2010年1月22日金曜日

経済学Ⅰ 第13回

 前回に引き続き財政と税,そのうち税の仕組みについて説明しました.

【授業の内容】
 税には様々な種類があります.ややこしいから所得税だけ,消費税だけでも良いのではないかと思うかもしれませんね.所得税だろうが,消費税だろうが,お金を取られるのは同じ,と考えるかもしれません.しかし所得税と消費税はまったく性質の異なる税であり,どちらで課税するかで,私たちの生活は大きく変わってきます.

 まず税の区分として,国税と地方税,直接税と間接税を説明しました.重要なのは直接税と間接税の違いです.直接税とは,税の負担者が直接納税する,つまり負担者と納税者が同じ税です.対して間接税とは,負担者と納税者が異なる税です.例としては消費税があります.私たちが物を買う時,代金に加え,消費税も一緒に払います.そしてそのお店が私たちの消費税を税務署に納めていますね.
 間接税の代表である消費税は公平な税,そして直接税の代表である所得税は公正な税であると言われます.まずは公平と公正の違いを理解しましょう.

 公平とは,だれもが同じ条件で競争することです.お金持ちの家に生まれたから私立の学校に通えるけれど,家が貧しいから私立には通えないという現象があるとすれば(ありそうですね),教育を受ける上で不公平が存在していることになります.つまり公平とは事前の平等,わかりやすく言うと,全員が同じ条件で競争することです.結果に差が生まれることは公平とは関係ありません.
 対して公正とは,事後の平等,つまり結果を平等にすることを意味します.努力しても収入が低い人もいれば,あまり努力せずとも高い収入を得られる人もいるでしょう.自由な競争をすれば当然,勝者と敗者が出てきます.その勝者と敗者の差を小さくすることが公正です.

 消費税は公平な税であると言われます.それはすべての人を平等に扱うからです.誰に対しても同じ税率を課しています.これは結果として,低所得層には厳しく,高所得層には負担の軽い税であると言えます.
 しかし,消費税には脱税できないという素晴らしい利点があります.

 対する所得税は公正な税と言えます.なぜなら,累進課税制を持っており,低所得層への税率は低く(あるいは課税せず),高所得になればなるほど高い税率を課しています.つまりお金持ちからたくさん税金を取ることで,貧富の差を小さくしています.
 ただ,貧困層に課税しないだけでは,貧困から抜け出せないという理由から,一定以下の所得層には所得給付をすべきというベーシック・インカムという考え方も広まってきました.
 所得税のデメリットとしては,職業によっては脱税しやすいという不備があります.そのため同じ年収500万円でも,職業によって税負担に差があるという不公平が生じます.

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