2011年7月10日日曜日

ミクロ経済学ベイシックⅠ 第12回(7/1)

 前回に引き続き,限界費用,平均総費用,平均可変費用の図を使って,様々なことを説明しました.

【授業の内容】
 前回は,限界費用と平均総費用が交差する点が損益分岐点であると説明しました.今回は同じ赤字であっても生産する場合としない場合とを分ける,操業停止点を説明しました.

 生産してもしなくても固定費用はすでにかかっています.そのため,企業は生産する前の利潤は赤字なのです.そのため生産するかしないかは,生産したらこの赤字が減るか増えるかで決まります.生産すると収入が発生しますが,逆に可変費用も発生します.そのため,収入が可変費用を上回るのであれば生産します.逆に収入が可変費用を下回れば,生産することにより赤字が増えてしまうので生産しません.
 この収入と可変費用の大小関係について違う見方をしてみましょう.収入(R)は次のように表されます.
R=P×x
 そのためRをxで割ってみると,Pになります.同様に可変費用もxで割ってみると,平均可変費用(AVC)が出てきます.
 つまり,収入と可変費用の大小関係は,それぞれをxで割った価格と平均可変費用の大小関係と等しくなります.価格が平均可変費用を上回るのであれば生産することで赤字は減りますし,下回るのであれば赤字が増えます.この分岐点である価格と平均可変費用が等しい点を操業停止点と呼びます.

 価格と限界費用が等しい点で生産するというのを思い出してみましょう.これに操業停止点の考え方を組み込めば,操業停止点より右上の限界費用が,企業の供給曲線になっていることがわかります.供給曲線とは,与えられた価格に対する企業の生産量を示したものです.この供給曲線を導くために,これまでの説明をしてきたのです.

 続いて,短期と長期の違いを説明しました.生産者理論における短期とは,生産設備を変更できないぐらいの期間のことです.逆に長期では生産設備が変更できます.つまり長期では最も適切な生産規模を選択できるのです.一方,短期では,与えられた生産規模を使って生産するしかありません.

 最後に次回の予習として余剰分析の基礎を説明しました.

【今回出てきた重要語句】
損益分岐点:その価格(あるいは生産量)を上回れば黒字,下回れば赤字となる点.
操業停止点:その価格(あるいは生産量)を上回れば操業をすべき,下回れば操業を停止すべき点.
供給曲線:与えられた価格に対する企業の生産量を示したもの.

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