2011年6月20日月曜日

経済学A 第9回(6/13)

 前回に引続き資産運用の話です.今回でようやく株の話になりました.

【授業の内容】
 前回は利子,割引現在価値,期待値の計算やリスクについて説明しました.今回はそれらを使って株式について理解を深めました.

 まず,株を買うメリットを皆さんに聞きました.多くの人は「株というものは安く買って高く売ることで儲けるものだ」と考えがちです.もちろんそのような目的でも買うわけですが,それ以外のメリットもあります.「安く買って高く売る」ことで利益を出す取引を裁定(さいてい)取引と呼びます.またそれによる利益はキャピタルゲインと呼びます.日本語で言えば「資本利益」と言ったところでしょうか.
 それ以外のメリットは配当です.ある株を保有することはその企業の一部を所有することになるので,持っている株の数に応じて企業の利益の一部を受け取れるのですが,それが配当です.こちらはキャピタルゲインに対してインカムゲインと呼ばれます.所得利益とでもいうのかな?あまり日本語で言うことはありません.

 さて,今回説明した株価の予測方法のうち1つめのファンダメンタル分析は,この配当こそが株の価値なのだとする考え方に基づきます.ある会社の株を持っていると,この企業が倒産することなく毎年毎年利益を出し続ければ,永遠に配当をもらえます(例外あり,黒字でも配当を出さない場合や,赤字でも配当をだす場合もあります).前回の割引現在価値でわかったように,未来のお金を現在の価値に直すときには割り引かなければなりません.ファンダメンタル分析では,今後受け取れるすべての配当を現在の価値に直したものが株価であるとします.確かに,その株を持っていても配当が貰えそうにない,あるいは近々潰れてしまいそうな企業の株はあまり欲しくありませんね.みんながそう考えれば,みんながその株を売ることになるので,株価は低いでしょうね.実際,東京電力の株価は震災以来ガクンと下がっています.

 ファンダメンタル分析に対してテクニカル分析というものがあります.これはその株の過去の株価推移を見て将来の株価を予測するものです.言うなれば経験則の集合のようなもので,なぜそうなるのかという理論的な裏付けは弱いです.学術的にはあまり信頼されていませんが,株式入門のような本ではよく取り上げられます.

 さて,後半は株以外の資産運用方法について説明しました.なぜなら,株は資産運用の手段の1つであるため,株を始める前に,株以外に自分に合った金融商品があるとわかればそちらを選べば良いのです.
 今回取り上げたのは以下の金融商品です.
・銀行預金,貯金
 皆さんにもっとも身近な金融商品ですね.リスクはほとんどない代わりに,現在の金利は非常に低いです.年に一度でも引き出し手数料を取られたら逆にお金は減りそうなぐらいです.
・投資信託
 投信やファンドとも呼ばれます.信託銀行,証券会社以外にも普通の銀行でも買うことができます.1万円程度から購入できるので,比較的敷居の低い商品です.これは,多くの投資家から集めたお金をプロのファンドマネージャーが運用し,その運用益を投資家に配分するというものです.ファンドによって,リスクの低さ重視,リスク高めで運用益重視など,特徴があります.個人で買うよりも多くの投資先に資金を分散できるので,株を個人で運用するよりはリスクは低いことが多いです.ただし,毎年手数料がかかるため,リターンもやや低めになります.
・債券(国債,地方債,社債)
 (国債を例に取ると)国からの借用証書のようなものです.国にお金を貸し,その利子を毎年払ってもらえます.お金を貸す期間は様々で3,5,10年あたりが多いでしょう.なかには50年というものもあります.最近は個人でも国債を買うことができます.10年物であれば10年は元本を返してもらえないという制約があるため,銀行の普通預金に比べれば金利は多少高めです.個人向け国債は身近な金融機関でも売ってます.
・金(gold)
 こちらは金融商品というより実物商品への投資ですが,金に投資する人もいます.金は価値が比較的安定しているため,どの国の貨幣も信頼できないときには特に人気が高まります.
・外貨預金,FX
 これらについては次回の為替の話の時に説明します.

 さて,ここまでの内容をまとめると,様々な金融商品がありますが,リスクとリターンが比例しています.ローリスクのものはローリターンだし,ハイリターンのものはハイリスクです.例外はありません.ローリスク・ハイリターンのものは存在しません.いえ,正確に言えば,存在はするでしょうが,我々の所にそんな上手い話が来ることはありません.なぜならそんな貴重な情報があれば,人に教えずに自分でお金を借りて投資するでしょうからね.つまり美味い話には気をつけよう,ということです.

0 件のコメント: