2009年11月28日土曜日

経済数学入門 第10回

 今回は,最大化・最小化問題と偏微分です.

【授業の内容】
 授業ではあっさりと「最大化・最小化問題」と言いましたが,授業で解いた問題は詳しく言うと「制約付き最大化・最小化問題」と呼びます.ある制約の下で,どのようにして何かを最大化・最小化するかを考えます.

 授業は予算という制約の下での効用(幸せ)最大化問題から始めました.皆さんもそうでしょうが,煩悩の多い我々には欲しいものがたくさんあります.しかし,それらをすべて買うこと(消費すること)はできません.なぜなら様々な制約があるからです.そのうち最も妨げとなるのは予算制約,つまり持っているお金に限りがあることでしょう.そのような場合,どうすれば幸せが最大になるのかを,具体的な数値例で確かめました.
 問題を解くうえでの手順は以下のとおりです.
1.目的と制約の式を区別する(必要であれば定式化する).
2.制約の式を変形して,X=2Y+5,Y=-2X+10,などのように,ある変数を他の変数で表現します.これにより,使用する変数の種類を減らすことができるのです.
3.(2.)で変形した式を目的の式に代入し,変数の種類を減らします.
4.目的の式の最大値(もしくは最小値)を探すため,微分して0と置く.これにより求める答えの1つが出てきます.
5.(4.)で得られた答えを制約の式に代入します.これで残る答えも出てきます.

 大学学部の経済学のレベル,あるいは公務員試験ぐらいのレベルであれば,以上のような手順でほとんど解くことができるでしょう.

 後半は偏微分のやり方について説明しました.偏微分とは,2つ以上の変数からなる関数の微分する方法の1つです.他の変数が一定である(固定されている)ものとして,微分するという方法です.これに対して全微分というのもありますが,社会科学系の学部で必要となることはあまりありません.
 やり方としては,ある変数で偏微分するときは「他の変数を,ただの数字であるように扱ってやる」ことに注意して,普通に微分すればよいだけです.特に新しいルールも出てきません.簡単ですね.

ミクロ経済学ベイシックⅡ 第10回

 今回は市場の失敗の例である情報の非対称性について説明しました.

【授業の内容】
 みんな覚えていると思いますが(思いたい),完全情報市場の条件の1つとして,「完全な情報」というものがありました,今回はその条件が守られない場合には何が起きるかを考えます.

 まず今回の分析対象である財がどのようなものかを理解するため,財を3種類に分類しました.
・探索財:購入前に財についての情報を入手可能な財
・経験財:購入後に財についての情報を入手可能な財
・信用財:購入後も財についての情報を入手不可能な財
 今回はこのうち経験財について考えました.

 財についての情報の非対称性がある場合,取引はどのようになるのでしょう.最初にレモン市場(中古車市場)の例を説明しました.
 中古車の売買では,多くの場合,売り手である中古車屋は財である中古車についての情報を多く持っていますが,買い手である消費者はそれほど多くの情報を持っていません.まさに非対称的です.このような場合,情報を多く握っている売り手は,それぞれの車の品質が良いのか悪いのかをきちんと把握しており,品質の良い車と悪い車をそれぞれ希望する価格で販売しようとします.
 一方の消費者は,よい車は高く,悪い車は安く買いたいと思っていますが,目の前の車が良い車なのか悪い車なのか判断できません.そのため,その車をいくらで買うかを決める際には,確率的な期待値に頼るしかありません.経験的にその車が何割の確率で当たり(品質が良い)なのか,外れ(品質が悪い)なのかが分かっていれば,自ら期待値を計算できます.車の価格が期待値を下回っていれば買いますが,上回っていれば買いません.
 このような売り手と買い手の気持ち(供給と需要)が一致する点で取引が行われますが,今回授業で用いた数値例では,財の一部が取り引きされるものの,そこで売買されたのはすべて品質の悪い財でした.消費者はレモンばかりつかまされたわけです.一方の中古車にとっても品質の良い車がまったく売れないという,あまりありがたくない結果になりました.このような不幸の原因は情報が非対称的で,消費者が品質についての知識・情報をあまり持っていないことです.
 そのため,解決策としては,情報を対称的にすること,つまり消費者に品質についての情報を与えることです.現実に見られる対策としては,中古車に保障をつけることがあります.これは中古車屋にとっては負担ですが,品質が良い車だというシグナルを消費者に伝えることができ,結果として高く買ってくれることにつながります.

 逆に売り手の持つ情報が少なく,買い手の持つ情報が多い例として,生命保険市場を取り上げました.

 これらの例のように情報の非対称性が原因となり,特定の売り手や買い手ばかりが集まってしまうような現象を逆選択と呼びます.

 逆選択と間違われやすいのがモラルハザードです.これは,取引の成立後に経済主体の行動自体が変化してしまうものです.例えば自動車の損害保険に入ると,保険に入る前に比べ,比較的安全に注意しなくなる恐れがあります.これがモラルハザードです.モラルハザードという言葉は,なんとなく賢そうだから?テレビなどでもしばしば使われますが,多くは誤用です.

 さて,情報の非対称性についての対策には,シグナリングと評判などがあります.シグナリングとは,品質を知るヒントを知らせることです.例えば学歴はシグナリングの1つです.大卒という学歴は,その人の労働者としての品質を知るヒントになります(あくまでヒントです.大卒の人は全員能力が高いわけではなく,大卒の人には能力が高い人が多い,ということでしょう.).
 評判の例としては年功序列があります.新卒を採用する際の面接では,その学生の能力がどれぐらいなのかを正確につかむことはできません.そのため,日本の多くの企業では,全員一律の安い給料で新入社員を雇い,その後の仕事ぶりを見て,徐々に給料に反映させるという仕組みを採っています.

総合政策演習B1② 第10回

 今回は費用逓減産業について,そして少しだけコブ=ダグラス型生産関数についても説明しました.コブ=ダグラスは説明が不十分だったので改めてやります.

【授業の内容】
 費用逓減産業は市場の失敗の例の1つです.電力や通信など初期投資(固定費用)が非常に大きく,限界費用が逓減するような業界は完全競争になりにくく,結果として効率的な資源配分も実現されないことになってしまいます.そのため,政府自らが財を供給することがよく見られます.

 このような費用逓減産業において政府が財を供給している場合,生産量,および価格の決定方法は2種類あります.それが限界費用価格形成原理と平均費用価格形成原理でした.
 限界費用価格形成原理は,P=MCとなるように生産量を決定します.こちらはパレート最適が実現できるというメリットがありますが,費用の構造上,どうしても赤字が発生することになり,その赤字分を政府が補填することになってしまいます.
 平均費用価格形成原理は,P=ATCとなるように生産量を決定します.こちらは財1つあたりの価格と平均総費用が等しいので利潤は0です.赤字ではないので,独立採算で経営していけるというメリットがありますが,パレート最適は実現されません.限界費用価格形成原理と比べ,生産量は少なく,価格は高くなってしまいます.

 次回はコブ=ダグラスについて,そして時間があれば情報の非対称性や所得配分についての問題も解いていきます.

経済学A 第9回

 今回は一部の学科がインフルエンザで学級閉鎖(大学でも学級閉鎖っていうのかな?)のため,予定を変更してゲーム理論をやりました.本来は貿易と為替の話の予定でしたが,これは皆さんに聞いてほしいので,改めてやります.

【授業の内容】
 今回のゲーム理論は駆け引きの分析についての分野です.

 まずは囚人のジレンマというプレイヤーが同時に戦略を決定するゲーム(同時手番ゲーム)を例に,ゲームとは何かを説明しました.
 ゲームとは複数のプレイヤーが存在し,あるプレイヤーの行動が他のプレイヤーに影響を及ぼすような状況のことです.囚人のジレンマゲームでは相手がどのような行動を取るかを予想しなければなりません.プレイヤーが選ぶことができる選択肢のことを戦略,またその結果にもたらされる状況を利得と呼びます.
 続いて,少しややこしくなった利得表で,支配される戦略の逐次消去を学びました.自分が持つ戦略のうちで,使い途がないもの(正確に言うと,どんな状況においても,他のある戦略と比べて同等以下の結果しかもたらさないような戦略)をどんどん捨て去ることでした.
 さて,この戦略の逐次消去でも解けない問題もあります.そんな問題を解決してしまう考え方がナッシュ均衡です.ナッシュ均衡とは,「あるプレイヤー(A)の戦略が他のプレイヤー(B)の戦略に対する最適反応になっており,Bの戦略がAの戦略に対する最適反応になっているような戦略の組合せ」です.直感的に分かりやすく言えば,「お互い,これ以上相手の裏をかけないような状況」と言えます.
 最後にやったホテリング・ゲーム(立地ゲーム)は,そのルールは単純ながら,ナッシュ均衡の考え方をつかむのに適当なゲームだと思います.

 ゲーム理論およびナッシュに関心が出たという人は次の文献等を参考に.
渡辺隆裕「図解雑学ゲーム理論」ナツメ社
神戸伸輔「入門ゲーム理論と情報の経済学」日本評論社
ロン・ハワード監督「ビューティフルマインド」

2009年11月24日火曜日

経済数学入門 第9回

 今回は中間テストでした.範囲はこれまでのすべての内容です.採点しましたが,結構良かったですよ.

【呼び出し】
 中間テストの結果が20点満点中12点未満の人には,ポータルサイトを通じて呼出をしています.呼出を受けた人は,全学共通教育センターに通い,年内に担当教員の了解(「これでもう大丈夫!」というもの)を得るようにしましょう.年内に了解を得られなければ期末試験の受験資格を失います

2009年11月20日金曜日

経済学Ⅰ 第8回

 今回も金融の話です.みんな真剣に聴いていたから,きちんと理解できたのではないでしょうか.


【授業の内容】

 前回,貨幣供給量の具体的な調節方法として,3つ紹介しました.そのうち,支払準備率(預金準備率)というものが出てきました.今回は,この支払準備率を使って,信用創造の説明から始めました.

 第6回に貨幣の定義をした際に,現金は70兆円ぐらいしかないが,貨幣(M3)は約1000兆円もあるという話をしました.なぜ現金が70兆円しかないのに,その10倍以上のお金があるのでしょう?どうやって増えたのでしょう?それを理解するために,我々が銀行に預金をすると,そのお金がどこに行くのかを考えてみましょう.

 まずあなたが100万円を持っているとします.それを銀行に預けると,あなたの手元の現金はなくなりますが,代わりに預金が100万円増えます.つまりあなたの持っているお金は現金から預金に変わっただけで100万円のままです(当たり前ですね).しかし銀行にとっては,単純にお金(現金)が100万円増えました.これで貨幣は2倍に増えました(あなたの預金100万円と銀行が持っている現金100万円).ただし,厳密に言うと,銀行は預金の一部を日銀に預けなければならないので,手元の現金は100万円を少しだけ下回ります.ここでは10%引かれて90万円が残るとしましょう.

 次に,銀行は手元の現金90万円を持っていても仕方ないので,企業に貸し付けます.すると現金は企業の元へと移りますが,企業はそのお金を一旦銀行に預けます.するとそれを預かった銀行は,一部を除いてまたもや誰かに貸付けます.こうすることで,どんどん貨幣(現金+預金)が増え続けます.この過程で貨幣が増えることを信用創造と呼んでいます.

 さて,貨幣供給についてはこれでわかりましたが,貨幣の需要についても考えてみましょう.実は以前に貨幣の需要は,取引需要と投機的需要に分類できること,そして投機的需要は利子率が下がるほど増えることを確認しています.
 この貨幣の需要と供給によって利子率が決定されます.中央銀行は貨幣供給量を増加させることによって利子率を低下させることができます.利子率が低下すると企業は投資を増やすため,国内の財に対する需要が高まり,結果としてGDPは増加,つまり景気は回復します.ただし,貨幣供給量が増加することでインフレを起こしてしまう可能性もあります.
 では,現在のように景気が悪ければ(さらにデフレ傾向にあれば),貨幣供給量をどんどん増やして景気回復すれば良さそうに思えますが,流動性の罠という問題があります.これは,利子率がかなり低い水準では,貨幣供給量を増やしても利子率がそれ以上下がらないという現象のことでした.

 さて,これまで話してきた利子率ですが,実は1つではなく,様々な利子率が存在します.我々が銀行に預金するとき,銀行が企業に貸し付けるとき,日銀と市中銀行の間,そして市中銀行同士の取引などで大きく異なりますし,また期間の長さ,担保の有無などによっても異なってきます.
 この中でも,政策金利である無担保コール翌日物については覚えておいても良いですね.

ミクロ経済学ベイシックⅡ 第9回

 今回は「市場の失敗」の1つである公共財について説明しました.

【授業の内容】
 我々が普段必要とするものは(技術的に不可能なものは別として),だいたい売っています.需要さえあれば,民間企業はその財を生産して儲けようというインセンティブが働くからです.しかし例外もあります.それが公共財です.公共財の多くは,民間企業によって生産されません.民間企業は公共財を生産しようというインセンティブを持っていません.なぜなのか?それは公共財の定義を理解するとわかってきます.

 公共財とは「非競合性」と「非排除性」という2つの性質を兼ね備えた財のことです.   
 非競合性とは,複数の人が同時にそれを利用(消費)することが可能であり,また複数で利用しても価値が落ちない財のことです.例えばライブなどがそれにあたります.100人で聴こうが1000人で聴こうが,ライブから得られる効用は(ほとんど)変わらないでしょう.
 非排除性とは,特定の人の利用を妨げることができない財です.つまり誰でも無条件で利用できる財のことです.例えば我々は誰でも一般道を利用することができます.税金を滞納していても,外国人であっても,利用を拒まれることはありません.非排除性を持つ財は,無条件で消費される,つまりお金を払っていない人にも利用されてしまうので,民間企業は採算がとれません.そのためわずかな例外を除けば,ほとんど民間企業は生産しません.

 このような非競合性と非排除性という性質を持つ財の例としては,灯台,法律,ラジオ放送などが挙げられます.繰り返しますが,これらの多くは,儲からないので民間企業は供給しません.しかし,灯台,法律,ラジオ放送がないと我々の生活は不便になるでしょう.そのため,民間企業の代わりに営利目的外の活動もできるプレイヤーである政府が供給するのです.
 しかしそこには問題がないわけではありません.民間企業が生産し,市場で取引される場合には,非効率的な生産など(少なくとも長期的には)起こりません.企業は全然売れない(需要のない)財を生産しないからです.生産してしまうと利潤が減るため,利潤の最大化を目的とする企業はそのような行動をとらないでしょう.また常に売り切れてしまい在庫が空っぽになるようなことも長期的にはあり得ません.作れば作るほど売れるのであれば,生産能力を徐々に拡大して,利潤を増やそうとするでしょう.このように市場では企業は消費者との取引を通じて,消費者の需要を鋭く感じ取り,本当に必要とされている財を,必要とされているだけ生産するのです.
 一方,政府が生産する公共財の場合は,市場メカニズムは働きません.警察を例にとると,警察の治安維持サービスは我々に必要な財ですが,我々は1回のパトロールに何円を支払う,というような取引はしていません.そのため,警察にとっては,我々住民がどれぐらいの水準の治安を求めていて,その需要はどれぐらい大きいのか(金銭的評価はどれぐらいか)ということがわからないので,自分たちのルールでパトロールするしかないでしょう.結果として,私たちは「パトロールに全然来てくれないせいで不安だ」,あるいは「しょっちゅうパトロールしてるけど無意味だ」などと感じることになります.
 ダムが必要なのかどうか,橋は必要か,道路は,とよく問題になるのは,いずれも政府が供給している財だからです.政府は時として必要のない財を供給してしまうことがありますが,その理由の1つはそれらが公共財の性質を持っていることにあるようです.

総合政策演習B1② 第9回

 今回はエッジワース・ボックスの復習と,外部性についての問題を解きました.

【授業の内容】
 外部性の問題を解く上で必要な知識はほぼすべて説明しました.以下のキーワードを確認しましょう.
・外部性
・外部経済(正の外部性)と外部不経済(負の外部性)
・金銭的外部性と技術的外部性
・ピグー税(⇔補助金)
・内部化
・コースの定理

 外部性もその1つですが,市場の失敗が起きると,効率的な資源配分(パレート最適)が実現できません.そのために,政府による何らかの介入が必要となります.今回の外部性の場合は,政府が課税する(もしくは補助金を与える)ことで,効率的な資源配分を実現します.

2009年11月18日水曜日

経済学A 第8回

 今回は株についての続きです.

【授業の内容】
 前回,現在割引価値という考え方,そしてその計算方法を学びました.今回はそれを使って,株価の分析方法の1つであるファンダメンタル分析について説明をしました.ファンダメンタル分析とは,ある企業の株価は,その株を持ち続けることによって将来得られる配当の現在価値の合計である,というものです.この考え方によれば,将来,利潤が増えて,結果として配当が増える企業の株価は高いと推測できます.逆に不祥事により企業の存続も危うい企業の株価は非常に低くなるでしょう.
 ファンダメンタル分析に関連して配当について説明しましたが,そもそも我々個人投資家が株を買う目的は次の2つに大別できます.
インカムゲイン:受け取る配当のこと(株主優待を含む)
キャピタルゲイン:株価の売買による儲けのこと

 株価の主な分析方法はもう1つあります.それがテクニカル分析です.テクニカル分析とは,それまでの株価の推移や取引量から,今後の株価を予測するものです.メリットとしては初心者にとって取っつきやすいことがあります.しかしデメリットは,確たる根拠がないことです.「今までこういうことが多かった」という経験則を基とした分析なので,これまで起きたことが将来も同じように続くのであればテクニカル分析も役立つかもしれませんが,株取引のプレイヤーである人間は過去を学んで行動を変化させていくので,必ずしも過去の経験が今後も使えるとは言えないでしょう.またテクニカル分析では,過去になかったことは予想できない,という欠点もありますね.
 どちらが良いかは皆さん自身で判断してください.

 続いて効率的市場仮説について説明しました.効率的市場仮説とは,「ある時点における株価は,その株式に関する様々な情報を織り込んでいる」というものです.そのため,誰もが知っている情報は,今後の株価の予測にまったく使えない,というものです.逆に誰もが知らない重要なニュースが発表されれば株価は大きく変動します.

 さて,このように株価の分析方法を学んできましたが,「やっぱり株は怖い」と思う人もいるでしょう.リスクがあり,銀行預金と違って損をする可能性がありますからね.しかし,買い方によっては,リスクを小さくすることが可能です.そのようなリスクヘッジの説明も少ししました.重要な大原則は「卵は分けて持て」,つまりリスクを減らす基本であり究極は分散投資です!

 あとは細かい株の話をいくつかしました.話したいことはもっとあったのですが,時間の制約もあり,できませんでした.
 株に興味が出てきた人は,次の「野村證券のバーチャル株式投資倶楽部」をオススメします.架空の100万円を,実際の株式で運用するものです.習うより慣れよで,身に付くこともあると思いますよ.
http://my.nomura.co.jp/virtual/app

2009年11月14日土曜日

経済数学入門 第8回

 今回は微分を使って3次関数の図形を描きました.

【授業の内容】
 3次関数とは言え,微分の練習みたいなもんで,前回やった2次関数とほとんど変わりなかったですよね.ポイントは,「微分をしたら傾きが出てくる」,「頂点は傾きが0の点である」という2点です.
 一応,新しい知識としては,増減表と言うものを描きました.別に描かなくても図形は描けるのですが,イメージを膨らませるためだと思って良いでしょう.

 さて,今回はそれほど重要な回でもなかったのですが,来週は中間テストです!6割なかったら強制的に全学共通教育センターまでお誘いします.がんばってくださいね.
 ちなみにこれまでの課題の解答については,HP上に公開しています.確認しましょう.
http://wwt.bunri-u.ac.jp/mizunoue/filedl.html

経済学Ⅰ 第7回

 前回に引き続き金融政策です.今回は具体的な金融政策について説明しました.

【授業の内容】
 皆さんが手元にお金を置いておきたい(貨幣需要)と思うのはどんな時でしょうか.例えば,物を買う予定がある時かもしれません.人々は物を買う,言い換えれば取引を行う場合には貨幣を手元に置きたがるようです.では,どんな時に取引が活発に行われるのでしょう.それは景気が良く,所得も多い時でしょう.このことから,人々は所得が多いときは(取引を行うことが多いので)貨幣需要が高まります.このような貨幣需要を,取引需要と呼びます.
 また我々家計だけではなく,企業の貨幣需要についても考えてみましょう.企業が手元に多額のお金を必要とするのは,投資をする時であるでしょう.では,どんな時に企業は投資をするのか考えてみると,利子率が低い時でしょう.利子率はお金のレンタル代なので,利子率が低い,つまり安くお金を借りられるとき,企業は様々なプロジェクトに投資をすると考えられます.このような貨幣需要を投機的需要と呼んでいます.

 さて,人々の貨幣需要はわかりましたが,貨幣はいったいどうやって供給されるのでしょう?日銀がお札を印刷していることはわかりますが,どういったルートで我々の手元にお金が届くのでしょうか?
 前回確認したとおり,貨幣の供給量が増えると物価は上がりますが(インフレ),利子率が下がるために民間投資は増え,景気が回復します.これを金融緩和と呼びます.逆に貨幣の供給量が減ると物価の伸びは抑えられる,もしくは下がります(デフレ).そして利子率が上がるために民間投資が減少し,景気は落ち込むでしょう.これは金融引き締めと呼ばれます.日銀の主たる目的は物価の安定です.さらに景気の安定,金融システムの透明性を高めることも目的としています.
 日銀は貨幣の供給量を次の3つの方法で行います.
1.公定歩合(現在は,基準割引率および基準貸付利率)の操作
2.公開市場操作
3.支払準備率の操作
 順に説明しましょう.

1.
 (現在は日銀では使われていない言葉ですが公定歩合という言葉で説明します.)公定歩合とは,市中銀行が中央銀行に預け入れ,借り入れする際の利子率です.
 公定歩合が下がれば,市中銀行は有利な条件で借り入れができるので,貨幣供給量は増加します.対して,公定歩合が上がれば,市中銀行は借り入れしにくくなります.

2.公開市場操作
 公開市場操作とは,中央銀行が金融機関に国債などを売る(売りオペ),国債などを買い入れる(買いオペ)の総称です.
 売りオペをすれば,貨幣は市中銀行から中央銀行へと流れるために,貨幣供給量は下がります.買いオペはその反対です.

3.預金準備率
 預金準備率とは,市中銀行が顧客からお金を預かった場合,その一定割合を日銀に預けなければならないというものです.預金の規模,種類によりその割合は異なりますが,大体1%ぐらいです.
 この準備率が上がれば,当然ながら貨幣供給量は下がりますし,下がれば逆のことが起きます.

 実際の金融政策でもっともよく使われているのは公開市場操作(売りオペ・買いオペ)です.

2009年11月12日木曜日

ミクロ経済学ベイシックⅡ 中間テストの結果

 今回の中間テストの結果は以下の通りです.

満点:30点
平均点:18.2点
最高点:29点

 ゲーム理論の所がちょっと悪かったような印象です.独占の計算は多くの人ができていました.
 また独占的競争をきちんと理解していない人が多かったようです.

 期末テストでは,中間テストの範囲も含むので確認しておきましょう.

2009年11月11日水曜日

ミクロ経済学ベイシックⅡ 第8回

 今回は中間テストでした.テストの前にちょっとした復習をしましたが,やはりテスト前は効率良く説明できますね.皆さんの真剣さが違います.やりやすい….

 テストの結果をどう伝えるかは次回の授業で説明します.

総合政策演習B1② 第8回

 今回はエッジワース・ボックスを使って,パレート最適についての問題を解きました.

【授業の内容】
 エッジワース・ボックスとは,2者の間での効率的資源配分を説明するものです.どのように再配分,あるいは取引するとパレート改善するか,パレート最適の状態に移行できるかを確認しました.

 時間がなくなったのでDB02054の途中で終わりました.来週は続きからやります.皆さんはテキストでわからない問題がないか確認しましょう.

経済学A 第7回

 今回と次回は株式と資産運用について説明します.皆さん,思っていたのと違ったかもしれませんね.

【授業の内容】
 僕は株のトレーダーではありませんし,ここは大学なので,株のコマゴマとした話や,具体的なテクニックではなく,骨格とも言うべき理論的な話をしました.今回説明した,現在割引価値,期待値とリスクという3つの概念は,株,そして資産運用について真っ当に学ぶのであれば,必要不可欠な知識だと思います.

 まず現在割引価値について説明しました.これは,現在の100万円と10年後の100万円の価値は異なる,というものでしたよね.なぜなら,わずかな利子であっても,100万円を預けておくと,年々金額は増えていきます.仮に1%の利子でも100万円を10年間預ければ110万4622円になります.つまり,現在の100万円は(銀行に預ければ)ほっといても110万円余りになるんですよね.ということは,現在の100万円は10年後の110万円とほぼ同じ価値を持っていることになりますし,言い換えれば10年後の110万円は現在の価値に直すと100万円になってしまうということです.これが現在割引価値という考え方で,未来のお金の現在の価値に直すときには,利子率を使って割り引く必要があるのです.
 なぜこの現在割引価値という考え方が必要となるのかは,来週のファンダメンタル分析についての説明を待ってください.

 続いて期待値ですが,これは数学で習ったことがあるかもしれません.期待値とは,(まだ起きてない事柄について)確率的な平均値を求めたものです.具体的に宝くじで言うと,1枚の宝くじは1等があたるかもしれませんが,ほとんどは外れます.では,1枚当たり,平均を考えると,どれぐらいの金額がもらえるのか,という考え方が期待値なのです.300円の宝くじの期待値は150円を少し下回るぐらい,と言われています.つまり宝くじは買えば買うほど(確率的には)損をするギャンブルなのです.そしてギャンブルの中でも,宝くじの期待値の低さは際立っています.平たく言うと,割りの悪いギャンブルです.
 さて,授業ではギャンブルと株はどこが違うのか,という話をしました.どちらも運が良ければ一攫千金,ただし運が悪ければ大損をする,という意味で「似たようなもんだ」と思っている人もいるかもしれませんが,それは間違いです.株による資産運用は,長期的に見ると期待値はプラスです.そこがギャンブルとの違いです.ギャンブルは,わずかな例外を除いて,期待値はマイナスです.つまりやればやるほど損をします(統計の話では「対数の法則」と言います).

 さて,残るはリスクの説明ですが,上記2つに比べてなじみがある言葉ですが,誤用が多い言葉でもあります.経済学やファイナンスで用いるリスクという用語は,(世間で使われているような)危険度という意味ではなく,結果のバラツキのことを指します.つまり吉と出るか凶と出るか,と結果が分かれることがリスクであって,確実にひどい目に遭うことがわかっている場合にはリスクはありません.また,株を買って,50%の確率で10万円儲けられ,残りの50%で30万円を儲けられるような場合でも,結果にバラツキがあるため,リスクはあります.つまり「損をしないこと=リスクなし」ではないのです.

 期待値とリスクですが,この2つのモノサシを使うと,様々な金融商品を比較することができます.例えば銀行預金はリスクが低いけど期待値も低い商品ですし,株は(次回説明するように)期待値はほどほどに高いですがリスクも割と高いです.

【お知らせ】
 今回は携帯を使ってアンケートを取りました.結果は今後の授業に活かしていきます.

2009年11月10日火曜日

経済学A 今日のアンケートについて

 今日のアンケートですが,皆さんには携帯用のQRコードを配りました.携帯を持っていない,機種が対応していないという人は,パソコンから次のアドレスのアンケートに答えてください.設問はまったく同じものです.

http://enq-maker.com/ard4Zxy

 授業については改めて書きます.

2009年11月7日土曜日

経済数学入門 第7回

 今回も微分でした.微分の意味,そしてどのように使うかを説明しました.

【授業の内容】
 前回は微分の計算方法だけを説明しました.今回は微分という作業はどんな意味を持っているのか説明しました.微分をすると,もとの関数の傾き(変化率)を知ることができます.経済学において,傾きは非常に重要な意味を持っていますし,そのため微分も非常に重要で頻繁に出てきます.例としては,所得が増えたら消費がどれぐらい増えるか,定額給付金を増やしたらどれぐらい景気が上がるのか(上がらないのか),これらはすべて傾きで表現できそうです.
 もう一度言います.非常に重要です.「微分=傾き」,「傾き=微分」と何度も唱えてください.

 また,この微分を使うと,これまで2次関数の放物線を描くときには,平方完成をしなければなりませんでしたが,微分を使って簡単に計算することができます.なぜなら2次関数の頂点は傾きが0である点なので,「微分して出てきたもの(傾き)=0」という式を立てれば簡単に頂点となるxの座標がわかるからです.
 次回も微分をしますね.

中間テストについて
 以下の要領で中間テストを行います.
日時:11月20日の経済数学入門の授業中
範囲:次回の範囲まで
配点:20点満点
持ち込み:一切不可

 なお,この中間テストの点数が12点未満の学生は全学共通教育センターに呼び出します.そこで中間テストの内容をきちんと理解できるようになるまで勉強しましょう.僕が「もう大丈夫だな」と判断すれば,その時点で中間テストの点数を12点に修正します.必ず今年中に来るように.

経済学Ⅰ 第6回

 今回から金融について説明します.今回はその基礎として,「お金って何か?」,「金融政策って何か?」を説明しました.

 お金のことを,以後は貨幣と呼ぶことにします.我々は普段,「お金=現金」と考えがちですが,実際には現金は貨幣の供給量の1割にも満たない量しかありません.現在では貨幣の定義として,マネーストックという概念が用いられています.貨幣とは「これは貨幣だけど,これは貨幣ではない」ときっちり区別できるものではなく,「貨幣らしさ」をどこまで認めるかでその範囲が変わってくるあやふやなものです.どこまでを貨幣として認めるかを定義するモノとして,今日はM3というものを説明しました.
 まずマネタリーベースと呼ばれる現金通貨があり,現金通貨と普通預金を合わせたM1があります.これはほとんどの人が貨幣として納得できるものでしょう.現金が貨幣であるのは自明として,普通預金もすぐ引き出して貨幣として使えるので,貨幣に非常に近い性格を持っています.
 M3とはこれらの現金通貨,預金通貨に準通貨とCDを加えたものです.それらはM1ほどの「貨幣らしさ」はないけれど,「まぁ貨幣として認めても問題ないだろう」というものです.M3はM1より少し「貨幣らしさ」の基準を甘くしたものと言って良いでしょう.
 この貨幣の量(マネーストック)を調整することで,物価や景気の安定を図るものが金融政策であり,それを実施するプレイヤーは中央銀行(日本では日銀)です.

 後半は,なぜマネーストックを増減すると,景気あるいは物価に影響があるのかを簡単に説明しました.
 まず,貨幣供給量と物価の関係ですが,貨幣供給量が増える,つまり世の中にあるお金の量が増えるとどうなるのでしょう?わかりやすく極端な例として,日本に住んでいる全員に1人あたり100億円ぐらい配ることにしましょう.すると人々は一気に物を欲しがるようになるでしょうが,同時に急激に物不足になるでしょう(超過需要と呼びます).そのままの値段で販売していては売り切れになってしまいますね.つまり,もっと高い値段でも消費者は欲しがるでしょう.すると,お店側は値段をつり上げるのではないでしょうか.少々高くてもみんながお金をたくさん持っているので買うからです.このようにして,貨幣供給量の増加は物価を上げること(インフレ)になるでしょう.逆に貨幣供給量が減少すれば物価は下がると推察できますね.
 続いて,貨幣供給量と景気の関係ですが,貨幣供給量が増えることは,人々が豊富に貨幣を持っていることを意味しています.すると,お金を借りる時のレンタル代である,利子率は低くなるのではないでしょうか?なぜならお金が不足していて誰もが借りたがっているのであれば高い利子率でも借りたがる人もいるでしょうが,お金が豊富にある状況ではわざわざ高い利子率を払ってお金を借りる人は少ないからです.というわけで,貨幣供給量が増加すると利子率は下がるでしょう.では利子率が下がると何が起こるのでしょう?これは以前の回で説明しましたが,利子率が下がると民間投資が増えます.民間投資は需要の一部ですから,需要が増えることを意味しています.また需要の増加は,有効需要の原理から供給,つまりGDPを増やします.このようにして貨幣供給量の増加は間接的に景気を回復させることにつながります.

 次回は貨幣供給量を具体的にどうやって調節するかを説明します.

2009年11月6日金曜日

ミクロ経済学ベイシックⅡ 課題の解答について

 先日アップした,独占についての課題の解答が一部誤っていました.ごめんなさい.現在は,修正したものを掲載しています.確認してください.

2009年11月4日水曜日

ミクロ経済学ベイシックⅡ 第7回

 今回は,寡占と独占的競争について説明したので,とりあえずこれにて独占市場は終わりです.

【授業の内容】
 寡占市場とは,売り手の数が少数である市場です.また仮定として,財が同質的である,つまりどの生産者も似たような財を生産していると考えます.
 例としてビール業界を挙げました.ビール業界では何が起きるのでしょう.売り手が少数である場合,ある企業が1社だけビールの価格を上げたとします.するとライバル企業たちは,その値上げに追随しません.なぜなら,現場の価格のままであれば,値上げした企業の顧客を奪うことができるからです.一方,値上げした企業に対する需要は急激に落ちるでしょう.そのため,互いに牽制し合い,値上げするのは難しくなります.
 逆に1社だけが値下げをした場合はどうでしょう.ライバル企業が追随せず,自社だけが値下げできれば,他の企業の顧客を奪って,売上げを大きく伸ばすことができそうです.しかし現実には,そう上手く行きません.なぜなら,値上げの時には追随しなかったライバルたちも,顧客を奪われまいと,値下げには俊敏に反応して追随するからです.結果として,最初に値下げした企業は,せっかく値下げしたのにライバル企業も追随してきたため,思ったように需要を伸ばすことはできませんでした.このため,値下げするメリットは小さそうです.
 このような状況では,企業は値下げ・値上げともに自ら率先して動きづらいです.その状況は,屈折需要曲線のグラフで表現することができました.またそのグラフから,限界費用が少しぐらい変化しても,生産量や価格に影響を及ぼさないことがわかりました.

 後半は独占的競争について説明しました.独占的競争の舞台は,売り手が多数で,新規参入・退出も自由という,企業にとっては儲けにくい状況です.このような状況では企業は財の差別化を図ることによって,一時的な独占状態を作り出して利潤を得ようとします.ただし,新規参入が可能なため,長期的にはライバル達も似た似たような財を真似して作るため,個別企業に対する需要は小さなものになってしまい,結果的に利潤はなくなってしまいます.言い換えれば,既存企業の利潤がゼロになってしまうまで新規参入は続くのです.
 僕はこの状況はファッション業界を上手く表現できているのではないかと思います.毎年,あるいは季節毎に,新たな流行を作り出す先行企業は一時的に独占利潤を得ることができますが,売れている・儲けているのがわかると,すぐにライバル達も同じような財を生産しようとします.
 またもっと長期的な視点で見ると,世界の家電業界も独占的競争に近いかもしれません.日本を始めとする先進国が高付加価値の財を開発し,一時的に独占状態を作り,高い利潤を得ますが,生産コストの安い中国や台湾などが同じような財を安く作るようになると財の価格は下がり,競争的な市場になってしまうため,あまり儲からなくなります.

 このように後期の内容というのは,現実の経済を反映したものが多いため,前期に比べると得るものが多いと思います.授業でも言いましたが,皆さんは来年の就職活動時に「有名な企業,知っている企業」を狙うのではなく,利潤の高い(結果として給与も高い)「独占状態により近い企業」を狙うべきだと思うんですけどね.

【中間試験について】
 次回は中間試験です.第6回の課題の解答をアップしておいたので参考にしてください.
http://wwt.bunri-u.ac.jp/mizunoue/filedl.html

総合政策演習B1② 第7回

 今回も余剰分析です.これまでとは異なり,開放経済(貿易を含む経済)の余剰を分析します.とはいえ,それほど難しくなかったはず.

【授業の内容】
 開放経済の余剰分析は,ミクロ経済学ベイシックで取り上げていませんでしたが,そんなに目新しいものではないでしょう.これまで通りの余剰の考え方で十分対応できると思います.

 注意点は「小国の仮定(モデル)」という文言ですが,これは分析対象が世界市場に影響を及ぼすことのない(経済的な)小国であり,世界市場で決まる価格で,いくらでもその財を購入できるということを示しています.公務員試験には(おそらく)出てきませんが,反対に,大国の仮定は,その国による需要が増えると世界市場に影響を及ぼし,世界市場で決まる価格も上昇するというものです.

 問題はいずでも小国の仮定のもとで,封鎖経済(貿易しない経済,鎖国状態の経済)から開放経済に変化すること,つまり自由貿易をすることによって余剰にどのような変化が出るか,あるいは自由貿易の状態から関税を課すと余剰にどのような変化が出るかを問うものが多いようです.

 さて,来週は資源配分について,エッジワース・ボックスを用いた問題を解いていきます.エッジワース・ボックスの見方,パレート改善・最適の概念などを復習しておきましょうね.

【課題】
 テーマ19の必修問題と練習問題の3番です.