2011年6月20日月曜日

ミクロ経済学ベイシックⅠ 第10回(6/17)

 今回も生産者理論です.計算が入ってきました.

【授業の内容】
 前回,小規模な企業のことを考えましたが,今回は大規模な工場を考えてみました.その工場は労働者を投入すると,何かしらの財が生産されて出てくるとしましょう.その場合,きっと最適な生産規模があるのではないかという話をしました.労働者が誰もいなければ何も生産されません.そこで労働者を1人投入してもあまり生産量は増加しません.なぜなら工場が大規模なので様々な役割があるのに,労働者が1人しかいなければ,その人がすべてをすることになりますが,それだと効率が悪そうですね.そこでもう1人を投入すれば,少しは役割分担もでき,先程よりは効率がよくなりそうです.ではもう1人,もう1人と投入していけば,どんどん効率が良くなりそうです.しかしそれは無限に効率が良くなるということではありません.工場には最適な労働者の数があり,それに到るまではどんどん効率が良くなりますが,それを超えると少しずつ人が余ることになり,効率性は落ちて行くのでしょう.

 さて,このような場合,労働者の数をどうやって決めたら良いのでしょう.それはその労働者を投入することにより新たに増加した生産量(労働力の限界生産性)と,その労働者を投入するためのコスト(賃金)のどちらが大きいかで決まります.30万円で雇った労働者が50万円分の財を生み出してくれれば雇ったほうが良いでしょうし(材料費などは無視しています),その労働者が20万円分しか生み出さないのであれば雇うと損をしますね.

 続いて最適な生産量について考えてみましょう.上述のとおり,大規模な企業の生産効率は最初は悪く,(労働者を増加して)生産を増やすに従って効率は上がりますが,過剰に生産しようとすると効率は下がっていきます.
 最適な生産規模を考えるためには限界費用(MC)という概念を取り入れる必要があります.これは生産量を1単位増加させることで新たに費用がどれだけ発生するかを示すものです.この限界費用を使うと最適な生産規模がわかります.例えばこの財が100円で売れるとすれば,財を1個生産すると収入が100円分増えます.その際の限界費用が80円だとすれば,80円で作り,100円で売ることになるので,差額の20円が利益になります.つまり限界費用が価格よりも低い限りは生産量を増加すべきなのです.しかし,価格と限界費用が等しくなれば生産をストップしなければなりません.なぜならそれ以上生産すると,限界費用が価格を上回るため,次の1つの生産からの利益はマイナス,赤字なのです.ただし,これは余分に1個作ると今までの利益が消え,突然赤字になるということではなく,その1個だけについて見てみると赤字だということです.そのためこの1個を仮に作ったとしても今までの黒字が少し減るだけで赤字になるわけではありませんが,利益が減るので作るべきではありませんね.
 結論は,限界費用と価格が等しくなるようい生産すれば最適な生産量がわかります.P=MCです.

 さて,この限界費用ですが,何かを少し変化させるとそれによりもう一方がどれだけ変化するかを計るものですね.これは経済数学入門で繰り返しやった微分と同じ意味ですよね.というわけで,限界費用を導き出すためには微分が必要です.総費用(あるいは可変費用)を微分することで限界費用が導出されます.これは簡単だし,非常に重要なので誰もができなければなりません.期末試験でもこれができなければ確実に単位は取れません.
 授業では実際の数値例で最適な生産量,さらにその時の収入,総費用,利潤についても計算してみました.

【今回出てきた重要語句】
限界費用:Marginal cost(MC).生産量を1単位増加させた時に新たに発生する費用のこと.総費用を微分することで得ることが可能.

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