2010年1月21日木曜日

経済学A 第13回

 今回は少子化と結婚の経済学について説明しました.今回と言っても一週間以上前ですね….

【授業の内容】
 少子化が問題であると,よく聞きますが,はたしてどうして少子化は問題なのでしょう.また少子化の原因,解決策は何なのでしょう.
 少子化と結婚は切っても切り離せない問題なので,結婚についても経済学的観点から説明します.

 まず少子化とは何かを考える上で必要なキーワードである合計特殊出生率(TFR)を説明しました.先進国では人口を維持するためにTFRが2.08程度必要だそうです(これを置換水準と呼びます).しかし現在の日本は1.4を下回っており,このままでは日本の人口が減少し続けることは確実です.
 さて,少子化,そしてその結果人口が減少すると何が起こるのでしょう.それをメリットとデメリットに分けてみましょう.
 まず少子化のデメリットですが,なんといっても社会保障の問題に尽きます.これ以外はそれほど深刻な問題ではないでしょう.少子化は高齢化でもあるため,人口に占める高齢者の割合を増加させます.そのため,年金や健康保険,介護保険などにかかる費用が増加します.現在の年金制度は賦課方式をとっており,人口バランスが崩れると給付水準を維持することが困難になることは以前に年金の回に説明しました.
 この他には,労働力人口の減少により,GDPの減少,それに伴い国際的な存在感が小さくなることも考えられます.またクズネッツの才能原則も当てはまるかもしれません.

 逆に少子化のメリットとしては,1人あたり資本の増加により所得水準が上がることが考えられますし,環境負荷の軽減,人口過密の緩和なども考えられます.世界を見渡してみると,1人あたり所得の高い国は,ルクセンブルク,スイス,リヒテンシュタインなど人口の小さな国が多く,必ずしも「人口が多い」=「豊か」ではないようです.

 さて,少子化はなぜ起こるのでしょう.こちらも世界を見てみると,少子化が課題となっているのは先進国ばかりです.また先進国の中でも,日本,韓国を始めとするアジア,そしてイタリアやスペインなど南ヨーロッパで深刻な問題となっています.
 少子化が起こる原因を説明する仮説をいくつか紹介しましたが,現在の日本の状況を説明する説得力のある仮説としては,イースタリンの相対所得仮説があります.

 後半は結婚についての経済学的考察を行いました.経済力あるいは学歴が未婚率に大きな影響を持つことをデータから紹介しました.このあたりは,テレビなどではあまり触れられないかもしれませんね.

2 件のコメント:

ponpon さんのコメント...

大都市の年齢別人口を見ると、30代後半を中心とする層、つまり第二次ベビーブーム世代があまり子供を産んでいないことが分かりますね。

日本の主要都市の年齢別人口グラフ
http://homepage3.nifty.com/joharinokagami/110001.html

理由はご指摘の通りで、やはり経済力の問題が大きいでしょう。

第二次ベビーブーム世代、特に現在の30代後半以下の世代は、バブル崩壊後の平成大不況下に学校を卒業したため、まともな就業機会に恵まれなかった人達がたくさん居ます。

不況に加え、女性の社会進出も同時に進んだため、特に男性の就職難や低所得化に拍車が掛かり、適当な異性が見つからず結婚出来ない女性が増える原因にもなりました。

最近では、そういった女性を慰めるためのTVドラマも放映されているようですが、なんだかなぁという気がします。

水ノ上 智邦 さんのコメント...

 ponponさん、コメントありがとうございます。

 ご指摘の通り、第2次ベビーブーム世代、それに続くロスジェネ世代の所得の低さが少子化の原因の1つだと思います。

 これらの世代の親は相対的に豊かなので、親と同居している場合、結婚して夫婦だけの収入で生活するようになると、まず間違いなく生活水準が低くなります。そのため結婚することの経済的インセンティブはあまりありません。それ以前の世代は、所得が右肩上がりであり、親と同居するより結婚した方が経済的に豊かになれていたのとは対照的です。

 社会学の立場からは、お見合いが少なくなったこと、そしてある年齢になると結婚をするべきだという圧力が減ったことなどからわかる通り、結婚が自由化されたことにより、結婚できない(しない)人が増えたという指摘もあります。(山田昌弘氏など)

 最近、婚活イベントでは女性は集まるが、男性が足りないという話をよく聞きます。このあたりもなかなか興味深いです。

 ご紹介していただいたサイト、参考になります。ありがとうございました。