2011年6月25日土曜日

経済学A 第10回(6/21)

 今回は為替と貿易についてです.

【授業の内容】
 まず円高と円安の説明です.よく考えれば当たり前なのですが,いきなり言われると間違えそうですね.現在はおよそ1ドル=80円ですが,これは1ドルを購入するために80円かかることを示すので,1ドル=100円になると1ドルを購入するために100円かかるようになります.つまりこの変化は,1ドルの価値が上がったことであり(ドル高),もちろんそれは円と比べてのことなので,円の価値が下がったこと(円安)でもあります.つまりこの変化は円安ドル高です.逆に1ドル=60円になれば円高ドル安です.

 さて,一般に,円高は日本経済にとって良くないと言われます.なぜ日本円の価値が上がる円高が悪いことなのでしょう.結論から言うと,私たち消費者にとっては円高は悪いことではありません.むしろメリットの方が多いです.私たちが持っているお金(円)の価値が上がるので,外国の製品を安く買えることになるし,海外旅行も安く行けます.
 しかし,日本経済を支える輸出企業にとっては円高はありがたくないものです.なぜなら円高はドル安であり,ドルの価値が下がることなので,アメリカ人にとっては日本製品を買う時にたくさんのドルが必要になるため,なかなか買いづらくなります.日本の企業の輸出品が売れなくなるのです.日本の企業の国際競争力が落ちると言っても良いでしょう.

 このように為替は企業にとって大きなリスクでもあるのですが,為替はどうやって決まるのでしょう.為替は外貨の価格ですので,これまでも何度も説明してきたように需要と供給のバランスによって決まります.みんなが円を欲しがりドルを売りたがれば円高ドル安になります.
 この為替相場なのですが,値動きがあるため,投機目的で為替を売買する人も存在します.現在では輸出・輸入で使うお金よりも投機のために売買されるお金の方がはるかに巨大です.1997年のアジア通貨危機の発端も,投機目的のためにタイの通貨バーツが売買されたためです.

 後半は外貨預金について説明しました.外貨預金はその響きから「安全」であると勘違いされがちです.確かに日本の銀行に対する預金は非常にリスクが低いのですが(その分,リターンも低い),外貨預金には為替リスクが存在します.リターンが高い背景には,やはり高いリスクが隠れていました.
 ここ数年よく聞くようになったFX取引についても少し説明しました.「FXは儲かる!」,「FXで大金持ちに!」という甘い話に騙される人も少なくありません.しかし以前に話したように「リターンが高い(大金が稼げる)金融商品はリスクも高い」のです.FXは,高いレバレッジで行えば,あっという間に元本すべてを失い,さらに借金を背負ってしまう可能性もあります.レバレッジにもよりますが,FXは様々な金融商品の中でもリスクの高い商品です.知り合いに「上手くいくから一緒にやろう」と誘われても,簡単に応じてはいけませんよ.

 最後に為替制度について説明しました.今回説明したように,日本円は,為替レートが刻々と変化する変動相場制なのですが,中には為替レートを固定している通貨もあります.かつては日本も1ドル=360円の時代がありました(僕は生まれてませんが).また,固定相場制を基本として,上下数%の変動を認めるペッグ制を採る通貨もあります.

 次週はアンケートでみなさんの要望が多かった少子化と結婚の経済学を説明します.

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