2008年7月18日金曜日

基礎総合演習A 第12回

 今回は最終回と言うことで,これまでのまとめ的に,みんなの意見を聞きました.

【授業の内容】
 まず,株式の運用成績を報告してもらいました.当初の予算100万円を守り切れたのは学生3チーム中1チームのみでした.その間,日経平均はやや下がっているので,まぁまぁの成績ではないでしょうか.
 続いて学生に「将来株をやってみたいか?」と尋ねたところ,「やってみたい」という人はわずかでした.しかし今回のような短期間で結果を出すのは非常に難しいので,これに懲りず,資産運用の1つとして積極的に考えてもらいたいところです.

経済学A 第12回

 今回で最終回です.やや変則的な内容でした.

【授業の内容】
 前半は開発経済学について説明しました.欧米の先進国や近隣のアジア諸国と異なり,アフリカや南アジアの国々についてのニュースがテレビや新聞で報道される機会は少ないです.よく目にする欧米や東アジアの国々は先進国であったり,急速に成長していたりで,多くの人にとって「貧困てまだあるの?」という感じかもしれません.あるいは貧困とは国内の格差の問題と思っているかもしれませんね.
 しかし現実にはいまだ多くの人々が食糧不足に困っていますし,いくつかの国では内戦が絶えることがありませんし,あり得ないようなハイパーインフレ(異常なほどの物価上昇)が現在進行形で起きている国もあります.そういった現実を少しでも身近に感じてくれると良いなぁと思います.

 後半は,以前のアンケートにあった質問のうち,各回のテーマとの関係で答えることができなかった質問を6つ取りあげ説明しました.
Q1.田舎で暮らすのと都会で暮らすのはどちらが合理的か?
Q2.バイオエネルギーは食糧問題と関係があるのか?
Q3.将来の日本について
Q4.好景気と不景気の具体的な違い
Q5.どうして税金を上げて医療費を無料にしないのか?
Q6.NHKの受信料を払うのは合理的か?
 この他にも僕にとって魅力的な質問があったのですが,時間の関係で説明できなくて残念です.またこのブログで回答したいと思います.

2008年7月14日月曜日

経済政策論 第13回

 今回はこれまでの総まとめとして,各自に発表をしてもらいました.

【授業の内容】
 皆さんには,これまで取りあげた5つのテーマのうち1つを選んで発表してもらいました.少子化が一番多かったですが,ガソリン,環境,年金とうまい具合にバラつきました.
 それぞれ,僕が予想していたより中身のしっかりした発表でしたが,特に周りにアンケートしてきた学生たちの発表は興味深かったです.「なぜ結婚しないのか?」,「年金は社会保険方式と税方式のどちらがよいか?」,「ガソリンの高騰の影響をガソリンスタンド店の店員に聞く」などいずれも貴重な情報です.
 また少子化についてはたまたま学生が集中しましたが,それぞれまったく異なる視点から少子化に切り込んでおり,まとめれば素晴らしい少子化対策が作れそうです.
 環境についての発表では,洞爺湖サミットと京都議定書の内容を比較するなどタイムリーな内容でした.

 総じて,「みんなしっかりと問題に取り組んできたな」という感想を持ちました.できるだけ今後も(卒業してからも)社会の問題に関心を抱き続けて下さい.

文理学 第13回

 文理学も今日で終わりです.前半は文理学,後半はホームルームでした.

【授業の内容】
 前回のワークシートを返却して,少し解説しました.主観的な意見と客観的事実との見分けですが,例文のほとんどは主観的な意見でしたね.あまりに多すぎて疑心暗鬼になったのではないかと思います.「~と考える。」,「~期待したい。」などの文はすべて筆者の個人的な考えに過ぎないので意見です.

 続いて,ネットを利用する際の注意点を話しました.最近,ネット(ブログやSNSなど)で犯罪自慢?(Ex.飲酒運転をした,未成年なのに喫煙をした)をするという幼稚な行為を,それを見つけた人が通報し,ニュースとなるケースがしばしば見受けられます.そもそも犯罪そのものが間違っていることは言うまでもありませんし,わざわざそれを不特定多数の人が見るネットに公開することは危機意識にあまりに欠けています.友人がそんなことをしているのに気づいたら,早めに注意してあげましょう.
 つい最近も小学生がネット掲示板で殺害予告をして補導されましたが,皆さんも(まさかとは思うけど)そんなアホなことはしないようにね.軽い気持ちで書き込むとえらいことになりますよ.ネットは便利ですが,使い方を間違えないように.

 さぁ,テストが終われば夏休みです.しっかり遊んで下さい.旅行するなり,目標に向かって努力するなり,自由な時間を使って普段できないことをしましょう!くれぐれも家でダラダラしてたら終わってた,ということにならないように.

2008年7月11日金曜日

ミクロ経済学ベイシックⅠ 第12回

 水曜日に補習をやったから事実上,第13回目ですかね?今日はテストを行いました.

【テストについて】
 まだ3分の2程度しか採点していませんが,総じて良いです.中間は良いのもあれば,ひどいのもありましたが,全体的に高得点のものが多いです.すでに1人,満点が出てしまいました.みんながしっかり勉強して良い点を取るのは嬉しいのですが,なぜか満点だと嬉しいような悔しいような複雑な気持ちです….もっと難しくすればよかった.

 この講義については,最初はみんな(時間のせいか?)あんまりやる気を感じられなかったのですが,テストが近づいてからは,本当にしっかり勉強していたように思います.複数の学生から「ミクロ経済学って真剣にやったらおもしろいね」という意見を聞き,「教えて良かったなぁ」と思います.このミクロの講義は,公務員試験の専門試験に対応できるようにと,難しい話も取り入れています.そのため,僕としても「どれぐらい伝えられるだろう?」と思いながら教えているのですが,みんな積極的に学んでいるようなので,本当に嬉しいです!2年生は取っている授業が異常に多いので試験勉強も大変だったと思いますが,よくがんばりました.
 まぁ,もうちょっと早く本気を出してくれると,もっと良かったんだけどね….

 では後期のミクロ経済学ベイシックⅡでお会いしましょう!

経済学Ⅱ 第14回

 今回はこれまでのテスト対策を兼ねて,これまでの復習をしました.

【授業の内容】
 というわけで,特に目新しいことはやっていません.

【テストについて】
 持ち込み可能なのは自筆のA4用紙1枚のみです.
 評価は,期末テストとこれまで行ったミニテストにより行います.

開発経済学 第14回

 今回で最後の講義でした.主な受講生が3年生ということもあり,最後は「途上国開発という仕事」を紹介しました.

【授業の内容】
 これまで半期に渡って説明してきた開発経済学ですが,途上国開発(貧困削減)を仕事にしている人たちもいます.それは公務員系(国際,国家,独立行政法人),NGO,民間企業(開発コンサルタント,CSR業務)の3つに分類できます.
 それぞれの立場により,メリット,デメリットは様々です.NGOは現場に近く,自分の希望する分野で働くことができそうですが,あまり収入が期待できません.半数以上の職員が年収300万円以下だそうですし,「やりたいことがやれれば収入はいらない」という人,あるいはリタイヤ後などでなければ難しいでしょう.また民間企業のようなエントリー→選考というパターンより,インターンシップやボランティア経由で職員になるケースが多いようです.
 公務員系は,国連関係機関で働く国際公務員,外務省(国家公務員),JICAやJETROといった独立行政法人があります.これらのメリットはやはり安定した給与が得られることでしょう.しかしその分だけハードルも厳しいです.国連で働くには最低でも修士号が必要でしょうし,外務省を目指すのなら最低でも2~3年間はみっちり勉強が必要でしょう.
 最後に民間企業ですが,開発コンサルタントは院卒が多いものの学部生のエントリーも受け付けているようです.また一般企業のCSRとしての貧困削減プロジェクトですが,その企業に入社できたとしても,希望通りの部署に入れる保障はありません.営業と違ってCSRの部署で働くのはほんの一握りですので,それを目指して就活するというのは現実的ではないでしょう.

 この他,貧困削減に関係した,いくつかのイベント,インターンシップなどを紹介しました.まだ開発経済学を担当して2年目ですが,この講義を機にこれらの業界を目指すような学生が出てくれればありがたいものです.

【レポートについて】
 不完全なまま提出しているレポートが予想以上に目につきます.場合によっては再レポートも考えていたのですが,ちょっと考え直すかも知れません.

2008年7月9日水曜日

基礎総合演習A 第11回

 今回はニュースと株価との関係を発表してもらいました.

【授業の内容】
 特に指定はせず,ニュースによる報道とその後の株価との関係を発表してもらうつもりだったのですが,期せずして内容は似通ったもの,というより互いに関連したものになりました.やはり,最近は原油相場,環境,原材料価格高騰という3点セットが注目されているからでしょうね.
 それ以外に明らかになったこととして,これまで日経平均と個別企業の株価には注意してきましたが,それ以外にもアメリカの景気(特にサブプライムローン問題)が日本の企業(の株価)にも影響を与えているということでした.グローバル化した現在では,経済のつながりは国境を簡単に越えてしまいます.

 前回提出してもらったレポートを返却しました.細かい注文はあるものの,全体としてはまずまずです.今後は,文理学で学んだことも活かして,レポートを書きましょう.

経済学A 第11回

 今回は久々に固い内容で,日本の財政と税についてです.国の借金(公債残高)は,国民1人あたりに直すと約665万円と,ものすごい額になります.

【授業の内容】
 まず,マクロ経済学の復習として,政府の役割や,大きな政府と小さな政府の違いなどを確認しました.
 次に,そもそも税とは何のためにあるのか説明しました.道路や警察など,民間に任せておいても供給されないもの(公共財と呼びます)を供給するため,というのはすぐに思いつきそうですが,その他に,所得の再分配機能や景気の安定といった機能もあります.
 さて,日本の財政状況はどれぐらい深刻なのでしょう.何兆円という単位だとピンとこないので,我々の家計に置き換えて説明しました.それによれば,月収が40万円しかないのに支出が58万円もあるため,毎月18万円も新たな借金をしている,大変な浪費家であることが判明しました.しかも長年にわたって借金を続けたために,その額は4600万円にもなってしまっています.借金を返すために借金をしているような状況です.我々であればとっくの昔に破産していてもおかしくありませんが,日本が破綻しそう,という話は聞いたことありませんね.日本政府はいつからこんなに借金をするようになったのでしょうか,それを国債発行額の推移を見ながら,歴史的な経緯について説明しました.ただ,バブル前後の話は,学生の多くが生まれた頃の話なのでイメージしづらいでしょうね.

 後半は税制についての説明です.税には3つの原則,簡素・中立・公平があります.それを踏まえながら,多くの種類があってややこしい税金を分類しました.特に直接税と間接税の違いは重要です.それぞれ公正性と公平性という特徴を持っています.また間接税の代表である消費税は脱税が不可能という素晴らしい利点があります.一方,直接税の代表である所得税は,所得の把握が難しい自営業者など一部の職業では脱税を見逃してしまう恐れがあります.どちらも一長一短ですが,少なくとも今後の日本は消費税のウェイトを大きくする方向に進むようです.単に税の負担が重くなる,というものではありません.(大袈裟に言えば)日本のあり方が変わるような変化です.
 日本はみんなのイメージとは違って(?),実は税率の低い国であり,小さな政府である国です.それらの判断の根拠は,国民負担率と潜在的国民負担率です.これらで見ると日本は先進国の中でトップクラスの負担が少ない国です.

【テストについて】
 さて,そろそろ期末テストです.経済学Aは筆記テストであり,持ち込みは不可です.ただし内容はそれほど難しくないと思います(たぶん).毎回きちんと出席していて,話を聞いていた人であれば,レジュメを見直して,わからない言葉がないように復習すれば問題ないと思います.

経済政策論 第12回

 今回は年金と消費税の続きで,年金の財源として,現行の社会保険方式と税方式のどちらが良いのか議論してもらいました.

【授業の内容】
 社会保険方式と税方式にはそれぞれメリットとデメリットがあります.それらを確認した上で,学生自身はどちらが望ましいと思うか,なぜそう思うか発表してもらいました.僕はてっきり税方式に偏るのではないかと思っていたのですが,ほぼ半々に分かれました.しかもなんとなくではなく,各自がきちんとした意見を持っていたので感心しました.なお,税方式が良いとした学生に「消費税率をどこまで上げても良いか?」と聞いたところ,3-10%まで幅がありました.現在いくつかある試案では5-12%の税率アップが想定されており,皆さんが考えているより消費税は高くなりそうです.

 後半は,次週に総まとめとして発表してもらう内容について,1人1人テーマを確認しました.少子化問題に取り組む人が多いようです.またアンケートを取ってみるという人もおり,非常に楽しみです.がんばってください.

文理学 第12回

 今回はレポートの書き方の基礎を学びました.

【授業の内容】
 みなさんが高校までに書いてきた文章の多くは感想文であり,レポートとはまったく異なるものです.感想文はその名の通り,自分の感想を述べるものなので,主観的なものです.対して,レポートにおいて求められるのは,主観を排した客観性であり,それに裏付けられた主張です.感想文とレポートの違いでもっとも重要な点は,この主観と客観です.
 内容の次は,形式です.レポートでは決められた形式を守らなければなりません.形式を守らなければ,どんなに内容が優れたものであっても適切な評価を得られません.まず,全体の構成という点では,表紙があり,その後,序論→本論→結論と続き,最後に参考文献の一覧を加えます.
 また,文章にも決まりがあり,使うべき言葉と使うべきでない言葉があります.少しだけ例を挙げると,

○私 ⇔ ×僕
○~である.~だ. ⇔ ×~です.~ます.
○非常に ⇔ ×とても 
 これらはほんの一例です.テキストにはもう少し詳しい説明があります.
 続いて,レポートの評価を決定的に下げてしまう恐れのある,引用盗用の違いを学びました.どちらも人の文章を借りることには違いはありませんが,引用にはいくつかの条件があります.それらを守っていなければ盗用,つまり著作権の侵害にあたります.「どうせ学生のレポートだから良いだろう」ではありません.ネットには数多くの学生の卒業研究が公開されており,他者の目に晒されています.
 盗用が発覚したレポートは当然ながらまったく評価されません
 最後に次週提出してもらうレポートの要項を改めて説明しました.3つのテーマの中から1つを選んで提出しましょう.テーマによっては難しいものもありますが,客観的な記述を心掛けましょう.
【お知らせ】
 来週の文理学はホームルームも兼ねて行います.教室は以前の教室(23501)ですので,間違えないように.

2008年7月5日土曜日

ミクロ経済学ベイシックⅠ 第12回

 今回は前回に引き続きボックス・ダイヤグラムを用いた一般均衡の説明です.後半は余剰分析についての課題の解説を行いました.

【授業の内容】
 まずボックス・ダイアグラムについての確認です.ある点から違う点へと移動するとパレート改善(より効率的な資源配分)になっているか確認しました.また,Aさん,Bさんが財X,Yを当初持っている状況(初期賦存量と呼びます)で,X,Yの相対価格が与えられたらどのような取引を行うかを確認しました.相対価格によっては,財X,Yに超過需要や超過供給が発生することがあります.ワルラス型価格調整メカニズムによれば超過需要が発生すれば価格は上がるし,超過供給が発生すれば価格が下がります.その調整により,相対価格も変化するため,財X,Yに対する超過需要,超過供給はなくなり,需給が均衡しました.この点では(消費者理論の時にも確認したように),相対価格と限界代替率が等しくなっていますね.

 後半は余剰分析についての課題の解説です.特に従量税が課せられた場合,余剰にどのような変化をもたらすか,具体的な計算式で確認しました.税収も社会的余剰に加えるのがポイントです.ちなみに今回のような従量税ではなく,消費税のような従価税(価格に一定割合の税率を課す税)ではどうなるのでしょうか?

 来週の講義時間中に期末テストを行います.その振替でテスト対策の時間を作ります.週明けにでもポータルサイトを通じてお知らせする予定です.

経済学Ⅱ 第13回

 今回は独占市場です.次週はこれまでの復習などを行うので,テストの範囲は今回までになります.

【授業の内容】
 まず,久々に完全競争市場の条件を確認しました.今回分析するのは,その条件のうち,「多数の買い手と多数の売り手が存在」,「自由な参入と退出」を満たしていないケースです.
 独占市場では,生産量が少なく,価格が高くなり,企業にとっては利潤が出るので望ましい状況ですが,社会的に見ると(死荷重が発生しており)良くありません.それらを余剰の点から,図を用いて説明しました.
 ある企業が独占している市場に,もし他の企業が自由に参入可能であれば,市場への供給量が増えるために,当然ながら価格は低下します(ワルラス型価格調整メカニズムで考えてみよう).価格が下がれば当然利潤は減少します.それでももし,利潤がまだあるなら,また新たな企業が参入してくるため,既存企業の利潤はどんどん減少していきます.完全競争市場では利潤がなくなるまで新規参入は止まりません.

 余剰でも確認したとおり,独占というのは社会的に見て良いことではありません.そのため独占禁止法(略称)という,競争を促すための法律も存在します.ではなぜ独占は生まれるのでしょうか?授業ではその原因別に,資源独占,政府による独占(規制や特許,著作権),自然独占の3つに分類しました.
 このうち,不思議なのは政府による独占です.なぜ社会的に望ましくない独占を政府が作り出すのでしょうか?その答えは,著作権や特許権を認めなければどうなってしまうかを考えればわかりますね.創作活動のインセンティブを守るためです.しかし現状の著作権による保護は過剰でしょう.作家や音楽家が孫の生活を守ることを目的として創作活動をしているとは思えません.

2008年7月3日木曜日

開発経済学 第13回

 今日はガバナンスでした.

【授業の内容】
 ガバナンスとは何かを定義するのは非常に大変です.世銀やUNDPによる定義を読んでもいまいちピンときません.そのためガバナンスとは何かについては後回しにして,とりあえず世界銀行がガバナンスの指標として挙げている6つの項目について説明しました.それは,「発言と説明責任」,「政治の安定と非暴力」,「政府の効率性」,「規制の質」,「法による支配」,「汚職の抑制」です.規制の質の例としては,世界各国でビジネスを開始するまでにかかる日数やコストを紹介しました.
 悪いガバナンスは資本の効率的な配分を歪めることで,直接,また経済成長を通じて間接的に社会的厚生を悪化させます.以前に説明した援助との関係で言えば,Burnside and Dollar(2000)は,ガバナンスが良好な場合のみ援助は有効に働くと指摘しています.またMauro(1997)は汚職は各国の成長率を鈍化させることを明らかにしています.
 しかし,ガバナンスが悪いと必ず経済成長しないのか,ガバナンスが良ければ必ず成長するのか,というとそうでもないのです.ガーナ,マラウィ,マリなどのようにガバナンスが比較的良いにもかかわらずあまり成長していない国もあれば,バングラデシュ,インドネシアなどガバナンスに問題がありそうなのに成長している国もあります.

 それはさておき,ガバナンスを改善するためにはどうすればよいのか,ガバナンスの意味する内容が広範であるだけに,その対策も様々です.立法・司法,市民的自由,経済政策など多岐にわたります.

 後半は移行経済について説明しました.社会主義経済から市場経済への移行です.政治体制と経済成長の関係についての研究からは,政治体制と経済的なパフォーマンスには相関がない,というのもあれば,民主主義国家の方が経済成長のばらつきが少ない,というのもあります.
 ただ,UNDPも2002年の人間開発報告で指摘するように,民主主義はたとえ最高のものを保障しないとしても,最悪の結果になるのを防ぐように思われる,のではないでしょうか.

 その後,中国とインドの事例を紹介しました.どちらも改革・開放で成長しましたが,現在のジンバブエは逆に規制・閉鎖を選んで破滅に向かっているように思えます.良好なガバナンスの下では現在のような状況にはなっていないでしょうし,UNDPの指摘が当てはまるように思えます.

2008年7月1日火曜日

基礎総合演習A 第10回

 今回はこれまでの知識を基にして,どの企業に就職したいかを説明してもらいました.

【授業の内容】
 これまでの株価予測のために企業を分析する知識を使えば,株の売買だけでなく,長期的な視点から良い会社と悪い会社の判断ができるかもしれません.というわけで,今回は各自が就職したい(長期にわたって成長が期待できる)企業を発表してもらいました.
 それぞれの学生が,売上や利潤の推移など経営指標の他,その業界の今後や,平均年収,働きやすさなど様々な視点から自分の一押しの企業について発表しました.それぞれなかなかよく考えているなぁと思います.僕も知らなかった点がいくつかあり,なかなか楽しい内容でした.

 ただし,現実的に就職する場合を考えると,やや疑問が残ります.なぜなら,学生が選んだ企業はすべて,誰でも知ってるような非常に知名度の高い企業ばかりだからです.就職活動では(あまり考えて行動しないのか?)知名度の高い企業には学生が殺到します.逆に優良企業であっても知名度の低い企業は志望者が少ないので入社しやすいでしょう.
 この点を利用し,知名度で選ぶのではなく,企業の中身(特に将来性)で選ぶべきではないでしょうか?名を捨てて実を取るのが合理的だと思うのですが,まだ1年生だから,そこまで真剣に考えることもないかもしれませんね.

【課題】
 次回は株価とニュースということで,今後1週間のニュースと株価との関係を各自に発表してもらいます.どこの企業でも構いません.なお,前日までにその新聞の記事を僕に届けて下さい.

経済学A 第10回

 今日はゲーム理論でした.経済と直接関係なさそうに見えますが,駆け引きについて合理的に考える力を身につけることは様々な状況で役に立つと思います(たぶん…).

【授業の内容】
 今日,7月1日から様々なモノの値段が上がりました.ガソリンも10円ぐらい上がったし,(みなさんへのアンケートによれば)アイスや魚肉ソーセージも値上がりしたそうです.というわけで,まずは最近の急激なインフレについてちょっとだけ説明しました.ガソリン価格を決めるものは,やはり需要と供給のバランスです.ただし,ガソリンについては実需(実際にガソリンを消費したいという需要)だけでなく,投機マネーによる需要が大きい点が特徴です.中国,インドを始めとする高成長の国々で石油燃料に対する需要は確かに高まっていますが(実需),それにより,これからもっと原油価格が上がるだろうと見越した人のお金が原油市場に流れ込んでいます.むしろそちらの影響が強いと言われています.
 言い換えれば,実際の需給バランスで決まる価格よりも高い水準にあるので,そのうち(バブルがはじけたように)値下がりすると思いますが,2,3年先だと言われています.

 という話とは関係なく,今回の本題はゲーム理論です.複数のプレイヤーによる駆け引きについて合理的な解釈をしてみました.
 まず有名な囚人のジレンマです.これは非協力ゲームであるために,理想的な状況(黙秘,黙秘)が実現できず,両者とも自白するために懲役をくらってしまうというものでした.
 続いて,そこでの考え方を発展させて支配される戦略の逐次消去を説明しました.一番分かりづらかったかもしれません.前置きに時間を取られすぎてしまいました….
 その後,戦略の逐次消去で解けない問題をナッシュ均衡という考え方で解きました.アンケートの感想では「ナッシュってすごい!」という感想が何人かから寄せられました.凄さがわかってもらえたという点では,この授業も成功だと思います.
 最後に逐次手番の展開型ゲームを説明しました.後ろ向き帰納法という考え方で問題を解きましたが,ややわかりづらかったようです.

【課題】
 次回までに,下記の財務省による「財務大臣になって予算を作ろう!」をやってみること.次回は日本の財政と税です.
http://www.mof.go.jp/zaisei/game.html

【アンケートの結果】
 感想を読みました.もっとも多かったのは「おもしろい」というもので,次に目についたのは「難しすぎる!」というものでした.もっとゆっくりGame.2をやれば良かったなぁとやや反省しております.ただ全体的には好評だったような気がします.
 また「テストの形式を教えて」というのが沢山ありました.確かにそろそろテストなので,来週の講義で説明します.まぁみんなきちんと出席しているし,そんなに心配しないでよいですよ.経済学よりも専門の方をしっかり勉強して下さい.
 なお,自由記述以外の結果(5段階評価)は,以下の通り.
1.授業態度の自己評価 3.625
2.講義の理解度      3.514
3.講義の総合評価    3.722