2011年6月4日土曜日

開発経済学 第8回(6/3)

 今回は農業でした.

【授業の内容】
 まず,前回の課題であった「先進国と途上国の農業の違い」を話しあってもらい,発表してもらいました.それらをまとめたものを紹介しましたが,皆さんの意見の集合に僕が新たに付け加えるものはあまりありません.よく考えられていたと思います.

 続いてマルサスの罠の復習をしました.今回の中心となる話は,急増する人口を賄うだけの農業生産が実現できるかという話です.マルサスの予言によれば,人々はそのうち食糧危機に陥ることになりそうですが….ただしこの懸念は最近になってでてきたものではありません.50年前にも食糧危機が発生するのではと考えられていました.しかし,「緑の革命」のおかげで地球全体が飢餓に苦しむという事態にはなりませんでした.

 さて,なぜ開発経済学にとって農業が重要であるかなのですが,まず途上国の人口の大半は農家であることがあります.また貧困に苦しむ人の多くは農家です.つまり途上国の貧困を減らすことは,農家の貧困を減らすことでもあります.さて,農業はほかの産業と比べどんな特徴があるのでしょう.ここでは次の特徴を紹介しました.
・気象リスクの存在
・季節性(季節的失業)
・生産資源の移動が不可能
・土地が有限
です.特にリスクが大きい点は注意すべきですね.

 続いて,農業をマクロ・ミクロの視点から考察しました.マクロ的にはヌルクセ,プレビッシュ,シンガーらの農業ペシミズム論,プレビッシュ=シンガー命題などを紹介しました.ミクロ的視点からは,労働の限界生産力が逓減すること,そのため,貧困から抜け出すためには出生数の減少,都市への人口流出,農業の生産性向上などがあります.

 農業の生産性はこの数十年で大きく向上しました.それは緑の革命と呼ばれています.
 緑の革命とは,高収量品種の開発,灌漑設備と化学肥料の普及による農業生産性の飛躍的向上のことを指します.これに関連してネリカ米,灌漑設備の種類などを紹介しました.授業では紹介し忘れましたが,品種改良により「奇跡の小麦」と呼ばれる小麦を生み出したノーマン・ボーローグはこの貢献で数億人の命を救ったと言われています.後にボーローグはノーベル平和賞も受賞しました.彼の伝記は図書館にも(たぶん)あります.

 さて,最後に「自国の農家保護と途上国の貧困削減の両立」を実現できる政策を考えてもらいました.結構時間をとりました.各チームに具体的な政策を発表してもらいましたが,なかなか面白い案もでましたね.

 次週は疾病についてです.

【レポート再提出】
 第1回の評価がB以下だった人が再提出することができます.Eの人は強制です.提出期限は6月9日(木)20:00です.提出方法は前回と同じくメールで添付です.

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