2011年7月10日日曜日

開発経済学 第13回(7/8)

 今回はガバナンスについてでした.これまでも所々出てきた言葉ですが,きちんと説明したのは今回が初めてですね.

【授業の内容】
 ガバナンスとは何かについて,UNDP,世界銀行の定義を紹介しましたが,それらをまとめて僕は,「資源配分の効率性」と「意思決定のシステム」という2点に集約できるのではないかと考えます.また,ガバナンスに関連する様々な指標がありますが,まずは皆さんにガバナンスを示す指標としてどのようなものが考え得るかを話しあってもらいました.その上で,世銀のガバナンス指標,トランスペアレンシー・インターナショナル(TI)の実感汚職指数などを紹介しました.授業では紹介しませんでしたが,国境なき記者団による「報道の自由度ランキング」もガバナンスに関連する指標と言えるでしょう.
世銀:http://info.worldbank.org/governance/wgi/sc_country.asp
TI:http://www.ti-j.org/TI/CPI/index.htm
国境なき記者団:http://www.rsf.org/Only-peace-protects-freedoms-in.html

 さて,ガバナンスが悪いと何が問題なのでしょう?ガバナンスは上記の通り,資源配分の効率性と意思決定のシステムを意味しています.これらに問題があると,政府の政策や公共サービスが非効率であったり,特定のグループだけを優遇したり,汚職が横行したりと,様々な問題を引き起こしますし,それは結果として社会的厚生を下げてしまいます.
 ガバナンスが所得や乳幼児の死亡率に影響を与える,汚職が経済成長率を鈍化させるなど,様々な研究がガバナンスと社会的厚生との関係を指摘しています.
 続いて汚職がなぜ成長を鈍化させるのか,その経路を話しあってもらいました.

 後半は移行経済について解説しました.学生の皆さんにとって,社会主義国が資本主義の現実的なオルタナティブであった時代を想像しにくいでしょうね.僕も経済学を学び始めた時にはすでにソ連はロシアになっていましたし,ベルリンの壁も崩壊後でしたし,言わば歴史によって,経済システムとしては大きな欠陥があるという審判が下されていたので,学びたいと思える環境にはありませんでした.
 さて,社会主義経済にはどんな欠陥があるのでしょう.いくつかありますが,1つは市場経済とは異なり,情報の流れが上から下へと一方通行であり,効率的な資源配分が実現できないことがあります.もう1つは,物事を改善したり,新たな商品・技術を発明したりしようというインセンティブを持ちにくい点です.シュンペーターは経済成長における重要なファクターとして,創造的破壊を指摘しています.社会主義経済では,既製品を大量生産することには向いているかもしれませんが,このような創造的破壊が起きにくいのではないでしょうか.
 それらが原因となるのかどうかはわかりませんが,中国の実質GDP成長率を見ると,開放改革路線以後,成長のばらつきが明らかに小さくなっているようでしたね.UNDPが指摘するように,市場経済は最高の経済パフォーマンスを保証しないとしても,成長のばらつきを小さくするのかもしれませんね.もちろんタダの偶然で,他国のデータを見ると違う結果なのかもしれません.このように仮説を立て検証するとより良いレポートになります.

【第3回レポートについて】
提出期限:8月4日20:00厳守
分量:3枚+α(表紙,図表,参考文献を除く)
テーマ:各テーブルのメンバー内で重複しないように以下のテーマから選択.
A:貧困にあえぐ人を救うために,ジンバブエ政府は何をすべきか?国際社会は何をすべきか?
B:自国の農家保護と途上国の貧困撲滅を両立するためには?
C:(あなたが大統領であるとして)マラリア感染者を減らすための政策は?
D:途上国ではなぜ教育水準が低いのか?どうすれば就学率が上がるのか?
E:途上国にとって望ましい援助とは?最悪の援助とは?どんな援助は貧困を削減できるのだろうか?
F:自由課題

【第15回の授業について】
テーマ:タンザニアの貧困削減プランを立案しよう(予算:1億ドル)
・3チームによるプレゼン
・チーム毎にプレゼン(各15分)
・プレゼン後に質疑応答
・プレゼン方法は自由(Powerpointの場合は2003で保存・作成)

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