2008年6月30日月曜日

経済政策論 第11回

 今回から新たなトピックである消費税と年金です.

【授業の内容】
 消費税だけだと専門的になりすぎるので,消費税率アップの遠因(?)である年金問題も一緒に考えました.
 消費税はこれまで学んだように,間接税です.そのため消費税率を上げると,低所得層にとって特に負担が重く感じられます.では,なぜ消費税を上げねばならないのでしょう?
 それを理解するために,まず年金の仕組みを説明しました.日本の年金制度は少子化問題の際にも説明しましたが実質的に賦課方式を採っています.そのため,少子高齢化すると安定的な運用に支障が生じます.年金制度が複雑なのは,この賦課方式という制度に加えて,2階建てになっているからでしょう.基礎的な年金部分は共通ですが,2階部分は職業により加入できる年金が異なります.その他,国庫負担の割合や,インフレへの対策など様々な説明をしました.
 続いて,いわゆる年金問題とはどこが問題なのか解説しました.未納率,水平的不公平,垂直的不公平,他の社会保障との関係などなど,問題は山積しています.

 さて,消費税との関係ですが,今後の年金システムは大きく分ければ,現行のシステムに小さな変更を加えた社会保険方式と,抜本的な変更を加えた税方式の2つの間で揺れています.どちらを選ぶかによって消費税率も変わってきます.

【課題】
 次回は論点として,社会保険方式と税方式のどちらが良いのか?それぞれどんなメリットとデメリットを持つのか調べてきてもらいます.もちろん自分の意見もはっきりさせてきて下さい.
 また,最終回の発表のための簡単なまとめを作ってきて下さい.それに僕がコメントしますので,より良いものにしましょう.

文理学 第11回

 今日は検索のテクニックを学びました.

【授業の内容】
 まず前回の復習をしました.学内のWeb OPACを利用して,目的の図書を確実に見つけることができるようにしましょう.再来週に提出してもらうレポートを書くためにも必要です.

 続いて検索のテクニックとして,AND,OR,NOTの意味を説明しました.徳島市もしくは小松島市で合宿する施設を探す時には,どうすれば上手く検索できるか理解できたはずです.探している情報と関係ない邪魔なページが出てこないようにするために,上手くNOTを活用しましょう.

 最後に再来週(最後の講義)に提出してもらうレポートのテーマを発表しました.次の3つのうちから選びましょう.

1.将来の職業について
 これはただ単に「○×になりたい!」ではなく,優良企業ランキング,働きやすい企業ランキング,生涯給料ランキングなどのデータから,興味のある企業(業界)を見つけてみようというものです.学生は(僕もかつてはそうでしたが)あまり社会のことを知らないものです.テレビでCMしてる企業ぐらいしか知らなかったりね.授業でも,日経の優良企業ランキングを見てみましたが,2位のファナック,6位キーエンス,8位ロームといった企業は超優良企業にも関わらず,学生にとっては聞いたことのない企業でしょう.しかし,社会人や就活を経験した学生なら一度は耳にしたことがある企業です.

2.卒業研究のための下調べの下調べ
 入学してもうすぐ半期が終わります.様々な分野の導入科目を受講しているみなさんは,それぞれの分野に好き嫌いが出始めた頃かもしれませんね.関心のあるテーマについて少し調べてみましょう.まず,その分野の基礎知識と,どのような文献が必要なのかを調べ,解決済みの問題と未解決の問題を分類してみましょう.

3.夏休みに行ってみたい国
 最近の学生は海外志向が低いというもっぱらの噂です.僕自身が学生の頃と比較すると特にそんな気がします.僕が大学生の頃はバブル崩壊真っ盛りの頃で,そんなに景気も良くなかったけど,多くの学生がお金を貯めて貧乏旅行をしていました.今の間に広い世界を見てみましょう.というわけで,行ってみたい国の経済,文化,言語,観光名所や,どうやって行くのか(ルートや費用など)を調べてみましょう.
 外務省のホームページや,各国の大使館でその国についての情報は手に入りますし,エイビーロードなど格安航空券を販売しているサイトも役に立ちそうですね.

 なお,レポートの書き方については来週の文理学で説明します.今は取りあえず下調べをしておきましょう.

2008年6月27日金曜日

ミクロ経済学ベイシックⅠ 第11回

 今日は一般均衡です.取りあえず前期の締めに入りました.

【授業の内容】
 まずは消費者,生産者理論の復習を基に,消費者は相対価格限界代替率が等しくなる点で消費すること,生産者は相対価格と限界変形率が等しくなる点で生産することを確認しました.

 続いて,より良い変化とは何かを規定する概念としてパレート改善及び,パレート最適とは何か説明しました.パレート改善とは,他者の効用を下げることなく誰かの効用を上げることです.パレート最適とは,そのパレート改善ができない状況,つまりこれ以上誰かの効用を上げようと思えば,他の誰かの効用を下げざるを得ないような状況です.
 さて,考え方を説明したところで,エッジワース・ボックスに取りかかりました.エッジワース・ボックスは2人のプレイヤーの無差別曲線を組み合わせたもので,少々ややこしいですが,なかなか優れた道具です.
 これを用いて,プレイヤーAとBとの間で資源を再配分することでパレート改善が可能かどうかを検証しました. ちなみにエッジワース・ボックス上におけるパレート最適である点を集めたものは契約曲線と呼ばれます.

 来週は第10回の余剰分析の時に配った例題のプリントを忘れないように持ってきましょう.

テストについて
 期末試験は7/11の講義時間中に行います.テスト期間中は2年生は(おそらく)えらいことになっているので,テスト期間外に行います.
 範囲は第1回から来週の講義までの内容です.中間試験の内容も含まれるので注意しましょう.なお,皆さんの多数決により持ち込みなしになりました.

経済学Ⅱ 第12回

 今日はゲーム理論でした.普段とずいぶん違うので戸惑ったかもしれませんね.

【授業の内容】
 今日は5つのゲームを通じて,駆け引きについての合理的な考え方を学びました.そもそもゲーム理論で言うところのゲームとは,プレイヤーが複数おり,プレイヤーの戦略が他のプレイヤーに影響を与えるような状況のことを指します.

Game.1 囚人のジレンマ
 ゲーム理論でもっとも有名なゲームです.以下Game.4まですべて,非協力,完備情報,同時手番の1回限りというルールの下で行うゲームです.それぞれのルールを変えていくと途端にややこしくなりますが,まぁ今回はゲーム理論の入門ですので.
 まず,このゲームを通じてルール,戦略,利得,合理的な考えなどについて学びました.

Game.2 戦略の逐次消去
 Game.1も戦略の逐次消去ですが,こっちはすぐには解けないゲームです.使い途のないダメな戦略(支配される戦略と呼びます)を1つ1つ消していくことで,両者の選ぶべき戦略が見つかりました.

Game.3 ナッシュ均衡
 このゲームは,戦略の逐次消去では解けません.しかし,ナッシュ均衡と呼ばれる概念を導入することで,両者の最適な戦略が見つかりました.ナッシュ均衡とは,あるプレイヤー(A)の戦略が他のプレイヤー(B)の戦略に対する最適反応になっており,プレイヤー(B)の戦略もプレイヤー(A) の戦略に対する最適反応になっているケースです.この場合,相手の裏をかくことができません.

Game.4 ホテリング・ゲーム
 今度は利得表を使わずに,ナッシュ均衡の意味を理解しているか確認しました.浜辺での立地ゲームです.

Game.5 逐次手番ゲーム
 最後に,同時ではなく順番にプレイヤーの戦略決定を決定するゲームをやりました.ガソリンスタンドの価格設定を想定しました.解き方としては,まず最後に選択するプレイヤーの行動を決めて,徐々にさかのぼっていくと言う後ろ向き帰納法で戦略を決定しました.

2008年6月26日木曜日

開発経済学 第12回

 今回は貧困と教育です.これまでにもしばしば言及してきたテーマですが,今日はしっかりやりました.

【授業の内容】
 まず,国際条約である「子供の権利条約」を紹介しました.これには日本も含め,世界の193の国・地域が締約しています(例外はアメリカとソマリア).この条約には初等教育の義務化,中等・高等教育へのアクセスなどが明記されていますが,現状ではすべての子供が初等教育を受けられるわけではありません.

 子供への教育プロジェクトとして,OLPCプロジェクトを紹介しました.グローバル化したこの世界においてはネットにつながることは,タダで多くの情報に接するだけでなく,収入を得るチャンスでもあります.OLPCプロジェクトには障害も多く,順調とは言えないようですが,がんばってほしいものです.OLPCの詳細は以下参照.
公式HPhttp://www.laptopgiving.org/en/index.php
OLPC(Wikipedia日本語版)http://ja.wikipedia.org/wiki/OLPC

 これまでも教育の重要性については,貧困の連鎖についてなどで説明してきました.今回は,親はなぜ子供に教育を与えるのか,与えないのかを中心に説明しました.

 まず,教育を受けさせる理由ですが,以下の3つに大別できます.
・利他的動機:子供の幸せが親の幸せである.
・利己的動機:投資としての教育,消費としての教育
・義務

 このうち,投資としての教育に焦点を当て,教育の収益率を紹介しました.Psacharopoulos and Patrinos(2002)の推計によれば,初等教育の私的収益率は地域による違いはあるものの,およそ10%程度と結構高いようです.
 しかし,貧困層の多くは就学しません.その理由として,直接的費用と機会費用があります.直接的費用とは,学費,制服・文具代,交通費などのコストのことです.途上国であっても初等教育については学費が無償という国は少なくありませんが,学費以外の費用もバカになりません.また,それと同様に就学の足枷になっているのが機会費用です.日本では小学校に行かずに働き賃金を得ることはほぼ不可能ですが,途上国では子供であっても労働力として家計を支えることは珍しくありません.農村部であれば農業,水汲みなどに,都市部であればインフォーマルな労働に従事する機会があるでしょうし,女の子は子守りなどの役割が期待されることもあります.

 つまり,基礎教育が義務的なものであってもそれをまっとうしない背景には,就学させる余裕がない,就学させるより働かせた方が良い,という合理的な選択である可能性があります.ではその選択を尊重すべきか?というと,そうとも言えません.
 なぜなら投資としてみた教育は外部性を持つという特徴があるからです.つまり私的収益率だけでなく,社会的収益率も考慮しなければ社会的に最適な教育水準は達成できず,資源配分に非効率性が生じます.そのため,国(あるいは援助機関)が教育のコスト低減,あるいは無償化のため支出する必要があります.

 最後に貧困の連鎖を断ち切るプロジェクトとして,バングラデシュのFFEを紹介しました.経済学的に考えれば,親は子供を働かせる場合と,就学させる場合のメリット,デメリットを比較し,有利な方を選択するはずなので,就学するメリットを増やすというのは理に適っていますね.まぁ,親が教育に対して,どれだけ功利的に選択しているかは検証が必要でしょうが.

 来週はガバナンスについてやろうと思っています(未定).

2008年6月24日火曜日

基礎総合演習A 第9回

 今回は,これまでの総括を行いました.

【授業の内容】
 まず,各チームにこれまでの資産の変化と,今後の予想を説明してもらいました.それぞれ足りないところもあれば,良いところもありました.ただし,現在の時点では各チームともわずかながら当初の予算100万円を割っています.
 しかし,最初に買った時点に比べれば,皆さん株投資についての知識がついていることでしょうから,今後挽回して下さい.
 発表の途中で,脱線しながら,「なぜ製薬メーカーの株価は大きく変動するか?」,「効率的市場仮説とは何か?」も考えてみました.特に効率的市場仮説について理解することは,値動きのタイミングを理解する上で大切だと思います.

【課題】
 来週は,「(上場している株式会社の中で)就職するならどの企業に行きたいか?」についてのレポートを提出&発表してもらいます.誰しも就職するなら,すぐに倒産するかもしれない企業より,成長が見込める企業に行きたいはずです.そう考えると,株価の予測と,就職したい企業の選択も,まったく無関係ではないと思います.
 レポートはA4用紙1枚以上です.授業中に説明した形式を守って作成して下さい.

経済学A 第9回

 今日は,貿易とグローバリゼーションについてです.例年はそれぞれ分けて2回で講義をするのですが,アンケートの結果をもとに短縮版で行いました.

【授業の内容】
 前半は貿易についてです.後半との絡みでいえば,商品の貿易と限定した方が良いかもしれません.
 まず,良い変化とは何かを理解するために,パレート改善という概念を紹介しました.パレート最適とは,「他の人を不幸せにすることなく,誰かが幸せになること」です.これを良い変化と仮定して,貿易により両国の幸せ(豊かさ)はどのように変化するか検証しました.
 今日説明した内容は,リカードの比較生産費説と呼ばれるもので,入門の経済学のテキストを読むとしばしば出てきます.相手国と比較して,ある商品を効率的に生産できることを絶対優位と呼びます.まず,両国が互いに絶対優位を持つ産業を持っているケースを考えました.この場合,両国はそれぞれ自国が得意な産業に特化し,それを交換することで両国ともより豊かになりました.つまり貿易によりパレート改善するわけです.これはまぁ予想通りでしょう.
 次に,どんな産業でも絶対優位を持つ国と,逆にすべてに関して絶対劣位にある国の貿易は成り立つのか?どっちが得をするのか?について考えました.他国と比較して絶対優位にある産業が無くても,比較優位は(ほとんどのケースで)発生します.比較優位とは,「(Aの生産もBの生産も)どちらも苦手だけど,(Bに比べればAの方が)まだマシ」であったり,「(A,B)どっちも得意だけど,(Aに比べれば)こっち(B)が特に得意」というものです.このように比較優位しかない場合でも互いに比較優位にある産業に特化し,貿易することで両国とも豊かになる可能性があることがわかりました.
 ただし,国レベルで見れば豊かになった,で良いのですが,その背景には生産調整という名の下に倒産や解雇が行われていることでしょう.つまり,貿易すると(国際市場に参入すると),他国と比べて非効率的な生産をしている産業は縮小する可能性があります.日本はかつて,アメリカと比べ繊維産業に絶対優位があったので,アメリカの繊維産業は衰退しました.現在の日本の繊維産業は中国などの途上国に比べ絶対劣位にあるので,淘汰されつつあります.

 後半はグローバリゼーションについての説明をしました.先日,自民党内の一部の議員が福田首相に「移民立国」として,1000万人の移民受け入れを提言しました.その先駆けか,7月にはインドネシアから305人の看護師,介護士がやってきます.看護,介護の業界はどちらも重労働であることから,日本では人手不足です.人が足りないから外国から受け入れる,理に適っているような気もしますが,果たして何が起こるのでしょう…?
 今,東京でNTTの番号案内104に電話をかけると沖縄にかかるそうです.アメリカでは一部の企業のサポートセンターはインドに存在します.どうしてそれぞれ,東京,アメリカにコールセンターを作らないのでしょうか?その理由は東京よりも沖縄,アメリカよりもインドで人を雇った方が賃金が安いからです.しかし,20年前はこんなことは不可能でした.なぜなら賃金の差より,通信コストの方が高い,もしくはそもそも技術的に不可能だったのかもしれません.またトーマス・フリードマンの「フラット化する世界」の中では,アメリカ人中学生の家庭教師をオンラインで行うインド人青年の話が取りあげられていました.これまで距離の壁で分断されていたことが可能になりつつあります.
 今回の貿易との関係で言えば,20世紀まではモノのグローバル化であったのに対して,21世紀の現在,サービスのグローバル化が現実のものとなっています.これまで距離の壁で守られていたサービス業が,ネットにより世界市場で競争することを余儀なくされました.日本は幸い(不幸にも?),言語の壁があるため,アメリカほどサービスのグローバル化には晒されていませんが,それも時間の問題でしょう.グローバル化は誰にとっても避けられません.

 最後に不可避であるグローバル化を生き抜くためのテクニックの1つを紹介しました.日本人にとって,国際的な競争での武器は教育水準の高さです.これについては世界中の多くのライバルたちより有利な条件にいます.特に大学に来ている学生のみんなは世界的に見れば本当に恵まれた存在です.
 一方,僕から見たみんなの欠点は,欲の不足です.欲と言っても,食欲や睡眠欲ではなく,意欲や知識欲です.「~になりたい!」,「もっと~が知りたい!」という意欲では圧倒的に負けているでしょう.中国の大学の図書館の話をしましたが,皆さんはどう思いましたか?僕は少し怖くなりましたが,皆さんも同じくらい危機感を持ってくれると,ほとんどの問題は解決されると信じています.

2008年6月23日月曜日

経済政策論 第10回

 今回はトピック4.5?として,環境問題をとりあげました.

【授業の内容】
 前回,ガソリンが環境に悪い,という意見がありました.では,ガソリン税はどのような役割を果たしているのでしょうか?税率を上げるとどうなるのでしょう?

 まず,環境とガソリンの関係を知るために,京都議定書について発表してもらいました.その内容は,「1997年京都で,先進国は温室効果ガスの排出量を,1990年を基準として数%削減する」というもので,国により削減目標が異なります.また途上国には削減義務はないそうです.目標の設定だけでなく,排出量を削減するためのメカニズムが盛り込まれている点も特徴です.僕はこの会議の時,たまたま京都に住んでいました.高校時代の友人が卒論を書くため,はるばる会議を傍聴に来たのを覚えています.

 さて,その削減メカニズムとして,排出量(排出権)取引がありますが,それも前回の課題でしたので発表してもらいました.ここはちょっとわかりづらいので,僕が補足しました.

 ちょっと話を変えて,「地球温暖化対策にはどのようなものがあるか?」について発表してもらいましたが,みんな「身近な省エネ対策」についての発表が多く,政策についての言及が少なかったのが残念です.ただ,代替エネルギーという話も出てきたので,そのままの流れで,最後の課題であるバイオ燃料についての発表もしてもらいました.
 環境問題は,ちょうど先週経済学Ⅱで学んだ,外部性により発生します.外でポイ捨てする人も自宅の庭ではポイ捨てしないでしょうからね.外部性が発生する場合には,最適な資源配分が実現できないので問題ですが,授業ではその解決方法もいくつか紹介済みです.その1つとして内部化があります.環境破壊を外部のこと,つまり他人事ではなく,自分の問題にするシステムが必要になります.排出権取引もその一例で,CO2の排出量を減らすことを自分の利益に,CO2の削減失敗を損失になるような仕組みを作ることで,CO2の発生を内部化するわけです.良くできてますね.とは言え,京都議定書には大国アメリカが批准していない,途上国への義務づけなし,などいくつかの問題があり,京都議定書のその先が模索されているのが現状です.ちなみに日本も2012年までに排出量を6%減らすという目標を達成するのは非常に厳しい状況です.

 来週は消費税になりました.しかし,消費税についてどんなことをやればよいのだろうか…?しばらく悩みそうです.

【お知らせ】
 最後の授業(7/14)はこれまでやったテーマの中から1つを選んで発表してもらいます.またそのための資料も用意して下さい.

文理学 第10回

 今日から前期終了時まで,文理学の担当が僕になります.文理学は担当が初めてなので,何かと準備が大変です….

【授業の内容】
 今日は大学図書館の利用について学びました.県の図書館とどこが違うのか?なぜネットではなく書籍を利用するのか?どうやって文献を探すのか?などをプレゼンテーションしました.
 その後,ネットで大学の図書館にアクセスし,OPACで探す文献が図書館のどこにあるのか情報を集めました.さらに図書館に移動して,実際に本があることを確かめました.
 普通の書籍は比較的簡単に見つかったようですが,白書,雑誌,DVDなどはずいぶん苦労していた様子です.しかし,これでどんな資料もある程度探せるようになったのではないでしょうか?大人数で図書館に行くので「騒がしいくなるのでは?」と心配していましたが,特に問題ない様子でした.図書館では静かにするというのは最低限のマナーです.これからも守りましょう.

【お知らせ】
 来週もネットを利用して授業を進めるので,今回同様,メディアセンター5Fのプレゼンテーションルームで授業を行います.

2008年6月20日金曜日

ミクロ経済学ベイシックⅠ 第10回

 今日は余剰分析です.ここまで学んだ知識を活かして,政策を分析できるようになります.

【授業の内容】
 まず簡単に前回の価格理論をおさらいしました.需要曲線と供給曲線の意味を確認するためです.それさえできれば,消費者余剰,生産者余剰の持つ意味も理解しやすくなるはずです.
 最初に,最も理想的に価格と生産量が決定された場合の消費者余剰,生産者余剰,社会的余剰を図で説明しました.厚生経済学の第一基本定理により,完全競争市場で価格と生産量が決定されれば社会的余剰が最大になることがわかっています.
 続いて,価格統制,数量制限,課税(従量税)のケースを通じて,政府による介入がいかに社会的余剰を減少させてしまうか,市場を歪めてしまうか説明しました.社会的余剰の減少分を死荷重と呼ぶんでしたよね.
 授業では図で説明しただけでなく,プリントを配布して実際に余剰の大きさを計算してもらいました.慣れるまでは難しそうに見えますが,実際にする計算は連立方程式や3角形の面積をもとめるぐらいで,それほど難しくないはずです.教科書にも同様の問題がありますので,期末試験までに必ず解けるようにしておきましょう.

経済学Ⅱ 第11回

 今日は市場の失敗として,公共財と外部性について説明しました.

【授業の内容】
 前回,厚生経済学の第一基本定理として,競争的な市場で価格と生産量が決定されれば社会的余剰が最大になると説明しましたが,実際には市場が上手く機能しない場合もあります.その例として,公共財と外部性があります.

 公共財とは,非競合性非排除性を併せ持つ財のことです.これらの特徴がある財はタダ乗りされてしまうため,いくら需要があっても民間企業が生産することは困難です.例としては,道路や港湾などの社会インフラ,国防,警察,法制度や言語などもそれにあたります.
 また非競合性と非排除性のうち,一方しかもたない財を準公共財と呼びます.例えばNHKのBS放送は非競合性は持ちますが,非排除性は持たないので準公共財にあたります.また,公園のブランコは非排除性は持ちますが,非競合性は持ちません.
 では,非競合性と非排除性のどちらも持たない財はなんと呼ぶか,それは私的財です.普段みなさんがお店で見かける財のほとんどは私的財ではないでしょうか?

 後半は外部性についての説明です.外部性とは,ある経済活動が,それとまったく関係のない第3者に与える影響のことです.良い影響であれば外部経済,悪い影響であれば外部不経済と呼びます.環境破壊は外部不経済の典型例です.また,外部性がどういうルートを通じて波及するかについても,金銭的外部性(市場を通じて),技術的外部性(市場を通じないで)という区分もあります.
 最後に外部性に対する対処方法として,補助金・課税(ピグー税),内部化,交渉(コースの定理)などを説明しました.

開発経済学 第11回

 今回は,国際機関からの援助についてでした.

【授業の内容】
 途上国への援助機関を大別すると,国際機関,政府(二国間援助),NGOなどの民間の3つになります.二国間援助については前々回説明したので,今回はNGOと国際機関について説明しました.

 NGOやNPOはいまやそれほど珍しいものではありませんね.ミャンマーのサイクロン被害や中国四川省での震災などの自然災害だけでなく,紛争,貧困など様々な問題の解決のために世界中で数多くのNGOが活躍しています.国境なき医師団は特に有名ですよね.
 他の援助機関と比較した場合のNGOの利点としては,
・きめ細かい援助が可能
・緊急時に迅速な対応が可能
・国際的な相互理解に役立つ
 といった点が挙げられます.
 逆に欠点としては,
・人材不足
・資金源が限定される
 などが指摘されます.

 次に,国際的な援助機関の説明として,国連とそのグループを紹介しました.誰でも一度は耳にしたことがあるUNICEF,IMFやWHOも国連グループの一員です.その中でも特に途上国の貧困について包括的な取り組みをしている機関として,IBRD(国際復興開発銀行)とIDA(国際開発協会),通称世界銀行について詳しく説明しました.
 ちなみに日本もかつては世界銀行などの国際機関から援助を受けていました.東海道新幹線,首都高,黒部ダムなどは援助資金をもとに建設されましたし,日本は借款を返済し終えたのは比較的最近の1990年のことです.

 さて,援助機関の紹介が終わったところで,続いて援助の方法と援助理論について説明しました.
 その中で,Two-Gapモデルと,世銀,IMFによる構造調整政策を中心に説明しました.構造調整政策が失敗した原因を調べることは,途上国の開発政策を考える上で非常に貴重な材料だと思います.

 本当は援助理論のミクロ的側面として,参加型開発についても説明したかったのですが,時間切れで諦めました.

 授業で配付した資料で,今回の参考文献を4冊紹介しています.

【第4回レポートについて】
 第4回のレポートのテーマは,この講義で取りあげる次の4つのテーマの中から1つを選ぶことにします.
・工業化と貿易
・農業
・マイクロファイナンス
・貧困と教育
 このうち貧困と教育はまだ講義していません.なお,テーマに沿っていればなんでも良いわけではなく,もちろん講義した内容を基に構成して下さい.

提出期限:7月10日15:00
枚数:3枚以上

2008年6月17日火曜日

基礎総合演習A 第8回

 今日はチーム毎に発表してもらいました.

【授業の内容】
 前回決めたように,携帯電話業界の3社を例に,それぞれのチームがどこの株価が今後もっとも上昇するかアピールしてもらいました.
 身近なだけに,客観的に分析できないのではないかと心配したのですが,どのチームもきちんと調べていたようでした.企業の概要,業績,株価の値動き,サービスなど様々な点から分析できていたと思います.
 僕はあんまり携帯に関心がないので知らないことも多く,なかなかタメになりました.

 さて,来週はこれまでの運用の総括を行います.これまでの売買の経過報告や反省をした上で,新たに売買をしてもらい,その根拠を発表してもらいます.みんなほったらかしにしていないですか?

経済学A 第8回

 今回は為替でした.前回までの資産運用との絡みで,外貨預金も紹介しました.

【授業の内容】
 銀行のホームページで外貨預金について調べてみると,ずいぶん魅力的な利子率がデカデカと提示してあります.通貨によっては年利20%というのもありました.期間限定のキャンペーンのようですし,今すぐこの銀行に預金するべきなのでしょうか?

 それを理解するために,まず円高と円安とはどういう意味か確認しました.わかったような気になってると思いますが,とっさに言われるとついつい間違ってしまいますね.
 具体的なレートを想定して,アメリカ産牛肉を輸入する場合と,アメリカで自動車を売る場合の例を挙げて為替の影響を理解しました.
 我々消費者や,原材料を海外から輸入している企業にとっては円高はありがたいですが,逆に日本で生産して海外に輸出している企業にとっては円安の方がありがたいようです.つまり円高と円安は立場によって,それぞれメリットとデメリットがあるようなので,一概に「円高が悪い!」,「円安が悪い!」と言うことはできません.

 さて,この為替レートですが,円とドルで言えば,1ドルを買う時に何円が必要かという価格のことのようです.すると価格である以上,やっぱり需要と供給のバランスで決まるのでしょう.サンドイッチの値段や,銀行預金の利率同様,需要と供給が大事です.
 配付した資料でもわかるとおり,為替レートは結構変動しています.そのため,投機的な目的で売買されることがあります.この点がサンドイッチとの違いです.サンドイッチは腐るので投機には使えませんよね.一方,ドルはしばらくほっといても,1ドルは1ドルのままです.
 この投機目的での外貨売買として,FX(外国為替証拠金取引)が近年流行っているようですが,リターンが大きい分だけ,リスクも大きいです.ここでもリスクとリターンは比例しています.うまい話はありません.

 後半は「実践外貨預金」と題して,実際の利率や手数料を使って,100万円をオーストラリアドルに替えて預金するとどうなるか計算してみました.そこから,預金期間の為替変動リスクがあること,結構手数料が高いこと,利子所得に税金がかかることなどがわかりました.今後,円安になると思えば外貨預金も一考の価値がありそうですが,円高になってしまえば元本割れの可能性もあります.つまり預金と言っても国内の銀行に預ける場合と異なり,リスクが存在します.

 最後に,経済学っぽく,為替制度について紹介しました.授業ではほとんど変動相場制の下での話をしてきましたが,日本円が変動相場制を選んだのは1973年のことで,それ以前は固定相場制です.世界的に見ると変動相場制と採る国はそれほど多いわけではなく,それ以外の制度(固定相場制やペッグ制度)を採る国の方が多いです.それぞれメリットとデメリットがありますが,それは興味がある人は調べてみて下さい.

 来週は貿易とグローバリゼーションについてやります.グローバリゼーションについては,金曜日に公開講座で講演があるのでぜひ聴いて欲しいと思います.
http://www.bunri-u.ac.jp/what_new/20080407/index.html

2008年6月16日月曜日

経済政策論 第9回

 前回に引き続きガソリン税です.今日は欠席が多かったので,気分を変えて屋外での授業にしましたが,意外と寒かったですね….

【授業の内容】
 まず簡単にガソリン税の復習をしました.ガソリン税こと,揮発油税と地方道路税はどちらも間接税,国税であり目的税です.また批判として,目的以外の用途への流用や,経済的弱者に対する負担の重さがあります.

・ガソリン価格の変化が経済に与える影響
 ここでは,ガソリン自体の価格が上がることだけでなく,輸送費など生産者のコストが増えることにより間接的に様々な財の価格が上がってしまうという発表が多かったです.これまでデフレ傾向だっただけにインフレの印象が強いという発言もありました.

・ガソリン価格はなぜ上がり続けるのか?
 原油価格が上がっているから,という意見もありましたが,では原油価格はなぜ上がるのかについても考える必要があります.
 新聞の記事を参考にして,原油の需給バランスと投機的マネーの流入の両面から説明しました.

・環境とガソリンの関係
 ガソリンの使用は環境に良くない,という意見もありましたが,さてどういうルートで誰にどんな影響が出るのかと聞くとつまることもありましたね.
 環境とガソリンという話になるとバイオ燃料の話を避けて通れないような気がします.

 ということで,来週は環境について調べることになりました.課題は以下の通り.
・京都議定書とは何か?
・地球温暖化対策にはどのようなものがあるのか?
・排出権取引か,バイオ燃料のいずれかについて調べる

2008年6月15日日曜日

【お知らせ】大学生のためのジュニア地球案内人プログラム

 先日,青年海外協力隊についての講師として講演していただいたJICA四国の福田様より,「大学生のためのジュニア地球案内人プログラム」の参加者募集のお知らせを頂きました.
 国際協力に関心のある大学生向けのプログラムのようです.目的意識を持った同年代の友人を作るためにも貴重な機会だと思います.

 詳細は以下のページから.締切は7月1日ですのでお早めに.
http://www.jica.go.jp/shikoku/recruit/index.html#a01

2008年6月13日金曜日

パプアニューギニア

 学生有志で取り組んでいるパプアニューギニアの教育ボランティアのHP(未完成)ができました.今後は日程なども掲載されるので,興味がある人は参加して下さい.僕が決めるのではないので断言できませんが,まず間違いなくウェルカムされるはずです.
http://wmt.bunri-u.ac.jp/papua/blogn254/blognplus/index.php

ミクロ経済学ベイシックⅠ 第9回

 今回は価格理論でした.

【授業の内容】
 まずは前回の復習としてプリントを配り,損益分岐点と操業停止点を確認しました.この図はきっちり使いこなせるようにして下さい.
 またその図から,個別企業の供給曲線も導出しました.供給曲線がなぜ右上がりになるのか理解できたはずです.

 さて,それらを元に,今日は価格がどうやって決まるかについての3つの理論を紹介しました.これまで生産者理論では,「価格が~円であるとすると…」という問題を考えてきましたが,その価格がどうやって決まるか説明したわけです.
 まずはワルラス型価格調整メカニズムです.これは,まず価格ありきで,それに応じて需要と供給が決まり,その大小により超過需要,超過供給が発生するというものでした.超過需要が発生すれば企業は価格は上げ,超過供給が発生すれば価格を下げます.いずれにせよ,常識的な需要・供給曲線の元では,試行錯誤の結果,価格と取引される量は均衡に向かって収束します.

 続いてマーシャル型ですが,こちらはワルラスと異なり,生産量ありき,と考えます.価格は瞬時に変えられるけど,生産量を変更するには時間がかかるというのがその理由です.生産量が決まればそれに応じて,需要価格と供給価格が決まり,その大小により超過供給価格,超過需要価格が発生します.またそれらの発生を受けて生産量を増減します.こちらも常識的な想定の下では均衡に無かって収束します.

 最後にクモの巣理論を説明しました.この理論が想定するのは,生産に時間がかかり,保存が効かない財です.これらの特徴を持った財は不安定に価格の変動が大きいようです.典型的な例は野菜や果物でしょう.
 価格が変動する原因は,生産者が生産を開始する際の価格と,実際に販売する時の価格が異なること,また値段が安くても売らざるを得ないためでしょう.
 授業では3つの仮説をすべて図を用いて説明しました.

経済学Ⅱ 第10回

 今日は余剰分析でした.

【授業の内容】
 これまで経済学Ⅱの講義では,どうやったら効用が最大になるか,どうやったら利潤が最大になるか,といった話ばかりで,どういう状況が良い状況なのか,という判断には一切触れませんでした.しかし,ようやく道具が揃ってきたので,そういう話ができるようになりました.
 前回までの消費者理論,生産者理論,価格理論の知識を使って,余剰分析をしました.余剰分析とは簡潔に言えば,社会的余剰の大きさをモノサシとして様々な制度や状況を比較分析するものです.
 まずは厚生経済学の第一基本定理を紹介すると共に,もっとも望ましい状況の余剰,つまり競争的な市場で決まる財の価格と量,その元での消費者余剰,生産者余剰を説明しました.

 ただし,このように上手く行くケースばかりではありません.現実の経済は様々な要因により市場は歪められています.市場が歪められる,競争が阻害されるケースを2つに分類しました.
・市場に起因するケース
・政策に起因するケース

 授業では,政策に起因するケースとして,ガソリン税の課税の有無,価格統制の2つを例に,政府の介入がどのように社会的余剰を減少させる(死荷重を発生させる)か確認しました.また,社会的余剰が減るにもかかわらずどうして介入するのかも考えてみました.ガソリンやタバコについての課税は外部性と呼ばれるものと関係ありそうです.時間的に余裕があれば,今後の講義で新ためて外部性についても言及したいと思います.

開発経済学 第10回

 今回はJICA四国に協力いただき,講師をお招きして講演をお願いしました.

【授業の内容】
 講演には青年海外協力隊の隊員として活躍なさったお二方の体験談を伺いました.まず,ジンバブエで建築家として活躍された松村さんでした.ジンバブエの経済は,貧困に苦しむアフリカの中でも特に酷い状況であり,凄まじいインフレや外資の追い出しにより壊滅的状況と言えるかもしれません.
 そんな国の本当の姿を,首都ハラレと農村部であるムタサの写真などを元に説明していただきました.



 続いてフィリピンで理数科教育の質の向上に貢献された福田さんです.僕は個人的に教育に関心があるので特に興味深かったです.「初等教育では英語ができないと他の教科にもついて行けない」などフィリピン独特の問題も提起されていました.また中退者の多さ,地域間格差の大きさなど他の途上国と共通する問題も挙げられました.


 お2人は,協力隊の経験を通じて学ばれた点として次のことを挙げていらっしゃいました.
・異文化と交流することで自分で気づかなかった能力に目覚める
・日本を見つめ直す機会
・国の区切りではなく,個人を大切にできるようになった

 僕は,これらはすべて学生であるみなさんへのメッセージだったと思っています.中には講師の方に講演後に直接質問に行くなど,積極的な学生もおり,講演をやった意味があったなと嬉しく思っています.

2008年6月11日水曜日

基礎総合演習A 第7回

 今回も株価の予測です.

【授業の内容】
 今回はトヨタ自動車を例に,企業内容,これまでの価格の推移の原因,今後の株価について発表してもらいました.
 今回で3チーム目ですが,どんどん良くなってきていますが,前のチームのやり方を踏襲する傾向が強く,何のために調べているのかという動機が薄くなってきたような気がします.
 株価の予測のために調べているんだ,ということを再確認しましょう.

 続いて前回のペナルティーとして,企業業績についての指標を発表してもらいましたが,調べ方があまり良くなかったようです.今後,何かの機会にやりましょう.

 今回で一通り発表してもらったので,次回は趣向を変えて,チーム毎に「ある業界の中で,今後株価がもっとも騰がりそうなのはどれか?」を発表してもらいます.次回は携帯業界に決まり,それぞれ担当の企業も決まりました.

経済学A 第7回

 今回は資産運用つづきとして,株を中心に,その他の金融商品も説明しました.

【授業の内容】
 前回の講義の最後に,「毎年1万円をくれる魔法のカードがあったら,いくらで買うか?」という質問をしましたが,これは実は単純化された株の値段についての質問です.
 株というと多くの人が,安値で買って高く売る差益(キャピタルゲイン)を想像しますが,なぜ株に値段が付くかと言えば,配当が出るからです.つまり株の価値の源泉は配当にあります.
 上記のカードの価格の計算方法として,単純に1万円を足していくのではなく,現在価値という考え方を取り入れました.それにより株価の決定には次の2点が影響していることがわかります.
1.配当の大きさ
 将来受け取ることのできる配当が大きければ,その株の価値も高まる.企業の業績が好調であれば株価も上がるのはこのためです.
2.利子率
 利子率が高ければ将来受け取る配当の価値が下がってしまいます.そのため,株価も下がることが予想されます.また利子率が高ければ,リスクのある株を買わずに銀行に預金するから株の需要が下がり,株価が下がると考えることもできるでしょう.

 こういった株本来の価値から株価を推定するのをファンダメンタル分析と呼びます.対する(?)テクニカル分析は過去のチャートの値動きから将来の株価を予想するものですが,その論拠は弱いと言わざるをえません.

 周知の通り,株価は毎日変動するためリスクが存在します.ただし,株の組合せにより,リスクを減らすこともできました.

 後半は,株以外の資産運用として,様々な金融商品を紹介しました.紹介したのは,銀行預金,債券,投資信託です.
 僕個人としては,安全と思いがちな銀行預金にもインフレリスクがあることを理解して欲しいと思います.

2008年6月9日月曜日

経済政策論 第8回

 今回から新しいトピックであるガソリン税です.

【授業の内容】
 他の授業でも,今の関心事についての質問をすると「ガソリンはなぜ値上がりするのか?」という学生が多かったです.やはり身近ですもんね.

 さて,僕もこれまで授業で「税」について話をすることはありましたが,ガソリン税に限定して話したことがないので,「1時間持つかな?」と少々不安でしたが杞憂に終わりました.
 まず「ガソリン税って何だ?」から始めました.ニュース等でもガソリン税という言葉が使われますが,正式には揮発油税と地方道路税と呼びます.両者を合わせてガソリン税と呼ばれることが多いようです.
 この揮発油税と地方道路税は多くの点で共通している税です.共通点は次の通り.
1.国税である(⇔地方税)
2.間接税である(⇔直接税)
3.目的税,道路特定財源である(⇔一般財源)
4.従量税である(⇔従価税)
5.1974年からの暫定税率が続いている(一時的な失効はあったけど)

 2007年度は両者合わせて,約3.1兆円の税収がありました.その使途としては,道路整備,地方道路整備臨時交付金,使途拡大分などがあります.
 ニュース等では本来の目的である道路以外に流用されていると,国土交通省がずいぶん叩かれていたようです.たしかにマッサージチェアやミュージカルはいかんでしょうね….
 その他のガソリン税に対する批判としては,間接税であるために経済的弱者に対して負担が重いとして,公正性と公平性の概念も改めて説明しました.

 世間では暫定税率も含めガソリン税は非常に評判が悪いようです.しかし,ヨーロッパの多くの国ではガソリンに対して日本より高い税率が課せられおり,税率を上げるのが潮流のようですが,どうして日本では減税が叫ばれるのでしょうか?減税するとどんなことが起きるのでしょう?またヨーロッパの国々はどうしてガソリン税を高く設定しているのでしょう?
 というわけで,次週の課題は以下の通り.

【課題】
・ガソリン価格(税率)の変化が経済に与える影響
・なぜガソリン価格は騰がり続けるのか?
・環境とガソリンの関係を幅広く調べる

2008年6月8日日曜日

経済学A 第6回アンケートの結果

 アンケートの結果をまとめました.アンケート提出者は75人です.出欠も兼ねていたため,記名式なので信憑性に問題がないとは言えないのですが,総じてみんな真面目に聴いて,きちんと理解してくれているようです.

授業についての評価
・授業態度の自己評価 平均3.63
・授業の理解度      平均3.63
・授業の総合評価    平均3.71
3項目とも5段階評価で,数字が大きいほど良いことを示しています.
・講義に対する不満(自由記述)
 こちらは「板書に関するもの」がもっとも多かったように思います.少々自覚があるのですが,僕は字を書くのが好きじゃないもので,適当に書いてしまう傾向があります.ただし,「字が小さい」と思う人はもっと前に来て下さい.結構席は空いています.
 その他は「冷房が寒い」,「計算がわからなかった」,「詳しい資料が欲しい」という意見もありました.計算はもう少し例題を出せば良かったかもしれません.

今後予定される講義のテーマについての関心
 学生の皆さんは「グローバリゼーション」と「独占」については特に関心がないようです.どちらも身近ではないように思えるからかもしれませんね.僕としてはグローバリゼーションって,みんなにとって避けられない将来の話だし,大事だと思っています.しかし,皆さんの意見を元に,どのテーマを採り上げるか考えてみます.

身近な経済の疑問
 これは,「ガソリン価格がなぜ高騰するのか?」が圧倒的に多かったです.これについては今後の貿易,為替などのテーマの際に話したいと思います.
 それ以外にも興味深い質問がいくつかありました.各回のテーマと関連があればその時に説明したいのですが,時間の都合などで説明できない場合はこのブログなどを通じて僕なりの回答をしていきたいと思います.

 総じて皆さん講義を好意的に評価しているようでありがたい所です.しかし,「僕を傷つけまいと言う優しい心遣い」であったり,「記名式なので素直に文句をつけづらい.無記名ならもっと批判したいのに!」という配慮から,好意的な記述になった可能性もあるので安易な判断は禁物ですが.ちなみに僕は(当たり前ですが)批判に対して逆恨みしたりしないので,もし次のアンケートがあれば素直に書いて下さい.

 いずれにせよ,皆さん真面目に記入してくれていたので,その内容を授業に反映していきたいと思っています.また意見があれば,このブログや授業後などで僕に伝えて下さい.

2008年6月6日金曜日

ミクロ経済学ベイシックⅠ 第8回

 今日も生産者理論の続きです.ちょっと計算が入ってきました.苦手な人は早めに全学共通教育センターで克服しましょう.

【授業の内容】
 まずは前回の内容である「価格と限界費用が等しくなるように生産する」ということを具体的な数値例で確認しました.ここでは特に目新しいことはなく,前回の内容を数式に置き換えただけです.あえていえば,総費用を微分すると限界費用になる,という点ぐらいでしょうか.あとは黙々と計算するのみです.

 続いて,今度はグラフを用いて,損益分岐点操業停止点を説明しました.ここで新しく,平均総費用と平均可変費用が出てきました.これらをグラフに描き込むことで,価格がいくらであれば利潤が黒字になるか赤字になるのか,また操業を続けるべきか否かがわかります.

 結構盛りだくさんの内容で,最後は駆け足になってしまったので,来週はもう一度損益分岐点と操業停止点を簡単に説明しようと思います.
 それにしても文章にするとあっという間ですね.

経済学Ⅱ 第9回

 今日は価格メカニズムについて説明しました.

【授業の内容】
 これまでに消費者理論と生産者理論を通じて,右下がりの需要曲線と右上がりの供給曲線が描けることがわかりました.今回はそれらを用いて,どのように価格が決定されるのかを,3つの理論により説明しました.

 まずはワルラス型価格調整メカニズムです.これによれば,まず生産者は価格を決定します.それに応じて需要と供給量が決まります.需要の方が多い場合(超過需要),生産者は価格を上げます.逆に供給の方が多い場合(超過供給)は,売れ残りが発生しているので価格を下げます.

 しかし,このワルラス型によれば,価格さえ決まれば生産量はあっという間に変更できるようです.現実は価格が変動してもそう簡単に生産量は変わらない,というのが次のマーシャル型です.
 マーシャル型では,対称的にまず生産量が決まります.それに応じて,生産者が売りたい価格(供給価格)と消費者が買いたい価格(需要価格)が決定します.前者が後者を上回れば(超過供給価格),生産者は生産量を減少しますし,逆の場合(超過需要価格)は生産量を増加します.
 なお,ワルラス型でもマーシャル型でも通常の右下がりの需要,右上がりの供給曲線のもとでは結果は同じです.どんな価格,どんな生産量からスタートしても,必ず均衡に向かって収束します.

 最後に,野菜のように価格の上下変動が激しい財の価格を説明するものとして,クモの巣理論を紹介しました.これは,生産決定から生産までに時間がかかり,かつ保存の効かない財について説明するものです.生産開始から完成(収穫)までタイムラグがある場合,生産を決めた根拠となる価格と実際に販売する時の価格が変わってしまうため,大きな変動を生み出してしまいます.
 クモの巣理論は図の描き方もシビアで少々わかりにくかったかもしれませんね.

 ちなみに今回の小テストの答えは,20個の超過供給が発生する,価格は下がる,が正解です.答え方はともかく,大体わかってそうでした.

2008年6月5日木曜日

開発経済学 第9回

 今日はODAについて説明しました.来週JICAから講師が来て下さるのにODAとは何かを知らないままだとマズイので.

【授業の内容】
 まずODAの定義から説明しました.定義の中に出てくるグラントエレメント比はODAとは何かを知る上で重要なキーワードです.
 次に図を用いてODAの具体的な内訳を説明しました.例えば青年海外協力隊は二国間援助の贈与であり,その中でも技術協力にあたります.一般の人には,ODAというと「貧しい国にお金をあげている」というイメージがあるかもしれませんが,それはODAの一部に過ぎません.

 ここで一息入れて,ODA民間モニターの動画を見ました.なるべく縁がなさそう,という理由でセネガルへのODA案件を見ました.

 後半は,日本のODAの特徴や目的,ODAに対する批判などを採り上げました.ODAには以前から批判が多いためか,この10年間は財政健全化の名の下に公共事業よりも大きく予算が削減されてしまいました.
 しかし,2002年のモントレー合意では,2015年までにドナー諸国はGNI比0.7%のODA拠出することになっています.現在この0.7%を超える拠出を行っている国はDAC加盟22ヶ国のほんの一部に過ぎず,日本は当然クリアできていません.
 先進国とってわずかな負担義務を果たせば,MDGsの達成に大きく近づきます.しかし,先進国にとって途上国の貧困は対岸の火事なのか,MDGsが予定通りに達成されそうな気配はありません.

【参考文献】
 ジェフリー・サックス「貧困の終焉」早川書房:課題図書です.

【おまけ】
 今日見たODA民間モニターの動画はこちらでも見ることができます.
http://www.apic.or.jp/plaza/oda_today2007/index.html

2008年6月3日火曜日

基礎総合演習A 第6回

 今回も株価の分析です.

【授業の内容】
 まず前回の質問であった「サブプライムローン問題とは?」という発表から始まりました.よく調べられていると思いますが,聞き手には問題があったようですね.しかし,ここでメモの取り方などを注意したせいで,その後はみな真剣に取り組んでいたようです.

 さて本題ですが,今回のチームは「任天堂の株価」について発表してくれました.任天堂という企業の情報,過去の株価の値動き,将来の予想をしてくれました.ある程度調べたということは伝わりましたが,前回の発表の教訓を十分活かしているようには見えず,そこが残念です.
 発表からは任天堂の株価は「業績発表」と「新規サービスの発表」に左右されるようですが,任天堂はどこでどんな風にお金を稼いでいるか,という視点が抜けていましたね.

 次週は「企業の業績」にまつわる様々な専門用語の発表からです.

経済学A 第6回

 今日は資産運用について学ぶための基礎知識でした.

【授業の内容】
 今日はいくつかの質問を通じて,現在(割引)価値,期待値,リスクなどの概念を説明しました.他の2つはともかく,リスクは日常生活でも使う言葉ですが,本来の意味と世間で使われている意味は微妙に(だけど大きく)異なります.
 現在価値は将来のお金を現在の価値に割り引いて考えるものです.現在の日本は低金利なのでピンと来ないかもしれませんが,長期間の資産運用を考える上では非常に重要な概念です.
 期待値の概念は普段厳密に意識はしないでしょうが,無意識に利用していると思います.宝くじは1等の確率が小さすぎ,また金額が大きすぎるために期待値を計算する人は稀だと思いますが,期待値で損得が計れそうです.期待値は将来いくら儲かるか,いくら損をするかというつまりリターンの予測値です.これが株に関係あることは言うまでもないでしょう.
 最後にリスクですが,これは危険度ではなく,結果のちらばりのことでしたね.心理学科の人には分散の大きさといった方が早いかもしれません.

 みなさんへのアンケートから来週も株の話をすることになりました.今回は下準備だけでしたからね.来週はちょっと実践的な話です.今回は下準備とは言え,非常に重要な概念を説明しました.どれも株以外にも応用できると思います.
 最後に「未来永劫,毎年1万円がもらえる魔法のカードをいくらで買うか?」という質問をしました.これは実は非常に深い質問なのです.今回学んだ内容を元に,僕がこの例を使って何を意図しているのか考えてみて下さい.次週はここからやります.

【アンケートの結果】
 実はまだアンケートは読んでいません.そのうち集計してこの場で公表します(もちろん個人情報は出しませんのでご心配なく).

2008年6月2日月曜日

経済政策論 第7回

 前回に引き続き少子化問題です.

【授業の内容】
 少子化問題の大きな根っこが晩婚化・非婚化にあることを,前回指摘しました.というわけで,今日はまず「晩婚化・非婚化の原因は何か?」から始めました.
 みなさんの意見をまとめると以下のようになります.
・結婚への価値観の変化
 個人主義化,早く結婚しなくても良い風潮,結婚は不自由なものであるという印象
・収入の減少
 フリーター,契約社員の増加など比較的貧しい層が増えたため
・女性のキャリア志向
 高学歴化,男女雇用機会均等法

 上記が問題であるとして,どうやって解決すべきか尋ねると,「結婚は個人的なものであり,国が関与すべきではない」という意見が出ました.これが少子化問題の難しさでもあります.

 続いて,都道府県ごとの合計特殊出生率を見て,意見を聴きました.すると,最初の発見として「都会(関東,関西)の出生率が低く,地方に行くほど高い」というものがありました.その理由としては,個人主義化(しがらみからの解放),教育水準の違いなど,晩婚化・非婚化の原因と似たような意見が出ましたが,それとは逆に「女性の賃金が高いから出生率が低い」という意見も出ました.これはかなり鋭い意見です.女性の賃金が高いということは,出産・子育てにより失う所得も大きいということを意味しています.
 さて,我らが住む徳島県ですが,はっきり言うと田舎の割に出生率が低いと言う不思議な県です.どうして徳島の女性は子どもを産まないのでしょうか?
 その原因としては,「給料が低い」,「働ける場所が少ない」など労働環境を指摘する意見が多かったようです.
 というわけで,解決策としても「児童手当の拡充」,「働く場所の確保」といったものが出ました.

 今日の授業は意見がたくさん,しかも的を射たものばかりで,非常に有意義でした.「じゃあ来週も少子化で」と思ったのですが,みなさんはもう十分だったようです.
 次回は多数決の結果,「ガソリンの価格」になりました.経済政策論なのでガソリン税などが中心になるかと思います.