2009年1月24日土曜日

経済学A 第14回

 最終回である今回は,開発経済学について講義しました.開発経済学の知識は皆さんの今後の人生にとって直接役に立つわけでもありませんが,ぜひ知っておいて欲しいことです.

【授業の内容】
 まず,いわゆる途上国の現状について紹介しました.どれだけ貧しいのか,何に困っているのか,は日本にいてはなかなかわかりません.貧しい国で起きている問題や事件は日本ではあまり報道されることがないからです.

 サハラ砂漠以南のアフリカ(サブサハラ)の国々では1960年以降,人々はほとんど豊かになっていません.貧困国から急速に成長して先進国になった日本,そして現在も高い成長率を見せている東アジアの国々とは対照的です.
 サブサハラの国々が貧しいままである原因はなぜなのでしょう?

 講義ではヌルクセの貧困の悪循環を説明しました.現在貧しい理由は,過去に貧しかったからだ,というものです.貧しいと貯蓄ができず,貯蓄ができないと投資ができない,投資ができないと生産が低いので,いつまでたっても貧しいままなのです.では,この悪循環,貧困の連鎖を断ち切るためには,連鎖のどこかを断ち切らなければなりません.

 続いて世界中に存在する富の偏在を説明しました.かつては不平等を一部容認するトリクルダウン仮説という成長についての仮説が存在しましたが,歴史はトリクルダウン仮説が間違っていることを証明しました.日本でも近年,不平等や格差が取りざたされる機会が増えましたが,途上国の不平等は日本とは比較にならないものです.

 さて,このようなアフリカの貧困に対して,世界はどのように考えているのでしょうか?手をこまねいて見ているだけではなく,国連や世銀をはじめとする国際機関,先進国,NGOやNPOなど様々な機関が貧困撲滅に向けて活動してきました.
 授業の最後に,貧困削減についてのユニークな2つの活動・団体を紹介しました.1つはノーベル平和賞を取って一躍有名になったグラミン銀行,もう1つは現在進行中のOLPCプロジェクトです.

 グラミン銀行のマイクロファイナンス,そしてその創始者であるムハマド・ユヌス氏についての本は図書館に数冊あります.ムハマド・ユヌス氏の自伝は(少々厚めですが)興味深いですよ.またちょっと探してみても,いくつかの動画が発見できました.
http://jp.youtube.com/watch?v=HCu3uufD_js

 OLPCプロジェクトはまだお世辞にも上手く行っているとは言えないと思いますが,その理念,そしてアイデアは斬新なものです.惜しむらくは,その後そのアイデアを模倣したような超低価格ラップトップが多く出てきた点です.OLPCには日本語サイトもあります(あったのですが見つからないので,取りあえずWikipediaを).
http://ja.wikipedia.org/wiki/The_Children's_Machine

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