2010年4月30日金曜日

経済学A 第4回(4/30)

 前回は古典派の誕生,そして古典派が世界大恐慌に直面して有効な政策を提示することができなかったところまで説明しました.

【授業の内容】
 授業の冒頭では,前回の続きではなく,少し経済学の本流から離れ,マルクス経済学(通称:マル経)の話をしました.日本に住む私たち,特に皆さんのようにソ連崩壊後に生まれた人たちにとっては,社会主義や共産主義といっても,なかなかピンと来ないと思います.
 日本を始め,現在の先進国は市場経済です.市場経済とは市場において,財(モノやサービスのこと)の生産量や価格が決められる経済です.一方,計画経済とは,国家が財の生産量を決定し,人々に配分する経済システムです.計画経済が上手くいかなかった理由は主に2つあると考えられます.1つ目は,情報の流れが一方的で,計画立案に必要な情報が十分に入手できなかったことです.どんなに優れた人々であっても,少数の人々が経済全体を把握しようというのは困難です.市場経済では,無数のプレイヤーが市場を通じて互いに情報を交換しあうことができます.もう1つの理由は,インセンティブです.計画経済ではより優れた商品を,より効率的に生産しようというインセンティブがあまりありません.一方,市場経済では,優れた財を生産,また優れたアイディアを発明すれば,それが市場を通じて報われるため,人々は常に創意工夫します.これが新たなイノベーション(革新)を生み出し,経済に活力をもたらします.計画経済の実現が困難であることは,その後の歴史が証明しました.

 さて,本題に戻りましょう.1929年に起こった世界大恐慌を機に,経済学の表舞台に現れたのがケインズ派です.ケインズ派の代表格は,名前の通りケインズです.
 古典派とケインズ派は,経済の根本の理解が大きく異なります.古典派は供給(総生産)の大きさが需要(総支出)を決める「セイ法則」を信じていましたが,一方のケインズ派は需要の大きさが供給を決めるという「有効需要の原理」を信じていました.この違いは現実の政策に大きな違いをもたらします.セイ法則によれば,需要は供給の結果として生まれるので,重要ではありません.経済を成長させるためには,とにかく生産能力を高めれば良いのです.一方,有効需要の原理によれば,需要の大きさは供給の大きさ(つまりGDP)を決めるため,非常に重要です.つまり,経済成長(や景気回復)させるためには需要を大きくしないといけないわけです.この考えの下,アメリカではルーズベルト大統領がニューディール政策を実施し,大不況から抜け出すことに成功します.
 もう1つ,古典派とケインズ派の大きな違いがあります.それは「市場に対する信頼」です.古典派は「神の見えざる手」に象徴されるように,市場の機能を信頼しています.そのため,政府は最小限の介入しかしないことになります.一方のケインズ派は市場を信頼していません.市場は不完全なもの(市場の失敗)であるため,政府が積極的に介入すべきだと考えています.このように積極的に市場に関与する政府は,大きな政府と呼ばれています.大きな政府では,積極的に介入するため,自動的にその財源となる税率も高めです.
 大恐慌以来,ケインズ派は経済の主役であったと言っても良いかもしれませんが,一部の国ではその座から引きずりおろされることになります.その国とはケインズを生んだイギリス,そしてアメリカや日本などです.

 ケインズ派の積極的な介入は,経済の下支えの役割を果たすことに成功しましたが,長期的に見ると弊害ももたらします.短期的には有効な薬なのですが,長期的に薬を飲み続けることによって,その薬の副作用である,財政赤字が蓄積され,巨額なものになってしまいました.政府が積極的にお金を使うと景気は回復するかもしれませんが,その財源は税収です.税金が足りない場合には国債を発行して(国の借金)賄います.借金である以上,時期がくれば返済しなければなりませんね.あまりに返済額が多くなると,税金を集めてもその多くは返済に充てられることになり,有効に活用することができなくなります.
 このように巨額の財政赤字を抱えた国々はケインズ派を捨て,改めて古典派(新古典派)に回帰します.つまり,政府の役割を最低限にし,民間の活力に期待するのです.このような政府は小さな政府と呼ばれます.その考えの下,日本でも1980年代には,国鉄,電電,専売の3公社が民営化されました.また規制緩和により,民間同士の競争が促進された時代でもあります.
 新古典派は,市場における競争を重視します.ただし,競争は勝者だけでなく敗者も生み出します.そのため,新古典派的な政策を良しとする小泉政権下で貧困や格差が社会問題として顕在化したのも当然かもしれません.

 さて,結論としてケインズ派と新古典派,言い換えれば大きな政府と小さな政府,これらのどちらが良いのでしょうか?その答えは「何を目的とするか?」によって異なるでしょう.おそらく「あまり経済成長しなくても,とにかく平等な社会が理想的だ」と考える人は大きな政府が良いと考えるでしょうし,「少しぐらい格差が生まれても,自由な競争により経済が成長することが理想的だ」と考えれば小さな政府が良いのかもしれません.
 僕個人としては,大きすぎる政府には反対です.やはり新しい技術やサービスは,自由で公正な競争があってこそ生まれるだろうと考えるからです.結果として貧困が生まれること,格差ができてしまうこと,これらは望ましいことではありませんが許容されると思います(ここは意見が分かれると思いますが).許容してはいけないのは,格差が生まれることではなく,格差や社会階層が固定してしまうことです.つまり,一度貧困層になってしまうと努力しても抜け出すチャンスがない社会,貧しい家庭に生まれると十分な教育を受けられない社会,このような社会であってはいけません.それは思想の問題ではありません.そのような社会は,全体として効率の悪い,劣った社会であるからです.ただ,残念ながら日本は少しずつ,そのような社会になってしまうのではと危惧しています.

経済学A 第3回(4/27)

 今回と次回はマクロ経済学です.経済学の歴史を紐解きながら,マクロ経済学についての知識を伝えていきます.

【授業の内容】
 まず前提条件として,経済学の目的は何かを説明しました.経済学は人々を幸せにすること,貧困を削減することを目的として誕生し,そのための目標値として,GDP成長率や,1人あたり所得などを用います.ポイントは「お金があることが幸せ」だと考えているのではなく,「幸せを測定するモノサシとして,(とりあえず)お金を使っている」点です.似たようなもんだ,と思うかもしれませんが,そこには大きな違いがあると,僕は考えています.
 というわけで,目標値であるGDPを説明しなければなりません.GDPとは,国民総生産のことですが,どれだけ商品を作ったかを示すものではなく,どれだけ付加価値を発生させたか,を示すものです.また,GDPとGNPの違いについても説明しましたね.

 ここから,経済学(と経済)の歴史について説明しました.大きな政府と小さな政府って何か?なぜ規制緩和するのか?政府が道路を造るとどんな効果があるのか?など様々な知識を,歴史と一緒に説明します.
 今回は経済学の誕生として,古典派の人たちが何を考えていたかを主に説明しました.古典派の人たちの主張を簡単にまとめると,「市場の働きを信頼しており,政府が市場に介入すると,そのメカニズムが乱されてしまう.そのため,政府は何もしない方が良い」というものでした.民間に任せておいても,まるで神の見えざる手が存在するかのように,うまく物事を治まるというものです.政府は最低限だけの役割(警察,国防,消防など)を行い,後は民間に任せるというものです.これはレッセ・フェールと呼ばれます.
 古典派のもう1つの特徴として,セイ法則があります.これは,供給の大きさが需要の大きさを決めるというものです.ある経済を,生産(供給),支出(需要),所得の3つの側面から測っても大きさが同じであると言うことを三面等価の原則と言いますが,古典派はこのうちの生産を重視します.なぜなら生産が大きければ需要は勝手についてくると考えたからです.

 このような古典派経済学は,1920年代後半に起きた世界大恐慌に際して無力でした.大不況であることがわかっても,有効な解決策がないからです.そこで,このような非常時に有効な薬をケインズたちが提示します.
 ということで,次回はケインズの登場から話します.

2010年4月23日金曜日

開発経済学 第4回(4/23)

 今回はグループワークとして貿易ゲームをやりました.みなさん結構楽しんで取り組んでいたようなので,こちらとしても満足です.

【授業の内容】
 全員で貿易ゲームを行いました.学生は各国の国民として,松村先生が世界銀行役を,僕が国連役を行いました.
 最初の5分は各チーム(特に途上国)は混乱したようですが,周りを見回して,徐々にそれぞれの置かれた状況,および課題に気がついていったようです.混乱期には,先進国が無償で途上国にはさみを援助することもありましたが,各備品の価値に気付くと,そのような二国間援助は一切見られなくなりました.残念ながらすべての交渉(とその条件)を確認できたわけではありませんが,僕が確認した範囲では,やはり先進国にとって優位な条件での交渉がほとんどだったように思えます.実は先進国には紙(天然資源?)がほとんどないため,資源国が手を組めば先進国とかなり良い条件で取引することも可能でしたが,そこまで状況を把握できていなかった様子でした.

 ほとんどの人は積極的に取り組んでいたため,全体としてはほぼ満足な出来でしたが,個人的な反省点(気づき)としては,以下の通り.
・生産可能な図形の種類が多すぎた.
 今回は5種類でしたが3種類程度に減らすことで,国際市場価格の変化が各チームの生産により影響を与えることができたはずです.
・国連の援助が甘かった.
 開始早々は途上国からの要望につれない返事をすることができていたのですが,後半はついつい甘くなってしまいました.またコンディショナリティとして,途上国政府に何を求めるかを決めておくべきでした.ほぼ無償援助ばかりになってしまったことが心残りです.「世銀から融資を返済せよ(融資を受けよ)」,「この商品の生産に特化せよ」などの条件をつけるべきでした.
・図形のサイズが大きすぎた
 サイズが大きすぎたため,各国ともあまりお金を稼げず,あまり格差が広がりませんでした.
・時間配分
 もう少し時間を取っても十分学ぶ余地があったでしょう.進行役が初めてだったことと,参加者が顔見知りだったこともあり,どのように進行するか予測が困難でした.もう少し煮詰まるまでやりたかったです.
・各国の人数は同じでなくても良い
 今回はなるべく同じ人数になるよう配分しましたが,あえて国民数にばらつきがあっても面白いでしょうね.

 曜日の変更のため,次回の講義までに2週飛びます.次回は(5/14)です.

ミクロ経済学ベイシックⅠ 第4回(4/23)

 今日は消費者理論でした.新しい用語が続けてでてくるので混乱しそうかもしれません.

【授業の内容】
 まず前回の復習として限界効用を確認しました.前回描いた限界効用の図の縦軸を効用ではなく金銭表示してみると,個別の消費者の需要曲線が描けました.これは,1つ1つの消費にどれだけ金銭的評価をするかを示したものです.この個別需要曲線に正解はありません.ある人はビールを高く評価するかもしれませんし,ビールが嫌いな人はまったく評価しない,といった具合に,各消費者の好みが異なるからです.
 しかし,個別の需要曲線を足しあわせ,総需要曲線にしてみると,ほとんどの財の需要はなめらかな右下がりの曲線になります.今日はこの需要曲線をいろいろ使って,その性質を理解しました.
 まず需要曲線のグラフを用いて,収入を図示しました.収入は価格×需要量で表されます.また,需要曲線のシフトについても説明しました.同じ価格でも需要が変化することがあります.これは,なんらかの要因により需要曲線そのものがシフトしたと捉えることが可能です.

 後半は無差別曲線について説明しました.これまでは1財(1種類の財)についての需要を調べたわけですが,ここからは2財(2種類の財)を調べていきます.無差別曲線とは,同じ水準の効用が得られるような2財の消費量の組み合わせを集めたものでした.通常の無差別曲線は右下がりの,原点に向かって凸の曲線です.無差別曲線にはいくつかのルール(というより仮定)がありましたね.
 さて,次週はこの無差別曲線を利用して,予算制約下の効用最大化問題に取り組みます.

 今回配ったプリントは課題なので,無くさないように.

総合政策演習D 第3回(4/21)

 早くも3回目ですね.今回は集合と表の読み取りでした.

【授業の内容】
 前半は,毎回恒例の小テストと解説でした.今回の所は,公務員試験の判断推理問題と似ていました.公務員試験の方がもう少しひねっていますが.予習範囲はともかく復習問題は確実にできるようにしておくべきです.

 後半は,企業選びの手がかりをいくつか紹介しました.ポイントは知ってる企業から選ぶのではなく,自分で「就活の基準」を決め,それに合致する企業を探していくことです.基準の例としては,成長力,安定性,賃金,働きやすさ,地域,雇用形態などがあると思います.
 さて,そのような基準に沿った企業選びの参考になるものとして,日本経済新聞社が発表する優良企業ランキングがあります.下記リンクにて300位までを見ることができます.
http://job.nikkei.co.jp/2011/open/enterprise/casma/ 
 また,賃金や安定性で選ぶのなら,その企業が市場をどれだけ独占しているかが参考になるはずです.ミクロ経済学でも学んだ通り,完全競争市場の条件に近づくほど,企業は儲からなくなります.逆に言えば,完全競争市場ではない市場に利潤はあるのです.その例としては,独占市場,参入規制がある市場などです.そのための手がかりとしては,日本経済新聞社の「市場占有率」や「業界地図」などが便利でしょう.ちなみに9Fの自習室にもおいてありますので参考にしてください(ちょっと古いけど).
 また,四国内での就職を考えるのなら,日経新聞の「四国経済」欄をこまめにチェックすると良いでしょう.知らない企業がたくさん出てきますよ.こうしてみると,日経新聞のことばかり勧めているようですが,就活するならやっぱり新聞は最低限読むべきです.就活の材料となる記事が多いのは,やはり日経で圧倒的に量が違います.
 このようにして業界・企業がある程度絞れてきたら,個別企業のウェブサイトから,IR情報を見ると良いでしょう.投資家向けに様々なデータが公開されていますし,企業の目指す将来像も見えてくるはずです.ただし,これは上場企業に限った話です.非上場企業は情報(特に正確なデータ)を見つけるのはなかなか難しいです.

基礎総合演習A 第1回(4/20)

 基礎演習は説明会などあったために,今週からスタートです.この演習では,「はてな」のウェブサービスを使うため,授業の内容は,このブログではなく「はてな」の方に書いていきます.

2010年4月22日木曜日

経済学A 第2回(4/20)

 今回は経済学的な思考の練習として,「大学進学は合理的か?」と「ダイヤモンドはなぜ高い?」という2つのテーマについて考えました.

【授業の内容】
 まず「ダイヤモンドはなぜ高い?」かを考えました.みなさん当たり前だと思っているかもしれませんんが,常識を疑ってみましょう.ダイヤモンドが高いのには理由があるのでしょうか?僕の質問に対する皆さんの回答は次の3つでした.
仮説.1 ダイヤモンドには需要がある
仮説.2 ダイヤモンドは希少である
仮説.3 ダイヤモンド自体に価値がある
 なかなか鋭い意見ですが,実はそれぞれの仮説は間違いではありませんが,完璧な答えでもありません.なぜなら仮説.1に対する反論として世界中の誰もが切実に需要する(モノやサービスのこと)として,水や空気がありますが,値段はほぼタダです.また仮説.2に対する反論としては,希少であっても価格が安い財はたくさん存在することが挙げられます.例としては僕が描いた油絵があります.それよりはるかに多く存在するピカソの絵には高い値段が付けられています.最後の仮説.3ですが,ダイヤは天然の鉱物の中で,もっとも光の反射率が高く,硬度も高いようです.「じゃあ高いのも納得だ」と思うかもしれませんが,そのような価値だけで評価するなら,人工ダイヤモンドと天然ダイヤモンドはほぼ同じ値段で売られているはずですが,なぜか両者の値段は大きく違います.
 結論としては,仮説.1~3のそれぞれでは十分ではなく,すべて(特に1と2)が揃って初めてその財の価格は高くなります.いわゆる需要と供給ですね.供給より需要の方が高ければ(ダイヤなど)その財の価格は高くなりますが,需要が高くてもそれを上回る供給がある財(空気や水など)は非常に安価です.

 続いて,「大学進学は合理的か?」について考えました.みなさんはすでに入学しているので今更言われても困るかもしれませんが,経済学的に見て,果たして大学進学は合理的なのでしょうか?それとも割りに合わない非合理的な行動なのでしょうか?
 経済学では選択肢を考える時には,それぞれの選択肢のメリットとデメリットを考えます.この例でも,「大学進学」と「高卒として就職」それぞれのメリットとデメリットを挙げ,比較しました.
 そこまではそれほど難しい話ではありませんし,なかには「普段からそんな風に考えている」という人もいるかもしれません.今回はさらに一歩踏み込んで機会費用という新たな概念を紹介しました.
 機会費用とは,「その選択肢を選ばなかった時の次善の選択肢から得られたであろうもの」のことです.今回の例では,大学進学の機会費用とは,大学に進学しなかったときの選択肢である,高卒として就職した時に得られていたもの(お金だけに限らず)です.高卒として働くと仮に年収250万円とすれば,皆さんが大学で学ぶ4年間で1000万円のお金を稼ぐ機会があったはずです.皆さんはその機会を捨てて(機会費用を払って),大学進学を選んだのです.さらに学費も加わるので,大学進学はかなり高価な選択です.それに見合った所得が将来得られないのであれば大学進学は(あくまで金銭的には)非合理的です.
 しかし,データで見てみると,大卒者の生涯所得は学費を差し引いても,高卒者に比べ高いことがわかりました.ただし,これはあくまで平均値を比較しただけです.大卒でもずっとフリーターをしていれば,高卒者の平均よりも当然生涯所得は低くなりますし,高卒者でも自身で事業を起こして高所得者になるケースはもちろんあります.

 最後に,今回の総まとめとして,「どうすれば将来高い所得が得られるか?」を需要と供給を用いて考えました.実はダイヤモンドの価格を考えることと,労働者の賃金を考えることはほぼ同じです.なぜなら,賃金はみなさんの労働力につけられた価格であるからです.そのためダイヤと同じように高く売るためには,需要が高く,供給が少ない種類の労働力を売れば良いのです.つまりどこにでもいる労働者ではなく,少数の人しか持っておらず,かつ企業が求めている能力を大学の4年間で身につけることです.要するに求められている専門能力を身につければ良いのだと思いますよ.何を学びたいかも重要ですが,何が求められているかも重要です.中国語なんか狙い目ではないでしょうか?

【追加4/29】
 書き忘れていました.
 期末試験についてですが,「持ち込みありが良い」という意見があったので,前回学んだインセンティブにするため,次のような条件にしました.
僕から「静かにしなさい」と注意される回数が10回未満:持ち込み選択可
同じく10回以上:持ち込み不可
 選択可になれば,第14,15回あたりの終盤で,「持ち込みと,持ち込みなし」とどちらが良いかを訪ね,希望する人数が多い方にしましょう.

2010年4月19日月曜日

開発経済学 第3回(4/16)

 今回は「なぜ貧困がなくならないのか?」に焦点を当てて貧困の悪循環を説明するとともに,途上国に関するいくつかの成長理論を紹介しました.

【授業の内容】
 以前も紹介した図ですが,東アジアはこの半世紀,貧困を克服し,豊かに国へと成長しました(成長しています)が,アフリカの多くに国々はこの半世紀,ほとんど成長らしい成長をしていません.なぜ貧困から抜け出せないのでしょうか?
 ヌルクセは現在ある人(や国)が貧しい理由を,過去の貧困に見出しました.貧しい(低所得)国は貯蓄が少なく,貯蓄が少ないために将来のための投資ができません.そのため資本が蓄積されず,生産が低いままであり,将来も貧しいという悪循環です.これをヌルクセは貧困の悪循環と名付けました.この罠からどうやって抜け出せば良いのでしょうか?

 ローゼンシュタイン=ロダンは,この罠から抜け出すためにはビッグ・プッシュが必要だと唱えました.一旦,この罠から抜け出せば,今度は豊かであるが故に未来も豊かであるという高水準均衡状態に落ち着けそうです.
 どのようなビッグ・プッシュが望ましいかについて,ヌルクセ均斉成長戦略を主張しましたが,ハーシュマン不均斉成長戦略を主張しました.一見,相反する両者の主張ですが,政府が主導である,輸入代替戦略である,という共通点があります.かつての日本や現在の中国のように政府が主導的な役割を果たさなければ罠から抜け出すことは困難なのかもしれません.
 この他,"take-off"で有名なロストウの経済発展段階理論も紹介しました.

 さて,そもそも経済成長は貧困を削減するのでしょうか?この問いについて,クズネッツは逆U字仮説を主張しました.結論としては,経済成長により最初は不平等を招きますが,さらなる成長によりその不平等は小さくなっていくというものです.しかし,この仮説は後に「一般的ではない(どの国にも,いつでも通用するわけではない)」として棄却されました.
 また,つい最近までいくつかの国では,豊かになるのが一部の人(国)だけであったとしても,そのおこぼれは貧困層(国)にも届くはずだ,というTrickle down仮説が横行していましたが,経済学者たち(Dreze and Sen,1989)は歴史から,それが誤っていることを証明しました.経済成長すれば貧困は削減されるのではなく,経済成長とともに適切な公共政策が実施された時のみ貧困は削減されるのです.

 経済成長を妨げる要因としてついつい見逃しがちですが,地理的要因や偶然も実は国の将来を大きく左右する点も指摘しておく必要があります.

 今回の結論としては,貧困の罠から抜け出すためには,政府主導のBig Pushが必要であるが,「経済成長=貧困削減」ではなく,公共政策も欠かせないこと,また国によって成長を妨げる要因は様々なので,同じ処方箋を複数の国に使い回すことは効き目がないだけでなく,貧困を悪化させる可能性があるということです.

【今回の内容に関連した図書】
ジャレド・ダイヤモンド(2000)「銃・病原菌・鉄」草思社
ウィリアム・イースタリー(2003)「エコノミスト 南の貧困と闘う」東洋経済新報社
いずれも図書館にありますよ.

ミクロ経済学ベイシックⅠ 第3回(4/16)

 今回は前回に引き続き価格理論を説明し,その後,少しだけ消費者理論に入りました.

【授業の内容】
 まず前回の復習を兼ねて,ワルラス型メカニズムとマーシャル型メカニズムを具体的な数値例を用いて計算しました.需要曲線と供給曲線の使い方は今後も基礎となってくるので確実にできるようにしましょう.
 続いて,クモの巣理論を説明しました.ワルラス型とマーシャル型では,財の価格は均衡に向かって安定的に収束することが確認できましたが(実は例外もあるのですが非現実的なのでここでは省略します),現在のキャベツの価格のように不安定な財の分析には適していません.キャベツのように価格の変動が激しい財にはどのような特徴があるのでしょうか.おそらく,「生産までに時間がかかる」と「保存が効かない」というのが条件になるのでしょう.クモの巣理論はこの2つの条件を備えた財の分析に用いられます.授業では図を用いて,価格が激しく上下する様子を説明しました.

 後半は少しだけ消費者理論を説明しました.そこではいくつかの新しい言葉が出てきましたね.確認しましょう.
効用:財を消費して得られる幸せのこと.
限界効用:新たに1単位消費を増加することで追加的に得られる効用のこと.
 この効用と限界効用のグラフを描いてみましたね.そこから,ほとんどの場合,限界効用は徐々に減少することがわかりました.これを限界効用逓減の法則と呼んでいます.わかりやすく言うと,消費を増やしてくとどんどん飽きていくことです.喉が乾いた状態で水を少しだけ飲むと非常に美味しく感じますが,どんどん飲む量を増やしていくと満足してくるため,そのうち飲みたくなくなりますね.
 さて,来週はこれまで当たり前のように使ってきた右下がりの需要曲線をいくつかのやり方で導出してみます.

総合政策演習D 第2回(4/15)

 今回から実際にテストを行いました.

【授業の内容】
 今回のテスト範囲は推論でしたね.SPIは基本的に中学生程度の数学が多いのですが,推論はこれまでほとんどの学生が(推論という形では)習ったことのないものでしょう.そのため差が出やすい所かもしれません.ただし問題自体はそれほど難解ではないため,何度かやったことがあれば解けるはずです.

 テスト後にその問題の復習をした後,がらっと内容を替えて,就活に関する情報について説明することにしています.演習だけだとなかなか皆さんの集中が続かないですからね.
 今回はBtoB企業とBtoC企業の話でした.学生はとにかくBtoC企業ばかり受けようとします.学生は「知ってる企業しか受けない」のです.テレビのCMで見た,そのお店に行ったことがある,その商品を買ったことがある,という意味で知っている企業です.つまり知名度の高い企業ですね.全国の学生の多くはそのような行動を取るため,BtoC企業はそれほど優良企業でなくても学生が殺到します.競争が激しいため,当然ながらほとんどの学生は選考過程で振り落とされます.
 しかし学生に対する知名度の高さと企業が優良であるかどうかはあまり関係がありません.みんなが知っているけれど経営が危ない企業もあれば,世間では無名だけどその世界では知られている優良企業もたくさんあります.僕がみなさんに勧めたいのは,後者の企業を探すことです.「そんなに有名ではないけれど自分は知っている」という企業をいくつもストックしておきましょう.さて,それをどうやって探すかですが,1つには「就職四季報」や「業界地図」などの情報が参考になるはずです.また前回紹介した「カンブリア宮殿」や「ガイアの夜明け」などのビジネス系番組を毎回見るのも良いでしょう.

 というわけで,次回までの課題を出しました.
・就活ノートを作る.
・就活ノートに次に該当する企業を5社ずつ選んでくる.
 1.理想の企業(行けるものなら行きたいが可能性は小さい)
 2.現実的本命企業(努力次第で十分可能性がある企業)
 3.滑り止め企業(かなりの確率で内定が取れそうな企業)

 就活で失敗する学生の多くは「動けない」という特徴があります.「僕のアドバイスが信頼できないから他のやり方で動く」のならそれで良いのですが,「確かにそうかもしれないけれど面倒くさい」とか,「信頼できないけど他の案も見つからない」という理由で動けない人は危険ですよ.

経済学A 第1回(4/13)

 かなり更新が遅れましたが,経済学Aの第1回です.初回なので講義の説明をした後,経済学とはどのような学問かを説明しました.

【授業の内容】
 まず受講にあたってシラバスに書いてある内容を紹介しましたが,それは一番下に改めて書いておきます.

 さて,経済学とは何かですが,経済学の定義は人によって様々ですが,「希少な資源の配分と,ある目的について人間の行動を分析する学問」というのが広く受け入れられているでしょう.この定義には,皆さんが経済学でイメージするお金が出てきません.経済学はお金を分析する学問ではなく,どうすれば人々がもっと幸せになれるのか,から出発して,その道具としてお金を使うこともある,というのが僕の認識です.
 では具体的にはどうやるのかですが,経済学にはミクロ経済学とマクロ経済学という2本の柱があります.これらを用いて様々な分析対象について調べていきます.
 マクロ経済学とは,経済全体を一括りにし,その動きを眺めるものです.分析対象(例:日本)を望遠鏡で見るようなものだとイメージして良いでしょう.そこでは,GDP,物価,失業率などがトピックとなります.
 対するミクロ経済学は,分析対象を顕微鏡でみるようなものです.そこにはどのような構成要素(企業や家計などのことで,プレイヤーと言います)が存在して,どのような行動をするのかを調べます.

 今回は第1回ということもあり,経済学を学ぶ上で欠かせない考え方であるインセンティブを紹介しました.経済学では人々の行動を変えたい場合,説得したり強制するのではなく,インセンティブを与えることで自ずと行動を変化させることが理想的です.ここでは例としてインセンティブを使ってゴミの不法投棄を減らすことを考えましたね.

【講義について】
 シラバスの補足ですが,基本的に評価は期末試験で行います.期末試験が100点ならそれで評価も100点です.ただし,加点として授業での発表を用います.出席を点数として評価することはありません.ただし大学の規則として3分の1以上欠席すると期末試験が受けられませんし,それぐらい休んでしまうと期末試験もおそらく答えられないでしょう.なお,出欠確認は学生証によるチェックです.学生証を忘れた場合は欠席になるので注意しましょう.

2010年4月10日土曜日

開発経済学 第2回(4/9)

 今日は「貧困とは?(幸せとは?)」についてじっくり考えました.

【授業の内容】
 開発経済学とは貧困を撲滅するための学問であるので,当然ながら貧困とは何かをしっかりと理解しておく必要があります.そうでなければ「収入が増えた=貧困がなくなった」と安易な結論を出してしまうかもしれません.収入が低いことは貧困の1つの側面でしかありません.
 まずW.A.ルイスの考えた貧困を説明しました.ルイスは「牢獄での裕福な生活は幸せか?」と問いました.もちろん幸せではないでしょうが,ではなぜ幸せではないのでしょう.ルイスは金銭的な豊かさと幸せ,あるいは貧困は別物であり,開発経済学は選択範囲を増やすことを目的とすべきだと唱えました.その上で,目標とすべきは(とりあえず)1人あたりの産出量を増やすことだ,としました.結局はお金なのですが,その背景には選択肢という視点があります.
 次に,貧困はどうやって測るのかを説明しました.貧困とは多面的なものであり,「このモノサシさえあれば完璧だ!」というような指標はありません.そのためいくつもの指標が様々な目的のために作られました.
 まずは貧困の捉え方として,絶対的貧困と相対的貧困を説明しました.前者は,食料摂取,所得などに基準を設け,それを下回る人を貧困とみなします.後者は個人が全体の中でどのような位置づけにあるかにより判断します.つまり他者と比べて貧しい人を貧困とみなすのです.
 さらに貧困の集計方法として,貧困者比率と貧困ギャップ比率を説明しました. これまでの指標はすべて所得がベースですが,所得以外を考慮した指標もあります.その基礎となったのはインドが輩出した偉大な経済学者であるアマルティア・センの研究です.センは潜在能力アプローチという画期的な貧困の概念を作り上げ,様々な分野に大きな影響を与えました.センは機能のリストとして,1人あたりGNP,平均寿命,幼児死亡率,児童死亡率,成人識字率,高等教育就学率を挙げました.この研究はUNDPのHDI(人間開発指数)作成に影響を与えます. HDIはマブーブル・ハックが中心となり作成されました.以後,毎年UNDPから人間開発報告という形でランキングが発表されています.現在はこの他にも,HPI(人間貧困指数),GDI(ジェンダー開発指数),GEI(ジェンダーエンパワーメント指数)など多くの指標が存在します.
 続いて,Chambersによる貧困も紹介しました.こちらの切り口はHDIとは異なりました.いずれにせよ,貧困というのは多面的なものであることが理解できたと思います.特にChambersの指摘するショックに対する脆弱性などはついつい見落としがちでしょう.
 さて,国際社会は我々に残された課題(貧困の撲滅)に向けて1つの合意をしました.それが2000年国連ミレニアムサミットのMDGs(ミレニアム開発目標)です.それは2015年までに貧困の半減を目指すものであり,それに向けて各国にはODA拠出の増額が求められています.しかし先進国の多くはこの目標(ODAの対GDP比0.7%)をなかなか達成できておらず,貧困半減というゴールにたどり着けるかはかなり怪しくなってきました.

ミクロ経済学ベイシックⅡ 第2回(4/9)

 今回は価格調整メカニズムでした.

【授業の内容】
 まずダイヤモンドが高い理由について考えてみました.ダイヤモンドが高い理由として,皆さんからは「稀少性」,「ブランド(信頼)」,「需要」という意見がでましたが,確かにそれらしいようですが,それぞれ1つ1つについて考えてみると反例がありました.「稀少性はあるが安いもの」,「信頼されているけど安いもの」,「需要は高いけど価格は安いもの」がありましたよね.
 つまりそれぞれ1つずつでは十分ではなく,「稀少(供給が少なく)」かつ「需要が高い」という条件を備えているからこそダイヤモンドは高いようです.またその背景には企業による供給を減らし,需要を高めているという努力があります.

 さて,価格調整メカニズムについて,今回の授業では,ワルラス型価格調整メカニズムとマーシャル型価格調整メカニズムについて学びました.ワルラス型は企業が価格を決定し,それに応じて需要と供給が定まると考えます.この時,需要より供給が多ければ(超過供給),価格は下がります.逆に供給より需要が多ければ(超過需要),価格は上がります.
 一方のマーシャル型では,価格ありきではなく,まず生産量が決まると考えます.生産量が決定された後,消費者と生産者がそれぞれ買いたい値段(需要価格),売りたい値段(供給価格)を決定します.この時,需要価格よりも供給価格の方が高ければ企業は生産量を減らします.逆に供給価格よりも需要価格の方が高ければ企業は生産量を増やします.
 ワルラス型でもマーシャル型でも通常の需要曲線,供給曲線のもとでは,最終的には需要と供給が均衡するような価格に落ち着くと考えられます.

 今週配ったプリントは次週使うのでなくさないように.

総合政策演習D 第1回(4/8)

 総合政策演習Dでは,就職活動の筆記試験対策として毎回試験を行うのですが,今回は初回ということもあり就職活動(主に筆記試験)についての説明をしました.

【授業の内容】
 例年に比べ今年の4年生の就職活動は厳しいものになっています.採用が少ない一方,学生は危機感を高めており,ほとんどの企業では例年よりも志望する学生数が急増しているそうです.志願者が急増しても企業の人事担当者が面接することができる学生には限界があるので,面接を受ける前に多くの学生が様々な形で足切りをされてしまいます.その方法の1つが筆記試験です.
 演習Dでは筆記試験対策として,もっともよく用いられるSPI2の問題を解説します.来週から早速テストをします.きちんと予習しておきましょうね.

テキスト
 「これが本当のSPI2だ 2011年度版」洋泉社
予習範囲
 テキストpp.60-94

 また筆記試験対策以外で今からしておくべきなのは次の2つです.
1.ネタ探し
 「私は大学時代にこれをがんばりました」と胸を張って言える何かを探しましょう.もしなければ,年末までにそれを作りましょう.
2.企業研究
 誰もが知ってる有名企業にはライバルたちが群がるので,当然ながら競争は激しく,内定を勝ちとるのは大変です.そのため,「優良企業なんだけど,有名ではない企業」を探しましょう.それを探すためのテクニックはまた後日説明します.

 今回はオリエンテーションのため教室変更しましたが,次週以降は23301です.間違えないように.

2010年4月4日日曜日

開発経済学 第1回(4/2)

 今回は,データから開発途上国の現状を見たほか,ジンバブエを例に,国が豊かになれない原因について考えてみました.
 専門科目ですので,関心がある人だけ受講してください.単位が取りたいから,という人はより単位の取りやすい科目をおすすめします.レポートで要求する水準は結構高いと思います.

【授業の内容】
 まず,開発経済学とは何かを説明しました.経済成長とそれを実現するための政策という意味ではマクロ経済学ですでに学んだはずです.ではマクロ経済学と開発経済学はどこが違うのでしょうか?途上国の貧困問題を解決するためには,もちろんマクロ経済学の知識も使いますが,それだけでは不十分です.貧しい国にはそれぞれの国固有の問題があります.それぞれの国の事情に合わせて,有効な経済政策を導き出すための裏付けとなる理論的・実証的研究が開発経済学と言えます.
 
 さて,では実際に途上国はどれぐらい貧しいのか,所得,健康,教育など様々なデータを見てみました.いくつかのデータからわかることは,貧しさというのは決して所得の多寡だけで決まるものではないということです.
 次回は,その貧困とは何か?(幸せとは何か?)国レベルで貧困(幸せ)を測るためにはどんな指標が必要なのかを考えていきたいと思います.

 後半は1980年に独立したジンバブエが現在までどのような道を進んだのかを説明しました.
 まず,皆さんに「貧しい国が成長するために必要なものは何か?」を答えてもらいました.いきなり政府の統治(ガバナンス)という答えが出てきて驚きましたが,まさしくジンバブエに欠けていたものはガバナンスでしょう.ガバナンスを欠くことは国に何をもたらすのでしょうか.
 1980年に「アフリカでもっともめぐまれた独立」を果たしたジンバブエは,農業生産,天然資源に恵まれ,識字率も高く,社会的インフラも周辺国に比べて高い水準にありました.しかし,現在のジンバブエはアフリカの中でも悲惨な状況にあります.現在の状況に至った原因は,農業の軽視,長期独裁による政府の腐敗,批判をそらすために人種対立を煽ったこと,経済の原理を無視した政策などがあげられるでしょう.
 ここでは主に松本仁一(2008)「アフリカ・レポート」を参考にしました.授業時間内ではつたえきれなかった部分もあるので,興味のある人はぜひ読んでみてください.

 今回使ったPowerPointのファイルをHP上にアップしておきます.メモできなかった人は参考にしてください.

【さらに興味があれば】
ロバート・ゲスト(2008)「アフリカ 苦悩する大陸」東洋経済新報社
ウィリアム・イースタリー(2003)「エコノミスト南の貧困と闘う」東洋経済新報社

【受講条件,評価について】
 受講条件としてミクロ・マクロ経済学を履修済みであること.履修していない場合は必ずマクロ経済学ベイシックⅠを並行して受講すること.マクロの基礎的な知識がないと理解が困難です.
 評価は,毎回のミニレポートと,複数回(3回程度)のレポートにより行います.レポートを提出しなかった場合は単位を放棄したものとみなします.

【第1回課題:課題図書レポート】
 下のサイトの課題図書リストにある本の中から1冊を選び,それを基にしたレポートを提出せよ.
http://wmt.bunri-u.ac.jp/mizunoue/filedl.html
 期限:5月21日20:00
 文字数:表紙,図と表を除きA4用紙3枚以上(2枚+αでは不可,最低でもきっちり3枚は書くこと)
 なお「レポート作成マニュアル」を必ず参考にすること!レポートの最低限のマナーが守られていなければ評価できません.特に引用のルールは厳しいので要注意.

ミクロ経済学ベイシックⅠ 第1回(4/2)

 新年度最初の授業ですね.今回はミクロ経済学とはどのような学問なのかを説明しました.特にミクロ経済学による「問題の考え方」を中心に説明しました.しかし,次週からはしばらくミクロ経済学の基礎を学ぶので,今回とはかなり印象は違うと思います(計算もわりと出てきますしね).

【授業の内容】
 まずミクロ経済学とマクロ経済学の違いを説明しました.ミクロ(micro)と言うだけあって,経済を構成する微小(micro)な要素である家計(や個人)や企業に注目し,それらの行動を分析します.主なプレーヤーは家計や企業であり,またそれらのプレーヤーの経済行動の場である市場(しじょう)の役割についても考察します.市場では財や労働力などが売買されます.とは「モノやサービスの総称」のことです.よく使う言葉なので覚えておきましょう.
 ミクロ経済学では,これらのプレーヤーはインセンティブに基づいて行動すると考えます.ある選択肢に出くわした時,プレーヤーはそれぞれの選択肢のメリットとデメリットを考え,どちらを選んだ方が得なのか判断します.皆さんも無意識のうちにこのような選択をしているでしょう.
 では,インセンティブの考え方を用いて,どのように問題を解決するのか.ゴミの不法投棄などいくつかの例をもとに説明しました.

 次週はダイヤモンドの値段について考えます.

【テキスト】
小林弘明他(2008)「入門ミクロ経済学」実教出版
【参考書】
伊藤元重(2003)「ミクロ経済学(第2版)」日本評論社
その他,授業内で随時紹介する.

【評価方法や授業の仕組みについて】
 受講条件は経済数学入門を受講済みであること.受講していない場合は次回の講義までに相談に来ること.
 ミクロ経済学の評価方法は次の通りです.
・期末テストと複数回の小テストの合計点を100点とする.
・ただし,発表点を最大20点まで加点する.その結果,合計が100点を超えた場合は100点として評価する.
・出席確認には学生証を使うため,学生証を忘れた場合は欠席とする.
・1/3を超えて欠席した場合は期末試験および追再試試験の受験を認めない.