2009年9月30日水曜日

経済学A 第2回

 今回は経済学的な思考を身につけるため,「大学進学は合理的か?」,「ダイヤモンドはなぜ高いのか?」,「どうすれば高い所得が得られるか?」について考えました.

【授業の内容】
 「経済学は選択の学問である」と言われることがあります.みなさんも現実的な問題として様々な選択を迫られる機会があると思いますが,経済学はその際に判断材料を与えてくれます.
 まず皆さんがちょっと前に下した「大学進学」という選択ですが,経済学的に見て合理的なのでしょうか?「大学進学」以外にも「高卒として就職」という選択肢があったはずです.どちらが合理的なのか判断する際には,まずそれぞれの選択肢が持つメリットとデメリットを挙げてみました.
 ここで見落としがちなのは,「大学進学」という選択をしなければ何が得られていたか,という視点です.経済学では,「ある選択をした際に,それを選択しなければ(次善の選択肢から)得られたもの」を機会費用と呼んでいます.大学進学の場合,機会費用は高卒として働いた場合に得られる賃金です.つまり大学進学によって発生する費用(コスト)は,学費や生活費といった実際に払う費用だけではなく,高卒として働くことで得られたはずの賃金も含めるべきなのです.

 続いて,「ダイヤモンドはなぜ高いのか?」を考えてみました.「ダイヤは希少だから高い」と考えがちですが,希少なモノはすべて高いのでしょうか?これには簡単に反例が見つかります.僕が描いた油絵は非常に希少ですが,そもそも需要がないので高い値段はつきません.価格というのはあくまで,需要と供給のバランスによって決まるので,希少であれば高い,豊富であれば安い,と一概には言えません.ここから,ある商品やサービス(財と呼びます)を高く売りたければ,需要を増やすか,供給を減らす,あるいはそれらを同時に行うべきでしょう.ダイヤについては,需要を増やすように広告が打たれていますし,供給量もきちんと管理しているはずです.企業はこうして財の価格を高く保つような努力をします.

 さて,実は皆さんが将来受け取るであろう賃金というのは,価格です.正確に言うと,あなたの労働力(労働時間)を企業に売る時の価格が賃金であると捉えることができます.そのため,上記のダイヤモンドが高く売れる理由を応用して,あなたの労働力を高く売る(高い賃金を得る)方法も見つかるのではないでしょうか?授業でも少しだけ説明しましたが,皆さんでも考えてみてください.

2009年9月25日金曜日

総合政策演習D 第2回

 今回から前期の形に戻りました.といっても,問題は前期の復習がメインなので,むしろみんなを焦らせることが目的だと思っています.

【授業の内容】
 「公募のインターンシップを取りあえず受けろ」とあれだけ言ったのに,ほとんどの人が受けてないようです.学部から推薦されて行く場合とは違ったことが学べるので,ぜひ行くべきだと思っているのですけどね.1dayのインターンシップなら,まだ受け付けている企業もあるので,めんどくさがらずに行って欲しいものです.

 とにかくみなさんの最大の短所は「積極性に欠けること」です.というより,同年代の多くの学生がそうなのかもしれません.それだけに積極的に行動することで他の学生よりも明らかに有利になると言えるでしょう.周りが動き始めたら動こう,ではなく,周りが動いていないうちに動きましょう

 次週のテスト範囲は,pp.94-123です.テーマ番号で言うと,7-13です.説明会などで忙しくなってから泥縄的に勉強しなくて済むように,今の間にやっておきましょう.

2009年9月24日木曜日

経済学Ⅰ 第2回

 今日から本格的に講義をしました.今日はGDP,三面等価の原則を学んだ後,マクロ経済学の主要なプレイヤーの紹介,そして最後に経済学の流れを少しだけ説明しました.大事な点なので次週復習します.

【授業の内容】
 まずGDPとは何かを説明しました.GDPとは国内総生産の略です.国内総生産という名前ではありますが,実態は「どれだけモノを作ったか?」ではなく,「どれだけ価値を生み出したか?」を測る指標です.例えば日本のGDPの場合だと,1年間に日本国内で発生した付加価値の合計です.GNPとの違いにも注意しましょう.

 続いて三面等価の原則ですが,これは一国の経済力は総生産だけでなく,総所得,総支出という三つのどの面からみても同じだというものです.またそのうち,総支出の内訳についても説明しました.

 たったこれだけですが,理解しておくと経済政策(厳密に言うと財政政策)が我々の生活にどんな影響を与えるのかがなんとなくわかってきます.

 さて,マクロ経済学ですが,主要なプレイヤーは4つです.特に重要なのは,民間側の家計企業です.この2つによる経済活動がその国の経済の基盤になってきます.また家計と企業が経済活動を行う場のことを市場(しじょう)と呼びます.さらにそれらを補助する役割として,公側に政府中央銀行という2つのプレイヤーがいます.この2つは,市場がうまく働かないときに市場に介入してきます.その介入のスタンスに関して経済学は大きく2つに分類することができます.

 1つは,古典派です.名前の通り,もっとも古い経済学と言えるでしょう.古典派の基本的な考え方は,「神の見えざる手」という言葉に象徴されます.市場は,誰もが自分勝手に,自分の儲けだけを考えて行動していますが,トータルとしては不思議なことに上手く機能しています.みんながお米を欲しがってるのにお米がスーパーに並んでいないなんてことはめったにありませんね.不思議です.古典派はこの現象を「まるで見えない神がいて,取引に支障がないようにすべてを動かしているようだ」と考えたのです.別に本当に神様が実在して働いてくれていると考えたわけではありません.このように古典派は基本的には市場を信頼しているため,市場への介入には消極的です.「レッセフェール(なすにまかせよ)」,つまり「ほっとけ」というスタンスなのです.
 しかし,古典派が行き詰まる事態が発生しました.それが約80年前の世界大恐慌です.大恐慌を目の前にした古典派はどうやって対処してよいか途方にくれます.なぜなら,古典派のスタンスは「市場に任せること」だったからです.
 そこで経済学の檜舞台に躍り出たのはケインズ派です.ケインズ派は市場を信頼しておらず,積極的に市場に介入します.さて,このケインズ派も完璧だったわけではありません.1970年代以降,ケインズ派の欠点が少しずつ明らかになってきます….(というところで来週に続く)

2009年9月23日水曜日

経済数学入門 第1回

 経済数学入門は,主に2年次以降の経済学系で必要となる数学的な知識を身につけることを目的としています.数学は経済学で必要となるのは当然として,民間企業の筆記試験や公務員試験でも必要となるので避けて通ることはできません.

【授業の内容】
 今回は初回なので,「そもそも関数とは何か?」について考えてみました.高校までの数学でも1次関数,2次関数を始めとする関数を使ってきたと思いますが,関数って何でしょう?そして方程式とは何が違うのでしょう?
 現在のところの答えとしては,関数は「ある数字の集まり(A)を異なる数字の集まり(B)に変化させるもの」だと理解してくれれば良いです.そんなに特殊なものではなく,時給800円のバイトをしていると考えれば,働いた時間(A)が決まるとバイト代(B)はすぐに計算できます."働いた時間"×800="バイト代" ですよね.このようにある数字を入れると,なんらかの数字が出てくる箱のようなものだと考えましょう.
 さて,関数と方程式の違いですが,関数については因果関係が重視されていると思ってください.Aという数字を入れたらBが出てきた,という因果関係が重要です.労働時間とバイト代の場合は因果関係はそれほど大事ではありません.労働時間が決まればバイト代が決まるし,ある額のバイト代を手に入れようと思えば,働くべき時間もわかるからです.ただし,因果関係が重要となる場合,向きを逆だとまったく意味がわからなくなる場合もあるので注意しましょう.例えば,景気が良くなると銀行強盗などの犯罪が減るかもしれませんが,(警察が努力して)銀行強盗を減らしても景気は(たぶん)良くならないからです.

 今回の講義での確認したかった点は,「関数とは何か」と「1次関数の復習」です.しばらく数学をやってない,という人は全学共通教育センターを利用するなどして,基礎をきっちりと確認しましょう.
 今回は課題があります.できるところはやっておきましょう.

【授業のルール】
・次回からチーム毎に座席指定あり
・中間,期末試験,課題の提出により成績を評価する
・数式のミスなどを指摘してくれたら成績に加点する
・(当然ながら)私語禁止
・チーム内で教え合う
・授業の内容が理解できなければ,その日の5限に全学共通教育センターに行く

2009年9月17日木曜日

総合政策演習D 第1回

 初回の今日は,皆さんに予習を指定していなかったので,普段と違ってゲストに来てもらいました.ゲストはすでに内定をもらった4年生の3人です.

【授業の内容】
 というわけで,ゲストに来てもらったので,彼らに自身の就職活動(と公務員試験)について色々尋ねてみました.

 僕は司会をしていたためメモを取る暇がなかったのですが,印象に残っているのは,「大学生活に(単に)これをやった!」だけではアピールにならず,「その過程で,どんな問題に直面したか,そしてそれにどのように対処したか,その経験を企業でどんな風に活かせるのか」を相手に伝えることが必要だ,ということでした.彼らはいずれも目的に向かって努力をしたことが3年生に伝わったのではないでしょうか.

 一番反応があったのは,「就職活動に30~40万円かかった」という話でしたね.彼らぐらい力を入れて活動しようと思うと,どうしてもお金がかかってしまうようです.やはり地方の大学のハンデだと思います.ただし,関西に友人とシェアしてマンションを借りたりすると,コストは半分ぐらいになるのではないか,というアドバイスもありました.
 また,本命に落ちたときにどれだけ辛いか,という話では,建前じゃなくて本音の部分がこちらにも伝わってきました.ああいう部分は僕たち教員がいくら言葉で伝えても無駄で,彼らの表情だけで多くのことが伝わったのではないでしょうか.

 最後に質疑応答があったのですが,やはりああいう場面で積極的に質問できる人は強いと思います.逆に質問できなかった人,そして質問が思い浮かばなかった人はちょっと焦った方が良いと思います.授業中,そして授業終了後に質問をした人もやはり女性が多かったですね.全国的な傾向だと思いますが,なぜか女性の方が就職活動はしっかりしている印象です.男の子にはもう少し積極性が必要かもしれません.

 ちなみに昨年も4年生(今春卒業した学年)に来てもらい話を聴きました.その内容は,文章にしているので,こちらも参考に.
http://wwt.bunri-u.ac.jp/mizunoue/DL%20file/practiceD/zadankai.pdf

経済学Ⅰ 第1回

 みなさん初めまして.1年間に渡って,経済学Ⅰ・Ⅱと経済政策論を担当する水ノ上です.

【授業の内容】
 経済学Ⅰの中身はマクロ経済学です.そして経済学Ⅱではミクロ経済学を学びます.マクロ経済学とは,経済全体の動き,成り立ちを理解する分野です.例としては,日本全体の景気,物価,失業率などが分析対象です.一方のミクロ経済学は,経済を構成する最も小さな要素である,家計(や個人)や企業の動きに焦点を当てます.僕はどちらかというとミクロ経済学が好きなのですが,マクロ経済学も経済学Ⅰの範囲ぐらいは理解しておくと良いでしょう.なぜなら,学ぶ内容のほとんどが社会に出てから知っておいて損はないような経済の常識だからです.景気とは何か?年金のシステムとは?デフレって悪いの?などなど,社会に出たら人にはちょっと聞きづらいような話ばかりです.(まぁ,結構堅い話もするんですが)

 今回もいきなりかっちりと授業をしようかと思っていたのですが,皆さんの負のオーラに負けてしまい,短めに切り上げました.来週からはきっちりやります.

ミクロ経済学ベイシックⅡ 第1回

 後期のミクロは不完全競争市場について学びます.不完全競争市場というのは,(誤解を恐れずに言うと)現実の世界です.前期の理想的な完全競争市場に比べて,現実の世界はどこが違うのか,なぜ社会的に望ましい状態でないのか,について学んでいきます.

【授業の内容】
 まず前期の内容を復習しました.完全競争市場についてきちんと理解していないと,今,何を学んでいるのかわからないと思ったからです.
 後期は完全競争市場の5つの条件をどんどん崩していきます.まず最初の山場として,独占市場を学びます.独占市場とは市場に売り手(あるいは買い手)が少数しかいない場合です.売り手が少ないと財の価格は高くなります.しかし売り手の数が増えてくれば(企業にライバルが増えてくると)財の価格はどんどん下がってきます.例として,マイクロソフトのOSとOffice,それぞれの価格を挙げました.有力なライバルがいない前者はいまだに高い価格をつけていますが,安価な(あるいは無料の)ライバルが出てきた後者は,ついにタダになってしまいましたね.

 さて,初回からあんまり堅い話ばかりもどうかと思ったので,細かいルールや厳密な定義は無視して,とりあえず次回のテーマであるゲーム理論の簡単な例をちょっとだけ紹介しました.有名な「囚人のジレンマ」ゲームです.合理的な考えかたというのが理解できましたか?ゲーム理論を難しいと感じる人のほとんどは利得表の見方をしっかり理解していないのだと思います.利得表の見方を次回の講義までに復習しておきましょう.

総合政策演習B1②

 演習が始まりましたね.公務員試験まですでに1年を切っていますし,ガッチリやっていきましょう.

【授業の内容】
 僕の担当は不完全競争市場です.今回は完全独占について説明ついでに,基礎的な計算の確認も行いました.
 独占については,何も考えずににMR=MCの式を導出するまでしっかり復習しましょう.完全独占もそうですし,複占,寡占のところでも出てきます.今回は計算ばっかりでしたが,次回は図による説明も行います.

 次回までに,問題集の必修問題,およびNo.1,2,7の問題をやっておきましょう.計算は決して難しくありません.慣れるか慣れないか,だけです.

2009年9月15日火曜日

経済学A 第1回

 後期の講義が始まりましたね.久々の講義だったので,ちょっとペース配分が上手くできませんでした.
 さて,経済学Aを取った皆さんとはおそらく「初めまして」だと思います.半期だけですが,楽しくやっていきましょう.

【授業の内容】
 初回の今日は,「経済学とは何か?」,授業のルール,評価方法についてに説明した後,経済学的な考え方を少しだけ説明しました.今回特に伝えたかったのはインセンティブという概念です.理解できたでしょうか.わかりやすく言うと「アメとムチ」ですね.人々の行動を変えたい時には,お願いしたりするよりも,「行動を変えた方が得みたいだな」と思わせるべき,という考え方です.

 さて,初回なのでルールを確認しておきましょう.
評価について
 評価は基本的には期末試験で決まります.ただし,大学の決まりとして,授業回数の3分の1を超えて欠席すると期末試験が受けられないので,当然単位は取れません.
 基本的には期末試験(100点満点)の一発勝負ですが,皆さんの意見を聞くために,発表点を加算します.発表点は,1回発表すると5点加算します.ただし,上限は4回(20点)までです.また,発表点による加点をする場合,評価は最大で90点までとします.90点以上の評価がどうしても必要だ,と言う場合は加点に頼らず期末試験でがんばってください.

受講について
 周り(と僕)に迷惑をかけなければ基本的にはなんでもアリです.聴く価値がないと思えば退室しても,寝ても,他の勉強をしても構いません.飲食も控え目であれば構いません(僕もお茶や水を飲みますしね).
 私語などが目立つ場合は,退室するように言うのでそれに従いましょう.受講者数の多い授業なので,静かにしましょう.
 次週から出欠確認は,学生証を使って行います.そのため学生証を忘れずに持ってきましょう.特別な理由がない限り忘れたら欠席として扱います.また出欠確認時にいない場合(遅刻の場合)も同じく欠席として扱います.

おまけ告知
・柔道部では新入部員を募集しています(特に女性部員).経験の有無にかかわらず,興味があれば金曜日の4時半に柔道場まで来てください.新入部員を紹介してくれた人にはささやかなお礼をします.
・同じく,国際教育支援サークルPapuPapuでもメンバーを募集しています.興味がある人は金曜日の4時半に23号館9Fに見学に来てください.学園祭にも参加します.