2008年10月30日木曜日

経済学Ⅰ 第8回

 今日は金融政策の続きを説明しました.

【授業の内容】
 まず前回の復習です.小テストの結果が非常に悪かったです.集中して聴いていればおそらくそれほど難しくないと思うんだけどね.

 続いて,信用創造について説明しました.先々週に現金通貨の量と貨幣供給量が大きく異なることを確認しましたが,その理由は信用創造で説明できます.現金を基に貨幣が膨れあがっていく様子とその計算方法を説明しました.

 ここで,これまでのまとめとして,今日の日経新聞1面(追加経済対策)の記事を基に,これまで学んだマクロ経済学の知識と,現実経済をリンクさせました.今日の記事では定額減税の代わりに2兆円の給付金を支給する,政策金利を下げる,短期市場に資金投入,住宅ローン減税,など様々な政策が列挙されていました.それらが持つ意味をこれまで使ってきた,経済全体の図と重ね合わせて説明しました.
 また政策金利に関連して,無担保コール翌日物というものも説明しました.

 続いて個別の企業に貸し出す際の利子率の決定要因を説明しました.どのような企業が低い金利で借りられるか,そうではないかは,あなたがどんな友人に,どんな条件ならお金を貸しても良いかで考えればわかりましたね.
 利子率というのはお金のレンタル代だと考えることで,ちょっと身近になったのではないでしょうか.

 最後に流動性の罠についても少しだけ説明をしました.

 金融は,学生である皆さんにとってあんまり身近な話題ではないので,なかなかイメージしずらいテーマかもしれませんね.

総合政策演習B1② 第6回

 今回は価格メカニズムと余剰分析を説明しました.

【授業の内容】
 価格メカニズムについては,ミクロですでに説明済みなので簡単に復習だけです.ワルラス型,マーシャル型,クモの巣理論ばっかりなので,非常に簡単ですね.

 続いて余剰分析ですが,こちらも基礎的なものはミクロですでにやっています.というわけで,今回はこれまでもちょこちょこ出てきていた企業への課税をまとめて説明しました.一括固定税,従量税,従価税の3つです.それぞれどのように定式化するのか,図ではどのように表現されるか,生産量や価格にどのような影響が出るか(出ないのか)を比較しました.これでテキストの問題に取り組めるはずです.次回は解説が必要な問題を挙げてもらい,解説する予定です.

基礎総合演習B 第6回

 今回も株価の分析でした.

【授業の内容】
 今回のチームが採り上げたのは自動車のスズキでした.発表したチームの最大の疑問は,「スズキは売上も増えており,経営に問題はなさそうなのに,どうして株価がこんなに下がっているのだろう?」ということでした.
 日経平均との比較や,原油価格,サブプライムローンなど,様々な要因について説明してくれましたが,唯一抜けていたのは,為替相場の影響です.スズキのような国際的な企業,しかも日本で生産して海外に輸出するメーカーの経営にとって,為替相場は重要な要因です.

 次週のチームは資生堂について調べてくれるようです.

経済学A 第6回

 今回は資産運用のための基礎知識を説明しました.

【授業の内容】
 まず,利息の計算(複利計算)を確認した後,現在価値(現在割引価値)という概念を説明しました.現在の100万円は銀行に預けておけば,1年後にはわずかかもしれませんが増えています.例えばそれを101万円とすれば,現在の100万円は1年後の101万円は同じ価値と言えそうです.現在のお金を将来の価値に換算すると増えるんですね.
 さて,では逆に将来のお金は今の価値に直すといくらなのか,という考え方が現在価値です.時間が経てばお金が増えるのであれば,将来のお金を現在の価値に直せば(時間をさかのぼれば)お金は少し減るはずです.
 この考え方は株式について学ぶ際に,株価の分析方法の1つであるファンダメンタル分析を理解する上で必要です.

 続いて,期待値とリスクの説明をしました.期待値とは,(まだ起きていない出来事について)確率的にはどのような結果になるかを計算したものです.授業では実際に架空の宝くじの期待値を計算しました.一方,リスクとは,世間で用いられているような「危険度」のことではなく,「結果のばらつき(分散)」のことです.心理学科の学生はパッと理解できたのではないでしょうか.
 資産運用には様々な方法(金融商品:株,預金,外貨預金,国債などなど)がありますが,それらはリスクとリターンで比較することができます.ここでいうリターンとは,期待値のことです.

 さて,下準備が整ったところで株の話に入りましたが,まず「人々はなぜ株を買うのか?」を考えてもらいました.「安く買って高く売るためだ!」(これをキャピタルゲインと言います)という人もいますが,将来高くなる,あるいは売買されるには株式に何らかの価値があるのではないでしょうか.
 皆さんに聞いてみると,「配当がもらえる」(こちらはインカムゲインと呼ばれます)という意見がありました.そうです.本来株式とは,出資する(企業にお金を出すこと)代わりに,利益が出た場合に配当が受け取れる権利を示しているものなのです.

 最後にちょっとだけ株式の分析方法を説明しました.ファンダメンタル分析とテクニカル分析です.それぞれよく「株式入門」て感じの本に出てきます.テクニカル分析が好きな人に言わせればそれなりに根拠があるのかもしれませんが,テクニカル分析がこれだけ流行っている最大の理由は「とっつきやすいから」だと僕個人は思っています.

 アンケートの結果,来週も株の話をすることにしました.

2008年10月27日月曜日

ミクロ経済学ベイシックⅡ 第7回

 今日は寡占と独占的競争でした.

【授業の内容】
 寡占では,売り手が少数である場合の企業の行動を分析しました.同質的な財を少数の企業が生産している場合,しばしば次のことが起こります.

・ある企業が値上げしたとき
 この場合,ライバル企業たちは値上げをせず,これまで通りの価格で販売します.その結果,値上げした企業の財に対する需要は急激に減少することになります.
・ある企業が値下げをしたとき
 対称的に,この場合,ライバル企業たちは値下げに追随します.なぜなら,値下げしなければ急激に売上が減ってしまうからです.結果,すべての企業が値下げしたため,最初に値下げした企業の売上はさほど増えません.

 このように値上げと値下げに対してライバル企業は非対称的な動きをします.そのため,ある企業の個別需要曲線は現在の価格を境にして,屈折した直線となります.また,そのため需要曲線から導かれる限界収入は,2段階に折れた形になります.
 この限界収入の形状から,このような寡占市場では,わずかに限界費用が変化しても,それが生産量や価格に反映されないことがあります.またそれは現実の経済を上手く反映しているように思えます.

 後半は,独占的競争についての説明です.独占的競争では,売り手が多数存在し,しかも自由に参入・退出できる市場において,個々の企業が利潤を得るためにどのような工夫をするかが理解できます.
 売り手が多数,しかも参入が可能である場合,競争が激しく利潤は得られにくいでしょう.そのため,企業は一時的にでも独占状態を作り出し,利潤を得ようとします.その方法が財の差別化です.差別化された財は,講義でも例に挙げたファッション業界以外にも,様々な市場で見て取れます.例えば清涼飲料水に小さなノベルティーグッズがオマケとして付いているのはよく見かけますし,女性用のファッション誌もオマケで差を付けているそうです.
 しかしこのような差別化が功を奏すのは,短期だけです.その企業が差別化で儲けているとライバル企業が嗅ぎ付ければ,ライバルも似たような差別化をしてくるでしょう.そのため,短期的には利潤が出ますが,長期的にはライバルの参入により,徐々に個別企業の財に対する需要は少なくなり,最終的には利潤は完全競争市場と同じく,まったく無くなってしまうはずです.

 最後に,これまで見てきた,独占市場の4形態(完全独占,複占,寡占,独占的競争)と完全競争市場を様々な点から比較,整理しました.それでも時間が余ってしまいましたが….

2008年10月26日日曜日

経済学Ⅰ 第7回

 今回は前回に引き続き金融政策です.

【授業の内容】
 今回は具体的に中央銀行が,何を目的として,どのような手法で金融政策を行うのかを説明しました.
 簡単に言うと,貨幣の供給量を増加・減少させることで,物価の安定や景気の安定,さらには金融システムの安定化を狙います.

 ポイントは,どうやって貨幣供給量を調整するかです.授業では3つの方法を説明しました.
1.公定歩合
 まず,公定歩合の操作があります.公定歩合とは,市中銀行が中央銀行に預け入れ,借り入れする際の利子率です.
 公定歩合が下がれば,市中銀行は有利な条件で借り入れができるので,貨幣供給量は増加します.対して,公定歩合が上がれば,市中銀行は借り入れしにくくなります.

2.公開市場操作
 公開市場操作とは,中央銀行が金融機関に国債などを売る(売りオペ),国債などを買い入れる(買いオペ)の総称です.
 売りオペをすれば,貨幣は市中銀行から中央銀行へと流れるために,貨幣供給量は下がります.買いオペはその反対です.

3.預金準備率
 預金準備率とは,市中銀行が顧客からお金を預かった場合,その一定割合を日銀に預けなければならないというものです.預金の規模,種類によりその割合は異なりますが,大体1%ぐらいです.
 この準備率が上がれば,当然ながら貨幣供給量は下がりますし,下がれば逆のことが起きます.

 さて,貨幣供給量が増減すると何が起こるのでしょう.以後は貨幣供給量が増えたとして考えます.減った場合は逆のことが起こるだけなので省略します.
 まず,貨幣供給量が増えると,物価が上がるはずです.民間に貨幣が潤沢に流通しているので,貨幣の価値が下がる,言い換えればモノの値段が上がるからです.
 続いて,貨幣が豊富に流通しているため,企業はお金を有利な条件で借り入れることができます.有利な条件とは低い利子率ということです.利子率が下がれば,投資が増えるという関係は,以前に学んだとおりです.結果,景気は良くなるはずです.

 小テストの出来は余り良くありませんでした.次回,復習しますので確認しましょう.

基礎総合演習B1② 第5回

 今回は前回の続き,さらに寡占,独占的競争について説明しました.

【授業の内容】
 まず前回の複占で唯一やりのこした共謀について説明しました.両企業がそれぞれの利潤の合計を最大化するように行動します.完全独占に近いですね.

 続いて,寡占を説明しました.寡占は売り手が少数の場合です.特徴はある企業が値上げをしても他の企業は追随してこないので,値上げした企業は売上が激減するでしょう.もちろん利潤も悪化するはずです.値上げした企業の1人負けになります.
 対して,値下げをした場合にはライバル企業は追随してくるため,最初に値下げをした企業の売上は思ったほど増えません.他の企業も値下げをしたので巻き添えを食らってどこも利潤は増えないはずです.
 このように値上げしたときと,値下げしたときのライバル企業の動きが非対称になっています.ここから,個別企業の需要曲線が屈折したものになります.またそこから,限界収入も変わった形をしたものになります.さらに,そのため,限界費用が少々変動しても生産量,価格共に変動しづらいという特徴が出てきます.

 最後に独占的競争ですが,これは売り手は多数いるが,財の差別化を行うことで一時的に独占状態を作り出せるというものです.そのため,短期的には利潤を出せますが,長期的にはライバルの参入により利潤は0になります.

基礎総合演習B 第5回

 今回はベスト電器の過去1年間の株価の動きを説明してもらいました.

【授業の内容】
 株価に動きがあった裏には何かしら,市場を動かす材料があったはずです.今回はその原因を探ってもらいました.
 値上がり,値下がり,それぞれの理由を買収や新規開店といったニュース,季節など様々な要因から説明してもらいました.聞いていた人たちも特に疑いを持たなかったようですが,この授業の大事なテーマは「自分の頭で考える」ことです.人の言うことを一々疑っていきましょう.
 実際,今回の発表は確かにそれらしく聞こえましたが,実際には株価の変動のほとんどは日経平均の動きと連動していることを指摘しました.このように,「それっぽく聞こえるけど,本当はどうなんだろうか?」という疑いを忘れないようにしましょうね.

 また,今回は効率的市場仮説というものを説明しました.この説は株価の動きを理解するために知っておくべきです.今後も出てくると思いますよ.

 今回の発表も良かったけれど,次のチームは今回の発表を基に,さらによい発表にしてください.

経済学A 第5回

 今回は年金です.

【授業の内容】
 これまでに物価と実質値,名目値について説明してきました.今回はそれらの知識を活かして,年金の仕組みについて理解しました.
 
 まず「社会保障とは何か?」からスタートしました.年金は社会保障制度の一環です.社会保障とは,個々人に不幸が降りかかった場合,あるいは自立した生活が困難になった場合,社会全体で助け合おうという考えが社会保障です.年金は,誰しも避けられない加齢により収入が得られなくなったとき,働ける人たちが拠出するお金で生活を助けようというものです.年金以外にも,失業保険,健康保険,労働災害保険,障害者保険,介護保険,生活保護,児童福祉など様々な社会保障制度が存在します.
 社会保障は保険的方法扶助的方法に分類できます.前者は受益者負担,つまり保険料を支払った人のみ救われるもので,上記の例のうち,~保険というのがそれです.年金も年金保険制度です.一方,生活保護や児童福祉は保険料の支払いが給付の条件にはなりません.これらは扶助的方法と呼ばれます.

 さて,公的年金保険制度ですが,少子高齢化と絡めてよく話題に上ります.その理由は,年金制度が事実上,賦課(ふか)方式であるためです.授業では賦課方式と積立方式の違い,そしてそれぞれのメリットとデメリットを紹介しました.なぜ少子高齢化の影響を受けない積立方式ではないかというと,長期間ではわずかなインフレですら積み立てたお金に非常に大きな影響を与えてしまうからです.
 続いて,年金の具体的な話へと移ります.まずはしばしば,2階建てと呼ばれるその仕組みからです.国民基礎年金と呼ばれる1F部分はみんな共通ですが,2F部分は職業により加入できる年金が異なります. 
 さらに具体的な年金制度の話ですが,まぁこの辺は省略します.レジュメを読めばわかる話なので.僕はみなさんに「年金保険料を払え!」とか「~払うな!」ということは言いません.長寿の家系で長生きできると思えば入った方が合理的とは思いますが.

 僕がみなさんに唯一オススメするのは,「学生の間,年金保険料を納めないのなら,とりあえず学生納付特例制度を申請しておけ!」というだけことです. 
 なぜなら公的年金制度は皆さんがイメージする老齢年金以外にも,障害年金や遺族基礎年金といった年金も含んでいるからです.学生時代に部活,あるいは交通事故で障害を負ったとしても,もし年金を支払っておらず,かつ特例制度も申請していない場合は,障害年金を受け取ることができません.
 働きだしたら自分で考えて払うかどうか決めれば良いですが,取りあえず在学中は,この申請だけは出しておきましょう.

ミクロ経済学ベイシックⅡ 第6回

 今回は独占市場の中でも,売り手が2社のみであるケース,複占について説明しました.

【授業の内容】
 前回の完全独占市場では,売り手は1社のみでした.そのため,自分の利潤が最大になるように生産量を決めれば良いだけでした.
 今回の複占ではライバル企業が存在します.そのため,自社の生産量だけを考えていては利潤を最大化できません.ライバルがどのように行動をするのか,またそれが自社の利潤にどのように影響するのかを考えなければならないのです.
 という話をすると,多くの人はゲーム理論を思い出すでしょう.その通り,今回は敵対する2社がそれぞれ利潤を最大にするように生産量を決定する複占というゲームにおいて,ナッシュ均衡を導き出す作業を行いました.

 まず,ライバルの生産量は決まっているものとしておいておきます.その条件の下で,自社の利潤が最大になるように,つまりMR=MCとなるように生産量を決めます.その式から,ライバルが生産量を決めれば,それに対応してどれだけ生産すれば良いかがわかります(これを最適反応と呼びました).
 互いの最適反応がわかれば,そこからナッシュ均衡が導かれます.

 計算が複雑だと思ったかもしれませんが,まぁワンパターンなので,配った練習用の問題で復習すれば答えはすぐに出せるようになると思います.しかし,その裏にある意味はなかなか深いので,考えれば考えるほど理解は深まると思います.

経済数学入門 第6回

 今回は微分についてでした.

【授業の内容】
 以前に2次関数のグラフを説明しましたが,今回の微分を利用すれば,計算ミスも少なく速く頂点を導くことができます.

 微分の厳密な意味や導出方法を理解するには少々時間がかかりますが,この講義では使い方を中心に説明します.とにかく微分という作業をすることで,元の関数の傾きを導き出すことができます.微分の計算自体は簡単なので,ちょっと練習すれば大丈夫ですよね.
 中間テストでもっとも重要になってくるのが,この微分の使い方ですし,微分は2年生以降の経済学で非常によく使われます.そのため,微分の計算とその意味は必ず理解してもらう必要があります.

 次回の経済数学入門の講義では,課題を提出してもらいます.

【お知らせ】
 これまでの課題の解答をHPに掲載してあります.そのうち消すので,確認しておきましょう.

2008年10月16日木曜日

経済学Ⅰ 第6回

 今回から金融です.

【授業の内容】
 まず基礎として,「お金って何か?」という当たり前のようなことから始めました.
 普通に生きていると,「お金とはお札やコインのことじゃないか,それ以外はお金のはずはないだろ!」と思うかもしれません.しかし,実際にはそのような現金通貨は現在貨幣だと思われているもののわずか7%程度でしかないようです.

 つい数ヶ月前まで,お金と言えばマネーサプライであり,代表的なものはM2+CDだったのですが,現在は貨幣の定義として,マネーストックという概念が用いられています.
 貨幣とは「これが貨幣だ!」ときっちり区別できるものではなく,「貨幣らしさ」をどこまで認めるかでその範囲が変わってくるあやふやなものです.どこまでを貨幣として認めるかを定義するモノとして,今日はM3というものを説明しました.
 まず現金通貨普通預金であるM1があります.これはほとんどの人が貨幣として納得できるものでしょう.現金が貨幣であるのは自明として,普通預金もすぐ引き出して貨幣として使えるので,貨幣に非常に近い性格を持っています.
 M3とはこれらの現金通貨,預金通貨に準通貨とCDを加えたものです.それらはM1ほどの「貨幣らしさ」はないけれど,「まぁ貨幣として認めても問題ないだろう」というものです.M3はM1より少し「貨幣らしさ」の基準を甘くしたものと言って良いでしょう.

 この貨幣の量(マネーストック)を調整することで,物価や景気の安定を図るものが金融政策であり,それを実施するプレイヤーは中央銀行(日本では日銀)です.
 後半は,なぜマネーストックを増減すると,景気あるいは物価に影響があるのかを簡単に説明しました.

基礎総合演習B 第4回

 今回も株の仕組みについていろいろ考えました.

【授業の内容】
 株を買い始めた翌日に,歴史的な大暴落が起きましたね.しかしこれはチャンスであるかもしれません.

 今回は,株の値動きの原因を知るために,ヤマダ電機の過去1年の値動きを示したチャート図を見て,値上がり,値下がりが何によって発生したかをチーム毎に推理しました.
 あるチームはヤマダ電機のHPを,あるチームは日経新聞の過去の記事といった具合に,それぞれが独自の推理をしていました.一部わからないものもありましたが,調べてみると結構原因がわかるものですね.
 ヤマダ電機について調べてみましたが,それで終わりではなく,この具体的な経験から,より一般的な法則性を導き出すのが学問です.皆さんも今回の推理から,「ひょっとして○×という時には△□が起きるのではないか?」という仮説を導いてみましょう.そしてその仮説が他の企業でも,他の時期でも成り立つのか検証する.こうしていけば株価の予測も立派な学問になるでしょうね.

経済学A 第4回

 今回は実質値と名目値でした.

【授業の内容】
 実質値名目値の違いは,言われてみれば当たり前かもしれませんが,普段なかなか意識することがありませんね.

 まず,下準備として物価の説明をしました.2,3年前までは物価の話をしても,学生には伝わりにくかったのですが,最近は物価上昇の実感があるでしょうから理解しやすいと思います.
 物価の指標として,消費者物価指数(CPI),企業物価指数,GDPデフレーターを紹介しました.CPIについては単純化したものを実際に計算してみましたね.
 さて,物価は本当に変動しているのかは短期間ではわかりにくいですが,10年単位だと結構変化しているものです.例えば毎年わずか2%上昇しても,およそ35年ぐらいで物価は2倍になります.このように物価は,普段はあまり違いがわからないけど気がついたら随分変わっているものです.というわけで,具体的に昔のモノの値段を紹介しました.両親や祖父母に聞いてみるとおもしろいと思いますよ.

 さて,物価はどうして変動するのでしょう.本来は金融政策の影響もありますが,それはまた後ほど説明するものとして,短期間の物価変動の原因をDemand Pullのものと,Cost Pushによるものに分けました.

 後半は,この物価の変動を基に,名目所得と実質所得,名目GDPと実質GDPをそれぞれ確認しました.所得に関しては,我々はついつい名目所得に目を奪われがちですが,本当の豊かさを理解する上では実質所得が重要になることは言うまでもありません.

ミクロ経済学ベイシックⅡ 第5回

 今回も完全独占です.

【授業の内容】
 前回,完全独占市場における企業の行動はある程度説明したので,今日は応用として,完全独占市場と完全競争市場の比較,完全独占により発生する死荷重,課税の効果などを説明しました.

 完全競争市場では,企業はP=MCとなるように行動しました.完全競争市場では個別の企業に価格を決定する力はなく,市場で決まった価格を受け入れるしかありません.結果,生産量は多く,価格は低くなり,利潤はなくなります.
 対して完全独占市場では,企業は価格の決定権を持っています.自分の利潤が最大になるように生産量や価格を決めることができます.その行動基準は,MR=MCとなるように生産量を決めるというものでした.
 
 完全競争市場と比較して,完全独占市場では過小な生産になり,価格もつり上げられるため,社会的余剰は小さくなります.完全独占は望ましいものではありません.現実の世界でも独占市場に対して独占禁止法(通称)による規制があります.
 今回はこのような企業に対して,生産量1単位あたりいくらの課税を行う従量税を課し,その影響を確認しました.
 ちなみに実際に存在する従量税の例としては,タバコ税,酒税,揮発油税などがあります.
 量に課税する従量税とは対称的に,消費税などは量ではなく価格に対して課税しています.このような税は従価税と呼ばれます.

 今日の例題は復習し,またテスト前には必ず改めて解いておきましょう.

経済数学入門 第5回

 今回は対数でした.前回の指数が理解できていないと難しいでしょうね.

【授業の内容】
 指数に比べ,対数は馴染みがないので難しいと思ったかもしれませんね.しかし,わずか4つの法則を覚えるだけです.対数は極めて大きな数をグラフに描くときに用いられることもあります.

 今回も提出すべき課題はありません.来週は微分です.経済学を学ぶ上で必須です.

【中間テストについて】
 11月中旬に中間テストを行います.

2008年10月12日日曜日

総合政策演習 第5回

 今回もテスト&解説です.今回で僕の担当は終わりです.次回からは橋本先生が担当されます.

 僕は3年生のほとんどとは講義を通じて会うことはないので,就活については口うるさく言ってきたと思います.これからほぼ半年で本当に多くのことが決まってしまうので,「なんでもっと本気で就活しなかったんだろう?」と後悔することの無いよう,積極的にがんばってください.やってみると色んな人との出会いもあるし,結構楽しいものでもありますよ.さらに,早く内々定を取れば来年は非常に楽しい1年になりますしね.

 というわけで,僕は皆さんとおそらく講義で会うことはほぼ無いでしょうが,個人的には相談に乗りますので,研究室にでも来てください.

経済学Ⅰ 第5回

 今回は失業,そして労働市場についてです.

【授業の内容】
 まず現在の失業の状況と,失業者(と完全失業率)の定義から説明しました.失業者の定義を知らなければ,現在(2008/8)の失業率4.2%は「結構低いじゃないか」と思うかもしれません.実際に先進国間で比較すれば低い方ですしね.
 ただし,失業者と認定されるには結構厳しい条件があります.授業では,次の4者のうち,失業者はどれかを考えてもらいました.
1.それまで正社員として働いていたが,出産を機に退社した専業主婦
2.バイトをしていない学生
3.就職活動をしているが,現在は生活費を稼ぐためバイトをしている人
4.就活をしてみたが,思ったより厳しくて諦めてしまったニート

 「1.2.は失業者じゃなさそうだな,3.4.は失業者かな?」という人が多かったと思いますが,実際には全員失業者ではありません.失業者とみなされるには,就業を希望し,就業が可能であって,求職活動をしており,なおかつまったく働いていない,という条件を満たさなければなりません.

 さて,この失業ですが,経済学的にはどう捉えるのか,古典派とケインズ派の立場から説明しました.市場を信頼する古典派からすると,失業が発生すると賃金が下がるので失業は解消されるはずで,実際に失業している人は自発的失業だ,と考えます.一方のケインズ派は市場を信頼していません.賃金に関しても下方硬直性という性質があるため,市場に任せておいても失業は解消されないのです.

 後半はこの賃金の下方硬直性が発生する理由を説明しました.その理由として次の4つを挙げました.
1.労働組合の存在
2.相対賃金仮説
3.効率賃金仮説
4.インサイダー・アウトサイダー仮説

 では労働者の賃金は下がってないのか,というとこれまた難しい問題です.正社員の賃金だけを見れば下がっていないかもしれませんが,近年労働者に占める正社員の割合はどんどん下がっており,その代わりにパート・フリーター,契約社員,派遣社員といった非正規労働者が増え続けているからです.
 今回は配付資料で正規労働者と各種の非正規労働者の賃金の分布を確認しましたが,非正規労働者の賃金の低さには驚いたのではないでしょうか?ワーキングプアという言葉が流行ったのもここ最近のことですね.

総合政策演習B1② 第4回

 今回は複占の続きです.複占は解法が4つもあるので覚えることが多くて大変でしょうね.

【授業の内容】
 まず小テストを行いました.今回は複占におけるクールノー均衡を求める問題でした.ちょっと時間がかかりすぎでしたね.

 前回はクールノー均衡,今回はベルトラン均衡とシュタッケルベルグ均衡です.ベルトラン均衡は価格を変数としたナッシュ均衡です.シュタッケルベルグ均衡の考え方は逐次手番ゲームにおける後ろ向き帰納法そのものですね.

 ベルトラン均衡でも(クールノー均衡と同様),まずMR=MCという式を作り出します.ただし,クールノー均衡との違いは,クールノー均衡は,MR,MCともに量で表現して,結果,最適な生産量が導出されます.
 一方,ベルトラン均衡ではMR,MCをそれぞれ価格で表現します.それにより,最適な価格が導出されます.
 つまり,クールノー均衡は生産量を戦略として(生産量を調整して)利潤を最大化するゲームであり,その帰結として価格も自然と決まります.対して,ベルトラン均衡は価格を戦略として(価格を調整して)利潤を最大化するゲームであり,最適な価格が得られれば,それに対応する生産量も導くことができます.

 シュタッケルベルグ均衡は,クールノー均衡と同様,生産量を戦略として利潤を最大化するゲームです.クールノー均衡との違いは,クールノーが同時手番であるのに対して,シュタッケルベルグは逐次手番です.
 つまり,時間の流れとしては,ある企業(A)が最初に生産量を決定し,それを見てライバル企業(B)が自身の生産量を決定するゲームです.ただし,解法は後ろ向き帰納法,つまりBの最適な行動をまず予想し,その予想を基にAが生産量を決定します.
 実際の手順としては,Bに関してMR=MCという式を作ることで,Aの生産量に対するBの最適反応がわかります.これを需要関数に代入した上で,AがMR=MCという式を作り,それを解きます.

 クールノー,ベルトラン,シュタッケルベルグ均衡のそれぞれが,どこが違うか,どこが同じかを意識して,改めて問題を復習しておきましょう.

2008年10月9日木曜日

基礎総合演習B 第3回

 今回から本格的に株の勉強ですね.ただし,あくまで株は題材に過ぎません.本当に身につけるべきことは,「自分の頭で考えること」です.その理由は説明しましたね.

【授業の内容】
 株というのは,本に書いてあることを疑う習慣を身につける上で非常に有効な題材です.なぜなら本によって書いてあることがバラバラだからです.こっちの本では「分散投資が良い」と書いてあれば,違う本には「分散投資はダメ」と書いてあります.あるいは「テクニカル分析」について詳しく説明している本もあれば,「テクニカル分析は嘘っぱちだ」と書いてある本すらあります.何が本当で何が嘘なのでしょう?

 今回は小手調べとして,皆さんに「株について知っていること」をどんどん挙げていってもらいました.みんなのイメージでは株とは「安いときに買って,高いときに売ることで儲ける」もののようです.
 もしそれが株のすべてであるとするなら,そもそもなぜ株は売買されるのでしょうか?美術品やクワガタなどが売買される理由はわかります.なぜならそれらを所有することで喜びを感じる人がいるからです.では株券を買うと嬉しいのでしょうか・・・?それともあれは単なる紙切れ(最近は電子化されたけど…)に過ぎないのでしょうか?

 学生から,株を所有する理由の1つとして配当というものの存在が指摘されました.そうです.本来,株とはお金を出資することで将来配当を受け取る権利を得られる,その約束手形として生まれたのです.
 というわけで,配当の存在は株価の分析にもヒントとなりました.将来,高い配当を得られるであろう株は高い値段で取引されるでしょう.逆に将来もあまり配当がもらえそうにない,あるいはすぐにでも潰れそうだ,という企業の株の価値は低いでしょう.

 今回の株についての理解はここまでにしておいて,後は実践として株を購入してみました.

 その後,ビックリするぐらい日経平均が下がってしまいましたね….

経済学A 第3回

 今回は経済学っぽい経済学の話をしました.経済の仕組みと経済学の変遷を簡単に説明しました.今回は重要な内容を一気に説明したので,太字だらけになってしまいましたが,いずれも必ず覚えて欲しい語句ばかりです.

【授業の内容】
 まず景気,あるいは経済成長の目安としてもっともよく用いられる国内総生産(GDP)とは何かを説明しました.ポイントは「どれだけモノを生産したか」ではなく,「どれだけ付加価値を発生させたか」です.
 さて,このGDPは,国内の総支出,そして総所得と同じ大きさになり,それを三面等価の原則と呼びます.なお,総支出は需要,総生産は供給と捉えることも可能です.
 このうち,総支出は,民間消費,民間投資,政府支出,輸出-輸入(純輸出)から構成されています.

 続いて,経済におけるプレイヤー(経済主体と呼びます)を紹介しました.まず最も大事なプレイヤーは,民間側の家計企業です.両者は(商品やサービスの総称)を売買するだけでなく,労働力も売買しています.また,それらが売買される場所は市場(しじょう)と呼ばれ,財市場,労働市場と言った使い方をします.
 続いて,これら民間側に様々な介入をする公(官?)側のプレイヤーを紹介しました.政府中央銀行(日本では日本銀行)です.政府は市場に様々な介入を行います.中央銀行は,市場に直接介入するというより,銀行(市中銀行)というサブ・プレイヤーを通じて間接的に金融市場に介入します.

 この介入のあり方に関して,経済学では大雑把に言うと2つの学派に分かれます.1つは,警察など政府が提供しなければいけない最低限の介入だけを行うべきだという古典派新古典派),そして,積極的に介入すべきだというケインズ派です.
 これらの学派による経済の見方,そしてそれらが政策にどのように反映されてきたかを,およそ200年前から現在へと歴史の流れと共に説明しました.
 公共工事がどうして景気対策になるのか,民営化がなぜ必要になったのか,など現実の経済の例を挙げながら説明しました.

ミクロ経済学ベイシックⅡ 第4回

 ゲーム理論は前回で終わり,今回から独占市場です.

【授業の内容】
 独占市場には様々なケースが含まれます.
・完全独占(狭義の独占)
・複占
・寡占
・独占的競争
の4つです.最後の独占的競争は厳密には独占かというと難しいところですが.

 今回はこのうち,完全独占,つまり売り手が1社のみの市場を考えました.

 完全競争市場では売り手は多数いました.そのため,それぞれの企業は価格に影響を及ぼすほどの力を持っておらず,市場で決まった価格を受け入れざるを得ませんでした.
 しかし完全独占の場合,売り手は1社のみなので,好きなように価格を決定できます.ただし,あまりに高すぎると売れません.また安くすると沢山売れますが,1個当たりの利益は少なくなります(行き過ぎれば赤字になるでしょう).そのため,価格をいくらに設定するか,またどれだけ生産するかは難しいところなのです.

 説明では,財を新たにもう1単位生産したときに入ってくる収入(限界収入,MR)と,新たにもう1単位生産したときに発生する費用(限界費用,MC)の大きさに着目しました.
 (限界費用が逓増,あるいは一定であれば,)限界費用より限界収入の方が高い場合,その財は生産した方が利潤は増えます.逆に限界収入の方が限界費用より高い場合,その財を生産することで利潤は減少します.これらから,限界収入と限界費用が等しくなるように生産することで利潤を最大化できることがわかります.計算式で言えば,MR=MCとなるように式を作れば,利潤が最大になるような生産量が導かれます.
 なお,前期もよく出てきたMCは費用関数(総費用関数)を生産量で微分すれば導出できたように,MRも収入を生産量で微分することで導かれます.
 企業が利潤を最大化できる生産量さえわかれば,それを需要関数に代入することで,最適な価格もわかります.

 今回はこの計算(そしてその含意)を説明しました.練習問題を配布したので,必ずやっておきましょう.今回の計算は今後の講義でも基礎となります.

経済数学入門 第4回

 今回は指数をやりました.指数と言っても結構時間がかかるものですね.

【授業の内容】
 指数を説明する前に素数と素因数分解の説明からです.素数というのはなかなか興味深いもので,ついつい必要ないことまで話してしまいました.が,改めて紹介します.数学が好きな人はとても面白いと思います.
 サイモン・シン「暗号解読」新潮文庫

 素因数分解や指数はn進数(2進数など)について理解するためにも最低限必要な知識です.そのため指数は,経済学だけでなく就活の筆記試験でも必要になる場合もありますよ.

 本題の指数ですが,指数法則と呼ばれるいくつかの決まり事さえ覚えていれば,後はそれをいかに組み合わせるかだけです.あまり難しいことは考えず,どんどん問題を解きましょう.

 今回も課題を配りましたが提出義務はありません.それより,以前に提出した課題に全学共通教育センターのマークを書かれていた学生は,必ず勉強しに来ましょう.

2008年10月7日火曜日

総合政策演習D 第4回

 今回もひたすら問題を解きました.

【授業の内容】
 時事問題では,観光庁の発足と日経平均株価を採り上げました.日経平均や為替レートは正確には知らなくても,大体いくらぐらいなのかはどの業界を目指すにしろ,最低限知っておいて良い知識だと思います.

経済学Ⅰ 第4回

 今回は需要の仕組みについて学びました.

【授業の内容】
 以前にも説明したとおり,需要の構成要素は,消費,投資,政府支出,輸出-輸入(純輸出)です.
 今回はそれぞれの要素が何によって決まるのかを説明しました.

・消費
 何が消費を決めるのかについては,以下の3つの仮説を説明しました.
 1.ケインズ型消費関数
 2.恒常所得仮説
 3.ライフサイクル仮説

・投資
 投資についても,その原因となる3つを説明しました.
 1.利子率
 2.アニマルスピリッツ
 3.将来予測

・政府支出
 政府支出は政府がその大きさを決めるわけですが,果たしてなぜ必要なのでしょう.その理由としてここでは2つを挙げました.
 1.市場の失敗による公共財の供給
 2.需要不足

・輸出と輸入
 最後に輸出と輸入の大きさを決めるものを考えました.輸出と輸入は立場が異なるだけで,ある国からある国へと輸出することは変わりません.そのため,一方さえわかれば,もう一方は簡単に推測できます.
 というわけで,日本の輸出を決めるものだけ考えれば良いのですが,それは2つありました.
 1.輸出先の景気
 2.為替レート

 このうち,為替レートについては今後,時間を取ってしっかりと説明します.

総合政策演習B1② 第3回

 今回は複占のうち,クールノー均衡について説明しました.

【授業の内容】
 小テストは完全独占についてでした.これは複占を学ぶ上でも基礎になります.確実にものにしましょう.

 まず,独占市場の分類をした後,クールノー均衡に取りかかりました.クールノー均衡は,2社が自社の生産量を戦略として駆け引きを行うゲームのナッシュ均衡です.そのため,クールノー・ナッシュ均衡と表現される場合もあります.

 問題はワンパターンなので慣れれば難しくありません.両企業がそれぞれ限界収入=限界費用となるように生産量を決定するだけです.
 大事なのは復習ですので,復習はきっちりしましょう.

基礎総合演習B 第2回

 今回はオープンキャンパスでのプレゼンの用意をしました.

【授業の内容】
 各チームに分かれ,プレゼン用の動画の編集作業をしました.

 また,野村のバーチャル株式投資倶楽部への登録もしました.どんな株を買えば儲かるのかを考えました.

2008年10月3日金曜日

経済学A 第2回

 今回は「大学進学は合理的か?」を考えました.

【授業の内容】
 「当たり前じゃないか.大卒だと給料が高いんだぞ!」と思った人もいるでしょうが,果たしてどれぐらいの人が大学進学の機会費用を意識していたでしょうか?

 大学進学には当然ながらお金がかかります.まず学費が必要ですし,1人暮らしの人は生活費も仕送りしてもらわなければならないでしょう.そのため,卒業までの4年間で単純計算で1000万円ぐらいはかかることになります.しかし,実際にはこの費用に加えて,機会費用と呼ばれる費用が(見えない所で)発生しています.
 機会費用とは,ある選択肢を選んだときに,選ばれなかった次善の選択肢を選んでいたときに起こりえた状況のことを意味します.今回の例で言えば,皆さんは大学進学を選びましたが,もし進学しなかったら高卒として4年間働くことができたでしょう.その場合,もし年収を250万円とすれば4年で1000万を稼げたはずです.しかし,皆さんはその選択肢を捨てて大学に進学しました.つまり,学費や生活費などの1000万円だけでなく,働いて1000万円を手に入れるという選択肢を捨てたという意味で,さらに1000万円のコストが発生するのです.

 というわけで,皆さんはその費用に見合った分だけ,将来高い給料を得ることができなければ大学進学は(経済的には)間違った選択になります.

 さて,労働者が受け取る賃金はどうやって決まるのでしょう?実は賃金の分析には,前回学んだ「ダイヤモンドはなぜ高いか?」という考え方が使えます.なぜなら,賃金は労働者が企業に労働時間を売る場合の価格だからです.ダイヤモンドの値段も賃金もどちらも価格ですので,どちらも同様に需要と供給のバランスで説明することができます.低賃金しか受け取れない人は,需要に比べ供給が多い,つまり誰でも供給することができる労働力しか持ち合わせていない可能性があります.実際,高校生でもできるようなコンビニやファーストフードのバイトの時給はかなり安いですよね.

 次回は,今回までと違い,ちょっと堅い経済学のお話をします.

ミクロ経済学ベイシックⅡ 第3回

 今回もゲーム理論の続きです.

【授業の内容】
 まず,ミニ・マックス戦略です.これは前回までのゲームとは目的が異なります.
 前回までのゲームでは,プレイヤーはそれぞれ利得の最大化を目指して行動しましたが,ここでは最悪の状況が起きると想定した悲観的なプレイヤーが,その中でもっともマシな戦略を選ぶ,というものです.言わば被害を最小化することを目的としています.

 続いて逐次手番ゲームをやりました.こちらでの目的は前回同様,利得の最大化ですが,時間の流れがある点が異なります.あるプレイヤーが行動して,それを見たプレイヤーが行動すると想定しています.授業ではライバル関係にある2店のコンビニによる値下げ合戦を説明しました.
 このような逐次手番ゲームでは,後ろ向き帰納法(Backward Induction)という解法を用います.簡単に言うと,一番最後に行動するプレイヤーの行動から最初に行動するプレイヤーへと,順に戦略を確定させていくのです.この解法のアイデアを使って1万円分配ゲーム(一般には最後通牒ゲームと呼ばれます)も解いてみました.
 どんどん新しいゲーム,新しい解法が出てくるので混乱するかもしれませんが,落ち着いて復習してみると,それぞれそんなに複雑なものではありません.

 ただし,最後にやった混合戦略を含むナッシュ均衡のゲームはややこしいですね.これまで,「プレイヤーはある1つの戦略を選ぶ(純粋戦略)」としてきましたが,ここでは確率を取り入れました.それにより,ジャンケンのように純粋戦略だけでは解が見つからないゲームにも必ず解が見つかります.
 授業では,テニスのサーバーがサーブを左か右に打ち,レシーバーはそれを予測するというゲームを考えました.どちらに備えた方が期待利得が高いかを判断して,相手の戦略に対する最適反応を導出したわけですが,この考えは独占市場の中の複占という状況を考える上で有効になります.そのため,テストには出さないとしましたが,ぜひ復習して,なんとなくでも理解して欲しいものです.

経済数学入門 第3回

 今回は前回の復習と,2次関数の確認,不等式などをやりました.

【授業の内容】
 前回と今回で,きちんと2次関数の放物線を描くことができるようになったと思います.2次関数までは,経済学でも必須ですし,就活の学力試験であるSPIなどでも最低限必要な知識と言えます.
 グラフを描く際は,頂点を記述することは当然ですが,簡単なので縦軸との交点も記入しましょう.

 また,1次,2次不等式も確認しました.こちらも経済学だけでなく,オペレーションズ・リサーチなどの講義でも必要となります.

 今回も課題を配布しましたが,提出義務はありません.ただしこの辺りが基礎になるので,必ずやりましょう.
 

2008年10月1日水曜日

ブログの遅れについて

 今週,異様に忙しいので更新が遅れています.ちょっと待ってください.なるべく早く更新します.