

 後半は,独占的競争についての説明です.独占的競争では,売り手が多数存在し,しかも自由に参入・退出できる市場において,個々の企業が利潤を得るためにどのような工夫をするかが理解できます.
 売り手が多数,しかも参入が可能である場合,競争が激しく利潤は得られにくいでしょう.そのため,企業は一時的にでも独占状態を作り出し,利潤を得ようとします.その方法が財の差別化です.差別化された財は,講義でも例に挙げたファッション業界以外にも,様々な市場で見て取れます.例えば清涼飲料水に小さなノベルティーグッズがオマケとして付いているのはよく見かけますし,女性用のファッション誌もオマケで差を付けているそうです.
 しかしこのような差別化が功を奏すのは,短期だけです.その企業が差別化で儲けているとライバル企業が嗅ぎ付ければ,ライバルも似たような差別化をしてくるでしょう.そのため,短期的には利潤が出ますが,長期的にはライバルの参入により,徐々に個別企業の財に対する需要は少なくなり,最終的には利潤は完全競争市場と同じく,まったく無くなってしまうはずです.

 最後に,これまで見てきた,独占市場の4形態(完全独占,複占,寡占,独占的競争)と完全競争市場を様々な点から比較,整理しました.それでも時間が余ってしまいましたが….

2008年10月26日日曜日

経済学Ⅰ 第7回

 今回は前回に引き続き金融政策です.

【授業の内容】
 今回は具体的に中央銀行が,何を目的として,どのような手法で金融政策を行うのかを説明しました.
 簡単に言うと,貨幣の供給量を増加・減少させることで,物価の安定や景気の安定,さらには金融システムの安定化を狙います.

 ポイントは,どうやって貨幣供給量を調整するかです.授業では3つの方法を説明しました.
1.公定歩合
 まず,公定歩合の操作があります.公定歩合とは,市中銀行が中央銀行に預け入れ,借り入れする際の利子率です.
 公定歩合が下がれば,市中銀行は有利な条件で借り入れができるので,貨幣供給量は増加します.対して,公定歩合が上がれば,市中銀行は借り入れしにくくなります.

2.公開市場操作
 公開市場操作とは,中央銀行が金融機関に国債などを売る(売りオペ),国債などを買い入れる(買いオペ)の総称です.
 売りオペをすれば,貨幣は市中銀行から中央銀行へと流れるために,貨幣供給量は下がります.買いオペはその反対です.

3.預金準備率
 預金準備率とは,市中銀行が顧客からお金を預かった場合,その一定割合を日銀に預けなければならないというものです.預金の規模,種類によりその割合は異なりますが,大体1%ぐらいです.
 この準備率が上がれば,当然ながら貨幣供給量は下がりますし,下がれば逆のことが起きます.

 さて,貨幣供給量が増減すると何が起こるのでしょう.以後は貨幣供給量が増えたとして考えます.減った場合は逆のことが起こるだけなので省略します.
 まず,貨幣供給量が増えると,物価が上がるはずです.民間に貨幣が潤沢に流通しているので,貨幣の価値が下がる,言い換えればモノの値段が上がるからです.
 続いて,貨幣が豊富に流通しているため,企業はお金を有利な条件で借り入れることができます.有利な条件とは低い利子率ということです.利子率が下がれば,投資が増えるという関係は,以前に学んだとおりです.結果,景気は良くなるはずです.

 小テストの出来は余り良くありませんでした.次回,復習しますので確認しましょう.

基礎総合演習B1② 第5回

 今回は前回の続き,さらに寡占,独占的競争について説明しました.

【授業の内容】
 まず前回の複占で唯一やりのこした共謀について説明しました.両企業がそれぞれの利潤の合計を最大化するように行動します.完全独占に近いですね.

 続いて,寡占を説明しました.寡占は売り手が少数の場合です.特徴はある企業が値上げをしても他の企業は追随してこないので,値上げした企業は売上が激減するでしょう.もちろん利潤も悪化するはずです.値上げした企業の1人負けになります.
 対して,値下げをした場合にはライバル企業は追随してくるため,最初に値下げをした企業の売上は思ったほど増えません.他の企業も値下げをしたので巻き添えを食らってどこも利潤は増えないはずです.
 このように値上げしたときと,値下げしたときのライバル企業の動きが非対称になっています.ここから,個別企業の需要曲線が屈折したものになります.またそこから,限界収入も変わった形をしたものになります.さらに,そのため,限界費用が少々変動しても生産量,価格共に変動しづらいという特徴が出てきます.

 最後に独占的競争ですが,これは売り手は多数いるが,財の差別化を行うことで一時的に独占状態を作り出せるというものです.そのため,短期的には利潤を出せますが,長期的にはライバルの参入により利潤は0になります.

基礎総合演習B 第5回

 今回はベスト電器の過去1年間の株価の動きを説明してもらいました.

【授業の内容】
 株価に動きがあった裏には何かしら,市場を動かす材料があったはずです.今回はその原因を探ってもらいました.
 値上がり,値下がり,それぞれの理由を買収や新規開店といったニュース,季節など様々な要因から説明してもらいました.聞いていた人たちも特に疑いを持たなかったようですが,この授業の大事なテーマは「自分の頭で考える」ことです.人の言うことを一々疑っていきましょう.
 実際,今回の発表は確かにそれらしく聞こえましたが,実際には株価の変動のほとんどは日経平均の動きと連動していることを指摘しました.このように,「それっぽく聞こえるけど,本当はどうなんだろうか?」という疑いを忘れないようにしましょうね.

 また,今回は効率的市場仮説というものを説明しました.この説は株価の動きを理解するために知っておくべきです.今後も出てくると思いますよ.

 今回の発表も良かったけれど,次のチームは今回の発表を基に,さらによい発表にしてください.

経済学A 第5回

 今回は年金です.

【授業の内容】
 これまでに物価と実質値,名目値について説明してきました.今回はそれらの知識を活かして,年金の仕組みについて理解しました.
 
 まず「社会保障とは何か?」からスタートしました.年金は社会保障制度の一環です.社会保障とは,個々人に不幸が降りかかった場合,あるいは自立した生活が困難になった場合,社会全体で助け合おうという考えが社会保障です.年金は,誰しも避けられない加齢により収入が得られなくなったとき,働ける人たちが拠出するお金で生活を助けようというものです.年金以外にも,失業保険,健康保険,労働災害保険,障害者保険,介護保険,生活保護,児童福祉など様々な社会保障制度が存在します.
 社会保障は保険的方法扶助的方法に分類できます.前者は受益者負担,つまり保険料を支払った人のみ救われるもので,上記の例のうち,~保険というのがそれです.年金も年金保険制度です.一方,生活保護や児童福祉は保険料の支払いが給付の条件にはなりません.これらは扶助的方法と呼ばれます.

 さて,公的年金保険制度ですが,少子高齢化と絡めてよく話題に上ります.その理由は,年金制度が事実上,賦課(ふか)方式であるためです.授業では賦課方式と積立方式の違い,そしてそれぞれのメリットとデメリットを紹介しました.なぜ少子高齢化の影響を受けない積立方式ではないかというと,長期間ではわずかなインフレですら積み立てたお金に非常に大きな影響を与えてしまうからです.
 続いて,年金の具体的な話へと移ります.まずはしばしば,2階建てと呼ばれるその仕組みからです.国民基礎年金と呼ばれる1F部分はみんな共通ですが,2F部分は職業により加入できる年金が異なります. 
 さらに具体的な年金制度の話ですが,まぁこの辺は省略します.レジュメを読めばわかる話なので.僕はみなさんに「年金保険料を払え!」とか「~払うな!」ということは言いません.長寿の家系で長生きできると思えば入った方が合理的とは思いますが.

 僕がみなさんに唯一オススメするのは,「学生の間,年金保険料を納めないのなら,とりあえず学生納付特例制度を申請しておけ!」というだけことです. 
 なぜなら公的年金制度は皆さんがイメージする老齢年金以外にも,障害年金や遺族基礎年金といった年金も含んでいるからです.学生時代に部活,あるいは交通事故で障害を負ったとしても,もし年金を支払っておらず,かつ特例制度も申請していない場合は,障害年金を受け取ることができません.
 働きだしたら自分で考えて払うかどうか決めれば良いですが,取りあえず在学中は,この申請だけは出しておきましょう.

ミクロ経済学ベイシックⅡ 第6回

 今回は独占市場の中でも,売り手が2社のみであるケース,複占について説明しました.

【授業の内容】
 前回の完全独占市場では,売り手は1社のみでした.そのため,自分の利潤が最大になるように生産量を決めれば良いだけでした.
 今回の複占ではライバル企業が存在します.そのため,自社の生産量だけを考えていては利潤を最大化できません.ライバルがどのように行動をするのか,またそれが自社の利潤にどのように影響するのかを考えなければならないのです.
 という話をすると,多くの人はゲーム理論を思い出すでしょう.その通り,今回は敵対する2社がそれぞれ利潤を最大にするように生産量を決定する複占というゲームにおいて,ナッシュ均衡を導き出す作業を行いました.

 まず,ライバルの生産量は決まっているものとしておいておきます.その条件の下で,自社の利潤が最大になるように,つまりMR=MCとなるように生産量を決めます.その式から,ライバルが生産量を決めれば,それに対応してどれだけ生産すれば良いかがわかります(これを最適反応と呼びました).
 互いの最適反応がわかれば,そこからナッシュ均衡が導かれます.

 計算が複雑だと思ったかもしれませんが,まぁワンパターンなので,配った練習用の問題で復習すれば答えはすぐに出せるようになると思います.しかし,その裏にある意味はなかなか深いので,考えれば考えるほど理解は深まると思います.

経済数学入門 第6回

 今回は微分についてでした.

【授業の内容】
 以前に2次関数のグラフを説明しましたが,今回の微分を利用すれば,計算ミスも少なく速く頂点を導くことができます.

 微分の厳密な意味や導出方法を理解するには少々時間がかかりますが,この講義では使い方を中心に説明します.とにかく微分という作業をすることで,元の関数の傾きを導き出すことができます.微分の計算自体は簡単なので,ちょっと練習すれば大丈夫ですよね.
 中間テストでもっとも重要になってくるのが,この微分の使い方ですし,微分は2年生以降の経済学で非常によく使われます.そのため,微分の計算とその意味は必ず理解してもらう必要があります.

 次回の経済数学入門の講義では,課題を提出してもらいます.

【お知らせ】
 これまでの課題の解答をHPに掲載してあります.そのうち消すので,確認しておきましょう.

2008年10月16日木曜日

経済学Ⅰ 第6回

 今回から金融です.

【授業の内容】
 まず基礎として,「お金って何か?」という当たり前のようなことから始めました.
 普通に生きていると,「お金とはお札やコインのことじゃないか,それ以外はお金のはずはないだろ!」と思うかもしれません.しかし,実際にはそのような現金通貨は現在貨幣だと思われているもののわずか7%程度でしかないようです.

 つい数ヶ月前まで,お金と言えばマネーサプライであり,代表的なものはM2+CDだったのですが,現在は貨幣の定義として,マネーストックという概念が用いられています.
 貨幣とは「これが貨幣だ!」ときっちり区別できるものではなく,「貨幣らしさ」をどこまで認めるかでその範囲が変わってくるあやふやなものです.どこまでを貨幣として認めるかを定義するモノとして,今日はM3というものを説明しました.
 まず現金通貨普通預金であるM1があります.これはほとんどの人が貨幣として納得できるものでしょう.現金が貨幣であるのは自明として,普通預金もすぐ引き出して貨幣として使えるので,貨幣に非常に近い性格を持っています.
 M3とはこれらの現金通貨,預金通貨に準通貨とCDを加えたものです.それらはM1ほどの「貨幣らしさ」はないけれど,「まぁ貨幣として認めても問題ないだろう」というものです.M3はM1より少し「貨幣らしさ」の基準を甘くしたものと言って良いでしょう.

 この貨幣の量(マネーストック)を調整することで,物価や景気の安定を図るものが金融政策であり,それを実施するプレイヤーは中央銀行(日本では日銀)です.
 後半は,なぜマネーストックを増減すると,景気あるいは物価に影響があるのかを簡単に説明しました.

基礎総合演習B 第4回

 今回も株の仕組みについていろいろ考えました.

【授業の内容】
 株を買い始めた翌日に,歴史的な大暴落が起きましたね.しかしこれはチャンスであるかもしれません.

 今回は,株の値動きの原因を知るために,ヤマダ電機の過去1年の値動きを示したチャート図を見て,値上がり,値下がりが何によって発生したかをチーム毎に推理しました.
 あるチームはヤマダ電機のHPを,あるチームは日経新聞の過去の記事といった具合に,それぞれが独自の推理をしていました.一部わからないものもありましたが,調べてみると結構原因がわかるものですね.
 ヤマダ電機について調べてみましたが,それで終わりではなく,この具体的な経験から,より一般的な法則性を導き出すのが学問です.皆さんも今回の推理から,「ひょっとして○×という時には△□が起きるのではないか?」という仮説を導いてみましょう.そしてその仮説が他の企業でも,他の時期でも成り立つのか検証する.こうしていけば株価の予測も立派な学問になるでしょうね.

経済学A 第4回

 今回は実質値と名目値でした.

【授業の内容】
 実質値名目値の違いは,言われてみれば当たり前かもしれませんが,普段なかなか意識することがありませんね.

 まず,下準備として物価の説明をしました.2,3年前までは物価の話をしても,学生には伝わりにくかったのですが,最近は物価上昇の実感があるでしょうから理解しやすいと思います.
 物価の指標として,消費者物価指数(CPI),企業物価指数,GDPデフレーターを紹介しました.CPIについては単純化したものを実際に計算してみましたね.
 さて,物価は本当に変動しているのかは短期間ではわかりにくいですが,10年単位だと結構変化しているものです.例えば毎年わずか2%上昇しても,およそ35年ぐらいで物価は2倍になります.このように物価は,普段はあまり違いがわからないけど気がついたら随分変わっているものです.というわけで,具体的に昔のモノの値段を紹介しました.両親や祖父母に聞いてみるとおもしろいと思いますよ.

 さて,物価はどうして変動するのでしょう.本来は金融政策の影響もありますが,それはまた後ほど説明するものとして,短期間の物価変動の原因をDemand Pullのものと,Cost Pushによるものに分けました.

 後半は,この物価の変動を基に,名目所得と実質所得,名目GDPと実質GDPをそれぞれ確認しました.所得に関しては,我々はついつい名目所得に目を奪われがちですが,本当の豊かさを理解する上では実質所得が重要になることは言うまでもありません.

ミクロ経済学ベイシックⅡ 第5回

 今回も完全独占です.

【授業の内容】
 前回,完全独占市場における企業の行動はある程度説明したので,今日は応用として,完全独占市場と完全競争市場の比較,完全独占により発生する死荷重,課税の効果などを説明しました.

 完全競争市場では,企業はP=MCとなるように行動しました.完全競争市場では個別の企業に価格を決定する力はなく,市場で決まった価格を受け入れるしかありません.結果,生産量は多く,価格は低くなり,利潤はなくなります.
 対して完全独占市場では,企業は価格の決定権を持っています.自分の利潤が最大になるように生産量や価格を決めることができます.その行動基準は,MR=MCとなるように生産量を決めるというものでした.
 
 完全競争市場と比較して,完全独占市場では過小な生産になり,価格もつり上げられるため,社会的余剰は小さくなります.完全独占は望ましいものではありません.現実の世界でも独占市場に対して独占禁止法(通称)による規制があります.
 今回はこのような企業に対して,生産量1単位あたりいくらの課税を行う従量税を課し,その影響を確認しました.
 ちなみに実際に存在する従量税の例としては,タバコ税,酒税,揮発油税などがあります.
 量に課税する従量税とは対称的に,消費税などは量ではなく価格に対して課税しています.このような税は従価税と呼ばれます.

 今日の例題は復習し,またテスト前には必ず改めて解いておきましょう.

経済数学入門 第5回

 今回は対数でした.前回の指数が理解できていないと難しいでしょうね.

【授業の内容】
 指数に比べ,対数は馴染みがないので難しいと思ったかもしれませんね.しかし,わずか4つの法則を覚えるだけです.対数は極めて大きな数をグラフに描くときに用いられることもあります.

 今回も提出すべき課題はありません.来週は微分です.経済学を学ぶ上で必須です.

【中間テストについて】
 11月中旬に中間テストを行います.

2008年10月12日日曜日

総合政策演習 第5回

 今回もテスト&解説です.今回で僕の担当は終わりです.次回からは橋本先生が担当されます.

 僕は3年生のほとんどとは講義を通じて会うことはないので,就活については口うるさく言ってきたと思います.これからほぼ半年で本当に多くのことが決まってしまうので,「なんでもっと本気で就活しなかったんだろう?」と後悔することの無いよう,積極的にがんばってください.やってみると色んな人との出会いもあるし,結構楽しいものでもありますよ.さらに,早く内々定を取れば来年は非常に楽しい1年になりますしね.

 というわけで,僕は皆さんとおそらく講義で会うことはほぼ無いでしょうが,個人的には相談に乗りますので,研究室にでも来てください.

経済学Ⅰ 第5回

 今回は失業,そして労働市場についてです.

【授業の内容】
 まず現在の失業の状況と,失業者(と完全失業率)の定義から説明しました.失業者の定義を知らなければ,現在(2008/8)の失業率4.2%は「結構低いじゃないか」と思うかもしれません.実際に先進国間で比較すれば低い方ですしね.
 ただし,失業者と認定されるには結構厳しい条件があります.授業では,次の4者のうち,失業者はどれかを考えてもらいました.
1.それまで正社員として働いていたが,出産を機に退社した専業主婦
2.バイトをしていない学生
3.就職活動をしているが,現在は生活費を稼ぐためバイトをしている人
4.就活をしてみたが,思ったより厳しくて諦めてしまったニート

 「1.2.は失業者じゃなさそうだな,3.4.は失業者かな?」という人が多かったと思いますが,実際には全員失業者ではありません.失業者とみなされるには,就業を希望し,就業が可能であって,求職活動をしており,なおかつまったく働いていない,という条件を満たさなければなりません.

 さて,この失業ですが,経済学的にはどう捉えるのか,古典派とケインズ派の立場から説明しました.市場を信頼する古典派からすると,失業が発生すると賃金が下がるので失業は解消されるはずで,実際に失業している人は自発的失業だ,と考えます.一方のケインズ派は市場を信頼していません.賃金に関しても下方硬直性という性質があるため,市場に任せておいても失業は解消されないのです.

 後半はこの賃金の下方硬直性が発生する理由を説明しました.その理由として次の4つを挙げました.
1.労働組合の存在
2.相対賃金仮説
3.効率賃金仮説
4.インサイダー・アウトサイダー仮説

 では労働者の賃金は下がってないのか,というとこれまた難しい問題です.正社員の賃金だけを見れば下がっていないかもしれませんが,近年労働者に占める正社員の割合はどんどん下がっており,その代わりにパート・フリーター,契約社員,派遣社員といった非正規労働者が増え続けているからです.
 今回は配付資料で正規労働者と各種の非正規労働者の賃金の分布を確認しましたが,非正規労働者の賃金の低さには驚いたのではないでしょうか?ワーキングプアという言葉が流行ったのもここ最近のことですね.

総合政策演習B1② 第4回

 今回は複占の続きです.複占は解法が4つもあるので覚えることが多くて大変でしょうね.

【授業の内容】
 まず小テストを行いました.今回は複占におけるクールノー均衡を求める問題でした.ちょっと時間がかかりすぎでしたね.

 前回はクールノー均衡,今回はベルトラン均衡とシュタッケルベルグ均衡です.ベルトラン均衡は価格を変数としたナッシュ均衡です.シュタッケルベルグ均衡の考え方は逐次手番ゲームにおける後ろ向き帰納法そのものですね.

 ベルトラン均衡でも(クールノー均衡と同様),まずMR=MCという式を作り出します.ただし,クールノー均衡との違いは,クールノー均衡は,MR,MCともに量で表現して,結果,最適な生産量が導出されます.
 一方,ベルトラン均衡ではMR,MCをそれぞれ価格で表現します.それにより,最適な価格が導出されます.
 つまり,クールノー均衡は生産量を戦略として(生産量を調整して)利潤を最大化するゲームであり,その帰結として価格も自然と決まります.対して,ベルトラン均衡は価格を戦略として(価格を調整して)利潤を最大化するゲームであり,最適な価格が得られれば,それに対応する生産量も導くことができます.

 シュタッケルベルグ均衡は,クールノー均衡と同様,生産量を戦略として利潤を最大化するゲームです.クールノー均衡との違いは,クールノーが同時手番であるのに対して,シュタッケルベルグは逐次手番です.
 つまり,時間の流れとしては,ある企業(A)が最初に生産量を決定し,それを見てライバル企業(B)が自身の生産量を決定するゲームです.ただし,解法は後ろ向き帰納法,つまりBの最適な行動をまず予想し,その予想を基にAが生産量を決定します.
 実際の手順としては,Bに関してMR=MCという式を作ることで,Aの生産量に対するBの最適反応がわかります.これを需要関数に代入した上で,AがMR=MCという式を作り,それを解きます.

 クールノー,ベルトラン,シュタッケルベルグ均衡のそれぞれが,どこが違うか,どこが同じかを意識して,改めて問題を復習しておきましょう.

2008年10月9日木曜日

基礎総合演習B 第3回

 今回から本格的に株の勉強ですね.ただし,あくまで株は題材に過ぎません.本当に身につけるべきことは,「自分の頭で考えること」です.その理由は説明しましたね.

【授業の内容】
 株というのは,本に書いてあることを疑う習慣を身につける上で非常に有効な題材です.なぜなら本によって書いてあることがバラバラだからです.こっちの本では「分散投資が良い」と書いてあれば,違う本には「分散投資はダメ」と書いてあります.あるいは「テクニカル分析」について詳しく説明している本もあれば,「テクニカル分析は嘘っぱちだ」と書いてある本すらあります.何が本当で何が嘘なのでしょう?

 今回は小手調べとして,皆さんに「株について知っていること」をどんどん挙げていってもらいました.みんなのイメージでは株とは「安いときに買って,高いときに売ることで儲ける」もののようです.
 もしそれが株のすべてであるとするなら,そもそもなぜ株は売買されるのでしょうか?美術品やクワガタなどが売買される理由はわかります.なぜならそれらを所有することで喜びを感じる人がいるからです.では株券を買うと嬉しいのでしょうか・・・?それともあれは単なる紙切れ(最近は電子化されたけど…)に過ぎないのでしょうか?

 学生から,株を所有する理由の1つとして配当というものの存在が指摘されました.そうです.本来,株とはお金を出資することで将来配当を受け取る権利を得られる,その約束手形として生まれたのです.
 というわけで,配当の存在は株価の分析にもヒントとなりました.将来,高い配当を得られるであろう株は高い値段で取引されるでしょう.逆に将来もあまり配当がもらえそうにない,あるいはすぐにでも潰れそうだ,という企業の株の価値は低いでしょう.

 今回の株についての理解はここまでにしておいて,後は実践として株を購入してみました.

 その後,ビックリするぐらい日経平均が下がってしまいましたね….

経済学A 第3回

 今回は経済学っぽい経済学の話をしました.経済の仕組みと経済学の変遷を簡単に説明しました.今回は重要な内容を一気に説明したので,太字だらけになってしまいましたが,いずれも必ず覚えて欲しい語句ばかりです.

【授業の内容】
 まず景気,あるいは経済成長の目安としてもっともよく用いられる国内総生産(GDP)とは何かを説明しました.ポイントは「どれだけモノを生産したか」ではなく,「どれだけ付加価値を発生させたか」です.
 さて,このGDPは,国内の総支出,そして総所得と同じ大きさになり,それを三面等価の原則と呼びます.なお,総支出は需要,総生産は供給と捉えることも可能です.
 このうち,総支出は,民間消費,民間投資,政府支出,輸出-輸入(純輸出)から構成されています.

 続いて,経済におけるプレイヤー(経済主体と呼びます)を紹介しました.まず最も大事なプレイヤーは,民間側の家計企業です.両者は(商品やサービスの総称)を売買するだけでなく,労働力も売買しています.また,それらが売買される場所は市場(しじょう)と呼ばれ,財市場,労働市場と言った使い方をします.
 続いて,これら民間側に様々な介入をする公(官?)側のプレイヤーを紹介しました.政府中央銀行(日本では日本銀行)です.政府は市場に様々な介入を行います.中央銀行は,市場に直接介入するというより,銀行(市中銀行)というサブ・プレイヤーを通じて間接的に金融市場に介入します.

 この介入のあり方に関して,経済学では大雑把に言うと2つの学派に分かれます.1つは,警察など政府が提供しなければいけない最低限の介入だけを行うべきだという古典派新古典派),そして,積極的に介入すべきだというケインズ派です.
 これらの学派による経済の見方,そしてそれらが政策にどのように反映されてきたかを,およそ200年前から現在へと歴史の流れと共に説明しました.
 公共工事がどうして景気対策になるのか,民営化がなぜ必要になったのか,など現実の経済の例を挙げながら説明しました.

ミクロ経済学ベイシックⅡ 第4回

 ゲーム理論は前回で終わり,今回から独占市場です.

【授業の内容】
 独占市場には様々なケースが含まれます.
・完全独占(狭義の独占)
・複占
・寡占
・独占的競争
の4つです.最後の独占的競争は厳密には独占かというと難しいところですが.

 今回はこのうち,完全独占,つまり売り手が1社のみの市場を考えました.

 完全競争市場では売り手は多数いました.そのため,それぞれの企業は価格に影響を及ぼすほどの力を持っておらず,市場で決まった価格を受け入れざるを得ませんでした.
 しかし完全独占の場合,売り手は1社のみなので,好きなように価格を決定できます.ただし,あまりに高すぎると売れません.また安くすると沢山売れますが,1個当たりの利益は少なくなります(行き過ぎれば赤字になるでしょう).そのため,価格をいくらに設定するか,またどれだけ生産するかは難しいところなのです.

 説明では,財を新たにもう1単位生産したときに入ってくる収入(限界収入,MR)と,新たにもう1単位生産したときに発生する費用(限界費用,MC)の大きさに着目しました.
 (限界費用が逓増,あるいは一定であれば,)限界費用より限界収入の方が高い場合,その財は生産した方が利潤は増えます.逆に限界収入の方が限界費用より高い場合,その財を生産することで利潤は減少します.これらから,限界収入と限界費用が等しくなるように生産することで利潤を最大化できることがわかります.計算式で言えば,MR=MCとなるように式を作れば,利潤が最大になるような生産量が導かれます.
 なお,前期もよく出てきたMCは費用関数(総費用関数)を生産量で微分すれば導出できたように,MRも収入を生産量で微分することで導かれます.
 企業が利潤を最大化できる生産量さえわかれば,それを需要関数に代入することで,最適な価格もわかります.

 今回はこの計算(そしてその含意)を説明しました.練習問題を配布したので,必ずやっておきましょう.今回の計算は今後の講義でも基礎となります.

経済数学入門 第4回

 今回は指数をやりました.指数と言っても結構時間がかかるものですね.

【授業の内容】
 指数を説明する前に素数と素因数分解の説明からです.素数というのはなかなか興味深いもので,ついつい必要ないことまで話してしまいました.が,改めて紹介します.数学が好きな人はとても面白いと思います.
 サイモン・シン「暗号解読」新潮文庫

 素因数分解や指数はn進数(2進数など)について理解するためにも最低限必要な知識です.そのため指数は,経済学だけでなく就活の筆記試験でも必要になる場合もありますよ.

 本題の指数ですが,指数法則と呼ばれるいくつかの決まり事さえ覚えていれば,後はそれをいかに組み合わせるかだけです.あまり難しいことは考えず,どんどん問題を解きましょう.

 今回も課題を配りましたが提出義務はありません.それより,以前に提出した課題に全学共通教育センターのマークを書かれていた学生は,必ず勉強しに来ましょう.

2008年10月7日火曜日

総合政策演習D 第4回

 今回もひたすら問題を解きました.

【授業の内容】
 時事問題では,観光庁の発足と日経平均株価を採り上げました.日経平均や為替レートは正確には知らなくても,大体いくらぐらいなのかはどの業界を目指すにしろ,最低限知っておいて良い知識だと思います.

経済学Ⅰ 第4回

 今回は需要の仕組みについて学びました.

【授業の内容】
 以前にも説明したとおり,需要の構成要素は,消費,投資,政府支出,輸出-輸入(純輸出)です.
 今回はそれぞれの要素が何によって決まるのかを説明しました.

・消費
 何が消費を決めるのかについては,以下の3つの仮説を説明しました.
 1.ケインズ型消費関数
 2.恒常所得仮説
 3.ライフサイクル仮説

・投資
 投資についても,その原因となる3つを説明しました.
 1.利子率
 2.アニマルスピリッツ
 3.将来予測

・政府支出
 政府支出は政府がその大きさを決めるわけですが,果たしてなぜ必要なのでしょう.その理由としてここでは2つを挙げました.
 1.市場の失敗による公共財の供給
 2.需要不足

・輸出と輸入
 最後に輸出と輸入の大きさを決めるものを考えました.輸出と輸入は立場が異なるだけで,ある国からある国へと輸出することは変わりません.そのため,一方さえわかれば,もう一方は簡単に推測できます.
 というわけで,日本の輸出を決めるものだけ考えれば良いのですが,それは2つありました.
 1.輸出先の景気
 2.為替レート

 このうち,為替レートについては今後,時間を取ってしっかりと説明します.

総合政策演習B1② 第3回

 今回は複占のうち,クールノー均衡について説明しました.

【授業の内容】
 小テストは完全独占についてでした.これは複占を学ぶ上でも基礎になります.確実にものにしましょう.

 まず,独占市場の分類をした後,クールノー均衡に取りかかりました.クールノー均衡は,2社が自社の生産量を戦略として駆け引きを行うゲームのナッシュ均衡です.そのため,クールノー・ナッシュ均衡と表現される場合もあります.

 問題はワンパターンなので慣れれば難しくありません.両企業がそれぞれ限界収入=限界費用となるように生産量を決定するだけです.
 大事なのは復習ですので,復習はきっちりしましょう.

基礎総合演習B 第2回

 今回はオープンキャンパスでのプレゼンの用意をしました.

【授業の内容】
 各チームに分かれ,プレゼン用の動画の編集作業をしました.

 また,野村のバーチャル株式投資倶楽部への登録もしました.どんな株を買えば儲かるのかを考えました.

2008年10月3日金曜日

経済学A 第2回

 今回は「大学進学は合理的か?」を考えました.

【授業の内容】
 「当たり前じゃないか.大卒だと給料が高いんだぞ!」と思った人もいるでしょうが,果たしてどれぐらいの人が大学進学の機会費用を意識していたでしょうか?

 大学進学には当然ながらお金がかかります.まず学費が必要ですし,1人暮らしの人は生活費も仕送りしてもらわなければならないでしょう.そのため,卒業までの4年間で単純計算で1000万円ぐらいはかかることになります.しかし,実際にはこの費用に加えて,機会費用と呼ばれる費用が(見えない所で)発生しています.
 機会費用とは,ある選択肢を選んだときに,選ばれなかった次善の選択肢を選んでいたときに起こりえた状況のことを意味します.今回の例で言えば,皆さんは大学進学を選びましたが,もし進学しなかったら高卒として4年間働くことができたでしょう.その場合,もし年収を250万円とすれば4年で1000万を稼げたはずです.しかし,皆さんはその選択肢を捨てて大学に進学しました.つまり,学費や生活費などの1000万円だけでなく,働いて1000万円を手に入れるという選択肢を捨てたという意味で,さらに1000万円のコストが発生するのです.

 というわけで,皆さんはその費用に見合った分だけ,将来高い給料を得ることができなければ大学進学は(経済的には)間違った選択になります.

 さて,労働者が受け取る賃金はどうやって決まるのでしょう?実は賃金の分析には,前回学んだ「ダイヤモンドはなぜ高いか?」という考え方が使えます.なぜなら,賃金は労働者が企業に労働時間を売る場合の価格だからです.ダイヤモンドの値段も賃金もどちらも価格ですので,どちらも同様に需要と供給のバランスで説明することができます.低賃金しか受け取れない人は,需要に比べ供給が多い,つまり誰でも供給することができる労働力しか持ち合わせていない可能性があります.実際,高校生でもできるようなコンビニやファーストフードのバイトの時給はかなり安いですよね.

 次回は,今回までと違い,ちょっと堅い経済学のお話をします.

ミクロ経済学ベイシックⅡ 第3回

 今回もゲーム理論の続きです.

【授業の内容】
 まず,ミニ・マックス戦略です.これは前回までのゲームとは目的が異なります.
 前回までのゲームでは,プレイヤーはそれぞれ利得の最大化を目指して行動しましたが,ここでは最悪の状況が起きると想定した悲観的なプレイヤーが,その中でもっともマシな戦略を選ぶ,というものです.言わば被害を最小化することを目的としています.

 続いて逐次手番ゲームをやりました.こちらでの目的は前回同様,利得の最大化ですが,時間の流れがある点が異なります.あるプレイヤーが行動して,それを見たプレイヤーが行動すると想定しています.授業ではライバル関係にある2店のコンビニによる値下げ合戦を説明しました.
 このような逐次手番ゲームでは,後ろ向き帰納法(Backward Induction)という解法を用います.簡単に言うと,一番最後に行動するプレイヤーの行動から最初に行動するプレイヤーへと,順に戦略を確定させていくのです.この解法のアイデアを使って1万円分配ゲーム(一般には最後通牒ゲームと呼ばれます)も解いてみました.
 どんどん新しいゲーム,新しい解法が出てくるので混乱するかもしれませんが,落ち着いて復習してみると,それぞれそんなに複雑なものではありません.

 ただし,最後にやった混合戦略を含むナッシュ均衡のゲームはややこしいですね.これまで,「プレイヤーはある1つの戦略を選ぶ(純粋戦略)」としてきましたが,ここでは確率を取り入れました.それにより,ジャンケンのように純粋戦略だけでは解が見つからないゲームにも必ず解が見つかります.
 授業では,テニスのサーバーがサーブを左か右に打ち,レシーバーはそれを予測するというゲームを考えました.どちらに備えた方が期待利得が高いかを判断して,相手の戦略に対する最適反応を導出したわけですが,この考えは独占市場の中の複占という状況を考える上で有効になります.そのため,テストには出さないとしましたが,ぜひ復習して,なんとなくでも理解して欲しいものです.

経済数学入門 第3回

 今回は前回の復習と,2次関数の確認,不等式などをやりました.

【授業の内容】
 前回と今回で,きちんと2次関数の放物線を描くことができるようになったと思います.2次関数までは,経済学でも必須ですし,就活の学力試験であるSPIなどでも最低限必要な知識と言えます.
 グラフを描く際は,頂点を記述することは当然ですが,簡単なので縦軸との交点も記入しましょう.

 また,1次,2次不等式も確認しました.こちらも経済学だけでなく,オペレーションズ・リサーチなどの講義でも必要となります.

 今回も課題を配布しましたが,提出義務はありません.ただしこの辺りが基礎になるので,必ずやりましょう.
 

2008年10月1日水曜日

ブログの遅れについて

 今週,異様に忙しいので更新が遅れています.ちょっと待ってください.なるべく早く更新します.

2008年9月26日金曜日

総合政策演習D 第3回

 今回から目新しいこともなく,粛々と復習するのみです.

【授業の内容】
 というわけで,内容については特に書くこともないのですが,テストの点数についてはちょっと不満です.いまだに低い点数しか取っていない人は努力してないのではないでしょうか?SPIは時間をかければ誰でもそこそこ点数が取れるテストです.ではなぜそれを学生に課すかと言えば,就活に向けて最低限の努力をしていない人を振るい落とすためだと思います.

 ちなみに今日(9/26)はNHK徳島で20:00から「これが私の天職だ。~徳島・仕事に悩む若者たちへ~」という番組があるそうです.参考になるかもしれませんね.
http://www.nhk.or.jp/tokushima/program/program-2008-09-3.html

経済学Ⅰ 第3回

 今回は,物価と名目値・実質値について説明しました.

【授業の内容】
 まず物価から説明しました.最近は物価が上昇してるので,みなさんにとっても身近な話題だと思います.物価の説明ですが,「これが物価だ」というものはないので,よく使われる指標を3つ紹介しました.消費者物価指数,企業物価指数,GDPデフレータです.このうち,消費者物価指数の簡単な計算をしました.物価の計算のポイントは基準年があることです.今回は計算をたくさんしましたね.
 物価とは何かを理解したところで,様々な値段の変化(違い)を見ました.時系列での変化と,横断面での違いです.外国との物価の違いの話ではしばしばビッグマックがよく用いられます.
 さて,物価の変動はどうして起こるのかは2種類に分けられました.Demand Pull InflationとCost Push Inflationです.それぞれ具体例を挙げて説明しましたね.

 後半は,名目値と実質値の違いを説明しました.我々は普段名目値に目を奪われがちですが,重要なのは実質値であることがわかったはずです.例として,GDPと所得を取りあげました.どちらも名目値にはあまり意味がありませんでしたね.これらは実際に単純な例で計算してみました.
 ニュースなどでGDPが出てくる際は,よく注意して聞いておくと「実質GDP」が使われていることがわかります.経済学Ⅰでせっかくマクロ経済学について学んでいるので,実際のニュースにもちょっと気をつけてみてください.

【小テスト】
 今回の小テストは名目GDPと実質GDPの計算問題でした.ちなみに全員正解でした.今後もがんばってください.

【アンケート】
 「黒板の字が小さい」という意見と,「実質GDPがわかりづらい」という意見がありました.黒板の字はもう少し前に座ってくれれば良いと思います.GDPの方は来週の講義の冒頭でちょっと説明したいと思います.

2008年9月24日水曜日

総合政策演習B1②

 今日から本格的に演習を!と思っていたのですが,前回とまったく顔ぶれが違いました.どういうことだ?

【授業の内容】
 とりあえず前回予告したとおり小テストを行いました.そんなに難しくないと思います.来週は完全独占の小テストをします.

 今回の本題は完全独占です.独占の基礎となる部分ですので,きっちり理解しましょう.やることはワンパターンですし,計算も大変ではないので困ることはないでしょう.限界収入=限界費用の式を作れば最適な生産量が出てくるし,それを需要関数に代入すれば価格も出てきます.

【課題】
 テキストの完全独占の問題のうち,必修問題とNo.1-5までを確実にやってください.No.5は少々難しいですけどね.

2008年9月22日月曜日

ミクロ経済学ベイシックⅡ 第2回

 前回に引き続き,ゲーム理論をやりました.

【授業の内容】
 前半は支配される戦略の逐次消去を繰り返しました.まずしっかりと利得表の見方を理解することが重要です.見方に慣れるまでわかりにくいと思いますが,しっかり復習しておきましょう.とにかく,相手がどんな戦略を選ぶとしても,自分の他の戦略と比べて劣っている戦略(これを支配される戦略と呼びます)を排除していきます.それを繰り返すことで,それぞれが選ぶ戦略が1つに絞られる場合があります.
 ただし,上手く行く場合もありますが,この解法では解けない場合も存在します.そんなゲームで力を発揮するのがナッシュ均衡という考え方です.

 ナッシュ均衡とは,「自分の選んだ戦略が相手の戦略に対する最適な反応であり,相手の戦略も自分の戦略に対する最適な反応になっている状況」のことです.ちょっと複雑ですね.誤解を恐れず簡単に言えば,互いに裏をかけない状況と言えるかもしれません.
 最後に,このナッシュ均衡の概念を利用して,ホテリング・ゲームと呼ばれる問題を解きました.答えがわかった人もちょこちょこいたようですね.なかなか鋭いです.

 さて,前回と今回,取りあげたゲームはすべて以下の条件を満たしたゲームです.改めて厳密にゲームを定義しました.
同時手番ゲーム:両者が同時に戦略を決定するゲーム,あるいは自分が戦略を決定するまで相手がどの戦略を選んだかわからない(逆も同様)のゲーム.(⇔逐次手番
非協力ゲーム:それぞれのプレイヤーは自身の利得を最大化することのみに関心がある.(⇔協力ゲーム)
完備情報ゲーム:互いに利得表について知っており,かつ相手が利得表を知っていることもわかっている.(⇔不完備情報ゲーム)
完全情報ゲーム:互いに過去にどの戦略を選んだかを知っている.(⇔不完全情報ゲーム)

 来週は,目的が利得の最大化ではないゲームや逐次手番ゲームを紹介します.また,どの戦略を選ぶかに確率を導入したゲームもやれればやります.

経済数学入門 第2回

 今日は,前回に引き続き関数です.基礎的な内容ではありますが,それだけに今のうちに確認しておくことは非常に重要です.

【授業の内容】
 まず,高校までの数学とは異なり(?),経済学では3つ以上の変数を用いることは珍しくありません.例えば,2つの異なった種類の数値(ビスケットとジュースの消費量)をインプットして,新たな数値がアウトプット(幸せ)として出てくるような使い方をします.
 今回は関数の基礎として,1次関数と2次関数を駆け足で復習しました.どちらも方程式が解けるだけでなく,それらがグラフでは何を意味しているかがわかることが重要です.経済学ではよくグラフが出てきます.

 文章にするとこれだけになってしまいますが,本当に重要な所なので,課題をキッチリとやってきてください.

【課題】
 今回配布した課題は次週,提出してもらいます.

2008年9月19日金曜日

総合政策演習D 第2回

 今回もいつもどおりです.

【授業の内容】
 テストの内容は前回の復習,ブラックボックス,物の流れ,PERT法と時事問題でした.時事問題は多くの人ができていましたが,そうでない人もいました.ちょっとぐらいニュースに関心持ちましょう.

 また息抜きに,「落ちても良い企業」というのを紹介しました.結構タメになる記事だと思ったのですが,どうですか?

【次回のテスト】
 とりあえず範囲が終わったので,今後はこれまで学んだ内容からランダムに出題します.また時事問題も出します.コンスタントに7割ぐらい取れるようにがんばりましょう.

経済学Ⅰ 第2回

 この講義は早くも2回目ですね.今回は前回の復習をした上で,経済のプレイヤーたち(経済主体)を紹介し,経済学の歴史(の一部)を説明しました.

【授業の内容】
 経済には様々なプレイヤーがいます.まずもっとも重要な2つの経済主体として,民間側に企業家計がいます.この2つの主体が市場で様々な取引を行うのですが,これが市場経済の原動力です.この他,民間側には企業と家計の間でお金の仲介を行う銀行が存在します.一方,民間側ではないところ(公)には,政府中央銀行というこれまた重要なプレイヤーがいます.この2つは様々な形で市場に介入を行います.
 さて,今回は経済学の歴史をこの「介入」をキーワードに説明しました.まずは18C後半のアダム・スミスを筆頭とする古典派から始まります.古典派の特徴は,「神の見えざる手」の存在,つまり市場では企業や家計が各自の利益だけを求めて好き勝手に行動しているにもかかわらず,市場全体として需要と供給が上手く均衡しており,まるで見えない神の手が物事を調整しているようだ,というものです.簡単に言えば,「市場はよくできている」ということです.そのため,政府が介入をすると邪魔になるので,なにもするな,ほっとけ「為すに任せよ(レッセ・フェール)」というのです.政府が関与して良いのは,警察や消防など,民間側が行ってくれない最低限の公共的な仕事のみなので,古典派の理想とする国家像を夜警国家と呼んだりもします.また供給が需要を決定するセイ法則というのも特徴でした.
 しかし,世界大恐慌を期に,ケインズ派が台頭します.ケインズ派は市場を信頼しておらず,市場が失敗すると積極的に介入しようとします.需要が供給(総生産)を決めるという有効需要の原理を唱えるため,景気が悪いときには政府支出を増加して,需要を喚起し,景気回復を狙います.
 日本でもこの理論に則り,景気が悪けりゃ道路を作れ,ダムを造れとしてきたわけですが,近年あまり効果は実感できませんでした.そして残ったのは巨額の借金(国債残高)です.アメリカ,イギリスもすでに同様の状況に陥り,財政再建を目指して新古典派へと転換していました.日本も遅ればせながら財政再建に取り組みます(たぶん…).
 新古典派のキーワードはやはり「市場への信頼」です.そのため,近年の日本では「規制緩和」,「官から民へ」といったフレーズが繰り返し用いられました.郵便局も民営化されましたね.

 次週は物価について説明します.

ミクロ経済学ベイシックⅡ 第1回

 後期はどれだけ登録してるのかなぁ?と心配だったのですが,結構多かったですね.前期はみんな真剣に勉強していましたが,後期もその調子でよろしく.

【授業の内容】
 まず,前期との違いを説明しました.前期で扱った内容は,完全競争市場という机上に存在する(経済学者にとって)理想的な社会です.しかし,現実はそうではありません.前期で想定していた様々な仮定は成立しません.そのため,後期ではそれらの仮定が成立しないときに各経済主体の行動はどうなるのかを考えます.
 そのスタートとして,「多数の売り手と買い手が存在する」という仮定が破られた場合として,独占市場を考えます.独占市場を理解するために,まずはゲーム理論を学ぶ必要があります.

 講義の後半は早速ゲーム理論におけるゲームについて考えてみました.有名な囚人のジレンマというゲームです.今回はまぁ挨拶程度で,次回から本格的にゲーム理論に取り組みます.

経済数学入門 第1回

 多忙により更新が遅れました.初回である今回は,チームリーダーを決め,チーム毎に分かれてもらいました.また,関数とは何か,高校までで見過ごしがちである問題を考えてみました.

【授業の内容】
 関数とは何でしょう?「ある変数に依存して決まる値,あるいはその対応を表す式のこと」という定義が多いようです.講義では,「ある数字を入れると,新たな数字を発生させるブラックボックスのようなもの」という説明をしました.大事なポイントは,そこには流れがあることです.原因となす数字があり,それが結果となる数字を生み出します.
 というと抽象的で難しそうですが,我々は普段から無意識に関数を使用しています.講義では,一緒にご飯を食べる人数から,その時に必要なハシの本数を見つけ出す作業をハシ関数として説明しました.その他,外食に行く回数と食費の関係を考えました.
 また,それぞれの関係をグラフに表現しました.グラフを描く場合には,原因となる変数を横軸に,結果となる変数を縦軸に描くのが慣例です.
 後半は,文章から関数を作り出す例題を各自で解いてもらいました.

 この講義のポイントは学生同士で教え合うことなのですが,やはりなかなか難しいかな?工夫が必要そうですね.

【課題】
 配布した課題プリントは次回の講義で提出してもらいます.

2008年9月16日火曜日

基礎総合演習B 第1回

 今日は初回と言うこともあり,顔合わせをしてチーム分けをしました.

【授業の内容】
 演習では3人ずつの3チームに分かれ,様々な取り組みをしてもらいます.目標は12月のプレゼンコンテスト,2月のポスターセッションコンテストへの出場です.

 とりあえず今回はチーム分けとチーム名の決定.さらに最初の目標であるオープンキャンパスでのプレゼンに向けて,高校生は大学の何を知りたがっているか考えてもらいました.各チームともそれぞれコミュニケーションが取れていたようなので何よりです.

【課題】
 各チーム,オープンキャンパスで5分程度発表するためのテーマを考えましょう.来週発表してもらいます.

経済学A 第1回

 今日は初回ですが結構重要なことを説明しました.

【授業の内容】
 まずこの講義の評価について説明しました.期末テストで評価しますが,発表により加点します.個人的には出席はあまり重視しませんが,決まりなので1/3以上休むとテストが受けられません.

 さて,今日の内容ですが,前半は「経済学とは何か?」,「合理性」と「インセンティブ」について説明しました.特にインセンティブというのは経済学において重要な概念です.様々な例を使って説明したので,どのようなものか,なんとなくイメージはつかめたと思います.
 後半は,「ダイヤモンドはなぜ高いのか?」を説明しました.なんとなく「ダイヤは珍しいんだから高くて当たり前だ」と思っていたかもしれません.しかし,希少性は決定的な要因ではありません.なぜなら希少でも価値がないものもあるからです.また,石ころに比べればダイヤは希少ですが,宝石の中ではそれほど希少とは言えないことも例として挙げました.結論から言うとモノの価格は需要と供給とのバランスで決まります.いくら需要があっても,水や空気のように豊富に存在するモノは高い値段で取引されません.逆にいくら供給が少なくても(希少であっても),需要がなければ取引すらされないかもしれません.
 というわけで,最後に鶏の卵の赤玉はなぜ白玉より高く売買されるかも説明しました.納得しましたか?

2008年9月11日木曜日

【お知らせ】青年海外協力隊

 JICA四国さんから,徳島県の青少年活動支援センターで行われる無料公開講座のお誘いがありましたので,お知らせします.

「南国の笑いと涙の2年間~青年海外協力隊体験談~」
日時:10月3,10,17日(金曜日)
場所:徳島県青少年活動支援センター(県庁の近くのようです)
http://www14.ocn.ne.jp/~tssc/access.html

 3人の講師の方が自らの体験を語って下さるそうです.希望する人は以下のページからどうぞ.
http://www14.ocn.ne.jp/~tssc/kouza/kouza03.html

総合政策演習D 第1回

 3年生のみなさんは久しぶりですね.やはりインターンシップを経験したせいかパッと見は大人しくなりましたね.

【授業の内容】
 今後の就活の流れを説明した後,テキストで取りあげてない分野の問題を説明しました.
 まぁ問題はともかく,就活の流れに遅れないようにしましょう.今日の講義では紹介しませんでしたが,以下のサイトも参考になると思います.

履歴書の正しい書き方、効果的な書き方とは:まずはここから.
http://jibun.atmarkit.co.jp/lcareer01/special/resume08/resume01.html

面接突破大作戦:国家Ⅱ種受験者向けのサイトだし,ちょっと古いのだが,民間企業を狙う人にとっても大部分が有効だと思う.
http://www.columnist-seiji.com/sub7-1.html

Tech総研「人事が不採用ボタンを押すNG回答ランキング」:タイトル通りですね.「こんなやつおらんやろ!」と思える人はまともだと思います.「えっ,ダメなの?」という人は危険です.
http://rikunabi-next.yahoo.co.jp/tech/docs/ct_s03600.jsp?p=001101&vos=nyternns000000000001

元・採用担当だけどなんか質問ある?:上の3サイトもそうですが,ネットの情報は鵜呑みにせず,真贋を見極めて賢く使いましょう.「基礎的すぎて,人に聞きづらい」という質問があるので参考になるかも.
http://news4vip.livedoor.biz/archives/51146799.html

 サイトも良いけど,できれば就活をがんばってた先輩に聞くと良いですよ.積極的に!

経済学Ⅰ 第1回

 今日から経済学Ⅰが始まりました.商科の1年生の人は初めましてですね.

【授業の内容】
 今日は経済学Ⅰの内容であるマクロ経済学とは何かを主に説明しました.マクロとミクロの違いを説明した後,経済成長の目安であるGDPとは何かを具体例で説明しました.
 GDPは国内総生産と訳されますが,正確に言うと「どれだけモノが作られたか?」ではなく,「どれだけ付加価値が発生したか?」を表すものです.
 続いて,三面等価の原則と総支出の内訳を利用して,ケインズ派経済学の立場から,消費税や政府の公共事業が景気にどのように影響するのかを大雑把に図解しました.今日のイメージを理解していれば,今後の講義内容がよりよく理解できると思います.というわけで,来週の冒頭でちょっと復習するつもりです.
 来週は今日出てきたケインズ派以外の経済学説と,それらが登場した経緯を説明します.

【評価についてのお知らせ】
 評価は小テスト(約30点)と期末テスト(約70点)の計100点に加えて,発表による加点を行います.当然ながら合計が100点を超えてしまっても評価は最高で100点です.
 出席はそれほど重視しませんが,2~3回欠席したら内容が理解できないので結局単位を落とすことになると思います.

2008年9月10日水曜日

総合政策演習B1②

 ついに夏休みが終わってしまいましたね.演習B1は後期から水ノ上が担当します.

【授業の内容】
 初回からきっちりと授業をしました.今回はゲーム理論と完全独占でした.公務員試験に出てくるゲーム理論の問題は,ミクロ経済学ベイシックⅡの講義内ですでにカバーしているので簡単に済ませました.出題されるのは,純粋戦略のナッシュ均衡,ミニマックス戦略,混合戦略のナッシュ均衡の3種類のようです.
 後半は完全独占の復習です.こちらもミクロですでに学習済みなので,それほど難しくないでしょう.
 次週はテキストの完全独占の問題をいくつかこなした後,複占の説明をしたいと思います.

 なお,この演習をきちんとこなせば地方上級程度であれば特に勉強しなくてもミクロは問題ないようにしたいと思っています.そのため,予習・復習は結構ハードです.

 次回はゲーム理論のミニテストを行います.また予習範囲はテキストの完全独占の必修問題とNo.1-5の問題です.解けるだけでなく,解説をしっかり読んで,解法を人に説明できるようにしっかりと理解してきて下さい.

2008年7月18日金曜日

基礎総合演習A 第12回

 今回は最終回と言うことで,これまでのまとめ的に,みんなの意見を聞きました.

【授業の内容】
 まず,株式の運用成績を報告してもらいました.当初の予算100万円を守り切れたのは学生3チーム中1チームのみでした.その間,日経平均はやや下がっているので,まぁまぁの成績ではないでしょうか.
 続いて学生に「将来株をやってみたいか?」と尋ねたところ,「やってみたい」という人はわずかでした.しかし今回のような短期間で結果を出すのは非常に難しいので,これに懲りず,資産運用の1つとして積極的に考えてもらいたいところです.

経済学A 第12回

 今回で最終回です.やや変則的な内容でした.

【授業の内容】
 前半は開発経済学について説明しました.欧米の先進国や近隣のアジア諸国と異なり,アフリカや南アジアの国々についてのニュースがテレビや新聞で報道される機会は少ないです.よく目にする欧米や東アジアの国々は先進国であったり,急速に成長していたりで,多くの人にとって「貧困てまだあるの?」という感じかもしれません.あるいは貧困とは国内の格差の問題と思っているかもしれませんね.
 しかし現実にはいまだ多くの人々が食糧不足に困っていますし,いくつかの国では内戦が絶えることがありませんし,あり得ないようなハイパーインフレ(異常なほどの物価上昇)が現在進行形で起きている国もあります.そういった現実を少しでも身近に感じてくれると良いなぁと思います.

 後半は,以前のアンケートにあった質問のうち,各回のテーマとの関係で答えることができなかった質問を6つ取りあげ説明しました.
Q1.田舎で暮らすのと都会で暮らすのはどちらが合理的か?
Q2.バイオエネルギーは食糧問題と関係があるのか?
Q3.将来の日本について
Q4.好景気と不景気の具体的な違い
Q5.どうして税金を上げて医療費を無料にしないのか?
Q6.NHKの受信料を払うのは合理的か?
 この他にも僕にとって魅力的な質問があったのですが,時間の関係で説明できなくて残念です.またこのブログで回答したいと思います.

2008年7月14日月曜日

経済政策論 第13回

 今回はこれまでの総まとめとして,各自に発表をしてもらいました.

【授業の内容】
 皆さんには,これまで取りあげた5つのテーマのうち1つを選んで発表してもらいました.少子化が一番多かったですが,ガソリン,環境,年金とうまい具合にバラつきました.
 それぞれ,僕が予想していたより中身のしっかりした発表でしたが,特に周りにアンケートしてきた学生たちの発表は興味深かったです.「なぜ結婚しないのか?」,「年金は社会保険方式と税方式のどちらがよいか?」,「ガソリンの高騰の影響をガソリンスタンド店の店員に聞く」などいずれも貴重な情報です.
 また少子化についてはたまたま学生が集中しましたが,それぞれまったく異なる視点から少子化に切り込んでおり,まとめれば素晴らしい少子化対策が作れそうです.
 環境についての発表では,洞爺湖サミットと京都議定書の内容を比較するなどタイムリーな内容でした.

 総じて,「みんなしっかりと問題に取り組んできたな」という感想を持ちました.できるだけ今後も(卒業してからも)社会の問題に関心を抱き続けて下さい.

文理学 第13回

 文理学も今日で終わりです.前半は文理学,後半はホームルームでした.

【授業の内容】
 前回のワークシートを返却して,少し解説しました.主観的な意見と客観的事実との見分けですが,例文のほとんどは主観的な意見でしたね.あまりに多すぎて疑心暗鬼になったのではないかと思います.「~と考える。」,「~期待したい。」などの文はすべて筆者の個人的な考えに過ぎないので意見です.

 続いて,ネットを利用する際の注意点を話しました.最近,ネット(ブログやSNSなど)で犯罪自慢?(Ex.飲酒運転をした,未成年なのに喫煙をした)をするという幼稚な行為を,それを見つけた人が通報し,ニュースとなるケースがしばしば見受けられます.そもそも犯罪そのものが間違っていることは言うまでもありませんし,わざわざそれを不特定多数の人が見るネットに公開することは危機意識にあまりに欠けています.友人がそんなことをしているのに気づいたら,早めに注意してあげましょう.
 つい最近も小学生がネット掲示板で殺害予告をして補導されましたが,皆さんも(まさかとは思うけど)そんなアホなことはしないようにね.軽い気持ちで書き込むとえらいことになりますよ.ネットは便利ですが,使い方を間違えないように.

 さぁ,テストが終われば夏休みです.しっかり遊んで下さい.旅行するなり,目標に向かって努力するなり,自由な時間を使って普段できないことをしましょう!くれぐれも家でダラダラしてたら終わってた,ということにならないように.

2008年7月11日金曜日

ミクロ経済学ベイシックⅠ 第12回

 水曜日に補習をやったから事実上,第13回目ですかね?今日はテストを行いました.

【テストについて】
 まだ3分の2程度しか採点していませんが,総じて良いです.中間は良いのもあれば,ひどいのもありましたが,全体的に高得点のものが多いです.すでに1人,満点が出てしまいました.みんながしっかり勉強して良い点を取るのは嬉しいのですが,なぜか満点だと嬉しいような悔しいような複雑な気持ちです….もっと難しくすればよかった.

 この講義については,最初はみんな(時間のせいか?)あんまりやる気を感じられなかったのですが,テストが近づいてからは,本当にしっかり勉強していたように思います.複数の学生から「ミクロ経済学って真剣にやったらおもしろいね」という意見を聞き,「教えて良かったなぁ」と思います.このミクロの講義は,公務員試験の専門試験に対応できるようにと,難しい話も取り入れています.そのため,僕としても「どれぐらい伝えられるだろう?」と思いながら教えているのですが,みんな積極的に学んでいるようなので,本当に嬉しいです!2年生は取っている授業が異常に多いので試験勉強も大変だったと思いますが,よくがんばりました.
 まぁ,もうちょっと早く本気を出してくれると,もっと良かったんだけどね….

 では後期のミクロ経済学ベイシックⅡでお会いしましょう!

経済学Ⅱ 第14回

 今回はこれまでのテスト対策を兼ねて,これまでの復習をしました.

【授業の内容】
 というわけで,特に目新しいことはやっていません.

【テストについて】
 持ち込み可能なのは自筆のA4用紙1枚のみです.
 評価は,期末テストとこれまで行ったミニテストにより行います.

開発経済学 第14回

 今回で最後の講義でした.主な受講生が3年生ということもあり,最後は「途上国開発という仕事」を紹介しました.

【授業の内容】
 これまで半期に渡って説明してきた開発経済学ですが,途上国開発(貧困削減)を仕事にしている人たちもいます.それは公務員系(国際,国家,独立行政法人),NGO,民間企業(開発コンサルタント,CSR業務)の3つに分類できます.
 それぞれの立場により,メリット,デメリットは様々です.NGOは現場に近く,自分の希望する分野で働くことができそうですが,あまり収入が期待できません.半数以上の職員が年収300万円以下だそうですし,「やりたいことがやれれば収入はいらない」という人,あるいはリタイヤ後などでなければ難しいでしょう.また民間企業のようなエントリー→選考というパターンより,インターンシップやボランティア経由で職員になるケースが多いようです.
 公務員系は,国連関係機関で働く国際公務員,外務省(国家公務員),JICAやJETROといった独立行政法人があります.これらのメリットはやはり安定した給与が得られることでしょう.しかしその分だけハードルも厳しいです.国連で働くには最低でも修士号が必要でしょうし,外務省を目指すのなら最低でも2~3年間はみっちり勉強が必要でしょう.
 最後に民間企業ですが,開発コンサルタントは院卒が多いものの学部生のエントリーも受け付けているようです.また一般企業のCSRとしての貧困削減プロジェクトですが,その企業に入社できたとしても,希望通りの部署に入れる保障はありません.営業と違ってCSRの部署で働くのはほんの一握りですので,それを目指して就活するというのは現実的ではないでしょう.

 この他,貧困削減に関係した,いくつかのイベント,インターンシップなどを紹介しました.まだ開発経済学を担当して2年目ですが,この講義を機にこれらの業界を目指すような学生が出てくれればありがたいものです.

【レポートについて】
 不完全なまま提出しているレポートが予想以上に目につきます.場合によっては再レポートも考えていたのですが,ちょっと考え直すかも知れません.

2008年7月9日水曜日

基礎総合演習A 第11回

 今回はニュースと株価との関係を発表してもらいました.

【授業の内容】
 特に指定はせず,ニュースによる報道とその後の株価との関係を発表してもらうつもりだったのですが,期せずして内容は似通ったもの,というより互いに関連したものになりました.やはり,最近は原油相場,環境,原材料価格高騰という3点セットが注目されているからでしょうね.
 それ以外に明らかになったこととして,これまで日経平均と個別企業の株価には注意してきましたが,それ以外にもアメリカの景気(特にサブプライムローン問題)が日本の企業(の株価)にも影響を与えているということでした.グローバル化した現在では,経済のつながりは国境を簡単に越えてしまいます.

 前回提出してもらったレポートを返却しました.細かい注文はあるものの,全体としてはまずまずです.今後は,文理学で学んだことも活かして,レポートを書きましょう.

経済学A 第11回

 今回は久々に固い内容で,日本の財政と税についてです.国の借金(公債残高)は,国民1人あたりに直すと約665万円と,ものすごい額になります.

【授業の内容】
 まず,マクロ経済学の復習として,政府の役割や,大きな政府と小さな政府の違いなどを確認しました.
 次に,そもそも税とは何のためにあるのか説明しました.道路や警察など,民間に任せておいても供給されないもの(公共財と呼びます)を供給するため,というのはすぐに思いつきそうですが,その他に,所得の再分配機能や景気の安定といった機能もあります.
 さて,日本の財政状況はどれぐらい深刻なのでしょう.何兆円という単位だとピンとこないので,我々の家計に置き換えて説明しました.それによれば,月収が40万円しかないのに支出が58万円もあるため,毎月18万円も新たな借金をしている,大変な浪費家であることが判明しました.しかも長年にわたって借金を続けたために,その額は4600万円にもなってしまっています.借金を返すために借金をしているような状況です.我々であればとっくの昔に破産していてもおかしくありませんが,日本が破綻しそう,という話は聞いたことありませんね.日本政府はいつからこんなに借金をするようになったのでしょうか,それを国債発行額の推移を見ながら,歴史的な経緯について説明しました.ただ,バブル前後の話は,学生の多くが生まれた頃の話なのでイメージしづらいでしょうね.

 後半は税制についての説明です.税には3つの原則,簡素・中立・公平があります.それを踏まえながら,多くの種類があってややこしい税金を分類しました.特に直接税と間接税の違いは重要です.それぞれ公正性と公平性という特徴を持っています.また間接税の代表である消費税は脱税が不可能という素晴らしい利点があります.一方,直接税の代表である所得税は,所得の把握が難しい自営業者など一部の職業では脱税を見逃してしまう恐れがあります.どちらも一長一短ですが,少なくとも今後の日本は消費税のウェイトを大きくする方向に進むようです.単に税の負担が重くなる,というものではありません.(大袈裟に言えば)日本のあり方が変わるような変化です.
 日本はみんなのイメージとは違って(?),実は税率の低い国であり,小さな政府である国です.それらの判断の根拠は,国民負担率と潜在的国民負担率です.これらで見ると日本は先進国の中でトップクラスの負担が少ない国です.

【テストについて】
 さて,そろそろ期末テストです.経済学Aは筆記テストであり,持ち込みは不可です.ただし内容はそれほど難しくないと思います(たぶん).毎回きちんと出席していて,話を聞いていた人であれば,レジュメを見直して,わからない言葉がないように復習すれば問題ないと思います.

経済政策論 第12回

 今回は年金と消費税の続きで,年金の財源として,現行の社会保険方式と税方式のどちらが良いのか議論してもらいました.

【授業の内容】
 社会保険方式と税方式にはそれぞれメリットとデメリットがあります.それらを確認した上で,学生自身はどちらが望ましいと思うか,なぜそう思うか発表してもらいました.僕はてっきり税方式に偏るのではないかと思っていたのですが,ほぼ半々に分かれました.しかもなんとなくではなく,各自がきちんとした意見を持っていたので感心しました.なお,税方式が良いとした学生に「消費税率をどこまで上げても良いか?」と聞いたところ,3-10%まで幅がありました.現在いくつかある試案では5-12%の税率アップが想定されており,皆さんが考えているより消費税は高くなりそうです.

 後半は,次週に総まとめとして発表してもらう内容について,1人1人テーマを確認しました.少子化問題に取り組む人が多いようです.またアンケートを取ってみるという人もおり,非常に楽しみです.がんばってください.

文理学 第12回

 今回はレポートの書き方の基礎を学びました.

【授業の内容】
 みなさんが高校までに書いてきた文章の多くは感想文であり,レポートとはまったく異なるものです.感想文はその名の通り,自分の感想を述べるものなので,主観的なものです.対して,レポートにおいて求められるのは,主観を排した客観性であり,それに裏付けられた主張です.感想文とレポートの違いでもっとも重要な点は,この主観と客観です.
 内容の次は,形式です.レポートでは決められた形式を守らなければなりません.形式を守らなければ,どんなに内容が優れたものであっても適切な評価を得られません.まず,全体の構成という点では,表紙があり,その後,序論→本論→結論と続き,最後に参考文献の一覧を加えます.
 また,文章にも決まりがあり,使うべき言葉と使うべきでない言葉があります.少しだけ例を挙げると,

○私 ⇔ ×僕
○~である.~だ. ⇔ ×~です.~ます.
○非常に ⇔ ×とても 
 これらはほんの一例です.テキストにはもう少し詳しい説明があります.
 続いて,レポートの評価を決定的に下げてしまう恐れのある,引用盗用の違いを学びました.どちらも人の文章を借りることには違いはありませんが,引用にはいくつかの条件があります.それらを守っていなければ盗用,つまり著作権の侵害にあたります.「どうせ学生のレポートだから良いだろう」ではありません.ネットには数多くの学生の卒業研究が公開されており,他者の目に晒されています.
 盗用が発覚したレポートは当然ながらまったく評価されません
 最後に次週提出してもらうレポートの要項を改めて説明しました.3つのテーマの中から1つを選んで提出しましょう.テーマによっては難しいものもありますが,客観的な記述を心掛けましょう.
【お知らせ】
 来週の文理学はホームルームも兼ねて行います.教室は以前の教室(23501)ですので,間違えないように.

2008年7月5日土曜日

ミクロ経済学ベイシックⅠ 第12回

 今回は前回に引き続きボックス・ダイヤグラムを用いた一般均衡の説明です.後半は余剰分析についての課題の解説を行いました.

【授業の内容】
 まずボックス・ダイアグラムについての確認です.ある点から違う点へと移動するとパレート改善(より効率的な資源配分)になっているか確認しました.また,Aさん,Bさんが財X,Yを当初持っている状況(初期賦存量と呼びます)で,X,Yの相対価格が与えられたらどのような取引を行うかを確認しました.相対価格によっては,財X,Yに超過需要や超過供給が発生することがあります.ワルラス型価格調整メカニズムによれば超過需要が発生すれば価格は上がるし,超過供給が発生すれば価格が下がります.その調整により,相対価格も変化するため,財X,Yに対する超過需要,超過供給はなくなり,需給が均衡しました.この点では(消費者理論の時にも確認したように),相対価格と限界代替率が等しくなっていますね.

 後半は余剰分析についての課題の解説です.特に従量税が課せられた場合,余剰にどのような変化をもたらすか,具体的な計算式で確認しました.税収も社会的余剰に加えるのがポイントです.ちなみに今回のような従量税ではなく,消費税のような従価税(価格に一定割合の税率を課す税)ではどうなるのでしょうか?

 来週の講義時間中に期末テストを行います.その振替でテスト対策の時間を作ります.週明けにでもポータルサイトを通じてお知らせする予定です.

経済学Ⅱ 第13回

 今回は独占市場です.次週はこれまでの復習などを行うので,テストの範囲は今回までになります.

【授業の内容】
 まず,久々に完全競争市場の条件を確認しました.今回分析するのは,その条件のうち,「多数の買い手と多数の売り手が存在」,「自由な参入と退出」を満たしていないケースです.
 独占市場では,生産量が少なく,価格が高くなり,企業にとっては利潤が出るので望ましい状況ですが,社会的に見ると(死荷重が発生しており)良くありません.それらを余剰の点から,図を用いて説明しました.
 ある企業が独占している市場に,もし他の企業が自由に参入可能であれば,市場への供給量が増えるために,当然ながら価格は低下します(ワルラス型価格調整メカニズムで考えてみよう).価格が下がれば当然利潤は減少します.それでももし,利潤がまだあるなら,また新たな企業が参入してくるため,既存企業の利潤はどんどん減少していきます.完全競争市場では利潤がなくなるまで新規参入は止まりません.

 余剰でも確認したとおり,独占というのは社会的に見て良いことではありません.そのため独占禁止法(略称)という,競争を促すための法律も存在します.ではなぜ独占は生まれるのでしょうか?授業ではその原因別に,資源独占,政府による独占(規制や特許,著作権),自然独占の3つに分類しました.
 このうち,不思議なのは政府による独占です.なぜ社会的に望ましくない独占を政府が作り出すのでしょうか?その答えは,著作権や特許権を認めなければどうなってしまうかを考えればわかりますね.創作活動のインセンティブを守るためです.しかし現状の著作権による保護は過剰でしょう.作家や音楽家が孫の生活を守ることを目的として創作活動をしているとは思えません.

2008年7月3日木曜日

開発経済学 第13回

 今日はガバナンスでした.

【授業の内容】
 ガバナンスとは何かを定義するのは非常に大変です.世銀やUNDPによる定義を読んでもいまいちピンときません.そのためガバナンスとは何かについては後回しにして,とりあえず世界銀行がガバナンスの指標として挙げている6つの項目について説明しました.それは,「発言と説明責任」,「政治の安定と非暴力」,「政府の効率性」,「規制の質」,「法による支配」,「汚職の抑制」です.規制の質の例としては,世界各国でビジネスを開始するまでにかかる日数やコストを紹介しました.
 悪いガバナンスは資本の効率的な配分を歪めることで,直接,また経済成長を通じて間接的に社会的厚生を悪化させます.以前に説明した援助との関係で言えば,Burnside and Dollar(2000)は,ガバナンスが良好な場合のみ援助は有効に働くと指摘しています.またMauro(1997)は汚職は各国の成長率を鈍化させることを明らかにしています.
 しかし,ガバナンスが悪いと必ず経済成長しないのか,ガバナンスが良ければ必ず成長するのか,というとそうでもないのです.ガーナ,マラウィ,マリなどのようにガバナンスが比較的良いにもかかわらずあまり成長していない国もあれば,バングラデシュ,インドネシアなどガバナンスに問題がありそうなのに成長している国もあります.

 それはさておき,ガバナンスを改善するためにはどうすればよいのか,ガバナンスの意味する内容が広範であるだけに,その対策も様々です.立法・司法,市民的自由,経済政策など多岐にわたります.

 後半は移行経済について説明しました.社会主義経済から市場経済への移行です.政治体制と経済成長の関係についての研究からは,政治体制と経済的なパフォーマンスには相関がない,というのもあれば,民主主義国家の方が経済成長のばらつきが少ない,というのもあります.
 ただ,UNDPも2002年の人間開発報告で指摘するように,民主主義はたとえ最高のものを保障しないとしても,最悪の結果になるのを防ぐように思われる,のではないでしょうか.

 その後,中国とインドの事例を紹介しました.どちらも改革・開放で成長しましたが,現在のジンバブエは逆に規制・閉鎖を選んで破滅に向かっているように思えます.良好なガバナンスの下では現在のような状況にはなっていないでしょうし,UNDPの指摘が当てはまるように思えます.

2008年7月1日火曜日

基礎総合演習A 第10回

 今回はこれまでの知識を基にして,どの企業に就職したいかを説明してもらいました.

【授業の内容】
 これまでの株価予測のために企業を分析する知識を使えば,株の売買だけでなく,長期的な視点から良い会社と悪い会社の判断ができるかもしれません.というわけで,今回は各自が就職したい(長期にわたって成長が期待できる)企業を発表してもらいました.
 それぞれの学生が,売上や利潤の推移など経営指標の他,その業界の今後や,平均年収,働きやすさなど様々な視点から自分の一押しの企業について発表しました.それぞれなかなかよく考えているなぁと思います.僕も知らなかった点がいくつかあり,なかなか楽しい内容でした.

 ただし,現実的に就職する場合を考えると,やや疑問が残ります.なぜなら,学生が選んだ企業はすべて,誰でも知ってるような非常に知名度の高い企業ばかりだからです.就職活動では(あまり考えて行動しないのか?)知名度の高い企業には学生が殺到します.逆に優良企業であっても知名度の低い企業は志望者が少ないので入社しやすいでしょう.
 この点を利用し,知名度で選ぶのではなく,企業の中身(特に将来性)で選ぶべきではないでしょうか?名を捨てて実を取るのが合理的だと思うのですが,まだ1年生だから,そこまで真剣に考えることもないかもしれませんね.

【課題】
 次回は株価とニュースということで,今後1週間のニュースと株価との関係を各自に発表してもらいます.どこの企業でも構いません.なお,前日までにその新聞の記事を僕に届けて下さい.

経済学A 第10回

 今日はゲーム理論でした.経済と直接関係なさそうに見えますが,駆け引きについて合理的に考える力を身につけることは様々な状況で役に立つと思います(たぶん…).

【授業の内容】
 今日,7月1日から様々なモノの値段が上がりました.ガソリンも10円ぐらい上がったし,(みなさんへのアンケートによれば)アイスや魚肉ソーセージも値上がりしたそうです.というわけで,まずは最近の急激なインフレについてちょっとだけ説明しました.ガソリン価格を決めるものは,やはり需要と供給のバランスです.ただし,ガソリンについては実需(実際にガソリンを消費したいという需要)だけでなく,投機マネーによる需要が大きい点が特徴です.中国,インドを始めとする高成長の国々で石油燃料に対する需要は確かに高まっていますが(実需),それにより,これからもっと原油価格が上がるだろうと見越した人のお金が原油市場に流れ込んでいます.むしろそちらの影響が強いと言われています.
 言い換えれば,実際の需給バランスで決まる価格よりも高い水準にあるので,そのうち(バブルがはじけたように)値下がりすると思いますが,2,3年先だと言われています.

 という話とは関係なく,今回の本題はゲーム理論です.複数のプレイヤーによる駆け引きについて合理的な解釈をしてみました.
 まず有名な囚人のジレンマです.これは非協力ゲームであるために,理想的な状況(黙秘,黙秘)が実現できず,両者とも自白するために懲役をくらってしまうというものでした.
 続いて,そこでの考え方を発展させて支配される戦略の逐次消去を説明しました.一番分かりづらかったかもしれません.前置きに時間を取られすぎてしまいました….
 その後,戦略の逐次消去で解けない問題をナッシュ均衡という考え方で解きました.アンケートの感想では「ナッシュってすごい!」という感想が何人かから寄せられました.凄さがわかってもらえたという点では,この授業も成功だと思います.
 最後に逐次手番の展開型ゲームを説明しました.後ろ向き帰納法という考え方で問題を解きましたが,ややわかりづらかったようです.

【課題】
 次回までに,下記の財務省による「財務大臣になって予算を作ろう!」をやってみること.次回は日本の財政と税です.
http://www.mof.go.jp/zaisei/game.html

【アンケートの結果】
 感想を読みました.もっとも多かったのは「おもしろい」というもので,次に目についたのは「難しすぎる!」というものでした.もっとゆっくりGame.2をやれば良かったなぁとやや反省しております.ただ全体的には好評だったような気がします.
 また「テストの形式を教えて」というのが沢山ありました.確かにそろそろテストなので,来週の講義で説明します.まぁみんなきちんと出席しているし,そんなに心配しないでよいですよ.経済学よりも専門の方をしっかり勉強して下さい.
 なお,自由記述以外の結果(5段階評価)は,以下の通り.
1.授業態度の自己評価 3.625
2.講義の理解度      3.514
3.講義の総合評価    3.722

2008年6月30日月曜日

経済政策論 第11回

 今回から新たなトピックである消費税と年金です.

【授業の内容】
 消費税だけだと専門的になりすぎるので,消費税率アップの遠因(?)である年金問題も一緒に考えました.
 消費税はこれまで学んだように,間接税です.そのため消費税率を上げると,低所得層にとって特に負担が重く感じられます.では,なぜ消費税を上げねばならないのでしょう?
 それを理解するために,まず年金の仕組みを説明しました.日本の年金制度は少子化問題の際にも説明しましたが実質的に賦課方式を採っています.そのため,少子高齢化すると安定的な運用に支障が生じます.年金制度が複雑なのは,この賦課方式という制度に加えて,2階建てになっているからでしょう.基礎的な年金部分は共通ですが,2階部分は職業により加入できる年金が異なります.その他,国庫負担の割合や,インフレへの対策など様々な説明をしました.
 続いて,いわゆる年金問題とはどこが問題なのか解説しました.未納率,水平的不公平,垂直的不公平,他の社会保障との関係などなど,問題は山積しています.

 さて,消費税との関係ですが,今後の年金システムは大きく分ければ,現行のシステムに小さな変更を加えた社会保険方式と,抜本的な変更を加えた税方式の2つの間で揺れています.どちらを選ぶかによって消費税率も変わってきます.

【課題】
 次回は論点として,社会保険方式と税方式のどちらが良いのか?それぞれどんなメリットとデメリットを持つのか調べてきてもらいます.もちろん自分の意見もはっきりさせてきて下さい.
 また,最終回の発表のための簡単なまとめを作ってきて下さい.それに僕がコメントしますので,より良いものにしましょう.

文理学 第11回

 今日は検索のテクニックを学びました.

【授業の内容】
 まず前回の復習をしました.学内のWeb OPACを利用して,目的の図書を確実に見つけることができるようにしましょう.再来週に提出してもらうレポートを書くためにも必要です.

 続いて検索のテクニックとして,AND,OR,NOTの意味を説明しました.徳島市もしくは小松島市で合宿する施設を探す時には,どうすれば上手く検索できるか理解できたはずです.探している情報と関係ない邪魔なページが出てこないようにするために,上手くNOTを活用しましょう.

 最後に再来週(最後の講義)に提出してもらうレポートのテーマを発表しました.次の3つのうちから選びましょう.

1.将来の職業について
 これはただ単に「○×になりたい!」ではなく,優良企業ランキング,働きやすい企業ランキング,生涯給料ランキングなどのデータから,興味のある企業(業界)を見つけてみようというものです.学生は(僕もかつてはそうでしたが)あまり社会のことを知らないものです.テレビでCMしてる企業ぐらいしか知らなかったりね.授業でも,日経の優良企業ランキングを見てみましたが,2位のファナック,6位キーエンス,8位ロームといった企業は超優良企業にも関わらず,学生にとっては聞いたことのない企業でしょう.しかし,社会人や就活を経験した学生なら一度は耳にしたことがある企業です.

2.卒業研究のための下調べの下調べ
 入学してもうすぐ半期が終わります.様々な分野の導入科目を受講しているみなさんは,それぞれの分野に好き嫌いが出始めた頃かもしれませんね.関心のあるテーマについて少し調べてみましょう.まず,その分野の基礎知識と,どのような文献が必要なのかを調べ,解決済みの問題と未解決の問題を分類してみましょう.

3.夏休みに行ってみたい国
 最近の学生は海外志向が低いというもっぱらの噂です.僕自身が学生の頃と比較すると特にそんな気がします.僕が大学生の頃はバブル崩壊真っ盛りの頃で,そんなに景気も良くなかったけど,多くの学生がお金を貯めて貧乏旅行をしていました.今の間に広い世界を見てみましょう.というわけで,行ってみたい国の経済,文化,言語,観光名所や,どうやって行くのか(ルートや費用など)を調べてみましょう.
 外務省のホームページや,各国の大使館でその国についての情報は手に入りますし,エイビーロードなど格安航空券を販売しているサイトも役に立ちそうですね.

 なお,レポートの書き方については来週の文理学で説明します.今は取りあえず下調べをしておきましょう.

2008年6月27日金曜日

ミクロ経済学ベイシックⅠ 第11回

 今日は一般均衡です.取りあえず前期の締めに入りました.

【授業の内容】
 まずは消費者,生産者理論の復習を基に,消費者は相対価格限界代替率が等しくなる点で消費すること,生産者は相対価格と限界変形率が等しくなる点で生産することを確認しました.

 続いて,より良い変化とは何かを規定する概念としてパレート改善及び,パレート最適とは何か説明しました.パレート改善とは,他者の効用を下げることなく誰かの効用を上げることです.パレート最適とは,そのパレート改善ができない状況,つまりこれ以上誰かの効用を上げようと思えば,他の誰かの効用を下げざるを得ないような状況です.
 さて,考え方を説明したところで,エッジワース・ボックスに取りかかりました.エッジワース・ボックスは2人のプレイヤーの無差別曲線を組み合わせたもので,少々ややこしいですが,なかなか優れた道具です.
 これを用いて,プレイヤーAとBとの間で資源を再配分することでパレート改善が可能かどうかを検証しました. ちなみにエッジワース・ボックス上におけるパレート最適である点を集めたものは契約曲線と呼ばれます.

 来週は第10回の余剰分析の時に配った例題のプリントを忘れないように持ってきましょう.

テストについて
 期末試験は7/11の講義時間中に行います.テスト期間中は2年生は(おそらく)えらいことになっているので,テスト期間外に行います.
 範囲は第1回から来週の講義までの内容です.中間試験の内容も含まれるので注意しましょう.なお,皆さんの多数決により持ち込みなしになりました.

経済学Ⅱ 第12回

 今日はゲーム理論でした.普段とずいぶん違うので戸惑ったかもしれませんね.

【授業の内容】
 今日は5つのゲームを通じて,駆け引きについての合理的な考え方を学びました.そもそもゲーム理論で言うところのゲームとは,プレイヤーが複数おり,プレイヤーの戦略が他のプレイヤーに影響を与えるような状況のことを指します.

Game.1 囚人のジレンマ
 ゲーム理論でもっとも有名なゲームです.以下Game.4まですべて,非協力,完備情報,同時手番の1回限りというルールの下で行うゲームです.それぞれのルールを変えていくと途端にややこしくなりますが,まぁ今回はゲーム理論の入門ですので.
 まず,このゲームを通じてルール,戦略,利得,合理的な考えなどについて学びました.

Game.2 戦略の逐次消去
 Game.1も戦略の逐次消去ですが,こっちはすぐには解けないゲームです.使い途のないダメな戦略(支配される戦略と呼びます)を1つ1つ消していくことで,両者の選ぶべき戦略が見つかりました.

Game.3 ナッシュ均衡
 このゲームは,戦略の逐次消去では解けません.しかし,ナッシュ均衡と呼ばれる概念を導入することで,両者の最適な戦略が見つかりました.ナッシュ均衡とは,あるプレイヤー(A)の戦略が他のプレイヤー(B)の戦略に対する最適反応になっており,プレイヤー(B)の戦略もプレイヤー(A) の戦略に対する最適反応になっているケースです.この場合,相手の裏をかくことができません.

Game.4 ホテリング・ゲーム
 今度は利得表を使わずに,ナッシュ均衡の意味を理解しているか確認しました.浜辺での立地ゲームです.

Game.5 逐次手番ゲーム
 最後に,同時ではなく順番にプレイヤーの戦略決定を決定するゲームをやりました.ガソリンスタンドの価格設定を想定しました.解き方としては,まず最後に選択するプレイヤーの行動を決めて,徐々にさかのぼっていくと言う後ろ向き帰納法で戦略を決定しました.

2008年6月26日木曜日

開発経済学 第12回

 今回は貧困と教育です.これまでにもしばしば言及してきたテーマですが,今日はしっかりやりました.

【授業の内容】
 まず,国際条約である「子供の権利条約」を紹介しました.これには日本も含め,世界の193の国・地域が締約しています(例外はアメリカとソマリア).この条約には初等教育の義務化,中等・高等教育へのアクセスなどが明記されていますが,現状ではすべての子供が初等教育を受けられるわけではありません.

 子供への教育プロジェクトとして,OLPCプロジェクトを紹介しました.グローバル化したこの世界においてはネットにつながることは,タダで多くの情報に接するだけでなく,収入を得るチャンスでもあります.OLPCプロジェクトには障害も多く,順調とは言えないようですが,がんばってほしいものです.OLPCの詳細は以下参照.
公式HPhttp://www.laptopgiving.org/en/index.php
OLPC(Wikipedia日本語版)http://ja.wikipedia.org/wiki/OLPC

 これまでも教育の重要性については,貧困の連鎖についてなどで説明してきました.今回は,親はなぜ子供に教育を与えるのか,与えないのかを中心に説明しました.

 まず,教育を受けさせる理由ですが,以下の3つに大別できます.
・利他的動機:子供の幸せが親の幸せである.
・利己的動機:投資としての教育,消費としての教育
・義務

 このうち,投資としての教育に焦点を当て,教育の収益率を紹介しました.Psacharopoulos and Patrinos(2002)の推計によれば,初等教育の私的収益率は地域による違いはあるものの,およそ10%程度と結構高いようです.
 しかし,貧困層の多くは就学しません.その理由として,直接的費用と機会費用があります.直接的費用とは,学費,制服・文具代,交通費などのコストのことです.途上国であっても初等教育については学費が無償という国は少なくありませんが,学費以外の費用もバカになりません.また,それと同様に就学の足枷になっているのが機会費用です.日本では小学校に行かずに働き賃金を得ることはほぼ不可能ですが,途上国では子供であっても労働力として家計を支えることは珍しくありません.農村部であれば農業,水汲みなどに,都市部であればインフォーマルな労働に従事する機会があるでしょうし,女の子は子守りなどの役割が期待されることもあります.

 つまり,基礎教育が義務的なものであってもそれをまっとうしない背景には,就学させる余裕がない,就学させるより働かせた方が良い,という合理的な選択である可能性があります.ではその選択を尊重すべきか?というと,そうとも言えません.
 なぜなら投資としてみた教育は外部性を持つという特徴があるからです.つまり私的収益率だけでなく,社会的収益率も考慮しなければ社会的に最適な教育水準は達成できず,資源配分に非効率性が生じます.そのため,国(あるいは援助機関)が教育のコスト低減,あるいは無償化のため支出する必要があります.

 最後に貧困の連鎖を断ち切るプロジェクトとして,バングラデシュのFFEを紹介しました.経済学的に考えれば,親は子供を働かせる場合と,就学させる場合のメリット,デメリットを比較し,有利な方を選択するはずなので,就学するメリットを増やすというのは理に適っていますね.まぁ,親が教育に対して,どれだけ功利的に選択しているかは検証が必要でしょうが.

 来週はガバナンスについてやろうと思っています(未定).

2008年6月24日火曜日

基礎総合演習A 第9回

 今回は,これまでの総括を行いました.

【授業の内容】
 まず,各チームにこれまでの資産の変化と,今後の予想を説明してもらいました.それぞれ足りないところもあれば,良いところもありました.ただし,現在の時点では各チームともわずかながら当初の予算100万円を割っています.
 しかし,最初に買った時点に比べれば,皆さん株投資についての知識がついていることでしょうから,今後挽回して下さい.
 発表の途中で,脱線しながら,「なぜ製薬メーカーの株価は大きく変動するか?」,「効率的市場仮説とは何か?」も考えてみました.特に効率的市場仮説について理解することは,値動きのタイミングを理解する上で大切だと思います.

【課題】
 来週は,「(上場している株式会社の中で)就職するならどの企業に行きたいか?」についてのレポートを提出&発表してもらいます.誰しも就職するなら,すぐに倒産するかもしれない企業より,成長が見込める企業に行きたいはずです.そう考えると,株価の予測と,就職したい企業の選択も,まったく無関係ではないと思います.
 レポートはA4用紙1枚以上です.授業中に説明した形式を守って作成して下さい.

経済学A 第9回

 今日は,貿易とグローバリゼーションについてです.例年はそれぞれ分けて2回で講義をするのですが,アンケートの結果をもとに短縮版で行いました.

【授業の内容】
 前半は貿易についてです.後半との絡みでいえば,商品の貿易と限定した方が良いかもしれません.
 まず,良い変化とは何かを理解するために,パレート改善という概念を紹介しました.パレート最適とは,「他の人を不幸せにすることなく,誰かが幸せになること」です.これを良い変化と仮定して,貿易により両国の幸せ(豊かさ)はどのように変化するか検証しました.
 今日説明した内容は,リカードの比較生産費説と呼ばれるもので,入門の経済学のテキストを読むとしばしば出てきます.相手国と比較して,ある商品を効率的に生産できることを絶対優位と呼びます.まず,両国が互いに絶対優位を持つ産業を持っているケースを考えました.この場合,両国はそれぞれ自国が得意な産業に特化し,それを交換することで両国ともより豊かになりました.つまり貿易によりパレート改善するわけです.これはまぁ予想通りでしょう.
 次に,どんな産業でも絶対優位を持つ国と,逆にすべてに関して絶対劣位にある国の貿易は成り立つのか?どっちが得をするのか?について考えました.他国と比較して絶対優位にある産業が無くても,比較優位は(ほとんどのケースで)発生します.比較優位とは,「(Aの生産もBの生産も)どちらも苦手だけど,(Bに比べればAの方が)まだマシ」であったり,「(A,B)どっちも得意だけど,(Aに比べれば)こっち(B)が特に得意」というものです.このように比較優位しかない場合でも互いに比較優位にある産業に特化し,貿易することで両国とも豊かになる可能性があることがわかりました.
 ただし,国レベルで見れば豊かになった,で良いのですが,その背景には生産調整という名の下に倒産や解雇が行われていることでしょう.つまり,貿易すると(国際市場に参入すると),他国と比べて非効率的な生産をしている産業は縮小する可能性があります.日本はかつて,アメリカと比べ繊維産業に絶対優位があったので,アメリカの繊維産業は衰退しました.現在の日本の繊維産業は中国などの途上国に比べ絶対劣位にあるので,淘汰されつつあります.

 後半はグローバリゼーションについての説明をしました.先日,自民党内の一部の議員が福田首相に「移民立国」として,1000万人の移民受け入れを提言しました.その先駆けか,7月にはインドネシアから305人の看護師,介護士がやってきます.看護,介護の業界はどちらも重労働であることから,日本では人手不足です.人が足りないから外国から受け入れる,理に適っているような気もしますが,果たして何が起こるのでしょう…?
 今,東京でNTTの番号案内104に電話をかけると沖縄にかかるそうです.アメリカでは一部の企業のサポートセンターはインドに存在します.どうしてそれぞれ,東京,アメリカにコールセンターを作らないのでしょうか?その理由は東京よりも沖縄,アメリカよりもインドで人を雇った方が賃金が安いからです.しかし,20年前はこんなことは不可能でした.なぜなら賃金の差より,通信コストの方が高い,もしくはそもそも技術的に不可能だったのかもしれません.またトーマス・フリードマンの「フラット化する世界」の中では,アメリカ人中学生の家庭教師をオンラインで行うインド人青年の話が取りあげられていました.これまで距離の壁で分断されていたことが可能になりつつあります.
 今回の貿易との関係で言えば,20世紀まではモノのグローバル化であったのに対して,21世紀の現在,サービスのグローバル化が現実のものとなっています.これまで距離の壁で守られていたサービス業が,ネットにより世界市場で競争することを余儀なくされました.日本は幸い(不幸にも?),言語の壁があるため,アメリカほどサービスのグローバル化には晒されていませんが,それも時間の問題でしょう.グローバル化は誰にとっても避けられません.

 最後に不可避であるグローバル化を生き抜くためのテクニックの1つを紹介しました.日本人にとって,国際的な競争での武器は教育水準の高さです.これについては世界中の多くのライバルたちより有利な条件にいます.特に大学に来ている学生のみんなは世界的に見れば本当に恵まれた存在です.
 一方,僕から見たみんなの欠点は,欲の不足です.欲と言っても,食欲や睡眠欲ではなく,意欲や知識欲です.「~になりたい!」,「もっと~が知りたい!」という意欲では圧倒的に負けているでしょう.中国の大学の図書館の話をしましたが,皆さんはどう思いましたか?僕は少し怖くなりましたが,皆さんも同じくらい危機感を持ってくれると,ほとんどの問題は解決されると信じています.

2008年6月23日月曜日

経済政策論 第10回

 今回はトピック4.5?として,環境問題をとりあげました.

【授業の内容】
 前回,ガソリンが環境に悪い,という意見がありました.では,ガソリン税はどのような役割を果たしているのでしょうか?税率を上げるとどうなるのでしょう?

 まず,環境とガソリンの関係を知るために,京都議定書について発表してもらいました.その内容は,「1997年京都で,先進国は温室効果ガスの排出量を,1990年を基準として数%削減する」というもので,国により削減目標が異なります.また途上国には削減義務はないそうです.目標の設定だけでなく,排出量を削減するためのメカニズムが盛り込まれている点も特徴です.僕はこの会議の時,たまたま京都に住んでいました.高校時代の友人が卒論を書くため,はるばる会議を傍聴に来たのを覚えています.

 さて,その削減メカニズムとして,排出量(排出権)取引がありますが,それも前回の課題でしたので発表してもらいました.ここはちょっとわかりづらいので,僕が補足しました.

 ちょっと話を変えて,「地球温暖化対策にはどのようなものがあるか?」について発表してもらいましたが,みんな「身近な省エネ対策」についての発表が多く,政策についての言及が少なかったのが残念です.ただ,代替エネルギーという話も出てきたので,そのままの流れで,最後の課題であるバイオ燃料についての発表もしてもらいました.
 環境問題は,ちょうど先週経済学Ⅱで学んだ,外部性により発生します.外でポイ捨てする人も自宅の庭ではポイ捨てしないでしょうからね.外部性が発生する場合には,最適な資源配分が実現できないので問題ですが,授業ではその解決方法もいくつか紹介済みです.その1つとして内部化があります.環境破壊を外部のこと,つまり他人事ではなく,自分の問題にするシステムが必要になります.排出権取引もその一例で,CO2の排出量を減らすことを自分の利益に,CO2の削減失敗を損失になるような仕組みを作ることで,CO2の発生を内部化するわけです.良くできてますね.とは言え,京都議定書には大国アメリカが批准していない,途上国への義務づけなし,などいくつかの問題があり,京都議定書のその先が模索されているのが現状です.ちなみに日本も2012年までに排出量を6%減らすという目標を達成するのは非常に厳しい状況です.

 来週は消費税になりました.しかし,消費税についてどんなことをやればよいのだろうか…?しばらく悩みそうです.

【お知らせ】
 最後の授業(7/14)はこれまでやったテーマの中から1つを選んで発表してもらいます.またそのための資料も用意して下さい.

文理学 第10回

 今日から前期終了時まで,文理学の担当が僕になります.文理学は担当が初めてなので,何かと準備が大変です….

【授業の内容】
 今日は大学図書館の利用について学びました.県の図書館とどこが違うのか?なぜネットではなく書籍を利用するのか?どうやって文献を探すのか?などをプレゼンテーションしました.
 その後,ネットで大学の図書館にアクセスし,OPACで探す文献が図書館のどこにあるのか情報を集めました.さらに図書館に移動して,実際に本があることを確かめました.
 普通の書籍は比較的簡単に見つかったようですが,白書,雑誌,DVDなどはずいぶん苦労していた様子です.しかし,これでどんな資料もある程度探せるようになったのではないでしょうか?大人数で図書館に行くので「騒がしいくなるのでは?」と心配していましたが,特に問題ない様子でした.図書館では静かにするというのは最低限のマナーです.これからも守りましょう.

【お知らせ】
 来週もネットを利用して授業を進めるので,今回同様,メディアセンター5Fのプレゼンテーションルームで授業を行います.

2008年6月20日金曜日

ミクロ経済学ベイシックⅠ 第10回

 今日は余剰分析です.ここまで学んだ知識を活かして,政策を分析できるようになります.

【授業の内容】
 まず簡単に前回の価格理論をおさらいしました.需要曲線と供給曲線の意味を確認するためです.それさえできれば,消費者余剰,生産者余剰の持つ意味も理解しやすくなるはずです.
 最初に,最も理想的に価格と生産量が決定された場合の消費者余剰,生産者余剰,社会的余剰を図で説明しました.厚生経済学の第一基本定理により,完全競争市場で価格と生産量が決定されれば社会的余剰が最大になることがわかっています.
 続いて,価格統制,数量制限,課税(従量税)のケースを通じて,政府による介入がいかに社会的余剰を減少させてしまうか,市場を歪めてしまうか説明しました.社会的余剰の減少分を死荷重と呼ぶんでしたよね.
 授業では図で説明しただけでなく,プリントを配布して実際に余剰の大きさを計算してもらいました.慣れるまでは難しそうに見えますが,実際にする計算は連立方程式や3角形の面積をもとめるぐらいで,それほど難しくないはずです.教科書にも同様の問題がありますので,期末試験までに必ず解けるようにしておきましょう.

経済学Ⅱ 第11回

 今日は市場の失敗として,公共財と外部性について説明しました.

【授業の内容】
 前回,厚生経済学の第一基本定理として,競争的な市場で価格と生産量が決定されれば社会的余剰が最大になると説明しましたが,実際には市場が上手く機能しない場合もあります.その例として,公共財と外部性があります.

 公共財とは,非競合性非排除性を併せ持つ財のことです.これらの特徴がある財はタダ乗りされてしまうため,いくら需要があっても民間企業が生産することは困難です.例としては,道路や港湾などの社会インフラ,国防,警察,法制度や言語などもそれにあたります.
 また非競合性と非排除性のうち,一方しかもたない財を準公共財と呼びます.例えばNHKのBS放送は非競合性は持ちますが,非排除性は持たないので準公共財にあたります.また,公園のブランコは非排除性は持ちますが,非競合性は持ちません.
 では,非競合性と非排除性のどちらも持たない財はなんと呼ぶか,それは私的財です.普段みなさんがお店で見かける財のほとんどは私的財ではないでしょうか?

 後半は外部性についての説明です.外部性とは,ある経済活動が,それとまったく関係のない第3者に与える影響のことです.良い影響であれば外部経済,悪い影響であれば外部不経済と呼びます.環境破壊は外部不経済の典型例です.また,外部性がどういうルートを通じて波及するかについても,金銭的外部性(市場を通じて),技術的外部性(市場を通じないで)という区分もあります.
 最後に外部性に対する対処方法として,補助金・課税(ピグー税),内部化,交渉(コースの定理)などを説明しました.

開発経済学 第11回

 今回は,国際機関からの援助についてでした.

【授業の内容】
 途上国への援助機関を大別すると,国際機関,政府(二国間援助),NGOなどの民間の3つになります.二国間援助については前々回説明したので,今回はNGOと国際機関について説明しました.

 NGOやNPOはいまやそれほど珍しいものではありませんね.ミャンマーのサイクロン被害や中国四川省での震災などの自然災害だけでなく,紛争,貧困など様々な問題の解決のために世界中で数多くのNGOが活躍しています.国境なき医師団は特に有名ですよね.
 他の援助機関と比較した場合のNGOの利点としては,
・きめ細かい援助が可能
・緊急時に迅速な対応が可能
・国際的な相互理解に役立つ
 といった点が挙げられます.
 逆に欠点としては,
・人材不足
・資金源が限定される
 などが指摘されます.

 次に,国際的な援助機関の説明として,国連とそのグループを紹介しました.誰でも一度は耳にしたことがあるUNICEF,IMFやWHOも国連グループの一員です.その中でも特に途上国の貧困について包括的な取り組みをしている機関として,IBRD(国際復興開発銀行)とIDA(国際開発協会),通称世界銀行について詳しく説明しました.
 ちなみに日本もかつては世界銀行などの国際機関から援助を受けていました.東海道新幹線,首都高,黒部ダムなどは援助資金をもとに建設されましたし,日本は借款を返済し終えたのは比較的最近の1990年のことです.

 さて,援助機関の紹介が終わったところで,続いて援助の方法と援助理論について説明しました.
 その中で,Two-Gapモデルと,世銀,IMFによる構造調整政策を中心に説明しました.構造調整政策が失敗した原因を調べることは,途上国の開発政策を考える上で非常に貴重な材料だと思います.

 本当は援助理論のミクロ的側面として,参加型開発についても説明したかったのですが,時間切れで諦めました.

 授業で配付した資料で,今回の参考文献を4冊紹介しています.

【第4回レポートについて】
 第4回のレポートのテーマは,この講義で取りあげる次の4つのテーマの中から1つを選ぶことにします.
・工業化と貿易
・農業
・マイクロファイナンス
・貧困と教育
 このうち貧困と教育はまだ講義していません.なお,テーマに沿っていればなんでも良いわけではなく,もちろん講義した内容を基に構成して下さい.

提出期限:7月10日15:00
枚数:3枚以上

2008年6月17日火曜日

基礎総合演習A 第8回

 今日はチーム毎に発表してもらいました.

【授業の内容】
 前回決めたように,携帯電話業界の3社を例に,それぞれのチームがどこの株価が今後もっとも上昇するかアピールしてもらいました.
 身近なだけに,客観的に分析できないのではないかと心配したのですが,どのチームもきちんと調べていたようでした.企業の概要,業績,株価の値動き,サービスなど様々な点から分析できていたと思います.
 僕はあんまり携帯に関心がないので知らないことも多く,なかなかタメになりました.

 さて,来週はこれまでの運用の総括を行います.これまでの売買の経過報告や反省をした上で,新たに売買をしてもらい,その根拠を発表してもらいます.みんなほったらかしにしていないですか?

経済学A 第8回

 今回は為替でした.前回までの資産運用との絡みで,外貨預金も紹介しました.

【授業の内容】
 銀行のホームページで外貨預金について調べてみると,ずいぶん魅力的な利子率がデカデカと提示してあります.通貨によっては年利20%というのもありました.期間限定のキャンペーンのようですし,今すぐこの銀行に預金するべきなのでしょうか?

 それを理解するために,まず円高と円安とはどういう意味か確認しました.わかったような気になってると思いますが,とっさに言われるとついつい間違ってしまいますね.
 具体的なレートを想定して,アメリカ産牛肉を輸入する場合と,アメリカで自動車を売る場合の例を挙げて為替の影響を理解しました.
 我々消費者や,原材料を海外から輸入している企業にとっては円高はありがたいですが,逆に日本で生産して海外に輸出している企業にとっては円安の方がありがたいようです.つまり円高と円安は立場によって,それぞれメリットとデメリットがあるようなので,一概に「円高が悪い!」,「円安が悪い!」と言うことはできません.

 さて,この為替レートですが,円とドルで言えば,1ドルを買う時に何円が必要かという価格のことのようです.すると価格である以上,やっぱり需要と供給のバランスで決まるのでしょう.サンドイッチの値段や,銀行預金の利率同様,需要と供給が大事です.
 配付した資料でもわかるとおり,為替レートは結構変動しています.そのため,投機的な目的で売買されることがあります.この点がサンドイッチとの違いです.サンドイッチは腐るので投機には使えませんよね.一方,ドルはしばらくほっといても,1ドルは1ドルのままです.
 この投機目的での外貨売買として,FX(外国為替証拠金取引)が近年流行っているようですが,リターンが大きい分だけ,リスクも大きいです.ここでもリスクとリターンは比例しています.うまい話はありません.

 後半は「実践外貨預金」と題して,実際の利率や手数料を使って,100万円をオーストラリアドルに替えて預金するとどうなるか計算してみました.そこから,預金期間の為替変動リスクがあること,結構手数料が高いこと,利子所得に税金がかかることなどがわかりました.今後,円安になると思えば外貨預金も一考の価値がありそうですが,円高になってしまえば元本割れの可能性もあります.つまり預金と言っても国内の銀行に預ける場合と異なり,リスクが存在します.

 最後に,経済学っぽく,為替制度について紹介しました.授業ではほとんど変動相場制の下での話をしてきましたが,日本円が変動相場制を選んだのは1973年のことで,それ以前は固定相場制です.世界的に見ると変動相場制と採る国はそれほど多いわけではなく,それ以外の制度(固定相場制やペッグ制度)を採る国の方が多いです.それぞれメリットとデメリットがありますが,それは興味がある人は調べてみて下さい.

 来週は貿易とグローバリゼーションについてやります.グローバリゼーションについては,金曜日に公開講座で講演があるのでぜひ聴いて欲しいと思います.
http://www.bunri-u.ac.jp/what_new/20080407/index.html

2008年6月16日月曜日

経済政策論 第9回

 前回に引き続きガソリン税です.今日は欠席が多かったので,気分を変えて屋外での授業にしましたが,意外と寒かったですね….

【授業の内容】
 まず簡単にガソリン税の復習をしました.ガソリン税こと,揮発油税と地方道路税はどちらも間接税,国税であり目的税です.また批判として,目的以外の用途への流用や,経済的弱者に対する負担の重さがあります.

・ガソリン価格の変化が経済に与える影響
 ここでは,ガソリン自体の価格が上がることだけでなく,輸送費など生産者のコストが増えることにより間接的に様々な財の価格が上がってしまうという発表が多かったです.これまでデフレ傾向だっただけにインフレの印象が強いという発言もありました.

・ガソリン価格はなぜ上がり続けるのか?
 原油価格が上がっているから,という意見もありましたが,では原油価格はなぜ上がるのかについても考える必要があります.
 新聞の記事を参考にして,原油の需給バランスと投機的マネーの流入の両面から説明しました.

・環境とガソリンの関係
 ガソリンの使用は環境に良くない,という意見もありましたが,さてどういうルートで誰にどんな影響が出るのかと聞くとつまることもありましたね.
 環境とガソリンという話になるとバイオ燃料の話を避けて通れないような気がします.

 ということで,来週は環境について調べることになりました.課題は以下の通り.
・京都議定書とは何か?
・地球温暖化対策にはどのようなものがあるのか?
・排出権取引か,バイオ燃料のいずれかについて調べる

2008年6月15日日曜日

【お知らせ】大学生のためのジュニア地球案内人プログラム

 先日,青年海外協力隊についての講師として講演していただいたJICA四国の福田様より,「大学生のためのジュニア地球案内人プログラム」の参加者募集のお知らせを頂きました.
 国際協力に関心のある大学生向けのプログラムのようです.目的意識を持った同年代の友人を作るためにも貴重な機会だと思います.

 詳細は以下のページから.締切は7月1日ですのでお早めに.
http://www.jica.go.jp/shikoku/recruit/index.html#a01

2008年6月13日金曜日

パプアニューギニア

 学生有志で取り組んでいるパプアニューギニアの教育ボランティアのHP(未完成)ができました.今後は日程なども掲載されるので,興味がある人は参加して下さい.僕が決めるのではないので断言できませんが,まず間違いなくウェルカムされるはずです.
http://wmt.bunri-u.ac.jp/papua/blogn254/blognplus/index.php

ミクロ経済学ベイシックⅠ 第9回

 今回は価格理論でした.

【授業の内容】
 まずは前回の復習としてプリントを配り,損益分岐点と操業停止点を確認しました.この図はきっちり使いこなせるようにして下さい.
 またその図から,個別企業の供給曲線も導出しました.供給曲線がなぜ右上がりになるのか理解できたはずです.

 さて,それらを元に,今日は価格がどうやって決まるかについての3つの理論を紹介しました.これまで生産者理論では,「価格が~円であるとすると…」という問題を考えてきましたが,その価格がどうやって決まるか説明したわけです.
 まずはワルラス型価格調整メカニズムです.これは,まず価格ありきで,それに応じて需要と供給が決まり,その大小により超過需要,超過供給が発生するというものでした.超過需要が発生すれば企業は価格は上げ,超過供給が発生すれば価格を下げます.いずれにせよ,常識的な需要・供給曲線の元では,試行錯誤の結果,価格と取引される量は均衡に向かって収束します.

 続いてマーシャル型ですが,こちらはワルラスと異なり,生産量ありき,と考えます.価格は瞬時に変えられるけど,生産量を変更するには時間がかかるというのがその理由です.生産量が決まればそれに応じて,需要価格と供給価格が決まり,その大小により超過供給価格,超過需要価格が発生します.またそれらの発生を受けて生産量を増減します.こちらも常識的な想定の下では均衡に無かって収束します.

 最後にクモの巣理論を説明しました.この理論が想定するのは,生産に時間がかかり,保存が効かない財です.これらの特徴を持った財は不安定に価格の変動が大きいようです.典型的な例は野菜や果物でしょう.
 価格が変動する原因は,生産者が生産を開始する際の価格と,実際に販売する時の価格が異なること,また値段が安くても売らざるを得ないためでしょう.
 授業では3つの仮説をすべて図を用いて説明しました.

経済学Ⅱ 第10回

 今日は余剰分析でした.

【授業の内容】
 これまで経済学Ⅱの講義では,どうやったら効用が最大になるか,どうやったら利潤が最大になるか,といった話ばかりで,どういう状況が良い状況なのか,という判断には一切触れませんでした.しかし,ようやく道具が揃ってきたので,そういう話ができるようになりました.
 前回までの消費者理論,生産者理論,価格理論の知識を使って,余剰分析をしました.余剰分析とは簡潔に言えば,社会的余剰の大きさをモノサシとして様々な制度や状況を比較分析するものです.
 まずは厚生経済学の第一基本定理を紹介すると共に,もっとも望ましい状況の余剰,つまり競争的な市場で決まる財の価格と量,その元での消費者余剰,生産者余剰を説明しました.

 ただし,このように上手く行くケースばかりではありません.現実の経済は様々な要因により市場は歪められています.市場が歪められる,競争が阻害されるケースを2つに分類しました.
・市場に起因するケース
・政策に起因するケース

 授業では,政策に起因するケースとして,ガソリン税の課税の有無,価格統制の2つを例に,政府の介入がどのように社会的余剰を減少させる(死荷重を発生させる)か確認しました.また,社会的余剰が減るにもかかわらずどうして介入するのかも考えてみました.ガソリンやタバコについての課税は外部性と呼ばれるものと関係ありそうです.時間的に余裕があれば,今後の講義で新ためて外部性についても言及したいと思います.

開発経済学 第10回

 今回はJICA四国に協力いただき,講師をお招きして講演をお願いしました.

【授業の内容】
 講演には青年海外協力隊の隊員として活躍なさったお二方の体験談を伺いました.まず,ジンバブエで建築家として活躍された松村さんでした.ジンバブエの経済は,貧困に苦しむアフリカの中でも特に酷い状況であり,凄まじいインフレや外資の追い出しにより壊滅的状況と言えるかもしれません.
 そんな国の本当の姿を,首都ハラレと農村部であるムタサの写真などを元に説明していただきました.



 続いてフィリピンで理数科教育の質の向上に貢献された福田さんです.僕は個人的に教育に関心があるので特に興味深かったです.「初等教育では英語ができないと他の教科にもついて行けない」などフィリピン独特の問題も提起されていました.また中退者の多さ,地域間格差の大きさなど他の途上国と共通する問題も挙げられました.


 お2人は,協力隊の経験を通じて学ばれた点として次のことを挙げていらっしゃいました.
・異文化と交流することで自分で気づかなかった能力に目覚める
・日本を見つめ直す機会
・国の区切りではなく,個人を大切にできるようになった

 僕は,これらはすべて学生であるみなさんへのメッセージだったと思っています.中には講師の方に講演後に直接質問に行くなど,積極的な学生もおり,講演をやった意味があったなと嬉しく思っています.

2008年6月11日水曜日

基礎総合演習A 第7回

 今回も株価の予測です.

【授業の内容】
 今回はトヨタ自動車を例に,企業内容,これまでの価格の推移の原因,今後の株価について発表してもらいました.
 今回で3チーム目ですが,どんどん良くなってきていますが,前のチームのやり方を踏襲する傾向が強く,何のために調べているのかという動機が薄くなってきたような気がします.
 株価の予測のために調べているんだ,ということを再確認しましょう.

 続いて前回のペナルティーとして,企業業績についての指標を発表してもらいましたが,調べ方があまり良くなかったようです.今後,何かの機会にやりましょう.

 今回で一通り発表してもらったので,次回は趣向を変えて,チーム毎に「ある業界の中で,今後株価がもっとも騰がりそうなのはどれか?」を発表してもらいます.次回は携帯業界に決まり,それぞれ担当の企業も決まりました.

経済学A 第7回

 今回は資産運用つづきとして,株を中心に,その他の金融商品も説明しました.

【授業の内容】
 前回の講義の最後に,「毎年1万円をくれる魔法のカードがあったら,いくらで買うか?」という質問をしましたが,これは実は単純化された株の値段についての質問です.
 株というと多くの人が,安値で買って高く売る差益(キャピタルゲイン)を想像しますが,なぜ株に値段が付くかと言えば,配当が出るからです.つまり株の価値の源泉は配当にあります.
 上記のカードの価格の計算方法として,単純に1万円を足していくのではなく,現在価値という考え方を取り入れました.それにより株価の決定には次の2点が影響していることがわかります.
1.配当の大きさ
 将来受け取ることのできる配当が大きければ,その株の価値も高まる.企業の業績が好調であれば株価も上がるのはこのためです.
2.利子率
 利子率が高ければ将来受け取る配当の価値が下がってしまいます.そのため,株価も下がることが予想されます.また利子率が高ければ,リスクのある株を買わずに銀行に預金するから株の需要が下がり,株価が下がると考えることもできるでしょう.

 こういった株本来の価値から株価を推定するのをファンダメンタル分析と呼びます.対する(?)テクニカル分析は過去のチャートの値動きから将来の株価を予想するものですが,その論拠は弱いと言わざるをえません.

 周知の通り,株価は毎日変動するためリスクが存在します.ただし,株の組合せにより,リスクを減らすこともできました.

 後半は,株以外の資産運用として,様々な金融商品を紹介しました.紹介したのは,銀行預金,債券,投資信託です.
 僕個人としては,安全と思いがちな銀行預金にもインフレリスクがあることを理解して欲しいと思います.

2008年6月9日月曜日

経済政策論 第8回

 今回から新しいトピックであるガソリン税です.

【授業の内容】
 他の授業でも,今の関心事についての質問をすると「ガソリンはなぜ値上がりするのか?」という学生が多かったです.やはり身近ですもんね.

 さて,僕もこれまで授業で「税」について話をすることはありましたが,ガソリン税に限定して話したことがないので,「1時間持つかな?」と少々不安でしたが杞憂に終わりました.
 まず「ガソリン税って何だ?」から始めました.ニュース等でもガソリン税という言葉が使われますが,正式には揮発油税と地方道路税と呼びます.両者を合わせてガソリン税と呼ばれることが多いようです.
 この揮発油税と地方道路税は多くの点で共通している税です.共通点は次の通り.
1.国税である(⇔地方税)
2.間接税である(⇔直接税)
3.目的税,道路特定財源である(⇔一般財源)
4.従量税である(⇔従価税)
5.1974年からの暫定税率が続いている(一時的な失効はあったけど)

 2007年度は両者合わせて,約3.1兆円の税収がありました.その使途としては,道路整備,地方道路整備臨時交付金,使途拡大分などがあります.
 ニュース等では本来の目的である道路以外に流用されていると,国土交通省がずいぶん叩かれていたようです.たしかにマッサージチェアやミュージカルはいかんでしょうね….
 その他のガソリン税に対する批判としては,間接税であるために経済的弱者に対して負担が重いとして,公正性と公平性の概念も改めて説明しました.

 世間では暫定税率も含めガソリン税は非常に評判が悪いようです.しかし,ヨーロッパの多くの国ではガソリンに対して日本より高い税率が課せられおり,税率を上げるのが潮流のようですが,どうして日本では減税が叫ばれるのでしょうか?減税するとどんなことが起きるのでしょう?またヨーロッパの国々はどうしてガソリン税を高く設定しているのでしょう?
 というわけで,次週の課題は以下の通り.

【課題】
・ガソリン価格(税率)の変化が経済に与える影響
・なぜガソリン価格は騰がり続けるのか?
・環境とガソリンの関係を幅広く調べる

2008年6月8日日曜日

経済学A 第6回アンケートの結果

 アンケートの結果をまとめました.アンケート提出者は75人です.出欠も兼ねていたため,記名式なので信憑性に問題がないとは言えないのですが,総じてみんな真面目に聴いて,きちんと理解してくれているようです.

授業についての評価
・授業態度の自己評価 平均3.63
・授業の理解度      平均3.63
・授業の総合評価    平均3.71
3項目とも5段階評価で,数字が大きいほど良いことを示しています.
・講義に対する不満(自由記述)
 こちらは「板書に関するもの」がもっとも多かったように思います.少々自覚があるのですが,僕は字を書くのが好きじゃないもので,適当に書いてしまう傾向があります.ただし,「字が小さい」と思う人はもっと前に来て下さい.結構席は空いています.
 その他は「冷房が寒い」,「計算がわからなかった」,「詳しい資料が欲しい」という意見もありました.計算はもう少し例題を出せば良かったかもしれません.

今後予定される講義のテーマについての関心
 学生の皆さんは「グローバリゼーション」と「独占」については特に関心がないようです.どちらも身近ではないように思えるからかもしれませんね.僕としてはグローバリゼーションって,みんなにとって避けられない将来の話だし,大事だと思っています.しかし,皆さんの意見を元に,どのテーマを採り上げるか考えてみます.

身近な経済の疑問
 これは,「ガソリン価格がなぜ高騰するのか?」が圧倒的に多かったです.これについては今後の貿易,為替などのテーマの際に話したいと思います.
 それ以外にも興味深い質問がいくつかありました.各回のテーマと関連があればその時に説明したいのですが,時間の都合などで説明できない場合はこのブログなどを通じて僕なりの回答をしていきたいと思います.

 総じて皆さん講義を好意的に評価しているようでありがたい所です.しかし,「僕を傷つけまいと言う優しい心遣い」であったり,「記名式なので素直に文句をつけづらい.無記名ならもっと批判したいのに!」という配慮から,好意的な記述になった可能性もあるので安易な判断は禁物ですが.ちなみに僕は(当たり前ですが)批判に対して逆恨みしたりしないので,もし次のアンケートがあれば素直に書いて下さい.

 いずれにせよ,皆さん真面目に記入してくれていたので,その内容を授業に反映していきたいと思っています.また意見があれば,このブログや授業後などで僕に伝えて下さい.

2008年6月6日金曜日

ミクロ経済学ベイシックⅠ 第8回

 今日も生産者理論の続きです.ちょっと計算が入ってきました.苦手な人は早めに全学共通教育センターで克服しましょう.

【授業の内容】
 まずは前回の内容である「価格と限界費用が等しくなるように生産する」ということを具体的な数値例で確認しました.ここでは特に目新しいことはなく,前回の内容を数式に置き換えただけです.あえていえば,総費用を微分すると限界費用になる,という点ぐらいでしょうか.あとは黙々と計算するのみです.

 続いて,今度はグラフを用いて,損益分岐点操業停止点を説明しました.ここで新しく,平均総費用と平均可変費用が出てきました.これらをグラフに描き込むことで,価格がいくらであれば利潤が黒字になるか赤字になるのか,また操業を続けるべきか否かがわかります.

 結構盛りだくさんの内容で,最後は駆け足になってしまったので,来週はもう一度損益分岐点と操業停止点を簡単に説明しようと思います.
 それにしても文章にするとあっという間ですね.