2010年11月25日木曜日

総合政策演習BⅠ 第10回(10/24)

 今回はミクロ貿易理論の続きで,いわゆる国際経済学を説明しました.

【授業の内容】
 僕は国際経済学が専門でなく疎いのですが,公務員試験で出題される範囲で言えば,基礎的なことだけ覚えておけば問題ないと思います.(どうせ,といってはなんだけど)厳密な前提条件などすっ飛ばした問題文が多いのですから.
 ということで,テキストを参考に「ヘクシャー=オリーンの定理」,「ストルパー=サミュエルソンの定理」,「リプチンスキーの定理」,「要素価格均等化定理」,「マーシャル=ラーナーの安定条件」,「Jカーブ効果」などを一気に説明しました.覚えることが多い割にあまり出題されないようです.本番のテスト前にざっと見返しておくぐらいで良いと思います.

 さて,これでひと通りの範囲を説明し終えたので,次週からは少しテストっぽいこともやりましょう.というわけで,第1,2章の復習をしてきてください.そこから出題します.もちろん質問があればそちらを優先しますが.

2010年11月24日水曜日

ミクロ経済学ベイシックⅡ 第10回(11/24)

 今回はリスクと不確実性です.来週も同じテーマです.

【授業の内容】
 その前に,前回の内容で一部,時間不足のため説明できなかった所があるので説明しました.それは,情報の非対称性の解決方法です.前回の授業中に少し説明したのですが,今回は特にシグナリングの例として学歴,また評判の例として年功序列型賃金の話をしました.どちらも「非合理的だ」と考える人もいるかもしれませんが,経済学からは情報の非対称性を解決する方法として合理的な説明が可能です.

 さて,リスクと不確実性ですが,まず,期待値の復習をしました.経済数学入門で説明済みですね.また,それを使ってサンクトペテルスベルグのパラドックスを説明しました.確かに期待値が無限大になりますが,こんなゲームを誰もやりませんよね.この背景には,次回説明する効用の形状があります.

 続いてリスクの説明です.リスクとは世間一般では「危険度のこと」だと理解されているかもしれませんが,厳密には「結果のバラつきのおおきさ」つまり「分散(標準偏差)の大きさ」のことです.そのため,確実に悪いことが起きる場合にはリスクはないと言えます.
 多くの人にとってリスクは好ましいとは言えません(後に見るように,例外もいます).ではどうすればリスクを減らすことができるのでしょうか.授業では株を例にリスクヘッジの基本を考えました.

 ここで気分転換として,モンティホール問題を紹介しました.直感的な確率と理論的な確率が違う例ですね.この問題にはいくつかのバリエーションがありますので,興味があればWikipediaで調べてみてください.また,モンティホール問題のシミュレーションが見つかりました.何度かやってみると,確かに変更したほうが確率が高いことが実感できます.
http://gascon.cocolog-nifty.com/blog/2007/09/flash_c2ac.html

 続いて不確実性の説明です.しばしばリスクと混同されてしまいがちです.どちらも未来に何が起きるかわからないことは同じですが,リスクの場合は未来に起こる選択肢とそれが起きる確率がわかっていますが,不確実性の場合はどんなことが起こりうるのか,またそれがどんな確率で起こるのかもわからない場合です.現実には,リスクよりも不確実性に直面するケースの方が多そうですね.

 最後にリスクに対する選好を少し説明しました.リスクそのものをどのように評価するかで,リスク愛好家,リスク中立的,リスク回避者の3つに分類しました.次週はこの話から再開します.

2010年11月22日月曜日

経済数学入門 第8回(11/22)

 今日は中間試験でした.
 なるべく早めに採点し,12点未満だった人には,今週末を目安にポータルサイトを通じて通知します.通知を受けた人は年内に全学共通教育センターに通い,担当者から「これまでの範囲をきちんと理解している」という認定を受けるように.

【授業の内容】
 今日は授業はしていません.以前,中間試験後に「じゃあ授業に入りましょう」と言ったら一斉にブーイングをくらったので….

2010年11月19日金曜日

総合政策演習BⅠ 第9回(11/17)

 今回はミクロ貿易理論でした.

【授業の内容】
 比較生産費説についてはベイシックでやったのですが,貿易三角形などはやっていなかったため,ほとんど説明になりました.
 比較生産費説について理解しておくべきことは,絶対優位と比較優位との違い,そして貿易により国が豊かになるケースとならないケースの違いぐらいでしょうか.
 貿易三角形では,生産可能性フロンティア,相対価格,無差別曲線と,これまで学んできたことを駆使して,貿易により効用がどれだけ変化するか,輸出入をグラフでどう表現するかを押さえておかなければなりません.生産可能性フロンティアが直角三角形の場合と円の弧のような形の凸集合であるケースがあります.前者は特化する場合は必ず完全特化(一方の財しか生産しない)になりますが,後者の場合は不完全特化(一方の財を多く作るが,他方の財も少し作る)のケースが多いです.
 図がメインなので文章では説明しづらいですね….

 次週も貿易理論の続きを説明します.

ミクロ経済学ベイシックⅡ 第9回(11/17)

 今回は市場の失敗の4つ目の例として,情報の非対称性を説明しました.

【授業の内容】
 完全競争市場の条件の1つに「完全な情報」というものがありましたね.今回はその仮定が崩れたら市場はどうなるのかを見ていきました.

 まず消費者が財の質に関する情報をどれだけ入手可能かという視点から,財を3種に分類しました.
探索財:購入前に財の質に関する情報を入手可能である財.例:視聴できる音楽ファイル,試着できる手袋など.
経験財:購入後に財の質に関する情報を入手可能である財.例:ネットで買った服,新商品のお菓子など.
信用財:購入後も財の質に関する情報を入手不可能である財.例:医療サービスなど.大学教育も?

 さて経験財のように事前に品質に関する情報を入手不可能な財と取引する場合,どんな問題が起きるのでしょう?まずは,中古車市場(レモン市場)を例に説明しました.
 中古車市場では情報の非対称性が発生します.つまり買い手である消費者は中古車の品質についての情報を(相対的に)少ししか持っていませんが,売り手である中古車販売店はたくさん持っているはずです.この中古車市場には,品質の良い車と悪い車という2種類があるとします.売り手はある中古車が良い車か悪い車のどちらなのかを知っていますが,買い手はそのどちらなのかがわからないとします.とはいえ,買い手も市場にはどのぐらいの割合で,品質の良い車と悪い車が流通しているかを知っているとします.
 すると売り手は品質の良い車を高く,悪い車を安く販売しますが,買い手は目の前の1台の価値を正確に判別できないので,確率を使って期待値を求めます.その期待値より売値が安ければ購入し,高ければ購入しません.この両者の行動をグラフに描いて見ると,需給が均衡するところがあることがわかります.
 その均衡点では,品質の悪い車(レモン)ばかりが取引されることがわかりました.まさに「悪貨は良貨を駆逐する」ですね.金貨の流通にも上記の考えは応用可能だと思います.

 続いて,逆に買い手が情報を多く握り,売り手があまり情報を持っていないケースも説明しました.それが生命保険市場です.買い手である契約者(被保険者)は自身の健康に関する情報を多く持っていますが,保険の売り手である保険会社はあまり持っていません.
 この場合には,均衡では,保険に加入する人は自身の健康に自身がない人ばかりとなることがわかりました.保険会社としては大赤字です.この原因は情報の非対称性にあるため,赤字を解消するには保険会社が被保険者の情報をより多く獲得することが必要です.現実には,年齢,過去の病歴や喫煙習慣についての情報により保険料を変更したり,あるいは保険への加入を断ったりすることがあるようです.

 これまで見てきたように,情報の非対称性が存在すると,特定の買い手or売り手ばかりが集まってしまうことがわかりました.経済学ではこの現象を逆選択と呼んでいます.

 逆選択と紛らわしい例としてモラルハザードというものがあります.モラルハザードという言葉自体は,ニュースなどで使われることもあるのですが,そのほとんどは誤用です.
 さて,本来モラルハザードとは情報の非対称性を伴う契約により,行動が変化してしまうことを指します.例としてはこちらも保険業界が良いでしょう.例として損害保険(自動車保険)を考えてみましょう.保険に入る前は,もし事故を起こせばそれを自身で弁償しなければなりません.そのため事故を起こさないよう安全に運転しようというインセンティブが働きます.しかし,一旦自動車保険に加入すると,もし事故を起こしても保険が下りるため事故負担はわずかで済みそうです.そのため安全に運転しようというインセンティブは低下するはずです.以前は安全運転をしていた人もスピードを出しがちになったり,周囲をあまり確認せずに運転したりするかもしれません.この変化をモラルハザードと呼びます.

経済学A 第9回(11/16)

 今回はガラリと雰囲気が変わってゲーム理論です.

【授業の内容】
 前回のアンケートで,「大学の近くに回転寿司ができたが,なぜライバル店の前に出店するのか?」という質問がありました.まるで仕込んでるんじゃないかと僕が疑われそうなぐらい,今回のテーマにピッタリの質問で,非常にありがたいです.この質問にはゲーム理論におけるナッシュ均衡を立地ゲームに適用することで,なかなか説得力のある回答ができます.

 ゲーム理論は近年,経済学のみならず様々な分野で採りあげられているので,知っておいても良いかと思います.
 さて,このゲーム理論ですが,我々が普段イメージするゲームそのものではありません.ゲーム理論で分析対象となるゲームとは次の特徴を持ったものです.
・複数のプレイヤーが存在する
・あるプレイヤーの行動が他のプレイヤーの利得に影響を与える
 この2つの条件を満たせばすべてが分析の対象となります.この定義ではジャンケンもゲームですね.

 ゲーム理論では,利得というものが出てきます.利得とは,各プレイヤーがそれを最大化しようとする目的です.各プレイヤーが自分の利得を最大化することだけを考えます.そのため,他のプレイヤーの利得が大きいか,小さいか,自分と比べてどうか,ということは無視します.あくまで「どうすれば自分の利得を最大化できるか?」だけを考えます.他のプレイヤーの利得は無視してください.相手よりどうすれば利得を高くできるか,という勝ち負けではないのです.

 最初のゲームとして,有名な「囚人のジレンマ」と呼ばれるゲームを説明しました.共犯者との駆け引きにより,どうすれば自分の懲役が短くなるかを考えます.このゲームでは,「相手がどんな戦略(選択肢のこと)を選ぼうと,この戦略よりはこちらの戦略の方が良い(利得が多い)」という合理的な考え方を身につけました.合理的であれば幸せになれるかどうかは別として(まさに囚人のジレンマ),合理的なモノの考え方を身につけました.
 これを発展させて,支配される戦略の逐次消去という考え方を説明しました.こちらも,使い途のない駄目な戦略(支配される戦略)を消していくことで,自動的に採るべき戦略がわかってきます.
 ただし,この解法はそんなに力強いものではありません.あるゲームでは通用しますが,通用しないゲームもあります.そのため,どんなゲームに対しても力を発揮する解法が必要となります.

 そこで出てきたのがナッシュ均衡です.ナッシュ均衡は,あるプレイヤー(A)の戦略が他のプレイヤー(B)の戦略に対する最適反応であり,Bの戦略がAの戦略に対する最適反応になっているというものです.このような状態は,まさに均衡,つまり相手の裏をかくことができません.
 と,なかなか抽象的でややこしいですが,実際に問題を解こうと思うと簡単です.相手の戦略に対する最適反応にチェックをつけていくだけですからね.
 このナッシュ均衡の考え方を用いて,利得表を用いないホテリングゲームも解いてみました.これが回転寿司の出店のなぞに対する回答でした.もちろんホテリングゲームは物事をかなりしていますが,それでもそのエッセンスは現実の謎に対しても十分応用可能だと思います.

 最後に逐次手番ゲーム(展開型ゲーム)を説明しました.ジャンケンのような同時手番ゲームではなく,ババ抜きや大富豪のように時間の流れがあるゲームです.
 このような逐次手番ゲームでは,後ろ向き帰納法という考え方が役立ちました.後ろ向き帰納法とは,一番最後に行動する(戦略を決める)プレイヤーの行動から確定していき,徐々に時間をさかのぼって,行動を確定していきます.

 このようなゲーム理論を現実にすぐに応用することはできないかもしれませんが,この新たな考え方を覚えておくことは,皆さんの思考に幅を持たせてくれるのではないかと思います.ゲーム理論に興味がある人は次の本が参考になります(図書館にもありますよ).
渡辺隆裕『図解雑学ゲーム理論』ナツメ社←わかりやすい
神戸伸輔『入門ゲーム理論と情報の経済学』日本評論社←ちょっとレベルは高いかも?

経済数学入門 第7回(11/15)

 今回も微分です.高次関数の図形を描きました.

【授業の内容】
 前回は微分を使って2次関数のグラフを描きましたね.今回はそれを3次以上の関数でも試しました.
 やり方は2次関数の場合とほぼ同じです.例としてf(x)=・・・と表記される3次関数で説明します.
①関数を微分して0とおく.ここで注意して欲しいのは,傾きが0である極値が知りたいから0とおくだけであり,微分したものは必ず0となるわけではありません.0と「おく」というのはそういう意味です.
 いずれにせよ,式が表現するのは「傾きが0となる点」です.この方程式を解くことで極値のx座標が出てきます.2次関数の場合との違いは,2次関数は微分して0とおくと1次方程式になりますが,3次関数の場合は2次方程式になります.なぜなら微分をすると次数が1つ下がるからです.2次方程式の解き方は以前に確認しましたね.因数分解できそうならそれで,できなさそうなら解の公式を使います.
②出てきたxを元の関数に代入する.これにより極値のy座標が求められます.3次関数では多くの場合,①でxが2つ出てきますが,その時はこの作業を当然2回やります.これにより極値のx座標とy座標の組み合わせがわかりますね.
③増減表を描く.何次関数であろうと極値以外では傾きの符号が変わることはありません(正→負,負→正).そのため,極値を基準とし,その前後の傾きを求めます.例えば極値のx座標が-3と6だとすれば,まず,x<-3の地点では傾きが正負のどちらなのかを確かめましょう.そのためには具体的なx<-3となる地点の傾きを調べる必要があります.x<-3の例としてはx=-5がありますね(なんでも良いです).これを元の関数を微分した式に代入します.それによりx=-5の時の傾きがわかります.以下同じように,他の極値の前後でもやってみましょう.
④増減表を基にグラフを描く.

 授業では,3次関数の例外として極値が1つしかないものの説明もしました.このように例外もあるので,慣れないうちは面倒でもきちんと増減表を描くようにしましょう.

 さて来週は中間試験です.きっちり準備しましょうね.

2010年11月12日金曜日

総合政策演習B1 第8回(11/10)

 今回は費用逓減産業,情報の非対称性,公共財の問題を解きました.

【授業の内容】
 費用逓減産業はミクロ経済学ベイシックでやっていないのですが,まあそれほど難しい話ではないと思います.限界費用が逓減する場合の生産量および価格の決定方法は,限界費用価格形成原理と平均費用価格形成原理の2つがあります.限界費用価格形成原理は,完全競争市場と同様に価格と限界費用が等しくなる点で価格と生産量を決定します.利点は効率的な資源配分が実現できる点です.欠点としては必ず赤字となるため,政府などがその赤字を補助金等で補填する必要があります.平均費用価格形成原理は,価格と平均費用が等しくなる点で価格と生産量を決定します.利点は独立採算,つまり赤字が出ない点です.欠点は最適な生産量に比べ過小となり,効率的な資源配分が実現できない点です.

 情報の非対称性については,逆選択とモラルハザードの違いを理解しているかどうか.公共財は非競合性と非排除性を理解しているかどうかですね.まぁそれほど難しくないので,どんどん問題を解きました.

ミクロ経済学ベイシックⅡ 第8回

 今回は市場の失敗の例として公共財を説明しました.

【授業の内容】
 我々が普段必要とするものは(技術的に不可能なものは別として),だいたい売っています.需要さえあれば,民間企業はその財を生産して儲けようというインセンティブが働くからです.しかし例外もあります.それが公共財です.公共財の多くは,民間企業によって生産されません.民間企業は公共財を生産しようというインセンティブを持っていません.なぜなのか?それは公共財の定義を理解するとわかってきます.

 公共財とは「非競合性」と「非排除性」という2つの性質を兼ね備えた財のことです.   
 非競合性とは,複数の人が同時にそれを利用(消費)することが可能であり,また複数で利用しても価値が落ちない財のことです.例えばライブなどがそれにあたります.100人で聴こうが1000人で聴こうが,ライブから得られる効用は(ほとんど)変わらないでしょう.
 非排除性とは,特定の人の利用を妨げることができない財です.つまり誰でも無条件で利用できる財のことです.例えば我々は誰でも一般道を利用することができます.税金を滞納していても,外国人であっても,利用を拒まれることはありません.非排除性を持つ財は,無条件で消費される,つまりお金を払っていない人にも利用されてしまうので,民間企業は採算がとれません.そのためわずかな例外を除けば,ほとんど民間企業は生産しません.

 このような非競合性と非排除性という性質を持つ財の例としては,灯台,法律,ラジオ放送などが挙げられます.繰り返しますが,これらの多くは,儲からないので民間企業は供給しません.しかし,灯台,法律,ラジオ放送がないと我々の生活は不便になるでしょう.そのため,民間企業の代わりに営利目的外の活動もできるプレイヤーである政府が供給するのです.
 しかしそこには問題がないわけではありません.民間企業が生産し,市場で取引される場合には,非効率的な生産など(少なくとも長期的には)起こりません.企業は全然売れない(需要のない)財を生産しないからです.生産してしまうと利潤が減るため,利潤の最大化を目的とする企業はそのような行動をとらないでしょう.また常に売り切れてしまい在庫が空っぽになるようなことも長期的にはあり得ません.作れば作るほど売れるのであれば,生産能力を徐々に拡大して,利潤を増やそうとするでしょう.このように市場では企業は消費者との取引を通じて,消費者の需要を鋭く感じ取り,本当に必要とされている財を,必要とされているだけ生産するのです.
 一方,政府が生産する公共財の場合は,市場メカニズムは働きません.警察を例にとると,警察の治安維持サービスは我々に必要な財ですが,我々は1回のパトロールに何円を支払う,というような取引はしていません.そのため,警察にとっては,我々住民がどれぐらいの水準の治安を求めていて,その需要はどれぐらい大きいのか(金銭的評価はどれぐらいか)ということがわからないので,自分たちのルールでパトロールするしかないでしょう.結果として,私たちは「パトロールに全然来てくれないせいで不安だ」,あるいは「しょっちゅうパトロールしてるけど無意味だ」などと感じることになります.
 ダムが必要なのかどうか,橋は必要か,道路は,とよく問題になるのは,いずれも政府が供給している財だからです.政府は時として必要のない財を供給してしまうことがありますが,その理由の1つはそれらが公共財の性質を持っていることにあるようです.

 最後に,公共財のようにタダの財を4つに分類してみました.
1.公共財
 公共財は非排除性を持つためにフリーライドされてしまうから無料です.
2.供給過剰
 空気や海水のように需要と比較して供給が多すぎる財にも値段はつきません.
3.広告
(自社もしくは他社の)広告が付いている場合もありますね.民放のテレビやラジオ,あるいはホットペッパーなどの情報誌もそれにあたります.またタダで多くのサービスを利用できるGoogleが黒字なのも広告のためですね.またいくつかのミュージシャンがアルバムを無料で公開し,ライブ集客やグッズ販売のための宣伝としているケースも紹介しました.最近の例としては,次のような記事がありました.
http://www.cdjournal.com/main/news/phoenix/30022
4.一部の消費者が払う場合
 モバゲーなどには,タダのゲームもあります.もちろんゲームには開発費がかかり,維持にはサーバー代などかかりそうですが,タダだからといって慈善事業ではありません.一部のアイテム,機能を有料とすることで,ライトユーザーは無料でも,ヘビーユーザーからしっかりお金を取ることができます.

経済学A 第8回(11/9)

 前回に引き続き資産運用の基礎です.

【授業の内容】
 今回は,期待値,リスク,現在価値という前回学んだ内容を前提として,実践的な株価の分析方法,およびリスクへの対策を説明しました.

 まず株価の分析方法ですが,講義では2つの有名な分析方法を説明しました.最初はファンダメンタル分析です.これはある株を持ち続けていれば将来得られるお金の合計がその株の価値である,とするものです.ただし,10年後にもらえるお金はそのままの金額で評価するのではなく,現在の価値に直して(割り引いて)考える必要があります.いずれにせよファンダメンタル分析とは,その企業が将来どれだけ成長するか,どれだけ利益を出し,どれだけ配当を出すか,に着目します.そのため,現在ではなく,将来発展すると予想される株は高く評価されます.この分析方法を信頼して株を買うのであれば,その企業がいる業界に将来性があるか,その企業はその業界の中で勝ち残っていけるかをあなた自身で考える必要がありますね.
 もう1つの分析方法はテクニカル分析方法です.テクニカル分析とは,その株のこれまでの株価推移や取引高の情報から,今後の株価を予測するものです.名前もかっこいいし,なんとなく信頼できそうな気がしますが,その理論的裏付けはあまり強固なものではなく,テクニカル分析が有効であるかどうかを様々な研究者が調べていますが,適当に買うのと比べて儲かるというはっきりとした研究はあまりないようです.

 さて,株というのはリスクのあるものですが,そのリスクを減らすこともできます.リスクヘッジの例として,暖冬になるか厳冬になるかという気象リスクを考えてみました.暖冬になったら,自分が持っているすべての株が下がってしまった,というのではリスク対処になりません.暖冬の時,ある株は下がったが,あの株は上がった,となるような組合せをする必要があります.最大のリスクヘッジは分散投資です.ケインズは「卵は分けて持て」と言いました.ただし,分散投資をするとリスクが減る代わりにリターンも下がります.

 結論としては,リスクとリターンは比例します.様々な金融商品を紹介しましたが,リスクの低い金融商品はリターンも低く,リターンが高い金融商品はリスクが高い,というのが一般的な(どんな場合でも成立するという意味の)結論なのです.そのため,リスクが低くリターンが高い商品(「確実に儲かりますよ!」という商品)はありません.甘い話には騙されないように.もしあったら僕にも紹介してください.

経済数学入門 第6回(11/8)

 今回は,前回に引き続き微分です.非常に重要なところなので,必ず自分のものにしましょうね.

【授業の内容】
 微分の計算方法自体は前回説明しましたね.今回は微分の意味を活用方法を説明しました.この講義で,皆さんに最も理解して欲しいことは,「微分すると傾きが得られる」ことです.「微分」と聞いたら「傾き」,「傾き」と聞いたら「微分」が反射的に出てくるよう,頭に叩き込んでください.なぜなら,経済学では,利潤の最大化や費用の最小化などに関連して,傾き(つまり増加率)をよく利用するからです.

 なぜ最大化や最小化と傾きが関連しているかと言えば,最大化(や最小化)の点では,その関数の傾きが0となるからです(厳密に言うと関数の形状,変数の種類にもよりますが…).2次関数(縦軸:y,横軸:xとする)を例に取れば,2次関数は山型(上に凸)かU字型(下に凸)の形状をとりますが,その頂点や底はそれぞれ最大値や最小値を示しています.そのため,まずは2次関数のグラフをきちんと描けるようになりましょう.もちろん平方完成でも2次関数のグラフを描くことはできますが,平方完成は計算ミスが多いので,今後は微分を使いましょう.
 さて,その具体的なやり方ですが,2次関数を微分すると,放物線の傾きが出てきます.頂点や底は傾きが0となっているため,頂点や底が知りたければ,微分したものを0と置きましょう.すると頂点や底のx座標が出てきます.さらにそのxを元の2次関数に代入すれば頂点のy座標も得られます.ここで間違えて微分したものに代入してしまうと当然0になります.なぜなら,傾きが0になるようなxを求めたわけですから,傾きを示す微分の式に代入すれば0になるからです.

 このグラフを描く方法は,3次関数以降でも利用できます.ただし,3次以上の関数では傾きが0となる点が必ずしも最大値(や最小値)となるわけではないので,傾きが0の点を今後は極値と呼びます.
 来週は3次関数のグラフを描きます.そして,その翌週は中間テストです.きっちり準備しましょうね.

2010年11月7日日曜日

経済学A 第7回(11/2)

 今回は資産運用入門です.

【授業の内容】
 資産運用とは言え,株をどこで買うかとか,そんな話は自分で調べればわかるものなので,ここでは,資産運用の理論的な部分を説明しました.

 まず,利子と現在価値の関係を説明しました.現在,手元にある100万円を銀行に預ければ(利子率1%とする),1年後には101万円になります(税金や手数料は無視しておく).つまり,この場合,現在の100万円と1年後の101万円が同じ価値であると言えます.お金は時間が経つと増えると考えても良いかもしれません.
 さて,では逆に考えることも可能です.つまり1年後の101万円を現在の価値に直すと100万円です.このような考え方を,現在価値(現在割引価値)と言います.将来受け取るお金を現在の価値に直すときには利子率で割り引かねばなりません.きちっとした計算式は講義中に書きました.

 期待値の説明です.株が確実に値上がりすれば良いのですが,未来のことは誰にもわかりません.そのため,まだ起きていない未来のことについての平均値である期待値のことを説明しました.期待値は高校の数学でも学んだかもしれませんが,起こり得る結果とそれが起こる確率とをかけ合わせ,出てきたものをすべて足しあわせたものが期待値です.例として,サイコロを振って,5か6がでれば300円がもらえ,それ以外の目がでれば100円がもらえるゲームがあったとすると,サイコロを1回振ったときの期待値は次のようになります.
E=300×(2/6)+100×(4/6)

 続いてリスクの説明もしました.経済学の世界で言うリスクは,世間で使われているリスクの意味とは少し違います.リスクとは,起こる結果のばらつきの大きさのことを指します.正確に言えば分散(あるいは標準偏差)のことですが,わからなくても大丈夫です.
 そのため,良いことが起こるかどうか,悪いことが起こるかどうかがリスクではないのです.

 最後に株を買うメリットを考えました.株についてあまり知識がないと,「株を買うのは,安く買って高く売り,差額で儲けるためだ」と考えてしまうのではないでしょうか.この売買による儲けはキャピタル・ゲインと呼びます.しかし株を買うメリットはそれだけではありません.それに加えて,株を保有していると配当が得られます.この儲けをインカム・ゲインと呼びます.配当はそれほど大きな金額ではありませんが,長い目でみれば大きな金額になりますし,株価を予想する上でも重要です.
 続きはまた来週です.

経済数学入門 第5回(11/1)

 今回は指数の続きと,微分の説明をしました.

【授業の内容】
 まず,前回の続きとして,指数によるn乗根の表現を説明しました.ルートを使ったままよりも,指数の形に変換した方がなにかと便利です.なんといっても指数法則がすべて利用できるのです.指数が分数の形になるn乗根と,指数がマイナスになる分数は,よく間違うところです.テスト前にはしっかり確認しましょう.

 続いて,n進法(n進数)を説明しました.我々が通常,計算などに使っている数の数え方は10進法です.これは10種類の記号を使って数を表現する方法です.そのため,0~9まではその記号で表現できますが,それ以降の数字は記号1つで表現できないため,位を上げるという工夫がなされています.
 この「位上げ」という工夫のおかげで,572というたった3つ数字で,100が5つ,10が7つ,1が2つあるんだということを表現できます.10進法の位は10が基準となっています.位が1つ上がると単位は10倍になります.つまり,先程の例では100は10の2乗,10は10の1乗,1は10の0乗です.
 これらを2進法に応用してみると,2進法は2種類の記号を使い,位が1つ上げる毎に単位が2倍になる表記方法であると想像できます.授業では,n進法を10進法に変換する方法と,10進法をn進法に変換する方法を説明しました.このn進法は経済学では使いませんが,就活の筆記試験では出ることがあるようです.

 さて,後半は微分の説明ですが,今回はその意味までは説明できず,とりあえず微分のやり方だけ説明しました.基本的には,変数の右肩についている指数を前の係数にかけ(乗じて),指数から1を引くだけです.微分ができないと経済学では非常に不便なので,必ずできるようにしましょうね.

中間試験
 経済数学入門の中間試験を以下のとおり行ないます.特別な事情があり事前に連絡があった場合を除き,中間試験を受験していない学生は期末試験の受験資格を失います.
日時:11月22日(月)第8回講義時間内
範囲:第1~7回講義の内容
まずはこれまでに配布した課題をすべて解くところから始めましょう.問題のレベルは課題と同程度です.
評価における中間試験の取り扱いについては第1回の講義で説明した通りです.