2007年6月30日土曜日

ミクロ経済学ベイシックⅠ 第11回

 今回は余剰分析です.前期の講義は次で終わりで,その次(7/13)はテストです.間違えないようにね.

【授業の内容】
 前回に引き続き,右下がりの需要曲線と右上がりの供給曲線を使っての説明です.
 余剰分析の前提として,厚生経済学の第一基本定理があります.これは,財の価格と量が競争的な市場で決定されれば,社会的余剰が最大になる,というものです.逆に言えば,競争的ではない方法(独占や政府による介入など)で価格や取引量が決定されることは社会的に望ましくないことを示しています.
 余談ですが,競争的な市場(完全競争市場)とは何か,覚えていますか?条件がいくつかありましたよね.必ず覚えておきましょう.

 さて,その競争市場で価格が決定されないケースとして,まず価格統制を例に社会的余剰が減少する様子を確認しました.政府によりTシャツの値段が(競争的な市場で決まる価格より)低く設定されると,消費者余剰,生産者余剰がそれぞれどのように変化するか,またその結果として社会的余剰がどれだけ減少する(死荷重の発生)ことがわかりました.また,実際に需要曲線,供給曲線を具体的な直線の式で示し,余剰の値を計算しました.計算自体は大したことないので,皆さん問題なくできていた様子ですね.こういう問題は期末試験でおそらく出すので,きっちり解けるように.
 続いて,このTシャツに政府が課税(従量税)した場合の社会的余剰についても図で確認しました.先ほどの例との違いは,政府による税収が発生するのですが,税収は社会的余剰に含める,という点です.ちなみに消費税のような従価税の場合はどうなるでしょう?図で考えてみて下さい.
 最後に数量制限について簡単に説明しました.

告知
 期間外にテストをするので講義時間が1回減るので,代わりに質問の時間を設けます.近いうちにポータルサイト及びこのブログ上でお知らせします.

2007年6月29日金曜日

開発経済学 第11回

 今回は途上国への支援の1つとしてODAについて説明しました.来週は外務省の方に講義をしてもらうので,その予備知識でもありました.

【授業の内容】
 途上国への支援については,皆さんの中にもずいぶん前から義援活動や募金もやってるのに貧困が目に見えて減少してると感じられないために,「いつまでやればいいのか?」,「どれだけやればいいのか?」という,いわゆる援助疲れを感じる人がいるかもしれません.
 2000年の国連ミレニアムサミットにおいて,日本を含む国際社会は2015年までの期限付きで,達成すべき具体的な8つの目標(ミレニアム開発目標,MDGs)が定められました.ミレニアム開発目標の詳細は以下のページを参照.

外務省:ミレニアム開発目標
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/doukou/mdgs.html

 当然ながら,目標を設定するだけで問題は解決されないので,同時に各国が拠出すべきODAの額(先進諸国で年平均2350億ドル)も設定されています.各国は2015年までにODAを対GNI比で0.7%以上にすることを目標としていますが,2006年の日本の拠出額はわずかに0.28%に過ぎず,現在時点で目標を上回る拠出をしているのは,ノルウェー,スウェーデン,ルクセンブルク,オランダ,デンマークの5ヶ国だけという状況です.

 さて,そもそもODAとは何か,ということですが,途上国への援助がODAとみなされるためにはいくつかの条件がありました.その条件は以下の3つ.
・政府やその関係機関により供与されるもの.
・途上国の経済開発や福祉の向上を目的として供与する資金.
・借款はグラント・エレメント比が25%以上であること.
 最後のグラント・エレメント比とは,途上国が市場で資金を調達する場合に比べて,どれだけ借り入れ条件が緩やかであるかを示す指標でした.

 最後に貧困撲滅に向けたいくつかの提案を紹介しました.
 まずはMDGsのプロジェクト長であるJ・サックスは,自国アメリカを対象に,
20万ドルを超える所得に5%の追加税を課し,その分は世界の貧困をなくすためにアメリカの分担金にまわす.2004年には約400億ドルである.その追加税は,アメリカ政府のこうした取り組みを支援するための目的税として払ってもいいし,納税者が直接,国連公認のミレニアム開発目標支援計画をもつ正規の慈善団体などに寄付してもよい.」
 と著書の中で提案しています.サックス(2006)

 続いて僕(水ノ上)の提案としては,
「日本のODAがMDGsを達成するために必要な額を下回る場合,不足した割合だけ個人が貧困削減に取り組む団体に直接寄付を行う.2006年度の実績で言えば,年収500万円の人は21,000円を寄付することになる.」
 というのを考えています.もともと一国全体のODAについてではなく,「僕個人がどんな援助をどれだけすべきなのか」を考えていたので,日本全体のODA不足額を補う案ではありません.この案のメリットは各自が貧困撲滅に必要な援助額を強く意識できる点だと思っています.しかしまだ荒削りですので,細かい修正は必要だと思います.

 最後に学生からの提案を箇条書きに,
・学校のコンビニに(PRODUCT)REDの商品を置き,販売する.体育館や図書館に(PRODUCT)REDの大きなロゴの横断幕を掲げる.
(PRODUCT)REDについては下記を参照.
(PRODUCT)RED
http://www.joinred.com/manifesto/(英語)
世界基金支援日本委員会
http://www.jcie.or.jp/fgfj/productred/(日本語)

・ポスターや新聞を作成し,食堂・購買・掲示板などに掲載する.

・学生全員から募金を集めワクチンを送る.

・募金バトン:ノルマ,スタート地点,ゴール地点を決め,大学から大学,または地域から地域へとそれをつないていく.バトンを渡された大学や地域は一定期間内にその募金ノルマを満たし,次へとまわしていく.ゴールしたら募金を途上国へと送る.

 このように学生からも実現可能?な面白いプロジェクト案が出てきました.いずれもやってみるべき価値のある提案だと思います.興味がある人は一緒にやりましょう.

告知
 来週は必ず出席を取ります.講演会の内容は第3回レポートの課題でもありますので,必ず出席しましょう.また,質問を1つ考えておきましょう.

【参考文献】
J・サックス(2006)『貧困の終焉』東洋経済新報社,p.426.

2007年6月26日火曜日

基礎総合演習A 第11回

 今日は授業と言うよりお説教みたいでしたね.最近みんな良くなってきたと思った矢先なので,僕にとってはショックが大きいです・・・.

【授業の内容】
 学生の司会のもと,前回の課題について話し合ってもらうつもりでしたが,予習してきてないのは話になりません.なんらかのペナルティーを考えておきます.

 というわけで,やってきてない人もいましたが,議論はまぁまぁ実りがあったのではないでしょうか.しかし,相変わらず司会にあてられないと話せないのは問題です.高校生じゃないんだから,大人しく座って人の話を聴いてるだけじゃ意味がありません.

【課題】
・チームの資金はどうなったか?
・予想はあたったか?
・反省点,今後の注目点
 以上3点について各チーム10分ぐらいで発表できるように準備すること.必ず1回は打合せをしましょう.

経済学A 第12回

 今日は少子化問題を取りあげました.前回は日本の財政でしたが,今後の財政問題は少子化(高齢化)と密接に関係があるのは言うまでもありません.最後に告知があります.

【授業の内容】
 この講義を通じて「なぜ少子化が起きるのか?」,「少子化はなぜ問題なのか?」について自分なりに答えが出せるようになって欲しいと思います.
 まずは,そもそも「少子化はなぜ問題なのか?」について,経済学の立場からメリットとデメリットを紹介しました.

デメリット
・人口バランスが崩れることによるもの
 ・社会保障費の増加と負担 Ex.年金,医療,介護
 ・巨額の国債残高
・労働力人口の減少によるもの
 ・GDPの減少
 ・国際社会での存在感,発言力
 ・税収の減少
 (おまけ:クズネッツの才能原則)
メリット
・1人あたり資本の増加(1人あたり所得増加)
・環境負荷の軽減,人口過密の緩和

 続いて,「なぜ少子化が起きるのか?」を説明するために,合計特殊出生率の推移,女性就労のM字型曲線有配偶率と有配偶出生率などを説明しました.少子化のほとんどは有配偶出生率の低下ではなく,有配偶率の低下により説明できます.つまり,結婚した女性が子どもを産まないのではなく,そもそも結婚が遅い(晩婚化),あるいは結婚しない(非婚化)が原因であるようです.男性の生涯未婚率の高さには驚いたのではないでしょうか?
 また,女性の高学歴化とともに出生率が低下したのを説明する理論として,バッツ=ウォード(Butz and Ward)モデルを紹介しました.紹介と言っても結論だけですけどね.出産の費用には,入院費用から始まり育児,教育などの直接的な費用だけでなく,出産による機会費用も含まれます.女性が高学歴化すると,この機会費用が高くなるので(中卒の女性よりも大卒の女性の方が賃金が高い),女性にとって出産の費用が高くなってしまうのです.内閣府は平均的な大卒女性が出産後にパートとして働く場合と,出産を経ずにそのまま働き続けるケースを比べ,生涯賃金が2億円も違うと推計しています.(内閣府 平成17年度国民生活白書)http://www5.cao.go.jp/seikatsu/whitepaper/h17/01_honpen/html/hm03010303.html
 もちろんお金だけでなく,女性にとってキャリアを中断してしまうことが,結婚・出産の障害となっているのはよくある話です.みなさんがどのような働き方を望むかわかりませんが,今のうちから理想の働き方を実現するために何が必要なのか,考えておく必要があるでしょう.

 さて個人の話ではなく,国にとっての少子化に話を戻しましょう.少子化は社会保障の面で国の根幹を揺るがす重大な問題です.日本も遅まきながら少子化対策に本腰を入れてきました.考え得る対策には次のようなものがあります.
女性の就労継続支援・・・育児休暇の取得を促進する,あるいは保育施設を整えるなど働く母親をバックアップすることで,出産の機会費用を軽減することができるはずです.
手厚い育児給付・・・フランスには24種類もの子ども手当があるそうで,国家を挙げて少子化対策に取り組んだ結果,合計特殊出生率は10年間で1.6から1.89へと上昇しました.しかし,お金を配るには財源が要るわけで,フランス並みに給付するには10兆円が必要だという試算もあります.
移民の受け入れ・・・これは現在の日本では抵抗が強く,実現しにくいでしょうが,移民を多く受け入れるアメリカでは,移民の出生率の高さが国全体の出生率を押し上げています.ただし,移民以外の出生率も高いのが不思議なところです.なぜなのでしょうか・・・?僕には答えは出ていません.

告知.1
 授業内で告知した通り,試験は持ち込み一切不可です.まぁ,それほど難しい問題はでません.

告知.2
 来週は「開発経済学」についてやります.それに関連して,7月5日(木)4限に23504で,外務省国際協力局国別開発協力第一課 課長補佐・南西アジア専門官の佐藤仁美様をお迎えして,:「南アジアの貧困撲滅に対して日本はどのような役割を果たしているか。また、我々個人には何ができるのか」というテーマで講演をしていただきます.世界の貧困問題,国際貢献,ボランティアなどに関心のある学生はぜひどうぞ.

2007年6月25日月曜日

経済政策論 第12回

 今回は各自に最近気になるニュースについて発表してもらい,次回のテーマを決定しました.

【授業の内容】
 1人5分の発表の後,残った候補は次の4つ.
・景気や経済回復が自殺に与える影響
・為替と金利
・企業による環境対策
・地球温暖化
 学生による多数決の結果,来週は地球温暖化,特にバイオ燃料について調べることになりました.どれも面白そうでしたけどね.次点の自殺については,僕も調べたことのないテーマなので興味があったんですが,授業で取りあげるにはややヘビーですね・・・.

 みんなちゃんと自分の意見を持っているのだから,もう少しはっきりと自信を持って発表しましょうね.

【課題】
調べること
・バイオ燃料についての国の対策(対応?)
・バイオ燃料の材料
・自動車メーカーの対策

意見を明確にすること
・バイオ燃料はそもそも必要か?
・バイオ燃料とガソリンのどちらが環境に良いのか?

一見経済学と関係なさそうですが,環境問題は前回の経済学Ⅱで学んだ外部性(外部不経済)そのものですね.

経済学Ⅱ 第12回

 市場の失敗の途中ですが,一時中断して今回はゲーム理論を学びました.なぜなら,ゲーム理論の考え方を知ることで,来週の独占がより理解しやすくなるからです.

【授業の内容】
 まずゲーム理論で扱うゲームとは何かを説明しました.プレイヤーが複数おり,相手の取る行動(戦略)が自分に影響を与えるものでした.授業で説明した言葉を使えば,相手の戦略が自分の利得になんらかの影響を与え,自分の戦略も相手の利得に影響を与えます.この定義によれば,ジャンケンやテニスなどは明らかにゲームですが,1人でテトリスをすることはゲームではありません.
 まず,Game.1として囚人のジレンマを考えました.相手と相談ができない状況(非協力ゲーム)でお互いが自分の利得を増やすことだけを目的として行動すると,両者とも比較的長い懲役をくらってしまいました.
 Game.2も同様に,まず使い途のない戦略(支配される戦略)を消してみます.すると,どんどん選択肢が狭まり,ついには両者とも戦略が1つに定まりました.ただし,このような解法(支配される戦略の逐次消去)が常に使えるとは限りません.
 Game.3では,支配される戦略がないゲームをナッシュ均衡を用いて解きました.ナッシュ均衡の概念はややこしいですが,問題を解くのはそれほど大変ではないはずです.ついでにGame.3,5として,海岸での立地ゲームを考えました.答えはまさにナッシュ均衡そのものです.
 続くGame.4では,それまでの同時に戦略を決定するゲーム(同時手番ゲーム)ではなく,プレイヤーの行動に順番があるゲーム(逐次手番ゲーム)を見ていきました.2つのお店が値下げ合戦を行うゲームを後ろ向き帰納法で解きました.最後に逐次手番ゲームの例として,お金の分配ゲームを紹介しました.これも後ろ向き帰納法で考えられる問題でした.

 ゲーム理論を駆け足で紹介しました.もうちょっと深くやろうとすると,どうしてもややこしい計算が出てくるのですが,基本的な考え方は今日の講義で十分に説明できたと思います.今日学んだような合理的な考え方は現実社会でも応用できるのではないでしょうか?

2007年6月23日土曜日

ミクロ経済学ベイシックⅠ 第10回

 今回は価格メカニズムです.前回までの内容を元に,市場ではいかにして価格,あるいは取引量が決まるかを見ていきました.

【授業の内容】
 まず,ワルラス型価格調整メカニズムです.この特徴は,まず売り手が価格を決めることです.それに合わせて生産量も決まるし,需要量も決まります.その時に,超過需要が発生すれば売り手は価格を上げます.逆に超過供給が発生すれば価格を下げます.いずれにせよ,常識的な需要曲線,供給曲線の元では価格は需要と供給が均衡する点で安定的に定まります.ワルラス型を用いる例として,道路の渋滞とロードプライシングを考察しました.また高速道路の夜間値下げも,このメカニズムで理解できます.
 そのワルラスに対してマーシャルは,「企業はそんなに簡単に生産量を変動できない」と反論しました.マーシャルによれば,まず生産量が決まり,しかる後に価格が決定するのです.売り手が提示する価格と買い手が希望する価格のどちらが高いかによって,超過需要価格(買い手の価格の方が高い)や超過供給価格(売り手の価格の方が高い)が発生します.前者の場合では生産者は生産量を増加しますし,後者では減少します.
 最後に,生産開始から収穫までに時間がかかり,かつ保存が難しい財の価格を説明するクモの巣理論を紹介しました.この2つの特徴がある財は値段の変動が大きいと言われています.実際にキャベツなどの野菜は値動きが激しいですね.

 そろそろテストですが,試験間際になると研究室が混雑しますので,テスト対策は早めにしましょう.

開発経済学 第10回

 前回のレポートは「我々は貧困国に対して何ができるか?」でしたが,それに関連して貧困国への援助について説明しました.

【授業の内容】
 まずは貧困国を援助している組織を次の3つに分類しました.
・国際機関:国連グループ,世銀グループなど
・各国政府:ODAなど
・NGO:国境なき医師団,アムネスティなど

 次に援助の理論について説明しました.まずは貧困国を高成長軌道にのせるための援助資金の額を推計できるTwo-Gapモデルです.国際金融機関でも未だに中心的な役割を果たしているそうですが,イースタリーによってその妥当性の低さが指摘されています.
 続いて,1980年代にさかんに行われた世銀やIMFによる構造調整について説明しました.構造調整とは,市場原理を中心とした経済の自由化を推し進める目的で行われた融資のことです.1980年代では75ヶ国もの国に融資が行われました.しかし,各国の個別の成長段階を無視して画一的な政策を推し進めたために,多くの国では失敗しました.皮肉なことにIMFによる構造調整を受け入れなかった中国やボツワナは成長を果たしています.
 また,援助に関するミクロの視点では,1990年代以降盛んになってきた参加型開発を紹介し,そのメリットとデメリットを説明しました.

 今回の内容については,下記の文献が参考になるはずです.いくつかは課題図書にもなっています.

【参考文献】
J・E・スティグリッツ(2002)『世界を不幸にしたグローバリズムの正体』徳間書店
 ―(2006)『世界に格差をバラ撒いたグローバリズムを正す』徳間書店
J・サックス(2006)『貧困の終焉』早川書房
世界銀行(1993)『東アジアの奇跡』東経
 ―(2005)『世界銀行ガイド』シュプリンガー・フェアラーク東京

2007年6月20日水曜日

総合基礎演習A 第10回

 今回は最後のチーム(チーム四国)に発表してもらいました.また,残った時間で自動車業界での銘柄選びについて討論してもらいました.

【授業の内容】
 今回の3人の発表は,他のチームの発表を他山の石としていろんな工夫が見られましたね.わかりにくい部分は前に出てホワイトボードを使ってみたり,配付資料を用意したりとなかなか感心しました.4,5月はみんなに意見を聞いてもすぐに黙り込んだりしていましたが,きちんと自分の意見を言えるようになりましたね.
 さて発表の内容ですが,社会のニーズ,経営指標(PER),身近な商品の売れ行きなどの点から株価を予想しており,前回のチームのテクニカル中心の発表から一転して,言わばファンダメンタルズを重視した発表でした.それぞれの発表者が,具体的に株を買うことを意識していたように感じられました.

 しかし!自動車業界の分析になると,みんな(男の子ばかり)にとって身近であるためか,これまで学習した内容を無視して個人の好みが優先した意見が多いのが残念でした.せっかく苦労して勉強したんだから,それを実践することをもっと意識しましょうよ.あと,もっと積極的にね.恥ずかしがることなんてないわけですよ….

【課題】
 というわけで,自動車業界の発表は残念ながら僕好みのものではなかったので,やり直しです.レポートの書き方を勉強する意味でも,ちょうどいい機会かもしれません.A4用紙に1枚なので書くこと自体はそれほど大変ではないと思うけど,それまでにしっかり頭を働かせて下さいよ!

経済学A 第11回

 そろそろ前期も終わりが近づいてきましたね.残りの3回,何をやろうか思案中です. 文章の最後に今後の授業で取りあげるテーマについてのアンケートがあります.ぜひ意見を聞かせて下さい.

【授業の内容】
 今回は日本の財政と税について説明しました.税と言っても僕は法律は詳しくないので具体的な税制ではなく,税を考える上での視点を紹介するという抽象的な内容でした.
 まず,日本の財政状況ですが,一般家庭であればとうに破産していてもおかしくありません.しかし,日本という国は少なくともしばらく崩壊する様子はありませんね.なぜでしょうか?日本の財政状況を実感するためには財務省の「財務大臣になって予算を作ろう!」をやってみると良いでしょう.
http://www.mof.go.jp/zaisei/game.html
 今の状況で予算を均衡させるには,相当思い切ったことをしないといけないことがわかりますね.

 次に税金について話しましたが,まず税金を分類してみました.どこに納めるかによって国税と地方税に分かれ,どうやって納めるかによって直接税と間接税の違いがあります.この直接税と間接税の代表として,所得税と消費税を取りあげ,それぞれの税金がどんな性質を持っているのか説明しました.どちらも我々からお金を奪う?という意味ではありがたくないわけですが,所得階層が違えば所得税と消費税が持つ意味も変わってきました.それを考える視点として,公平性と公正性という概念を説明しました.
 皆さんの中には,なぜか「日本は税金の高い国だ!」というイメージが刷り込まれているのではないでしょうか?(マスコミのせいか?)しかし,国民負担率や潜在的国民負担率という指標から見ると,日本はむしろ税金が安い国であるようです.だからといって「日本は税金が安いから良い国だ!」と結論付けるのは安易です.
 最後に大きな政府と小さな政府について説明しました.実はほとんど第3回の講義の復習ですけどね.税金が安い国というのはその見返りも少なく(低福祉),言わば格差が生じやすい国であり,政府がしっかりと面倒を見てくれる(高福祉)国は当然ながら税金もしっかり取られてしまうわけです.皆さんは税金が高い安いで一喜一憂するのではなく,税金の見返りにどんなことをしてくれているか,という収支のバランスでその時の政府を判断するべきです.国としては大きな赤字があるのに選挙前になると「税金を安くしますよ」と甘い声を聞くこともありますが,国の借金はいつかは国民が返済しなければならないことを理解しておきましょう.今税金が安くても将来税金が高くなるなら,まさに朝三暮四です.賢い有権者になりましょう.

【アンケートと告知】
 授業では「社会保険庁の人は忙しくて来てもらえない」と言ったのですが,その後電話があり,なんとか来てもらえることになりました.7/10,つまり最後の講義ですが,この日は年金についての講演+僕の講義となる予定です.
 すると残る2回ですが,今の予定だと「少子化問題」と「開発経済学」についてやろうかなと思っています.どちらも僕の好みなので,皆さんが他に興味があることがあればそれについても考慮しますので,このブログになんでも良いからコメントを書いて下さい.
(例:「金融について知りたい」,「グローバリゼーションに興味がある」など)
 なんでも講義できるわけではありませんが,希望があればなるべく考慮します.なお,無記名で結構です.

2007年6月19日火曜日

経済政策論 第11回

 今回は年金制度についてです.各自で調べた内容を発表してもらいました.

【授業の内容】
 まず,そもそも日本の年金制度はどのような仕組みなのか,説明してもらいました.その内容を箇条書きにすると,
・3階建てである
・職業により年金の種類が異なる
・国民基礎年金は強制的な年金である
・国民基礎年金は,老齢,障害,遺族の3つの年金からなる
・実質的な賦課方式である
ぐらいでしょうか.

 次に年金を支払うメリット・デメリットを挙げてもらいましたが,メリットはたくさんあるものの,デメリットはあまり出ませんでしたね.社会保険庁の広報活動の賜物でしょうか…?デメリットとしては,早く死んだら元が取れないぐらいで,意外と学生は年金については好意的に捉えているようで,世間一般での評価と違うようですね.
 僕から付け加えることとしては,社会保険庁の試算では1987年生まれのモデルケースだと約730万円支払って2960万円受け取ることができるそうですが,さて,この試算通りにもらえるんでしょうか?前提条件が崩れる可能性も考えておくべきでしょう.

 最後に年金を支払う派と支払わない派で討論してもらいましたが,あんまり討論になりませんでしたねぇ.もっと積極的に話さないとね.

【課題】 次週は,関心のあるニュースについて調べ,各自5分程度で発表してもらいます.配布する資料を2限に僕のところに提出して下さい.

経済学Ⅱ 第11回

 今回からは市場の失敗について説明します.というわけで,市場の失敗の例として公共財と外部性の説明をしました.

【授業の内容】
 前回学んだ厚生経済学の第一基本定理からは,競争的な市場で価格と生産量が決定されると社会的余剰は最大になることがわかりました.つまり逆に言えば,競争的な市場が存在しない場合は死荷重が発生してしまうのです.
 今回はまず市場に任せておいても供給されない財である公共財を紹介しました.公共財とは,非競合性非排除性という2つの特徴を持つ財のことであり,NHKの放送や道路などがこれにあたります.まったく反対にこの2つの特徴を持たない財,言い換えれば競合性があり排除性がある財は私的財と呼ばれます.みなさんが買うほとんどの商品は私的財でしょうね.そして公共財でも私的財でもない財,つまり非競合性は持つが非排除性は持たない財,非排除性は持つが非競合性は持たない財,これらはまとめて準公共財と呼ばれます.
 公共財は非排除性があるために民間が供給することは稀です.なぜなら排除性を持たないので,お金を払わない人(フリー・ライダー)に利用させないことができないからです.そのため供給しても採算が取れないので,結果として供給されません.では公共放送や道路は我々に必要ないかと言えばもちろん必要なので,民間の替わりに政府が供給することになります.民間と違って政府は税金という形で強制的に集金できるので採算が取れますしね.
 ちなみにテレビの民放(地上波)は非競合性と非排除性を持つ立派な?公共財です.放送しても視聴者からお金を取ることはできませんが,CMを挟むことによって広告代を得ているので採算が取れるんですね.そういう経済取引があるかないか,という点から言えばテレビ局のお客は我々ではなくスポンサーだとわかりますね.

 さらに残った時間で外部性について説明しました.外部性とはある経済取引の結果,取引に関係ない第三者が受ける何らかの影響のことです.この影響が第三者にとって良い影響であれば外部経済,悪い影響であれば外部不経済と呼びます.また第三者に影響を与える経路が市場を通じたもの(地価の値上がりなど)であれば金銭的外部性と呼び,市場を経由せずそのまま影響を与える場合(騒音など)は技術的外部性と呼ばれます.
 またこの外部性を解決する手段としてピグー税を紹介しました.

2007年6月17日日曜日

ミクロ経済学ベイシックⅠ 第9回

 今回で生産者理論は一旦終わりです.みんなは説明してると飽きるけど,実際に問題を解かすと目が光るね・・・.説明もちゃんと聴きましょう.

【授業の内容】
 前回の復習をするとともに,次の点を確認しました.
・限界費用(の一部)が短期の供給曲線となる.
・限界費用曲線は,平均総費用と平均可変費用のそれぞれ底の部分を通ること.

 なぜ底を通るのかピンと来ないという人もいましたが,論より証拠で以前に配った生産費用の表を例に図を書いてみれば良いでしょう.これに限らず,抽象的な説明でわからなければ,具体的な例で考えてみるのです.
 この2点の説明を終えた後,実際に問題を解いてみました.ちょっと難しい問題もあったんですが完璧に解いた学生もいましたね.授業時間中に説明できなかった問題も含め,答えをHPからダウンロードできるようにしておきます.(近日中)

 その後,生産における短期と長期の違いを説明し,それぞれの総費用曲線と限界費用曲線を説明しました.この長期の限界費用曲線が長期の供給曲線となります.次回からは,この供給曲線と(消費者理論の帰結である)需要曲線を使って話をします.

テストについて
 そうそう,テストは試験期間外の7/13(金)の講義時間中に行います.なお,今回出席した学生の多数決により,テストは持ち込み不可となりました.一切不可です.

2007年6月12日火曜日

基礎総合演習A 第9回

 前回に引き続き,各自のテキストを元に発表してもらいました.

【授業の内容】
 発表した3人はテクニカル分析のチームだったので,うち2人はテクニカル分析についての発表でした.それぞれ上手く使いこなせれば良いんですが.そしてもう1人はバリュー分析なる分析方法についての説明でした.基本的にはファンダメンタル分析と捉えて良いのでしょうが,価値と価格を比べて割安(価格が安い)銘柄を買う,というのがそのポイントのようです.ただし,発表者によると価値の計測が難しすぎて実用には課題が多いようです.
 また発表の流れから,よく知ってる有名企業は買うべきか?避けるべきか?について討論してもらいました.みんなきちんと自分の意見を言えたので僕としては満足です.
 さて,今日は残りの時間で特定の業界についての分析も試みました.多数決により自動車業界になったので,その中で一番のオススメ銘柄を選ぶ,というのが課題になりました.

【課題】
・チーム四国は1人5分で発表する
・各チームで意見を集約し,日本の自動車業界で8月までに上がる株を選ぶ

経済学A 第10回

 今日は独占市場(と完全競争市場)についてです.まずは日本企業の2006年の利潤ランキングを見てもらいました.そこから,儲けてる企業はどんな企業なのか?考えてみました.

【授業の内容】
 今日の内容は,次の3つ.
1.独占市場とは?(⇔完全競争市場とは?)
2.イー・モバイルはなぜ携帯事業に参入するのか?
3.新規参入すると何が起こる?

 まずは日本の携帯電話の歴史を振り返ってみました.1年生は,生まれた時にすでに携帯電話が存在してたんですね・・・.さて,その携帯電話ですが,現在は3社により独占されています(厳密には音声通話に関して).来年にはイー・モバイルが参入するわけですが,皆さんの携帯料金はどうなるんでしょうか?
 まず,独占市場を学ぶ前に完全競争市場について学びました.いくつかの条件を満たした市場は完全競争市場と呼ばれます.この市場では利潤が出ません.授業中に「完全競争市場の例はないか?」と聞きましたが,授業後に「本屋はどうか?」という意見がありました.確かに本屋は,財の同質性は完璧ですし,売り手もたくさんいる,自由な参入が認められている,など条件の多くを満たします.というわけで,良い例ですね.平均的な書店の利益率はどれぐらいなのか,知ってる人がいたら教えて下さい.(本当に利益率が低いのか?)
 さて,このような完全競争市場ですが,新規参入が容易なので,もし既存企業が儲けを出していたら必ず他の企業が参入します.すると価格競争になるので,必ず価格は下がってしまい,結果として利潤も下がってしまいます.利潤がある限り新規参入が続くとすると,その結末はだれも儲けがない状態でしょう.というわけで,完全競争市場はそうでない市場(競争が限定的な市場)と比べると儲けにくいようです.
 では,この独占市場はいかにして生まれるのか?ですが,授業では3つ紹介しました.資源独占,政府による独占,自然独占です.また市場が独占されることは,我々消費者にとっても,また社会全体にとっても望ましいものではないので,独占禁止法により独占状態が起きないような制度が多くの国で作られています.

【おまけ】
 実は独占にまつわる話をいくつか用意してたのですが,話せませんでした.興味がある人は次のキーワードを調べてみて下さい.
・ミッキーマウス延命法(ソニー・ボノ法)
・バイオパイラシー(生物学的海賊行為)

2007年6月11日月曜日

経済政策論 第10回

 今日は前回の課題の通り,各自が気になったニュースについて説明してもらいました.その後,その中から次回のテーマを決定しました.この方式はなかなか良いですね.また使いたいと思います.

【授業の内容】
 出てきたニュースは次の通り,
・環境問題(バイオ燃料)
・夏のボーナス
・長期金利上昇
・帳簿買い取引
・年金
・急速な高齢化
 各自にそれぞれのニュースの問題点を挙げてもらい,1人2票で投票した結果,満場一致で年金問題になりました.金利上昇も面白そうだけどなぁ・・・.

【課題】
・日本の年金制度を調べる
・年金保険料を支払うメリットとデメリット
・保険料を支払うべきか?

経済学Ⅱ 第10回

 今日は余剰分析について説明しました.市場以外からの介入が社会的余剰を下げてしまう様子を確認しました.

【授業の内容】
 まず,理想的な状況として,競争市場で価格と生産量が決まるケースで消費者余剰,生産者余剰,社会的余剰を説明しました.厚生経済学の第一基本定理によると,この場合に社会的余剰が最大になります.
 次にそれが妨げられるケースを見ました.政府による介入の例として,価格統制,税金,数量制限を挙げましたが,前者2つについて具体的な説明を行いました.
 政府が優しいことに「貧しい人にも安くビールを飲ませたい」と考えると,あまり社会にとっては良くないことが起こります.市場で決まるよりも安く供給するよう強制すると,企業は生産量を減少させるし,消費者は需要を増やすので,超過需要が発生します.そのためにビールを飲める人は以前よりも少なくなります.また超過需要のために,誰にビールを売るかも問題となりそうです.実際に戦後直後の価格統制令下では,売り手は価格の安い表の市場では売らず,それよりはるかに相場の高い闇市に商品を流していました.現在も価格統制は公衆浴場の入場料や,工業用アルコールで残っています.広い意味では,公営住宅も価格統制かもしれませんね.なお,価格統制により,社会的余剰は明らかに減ります.つまり価格統制は余剰分析で考えると望ましいことではありません.
 次に,ビールへの課税の影響を確認しました.酒税は従量税です.つまりビールであれば1リットルあたり222円というように,販売量に応じて税金がかかります.(対照的に消費税は従価税,価格の一定割合が税金です)この場合,消費者余剰と生産者余剰に税収を加えたものが社会的余剰でした.このような課税の場合もやっぱり社会的余剰は減ってしまう(死荷重が発生してしまう)ようです.つまり余剰分析で判断すると課税は良くないようですね.しかし,ビールはその性質を考えれば,売れれば売れるほど社会は良くなるというものでもないでしょう.過剰なアルコールの摂取は社会全体にとっても悪影響であり(これを負の外部性と呼びます,今後授業で出てきます),いくらかの規制も必要かも知れません.このケースではビールは課税前より取引量が下がっており,実は社会にとって望ましいの状況なのかも知れません.

2007年6月8日金曜日

ミクロ経済学ベイシックⅠ 第8回

 今日は生産者理論の続きで,メインは損益分岐点と操業停止点だったのですが,復習してたせいで駆け足になってしまいましたね.最近ちょっとみんなの反応が薄くて,どれぐらい理解してるのかわからないので難しいです….

【授業の内容】
 利潤,収入,費用の関係などを確認しました.完全競争市場では価格は市場で決められており,個別の企業は価格を決まったものとして受け取ります(ちなみにそのような企業を価格受容者プライス・テイカーと呼びます).
 決められた価格のもとで,企業は“P=MC”というルールに則り生産量を決定します.なぜP=MCなのか,理解できていますか?ここまでは前回の範囲です.今回はここに新たに2つの変数,平均総費用と平均可変費用を図に書き加えることで,図から様々な情報が読み取れるようになりました.その情報とは,収入,総費用,利潤,可変費用,固定費用です.
 ケース1から3まで価格が変化することで,企業の利潤がプラス(黒字)であったりマイナス(赤字)であったりしました.また赤字の場合でも,生産を続けた方がマシな場合と,生産を止めた方がマシな場合の2つありましたね.
 それらの状況を見分けるポイントが,損益分岐点操業停止点でした.課題(というより復習)プリントを必ずやっておいて下さい.

2007年6月7日木曜日

開発経済学 第8回

 今日はようやく第1回レポートを返却しました.Dがついた人は今後は真剣にやること.同じことしたら単位あげません.その後,マイクロ・ファイナンスを説明しました.

【授業の内容】
 ムハマド・ユヌス氏のグラミン銀行を例にマイクロ・ファイナンスが,それまでの金融とどこが異なるのかを説明しました.
 わずかな資本がないために,高利貸しから借り入れ稼いだお金のほとんどを返済せざるを得ない途上国の女性を例に,マイクロ・ファイナンスが彼女を「貧困の悪循環」から救い出す可能性を説明しました.
 マイクロ・ファイナンスとは,「貧困層や低所得層を対象とする小規模な金融」であり,グラミン銀行は,無担保,最小融資額の小ささ,高い返済率,という特徴を持ちます.また顧客の約97%が女性である点でも,既存の銀行とは異なります.グラミン銀行以前も農村の貧困層向けの金融機関(主に政府系)はありましたが,低利,低返済率などのために持続性を持ち得ませんでした.
 マイクロ・ファイナンスの登場により,貧困層の生活は所得の増加,消費の平準化(リスク耐性),資産形成,政治的発言力,ジェンダーなどの点で改善されたと言われます.
 一方,貧困層の搾取である,最貧困層が排除されている,などの点でマイクロ・ファイナンスが批判されることがあります.私感ながら,マイクロ・ファイナンスは最善のシステムではないかもしれないが,少なくとも登場以前に比べ貧困層の選択肢を増やしている点を考慮すれば,批判するのは見当違いであると思います.批判する時間があれば,マイクロ・ファイナンスより素晴らしいシステムを生み出す時間に充てるべきでしょう.
 授業では触れることができませんでしたが,1997年にグラミン銀行はグラミンテレコムという会社を設立し,携帯事業に参入しました.グラミン銀行で資金を借りて携帯電話を1台手に入れた女性が,安い料金で村民全員に使えるようにし,その使用料でローンを返済する仕組みを作りました.現在ではバングラデシュ国内2000万人以上がその恩恵を受けることができます.(注:多くの村には固定電話がない,あるいは少ないのです)
 ちなみにその他のマイクロ・ファイナンスの機関としては,インドネシアのBRI Unit Desa,BKK,ボリヴィアのソリダリオ銀行,インドのSEWA銀行などもあります.
【参考文献】
岡本真理子他(1999)『マイクロファイナンス読本』明石書店
ムハマド・ユヌス(1998)『ムハマド・ユヌス自伝』早川書房

第1回レポートの評価について
 評価に不満がある場合は,1週間以内にレポートと評価の紙の両方を持って研究室に来ること.

第2回以降のレポートについて
・第2回レポート 提出日6/14 A4用紙3枚以上(図表を除く)
 A:我々は貧困国のために何ができるのか?
 B:第1回レポートのブラッシュ・アップ
 どちらか一方を選び提出すること.
・第3回レポート 提出日7/12 A4用紙1枚以上
7/5の講座を聴いての感想(欠席者は提出不可)
・第4回レポート 提出日7/12 A4用紙3枚以上(図表を除く)
 課題図書から1冊を選び論じること.要約はダメ.

2007年6月5日火曜日

基礎総合演習A 第8回

 今回からはチーム毎に,各自が選んだテキストを元に発表してもらいます.

【授業の内容】
 発表のポイントは2つ.
・どうやって株を買うべきか?
・テキストの内容についての批評
です.特に2つ目はなかなか慣れないので難しいようです.高校までの授業では教科書は絶対であり,それの間違いを探すなんて考えたこともありませんからね.しかし,これは皆さんが大学生になったら一度は受けねばならぬ洗礼だと思います.批判的精神を養うことは大事です.特に社会科学(政治学,法学,経済学,社会学など)では欠かせません!
 なかなか良い批判をした発表もありました.内容的には3人とも光るところのある発表でしたが,やはりまだ聞く人を意識した発表とは言えないようです.聞いていた学生からのコメントでもっとも多かったのは「話が速すぎる」というものでした.3人とも,まだスピードが速いようです.人前だと緊張するので,意図的にゆっくり話しましょう.ややこしい内容なら尚更です.
 今回発表した3人は次回は問題点を改善し,より良い発表をしましょう.来週発表するチームは,今回の発表を土台にしてより質の高い発表を目指して下さい.

【おまけ】
 ゼミ対抗球技大会の代替案を互いに話し合って,早急に結論を出して下さい.

経済学A 第9回

 今日はゲーム理論入門でした.抽象的な世界の話ですので,みなさんはなかなか現実世界から抜け出せずに戸惑っていた様子でした.最初にもう少し詳しく説明するべきだったなぁ,と反省しています.

【授業の内容】
 今日は合計7つのゲームを行いました.
Game.1 囚人のジレンマ
 ゲーム理論ではかなりベタなゲームです.まずシンプルなゲームで,ルールを学びながら合理的な選択の仕方を考えました.非協力ゲームであるために,囚人たちは長い懲役を受けていました.
Game.2 戦略の逐次消去
 ルールは先ほどとまったく同じで,少しややこしくなりました.使い途のない戦略を探し,それをどんどん消していくと,両者の戦略が決まりました.
Game.3 ナッシュ均衡
 戦略の逐次消去では答えが出せない問題をナッシュ均衡という概念で解きました.ナッシュ均衡はややこしい概念ですが,理解できたでしょうか?やや気がかりです.
Game.3.5 ホテリングのゲーム
 ナッシュ均衡の概念を確認するために,海の家立地ゲームを考えました.パッと答えを出す学生もいましたね.なかなか鋭いようです.
Game.4 展開型ゲーム(逐次手番ゲーム
 学生と僕(水ノ上)によるゲームでした.学生が授業をどんな態度で受けるかを観察した僕がテストの難易度で学生に反撃します.もちろん架空の話なので,うるさい学生に対する脅しというつもりは(あまり)ありません.解き方のコツは後に戦略を選ぶ人の方から考えていくんでしたね(後ろ向き帰納法).
Game.5 最後通牒ゲーム
 1万円を学生と僕(水ノ上)とで分けるこのゲーム,意外とみなさん優しいですね.しかし,ゲームという抽象的な世界にきっちりとのめり込めていない証拠でもあります.もっと合理的に容赦なく戦略を決定しましょう.しかし,これも完璧な答えが学生からでましたね.素晴らしい.
Game.6 おまけ
 みなさんの周りにいる同級生が合理的かどうか?を判断するこのテスト.ルールは0~100までの数字を1つ選んで出席カードの裏に書きます.みんなが書いた数字の平均に0.8を掛けた数字にもっとも近い数字を書いた人に点数をあげます.みんなが合理的に判断するのであれば,0を書くのがもっとも合理的ですが,人間はそれほど合理的ではありませんね.そしてルールをちゃんと理解していない人もいるでしょうからね.まだ計算してませんが,おそらく30ぐらいになるのかなぁ?という気がします.

【おまけ】
 参考文献に挙げた,渡辺隆裕著「図解雑学ゲーム理論」は数式も出てこないし,初学者にも読みやすいと思います.図書館にあるので関心のある方はどうぞ.

経済政策論 第9回

 今回は仮想通貨の続きですが,実際には電子マネーのみを取り扱いました.かなりの難問であるにもかかわらず,みんながんばって予習してましたね.僕も予習が大変でした.

【授業の内容】
 軽く復習した後,まず架空通貨の流通が現実経済に与える影響,特に金融市場への影響について発表してもらいました.
 様々な意見がでましたがまとめると,電子マネーが発行されるとマネーサプライが増加する.また同時に決済に現金が不必要となるため貨幣需要が下がる.つまり貨幣の供給が増える一方で需要は下がるために,利子率が下がり金融緩和と同じ効果を持つ,ということになりました.
 また電子マネーの普及についての是非については,反対派が多いようです.といっても,積極的な反対派というより,「なくても困らない」という消極的な反対意見が大勢を占めました.また電子マネーは「そもそも怪しい」という意見もありました.つまり,お金ではあるが,その価値を保障するのは民間企業であり,信頼に足るのか?という意見でした.
 逆に賛成派の意見としては,現金を扱わないことでセキュリティーの効果がある,また十分に普及すれば(改札が無人になるなど),将来的にはコスト削減効果もあるのでは,という意見がありました.
 僕からのコメントとしては,せっかく金融市場への影響を調べたのだから,マネーサプライのコントロールについても言及して欲しい,というものでした.いずれにせよ,かなりの難問でしたね.僕も専門家の先生に伺ったり予習をしたのですが,問題山積という感じでした.

【課題】
 次週は,関心のあるニュースについて調べ,各自5分程度で発表してもらいます.新聞などを配布する場合は2限に僕のところに提出して下さい.

経済学Ⅱ 第9回

 今回は価格メカニズムについて説明しました.これまで,消費者理論から需要曲線を,生産者理論から供給曲線を導き出しました.その需要と供給を使って,価格が決定される仕組みを学びました.

【授業の内容】
 3つの価格決定メカニズムを説明しました.
・ワルラス型メカニズム
 これはまず価格が決定され,その価格の元での需要量と供給量が決まります.この際に需要の方が多ければ超過需要が,供給の方が多ければ超過供給が発生します.超過需要(売り切れ)が発生すると企業は価格を上げます.逆に超過供給(売れ残り)が発生すると価格を下げます.
・マーシャル型メカニズム
 一方,マーシャル型はまず生産量が決まると考えます.その後,供給価格と需要価格が提示されます.供給価格の方が高ければ(超過供給価格)企業は生産量を減らします.逆に,需要価格の方が高ければ(超過需要価格)企業は生産量を増加させます.
 ワルラス型であれ,マーシャル型であれ,右下がりの需要曲線,右上がりの供給曲線の元では,最終的には需要と供給が一致する点(均衡点)で,価格や取引量が決定されます.
・クモの巣理論
 最後に,生鮮食料品のように値動きが激しい財の価格決定を説明するものとして,クモの巣理論を説明しました.クモの巣理論では,価格を見てどれだけ生産するかを計画してから,実際に生産されるまでに発生するタイムラグを考慮しています.そのタイムラグのために,価格が激しく変動します.また需要曲線と供給曲線の微妙な形状によっては,むちゃくちゃな価格がつく場合もありました.

2007年6月1日金曜日

ミクロ経済学ベイシック 第7回

 ミニテストを返却後,生産者理論について講義しました.テストは意外と悪かったですねぇ.ちゃんと講義を聴いてればほぼ解けると思ったんだけどなぁ.

【授業の内容】
 今日はまず生産者理論の前提条件となる完全競争市場とは何かを説明しました.5つの条件から成っていましたね.今後,説明はすべて完全競争市場の話です.
 次に生産者である企業の目的や生産関数を説明しました.今日出てきた用語は以下の通り.すべて理解していますか?
・限界生産力
・利潤
・収入
・総費用
・固定費用
・可変費用
・限界費用
・限界利潤
 これらを配布したプリントを使って理解しました.授業の最後に駆け足で,限界費用と価格の関係について説明したんだけど,説明不足でしょうから来週もう一度やります.

開発経済学 第8回

 前回の続きとして「出生の決定」の説明をした後,「貧困と教育」について説明しました.
 途中でトラブルがありましたが,指摘されるまで全然気づきませんでした….もうないと思うけど,次にあったら早めに対処するので,気づいたら教えて下さい(難しいか).

【授業の内容】
 前回のマルサス,ライベンシュタインに続き,ベッカーとイースタリンの説について説明しました.
 ベッカーは教育の質と量はトレードオフする,つまり教育の質を重視すれば量は減らざるを得ず,量を重視すれば質は下がってしまうと指摘しました.具体的な数値で説明すれば,そんなに難しい話でもありませんでしたね.
 ベッカーの説は完全に経済学の立場(新古典派)に立脚していますが,イースタリンは経済状況のみならず社会的な要因により出生が決定されると考えました.代表的な仮説が相対所得仮説です.これは,夫婦が経験してきた生活水準と今の生活水準の格差により出生を決定するというものでした.
 この他,補足としてクズネッツの才能原則や,ボズラップの人口圧力を紹介し,人口増加のメリットを説明したり,人口政策,途上国に対する誤解なども説明しました.

 その後,ようやく本題である貧困と教育を説明しました.開発経済学において教育が重要である理由,それは教育を通じた貧困の連鎖の存在でした.貧困の連鎖をどこかで断ち切らなければ貧困は遺伝子のように親から子,孫へと引き継がれてしまいます.
 そもそも親はなぜ子供に教育を受けさせるのか,その理由を利己的動機,利他的動機,義務の3つに分類しました.途上国でも初等教育は多くの国で義務化されています.しかし,建前は義務化ですがそれが実際に機能しているかは別の話です.義務があってもそれにインセンティブがなければなかなか人は動かないものです.そのため,義務を課すよりも「子供に教育を受けさせるとお得ですよ!」と思わせなければなりません.あるいは,子供を学校に行かせたいけど不可能なのであれば就学を妨げる要因を取り除かなければなりません.というわけで,バングラデシュのFFEの例を説明しました.

【レポートについて】
決定済みの課題は次の2つ

第2回レポート 提出期限:6/14
 A,Bのどちらかを選択,どちらもA4用紙3枚以上(図表は除いた本文のみ).
A:「我々は世界の貧困のために何ができるのか?」
 すでにある様々な貧困撲滅への取り組みを紹介し,オリジナルの貧困対策を提案,その効果について考察,というのが1つのひな形になるかもしれません.
B:「第1回レポートのブラッシュ・アップ」
 前回提出したレポートにコメントをつけて返却するので,改善して下さい.

第4(?)回レポート 提出期限:7/12
 課題図書を読んでレポートを書くこと(中身は自由).もちろん感想文や要約を求めているわけではありません.こちらもA4用紙3枚以上(図表は除いた本文のみ).
 課題図書一覧は水ノ上のHPより入手可能.
http://wmt.bunri-u.ac.jp/mizunoue/filedl.html

 質問があればコメントをどうぞ.