2007年12月21日金曜日

ミクロ経済学ベイシックⅡ 第13回

 前回に引き続きリスクについてです.今回は実際の保険料金などを考える上でも有用なリスクの金銭評価を行いました.

【授業の内容】
 前回,リスク愛好家とリスク回避者で効用曲線の形が異なる,という説明で終わっていました.今回はなぜそのような形状になるのか,職業選択を例にして説明しました.
 今,大学卒業後に,リスクがあり年収が1000万円になる年もあれば年収0円になる仕事(確率はどちらも50%)と,リスクがなく確実に年収500万円をもらえる仕事を考えてみます.どちらも年収の期待値は500万円なので,期待値だけで考えればどちらの仕事でも良いような気はします.実際おそらく生涯所得もほとんど一緒でしょう.
 ただし,リスク回避者はリスクがある仕事よりもリスクがない仕事の方がより効用が高いと評価します.そのためより効用の高い仕事(リスクがない仕事)を選びます.逆にリスク愛好家はリスクがある仕事を選びます.この説明はややこしいので,テキストのpp.330-335を繰り返し読んでみましょう.

 次に失業保険を例に,リスク回避者がなぜ保険に入るか説明しました.リスク回避者はリスクを回避するために払っても良いお金(リスク・プレミアム)より安い金額で所得を保障されるなら保険にはいるようです.このリスク・プレミアムを図で,また数値計算で説明しましたね.テキストのp.337には問題があります.これを必ずやっておきましょう.「テスト前にやろう」なんて思ってると,せっかく理解した内容を忘れてしまいますよ!

基礎総合演習B 第14回

 今回は先週やった投信についてのつづきでした.

【授業の内容】
 演習もそろそろ終わりが近づいています.年明けには,皆さんが学んだ知識を結集した発表なりレポートを提出してもらいます.
 今回は年明け最初の演習で発表してもらう予定の「私のおすすめの投信」についての下準備でした.また所用のため当日欠席する予定の人に,前もって発表してもらいました.
 発表の内容ですが,きちんと自分の目的(この場合はリスクの回避)に合わせて投信を選んでおり,なかなか説得力のある発表だったと思います.
 また皆さんのこれまでの発表の反省を踏まえ,より良い発表のためにはどうするべきか,考えてもらいました.ほとんど全員が意見を説明してくれましたが,どれも実用的で納得のできるものでした.年明けの発表に期待しています.

【課題】
 次回の演習で自分のオススメの投信をプレゼンすること.またみんなに配布する資料を用意しておくこと.原本を前日までに研究室に持ってくれば(あるいはメールで送ってくれば)人数分コピーします.そうでない人は自分で用意しましょう.

経済学A 第14回

 しばらく更新を忘れてる間に冬休みになってしまいました.
 今回は景気と経済成長について説明しました.

【授業の内容】
 まずはGDPについて簡単に復習しました.三面等価の原則や有効需要の原理など、いくつか景気の話をするために必要なので思い出してもらいました.
 景気の指標はいくつかありますが,GDPの成長率もその1つです.実際にGDP成長率の推移を示したグラフを見てみました.グラフからは景気に循環があるようにもないようにも見えますね….
 景気の循環については,僕個人はあまり重要とは思いませんが,いくつか代表的なものを紹介しました.40ヶ月と短いキチン波から50年にも及ぶコンドラチェフ波まで.それぞれ根拠を説明するともっともらしく聞こえますが,本当にあるんでしょうか?

 後半は経済成長の要因について考察しました.まずは経済理論から考える経済成長と言うことでソロー・スワン型生産関数というものを紹介しました(授業では名前は言わなかったかも知れません).このモデルの帰結としては,貯蓄率,人口成長,技術革新が経済成長に影響を与えることがわかります.
 これ以外の仮説も2例ほど紹介しましたが,どれも共通するのは技術あるいは知識が重要であることのようです.

 最後に,流れは悪いですが失業問題にも少し触れました.ニュースなどで聞く失業率にカウントされる失業者というのはかなり条件が厳しいようです.ニートも失業者ではないし,正社員を目指しつつたまにバイトをしている人も,就職活動をしていたけど上手くいかなくて諦めてしまった人たちもすべて統計上は失業者にはカウントされません.果たしてこの失業率がどれだけ現状を表しているかというと疑問符の付くところです.

2007年12月17日月曜日

経済学Ⅰ 第13回

 今日はIS-LM分析です.難しいのでアンケートの回答を見るのが怖かったのですが,思ったよりみんなの評価は高かったです.今日は珍しくほとんどの人が真剣に聴いてたからでしょうかね?いつも真剣に聴いて欲しいところではあります.

【授業の内容】
 IS-LM分析はこれまでの総復習とも言えます.これまで学んだ財政政策(財市場)と金融政策(金融市場)を融合してしまいます.
 IS-LM分析とは,財市場と金融市場がそれぞれ均衡するように利子率とGDPが決定するとした経済分析の手法です.授業ではまず財市場の復習から始めました.そのための基礎知識として,
・三面等価の原則
・有効需要の原理
・ケインズ型消費関数
・需要の構成要素
などを確認しました.需要の構成要素の中では特に,消費,投資が何によって決まるかが重要でした.
 財市場の需要と供給が均衡するためには,利子率が下がるとGDPは増える必要がありました.逆に利子率が上がるとGDPは下がる必要があります.つまり財市場が均衡するためには,利子率とGDPがそれぞれ逆に動くようです.(IS曲線)

 金融市場の復習としては,貨幣需要のうち,取引需要と投機的需要が重要でした.所得が増えれば取引需要が増え,利子率が下がれば投機的需要が増えることは以前にも確認しました.
 一方の供給は中央銀行である日銀が独自の判断で決めます.これらから,金融市場の需要と供給が均衡するためには,利子率が上がるとGDPが増える必要があるし,利子率が下がるとGDPも下がる必要がありました.こちらは同じ方向に動くんですね.(LM曲線)

 次回はこうして描いたIS曲線とLM曲線を1つにしてみます.次は年明けで,それが最後の授業になりそうですね.

2007年12月13日木曜日

ミクロ経済学ベイシックⅡ 第12回

 今日はリスクと不確実性です.世間では似たような意味で使われますが,厳密には違う意味を持っています.

【授業の内容】
 今日の内容は金融関係を目指す人は特に理解しておく必要がありそうです.資産運用,融資,保険など金融業界とリスクや不確実性は切っても切れない関係にあります.
 まずは期待値の計算からです.経済数学入門でもやったので復習ですね.経済数学入門では宝くじの期待値などを計算したはずです.
 次にリスクですが,リスクとは単に結果のばらつきの大きさのことでした.別に良いことが起きるか,悪いことが起きるかは関係ありません.ばらつきがあればリスクがありますが,あることが必ず起きるのならリスクはありません.
 (ギャンブラーは別として)多くの人にとってはあまり嬉しくないリスクですが,そのリスクを減らすための最善の方法は,「卵は分けて持て」でした.資産運用で言えば分散投資です.授業ではリスクヘッジの方法として,リスクに対して逆に反応する株式の組合せを考えました.
 リスクも不確実性も将来何が起きるかわからない,という点では一緒です.ただし,リスクの場合,様々な出来事が起きる確率はわかっていましたが,不確実性とはその確率すらわからない場合に使う言葉です.例えば,サイコロでどんな目が出るかはリスクですが,期末テストで何点を取るかは不確実性と言えます.

 最後に来週への布石として,リスク愛好家とリスク回避者の効用曲線の形状を見てみました.来週は保険を例にリスクプレミアムを説明します.今回に比べると非常に難しいと思うので,ぜひテキスト(12章)で予習をしておきましょう.

2007年12月12日水曜日

経済数学入門 第13回

 今日は確率と統計の基礎です.統計は社会科学の様々な分野で活躍しています.経済学でももちろん必要です.経済学ではなくても,卒業研究でアンケート調査を行うなら,統計の基礎的な知識は必要不可欠です.

【授業の内容】
 まずは確率ですが,みんな用語の説明はダルそうに聴いてますねー.計算の時は目が生きてるんですが….でも用語も大事ですよ.定義がわかってないと厳密な議論はできません.
 今日の内容で言うと,和と積のとこなんて数学以外でも結構使いますよ.検索はもちろんプログラミングでも必要な知識(のはず)です.次に期待値ですが,ちゃんと定義を理解していないと平均とこんがらがりますね.平均というのは過去の事象から計算されますが,期待値は未来の事象の推定値です.きちんと区別しましょう.

 最後に統計の基礎として,平均と分散の説明をしました.平均は日常生活でもなじみのある概念ですが,分散(や標準偏差)はあまり意識しないでしょうね.「分散が大きい」=「ばらつきが大きい」ということだけでも理解しておきましょう.なぜばらつきが大きいと分散が大きくなるのかは,実際の計算手順からもわかったと思います.

 来週提出する課題はありません.しかしちゃんと復習しておきましょうね.

総合政策演習B1② 第13回

 今日は独占市場の残りの寡占に,価格理論に余剰分析といろいろやりました.

【授業の内容】
 まずは寡占ですが,計算問題はあまり出題されないようです.なんといっても屈折需要曲線の形状とその意味が大事です.これで独占の問題は一通り終わりました.非常にややこしいので早めに復習しておきましょう.特に複占はすぐ忘れちゃいますよ!

 次に価格理論ですが,これは1回やったことがあれば簡単ですよね.時間もかからないし,点数が稼げる問題です.ワルラス型,マーシャル型,クモの巣理論だけ覚えましょう.

 最後に余剰分析の基礎だけ確認しました.余剰については応用問題が作りやすく,計算問題,グラフの問題ともによく出てきます.今日は余剰って何だったかの復習だけで,難しい問題は来週やります.みなさん一応は挑戦してみましょう.

2007年12月11日火曜日

基礎総合演習B 第13回

 本日は投資信託と外貨預金についての発表でした.投資信託だけでも良いぐらいの内容はありましたね.

【授業の内容】
 投資信託の説明は,比較的予備知識のある僕にはよくわかりましたが,学生はちょっと難しそうでしたね.今回までの発表に総じて言えることですが,発表者はもう少し自分の話す内容をまとめておいた方が良いですね.途中で混乱して話が止まってしまうというのをよく見かけます.1年生なのでまずは自分の話す内容を原稿にまとめておいた方が良いでしょう.慣れてきたらキーワードだけメモしておくようにすると,上手く話すことができると思います.
 外貨預金については,やっぱり円高円安というのはややこしいですね.しかし,投資信託も外貨もそれなりに発表者は理解しているように見えましたよ.あとはむしろ発表のスキルの問題だと思います.

【課題】
 年明けの授業で,各学生が自分のオススメのファンドのプレゼンをして下さい.

経済学A 第13回

 今日は少子化問題を取りあげました.

【授業の内容】
 なにかとニュースで耳にする少子化問題ですが,果たして少子化のどこが悪いのでしょうか?前々回の年金,前回の財政と合わせて考えてみました.

 まず「少子化とは?」から始めました.少子化の目安としてよく用いられるのは合計特殊出生率(TFR)です.TFRは1人の女性が生涯に何人の子供を産むか,と説明されることが多いです.厳密には違うのですが,イメージとしてはだいたいそんなところです.日本の昨年のTFRは1.32です.人口を維持するためには2.08が必要とされていますので,明らかに子供が足りません.おそらく今年ぐらいを頂点として日本の人口は長期的に減少していくことでしょう.

 次に,少子化のデメリットですが,なんといっても人口バランスが歪むことにより社会保障制度の存続が危うくなるというのが大きな問題です.社会保障の1つとして年金制度を例に挙げれば,前々回説明したように日本の年金制度は実質的に賦課方式で成り立っています.そのため高齢者の数に比べ,それを支える労働者の人口があまりに少なくなると制度自体が成り立たない恐れがあります.
 さらに,日本の場合は巨額の国債残高という課題もあります.これは簡単に言えば借金ですが,日本の将来人口が多ければ1人あたりの返済額も少なくすみますが,少子化になれば,この莫大な借金を背負う人数も少なくなり,1人1人が厳しい思いをすることになるでしょう.
 この他,労働力人口そのものが減少することにより,GDPの減少,引いては国際的な発言力の低下なども予想されます.

 逆に少子化の良い点は,1人あたり資本の増加,環境負荷の軽減,人口過密の緩和などが挙げられます.つまり日本全体の経済規模は小さくなっても,1人あたりで言えば逆に豊かになる可能性もないわけではありません.
 豊かな小国の実例として,ルクセンブルクやスイスがあります.

 後半は少子化の原因と対策を説明しました.日本の少子化というのは,実は夫婦が子供を産まないことではなく,男女が結婚しないことから起きています.生涯未婚率や平均初婚率でも確認した通りです.なぜ結婚しないのかの説明はいろいろできますが,1つには女性の高学歴化と,それに伴い女性が自立した生活ができるようになったことが挙げられるでしょう.また,以前に比べ親が裕福なため,わざわざ親との同居による豊かな生活を捨ててまで,(両親と比べると)収入の低い男性と生活を選ぶことに抵抗があるのかもしれません.
 非婚化・晩婚化への国としての対策というのは,なかなか困難です.なぜなら結婚というのは完全に個人的な問題なので,国が結婚せよとは命令できませんからね.しかし,夫婦に対する所得減税などをすることで,若い人たちに「独身は損かもしれないな…?」と思わせることは有効かもしれません.

 最後に他国の少子化対策を概説しました.フランスは少子化対策により少子化を脱した成功例です.フランスでは24種類もの手厚い子供手当を用意することで,10年間の間にTFRを1.6から1.89にまで急激に増加させました.
 その他の手段として,アメリカのように出生力の高い移民を大量に受け入れるという方法もありますが,日本では政治的な理由により現実的ではないでしょうね.

2007年12月10日月曜日

経済学Ⅰ 第12回

【授業の内容】
 最近になって消費税値上げの話題がよく聞かれます.社会保障目的税にするということですが,消費税率が上がって社会保障目的税になると,我々の生活にどんな変化が出るのでしょうか?ただ単に税金が上がるだけ?今日は主に税金が経済の仕組みにどんな影響を与えるのかを中心に説明しました.
 まず大きな政府と小さな政府って何だったか,久々に復習しました.大きな政府の代表格としてはスウェーデンやデンマークといった北欧諸国やフランスが挙げられます.逆に小さな政府の代表としてはアメリカ,スイス,韓国と言った国の他,実は日本も小さな政府のグループに含まれると言って良いでしょう.どんな指標を元に大きい,小さいと判断しているかはともかく,まずは日本の財政状況を見てみました. 財政状況はなじみのない言葉が多いため,財務省に倣って家計に置き換えて説明しました.http://www.mof.go.jp/zaisei/con_02.html 日本は収入以上に随分お金をつかっており,慢性的な借金体質のようです.普通の家ならすでに破産しているかもしれませんし,そもそも新たな借金はできないでしょうね.借金を減らすには,収入を増やすか支出を減らすか,あるいは同時に行うかしかないわけです.
 歳出を項目別に見ていくと一番多いのは社会保障費でした.社会保障は前回確認した通りですね.この項目は日本が少子高齢化である以上,なかなか減らせないでしょうね.今後も増加し続けると予想されています.
 次に歳入として,税金の分類から始めました.税金は直接税と間接税,そして国税と地方税に分類できました.直接税の代表である所得税と,間接税の代表である消費税は,ひとくくりに税と言ってもその性質は大きく異なりました.それを公平性と公正性という観点から説明しました.
 現在,消費税率を上げることがニュースになっていますが,消費税を上げると言うことはただ単に税金が増えて困る,という単純なものではありませんでした.
 最後に冒頭の大きな政府と小さな政府に分類する指標として,国民負担率と潜在的国民負担率を紹介しました.これらを先進国間で比較すると日本はずいぶん税金の安い(=福祉水準も低い)小さな政府であることがわかりました.

【おまけ】 税金の無駄遣いを減らせ!と思っている人はこちらのゲームを試してみて下さい.なかなか予算を減らすのも簡単ではありませんね.http://www.mof.go.jp/zaisei/game.html

2007年12月6日木曜日

ミクロ経済学ベイシックⅡ 第11回

 今日は市場の失敗のうち,情報の非対称性でした.

【授業の内容】
 完全競争市場の条件には完全な情報というものがありましたが,それが満たされない場合が本日のテーマである情報の非対称性です.

 情報の非対称性とは,売り手と買い手が財について保有している情報が異なることを指します.授業の例で言えば,中古車については売り手(中古車屋)の方が買い手(消費者)よりも明らかに情報をたくさん持っていますよね.その中古車を仕入れたときの値段はもちろん,専門的な知識を使って我々消費者にはわからない品質に関する情報を持っているはずです.

 さて,このような情報の非対称性が発生する財には特徴があります.財が持つ品質の情報について次の3つに分類しました.
・探索財
・経験財
・信用財
 このうち探索財については事前に品質に関する情報が明らかなため,情報の非対称性は発生しません.以後の分析対象はすべて経験財もしくは信用財についてです.

 分析の手始めとして中古車市場,いわゆるレモン市場を紹介しました.ここでは上述の通り,売り手と買い手で情報の非対称性が発生しています.売り手は品質の良い自動車と悪い自動車を区別できますが,買い手には区別ができないため,買い手は良い自動車と悪い自動車の存在比率から期待値を計算し,それを下回る価格でしか中古車を購入しません.
 しかし売り手にとって見れば,その価格でも売っても良いと思えるのは品質の悪い自動車(レモン)だけなので,結果として市場には欠陥車ばかりが出回ることになります.まさに悪貨が良貨を駆逐してしまうのです.

 次に生命保険市場を分析しました.ここでは生命保険の購入者として,自身の健康に自信がある人と健康に自信がない人の2種類を想定します.それぞれ自身が病気すると思われる確率から払っても良い保険料を計算します.健康な人は保険料を低く見積もるし,不健康な人は少々高くとも保険に入りたいと思うでしょう.
 一方,購入者の健康に関する情報を持っていない保険会社の営業は,健康な人と不健康な人の区別がつきません.そのため,全員入ってくれた場合に利潤が出るような平均的な保険料を計算して,それを提示するしかありません.
 結果としてその保険料でも保険に入りたいと思うのは,自身が不健康だと認識している人だけなので,保険会社にとっては大赤字になることでしょう.不健康な人にとってみれば,健康な人のおかげで安く保険に入れることになります.
 このように情報の非対称性により特定の売り手or買い手ばかりが集まることを逆選択と言います.先ほどのレモン市場も逆選択の1例です.

 さらにこの保険市場を例に話を進めれば,生命保険に入った人の中には,「これからは病気や怪我をしても保険が下りるから安心だ」と思って暴飲暴食をしたり,危険な行動を取る人がいるかもしれません.このように情報の非対称性を伴う契約により行動が変化することをモラル・ハザードと呼びます.マスコミでモラル・ハザードという言葉が使われている場合には誤用が多いように感じます.皆さんは気をつけましょう.

 最後に情報の非対称性による市場の失敗を防ぐ手段を説明しました.簡単に言えば非対称的だからダメなわけで,情報が対称的になれば良いわけです.まずはシグナリングを紹介しました.これは品質そのものの情報は手に入らなくても,品質を示すシグナルを見つけて品質を推測するというものでした.高卒と大卒の初任給が違うこともシグナリングから説明できました.中古車の1年保障などもシグナルと言えそうですね.
 次に評判(reputation)を説明しました.これは1回限りの契約だと,相手を騙すことができるので継続して契約することで情報の非対称性を無くすということでした.年功序列の合理性もこれで説明できます.

経済数学入門 第12回

 今回は風邪でダウンしてしまいました.掲示板の所で配布した課題をやってきて下さい.次回,回収します.
 講義後に質問に来る予定だった人はすみません.次週以降にして下さい.

総合政策演習B1② 第12回

 今回は風邪でダウンしてしまいました.掲示板の所で配布した課題をやってきて下さい.

基礎総合演習B 第12回

 風邪の影響でよろよろしながらの授業でした.皆さんに風邪が移っていなければ良いのですが….

【授業の内容】
 今回はチーム・コーナーザマーケットによる資産運用方法としての金(きん)とギャンブルについての発表です.

 ギャンブルはまだ身近?ですが,金投資というのは縁遠いだけに,なかなか調べるのも難しかったようですね.
 しかし,株との比較を尋ねてもなかなか理に適った答えが返ってきました.

 僕も調べてわかりましたが,宝くじに比べれば公営ギャンブル(競馬や競艇など)はまだ良心的なんですね.逆に宝くじは期待値で考えれば,怖ろしい資産運用法です.購入者の無知につけ込む商売です.ヴォルテールが「宝くじは頭が悪いことに対する税金である」と言うのもわかりますね.
 また配当率(期待値)で考えるとノミ行為がはびこる理由もわかりました.

【課題】
 次回は投信とドルについてです.投信はいろいろ種類があるので調べてみると面白いですよ.

経済学A 第12回

 今回は前回の年金に関連して,日本の財政と税について説明しました.

【授業の内容】
 その日の朝,「2008年度予算が83兆円台後半になる見通し」というニュースが流れました.皆さんにとってはあまり関心のないこの数字は果たしてどんな意味を持っているのでしょうか?
 まず大きな政府と小さな政府って何だったか,久々に復習しました.大きな政府の代表格としてはスウェーデンやデンマークといった北欧諸国やフランスが挙げられます.逆に小さな政府の代表としてはアメリカ,スイス,韓国と言った国の他,実は日本も小さな政府のグループに含まれると言って良いでしょう.どんな指標を元に大きい,小さいと判断しているかはともかく,まずは日本の財政状況を見てみました.
 財政状況はなじみのない言葉が多いため,財務省に倣って家計に置き換えて説明しました.
http://www.mof.go.jp/zaisei/con_02.html
 日本は収入以上に随分お金をつかっており,慢性的な借金体質のようです.普通の家ならすでに破産しているかもしれませんし,そもそも新たな借金はできないでしょうね.借金を減らすには,収入を増やすか支出を減らすか,あるいは同時に行うかしかないわけです.
 まずは支出を減らすことを考えてみます.歳出を項目別に見ていくと一番多いのは社会保障費でした.社会保障は前回確認した通りですね.この項目は日本が少子高齢化である以上,なかなか減らせないでしょうね.今後も増加し続けると予想されています.一般歳出削減の方策の1つとして民営化があります.先日郵便局が民営化されたのは誰もが知っていますが,ハローワークや違法駐車取り締まりの民営化に関連して市場化テストという言葉がしばしば話題になりました.
 次に歳入を増やすことですが,まずは税金の分類から始めました.税金は直接税と間接税,そして国税と地方税に分類できました.直接税の代表である所得税と,間接税の代表である消費税は,ひとくくりに税と言ってもその性質は大きく異なりました.それを公平性と公正性という観点から説明しました.
 現在,消費税率を上げることがニュースになっていますが,消費税を上げると言うことはただ単に税金が増えて困る,という単純なものではありませんでした.

 最後に冒頭の大きな政府と小さな政府に分類する指標として,国民負担率と潜在的国民負担率を紹介しました.これらを先進国間で比較すると日本はずいぶん税金の安い(=福祉水準も低い)小さな政府であることがわかりました.

【おまけ】
 税金の無駄遣いを減らせ!と思っている人はこちらのゲームを試してみて下さい.なかなか予算を減らすのも簡単ではありませんね.
http://www.mof.go.jp/zaisei/game.html

 

2007年12月3日月曜日

ミクロ経済学ベイシックⅡ 中間テスト結果

 中間テストの採点が終わりました.

満点:30点
平均点:15.71点
標準偏差:7.577
最高点:30点
最低点:1点

 問題はそれほど簡単ではなかっただけに,もっと悪いかと思っていたのですが,予想よりも良かったです.出席してる人はかなり真面目に講義を聴いてるからでしょうね.僕にもみんなの真剣さは伝わります.独占が終わってからは少々力が抜けたようですが….
 それにしても満点が出たのは嬉しいような残念なような.僕がテスト受けても計算ミスで間違えそうなややこしい計算でしたが,皆さんよくがんばりました.

 この中間テストの内容は期末試験の範囲に含まれますので,忘れないうちに復習しておきましょう.解答はHP上に掲載されていますよ.

 自分の点数が知りたい人は研究室までどうぞ.

経済学Ⅰ 第11回

 テストを1週はさんで,引き続き貿易でした.

【授業の内容】
 今日は互いに得意な産業を持つ両国による貿易と,得意な産業のない国と苦手な産業のない国の貿易が,それぞれ何をもたらすのかを説明しました.

 まずは漁師と農民を例として,互いに得意(絶対優位)なものがある場合に,ロビンソンクルーソーのように自給自足をするのか,それとも互いに得意なものを作り交換するのとどちらを選ぶべきか説明しました.
 このような場合には,自給自足するよりも,互いに絶対優位を持つもの(漁師は魚釣り,農民は米作り)に専念して(特化),作ったものを交換することで両者とも幸せになれることを数値例で確認しました.

 上記の例では,交換(貿易)するとお互いに幸せになれるというのは,なんとなく予想できましたね.では次に,テレビと自動車の生産について絶対優位を持つ国と,どちらも絶対劣位である国の場合ではどうでしょうか?わざわざ自国と比べ絶対劣位にある国と貿易する意味はあるのでしょうか?また絶対劣位にある国は,優位な国と貿易してしまうと負けて損失を出してしまいそうな気がします.
 しかし,数値例でも確認した通り,テレビと自動車に絶対優位にある国は,どちらも得意だがあえて言えばより得意な(比較優位)テレビの生産に特化し,逆に絶対劣位にある国は,どちらも苦手だがテレビに比べればまだマシな(比較優位)自動車の生産に特化します.その上で貿易をすることで両国とも幸せになりました.
 比較優位は直感的な印象と,その中身が違うので驚くのではないでしょうか?僕は大学生の時に比較優位を学んで驚いたのを今でも覚えています.

 さて,これまでの例から自由な貿易は両国を幸せにすることがわかりました.しかし現実には自由な貿易が行われているとは言えません.我々が購入する様々なもの(あるいはその原材料)には関税がかけられています.
 なぜ日本政府は日本全体が幸せになれる自由な貿易をわざわざ妨げているのでしょうか?それは先ほどの話は数値例に過ぎませんでしたが,実際にはテレビに特化して自動車の生産を減らすことは,自動車産業が規模を縮小することであり,そこで働く労働者が失業することを意味しています.失業すれば当然その家族にも影響が出ることになりますね.
 そのため,関税により保護されている業界のことだけを考えれば,自由な貿易というのは決して歓迎されるものではないでしょう.当然ながら強硬に反対するはずです.
 しかし,関税により一部の産業を保護することは,日本全体のことを考えればマイナスです.なぜなら他の国と比べ効率が悪い産業に従事する労働者を増やすことになるからです.長期的な視点に立てば,関税を撤廃することで労働者が非効率的な産業から効率的な産業へと移動することになるため,労働者としてもより高い賃金を得ることになるかもしれません.

 自由な貿易は一時的には波風を起こすことになるでしょうが,長い目で見れば一国全体の生産の効率性を高めるものです.それに自由な貿易は世界的な流れであり,日本だけがその流れを押しとどめることは不可能です.
 自由な貿易を押し進める流れは,各国政府間で結ばれる自由貿易協定(FTA)の数に現れています.現在日本はメキシコ,シンガポール,マレーシアなど8ヶ国とFTAを発行あるいは署名済みです.さらにASEAN全体やインド,韓国などとも交渉中です.

お知らせ
 授業でも伝えた通り,中間テストの再テストを行います.ただし,テストを受けるのは15点未満だった人だけです.新年1回目の授業(1月21日?)の後半を使ってテストをします.そのテストで7~8割を取れれば中間テストの成績を15点に修正します.
 15点未満の人にはポータルサイトを通じて個人呼び出しがかかっているはずです.きちんと確認しましょう.