2011年6月13日月曜日

ミクロ経済学ベイシックⅠ 第9回(6/10)

 今回は労働市場についてと,生産者理論の基礎を説明しました.

【授業の内容】
 まず,労働市場における労働供給について説明しました.これまで財の消費の分析のために用いていた道具(無差別曲線と予算線)を用いて,賃金率が変化したときの労働供給の変化について分析しました.
前提条件
①人々は余暇(L)と所得(I)により効用(U)を得る.
②人々は自分が持っている時間を余暇と労働(l)に割り振る.ここでは1日の労働を考えるため,所有時間は24(h)とする.
③所得は労働時間に賃金率(w)をかけ合わせたものになる.
①を数式で表せば,U=U(L,I)
②を数式で表せば,l=24-L
③を数式で表せば,I=w×l
とそれぞれなります.この他にも余暇や所得が増えると効用が増えるが,その増加率は逓減するなどいくつかの細かい前提条件がありますが省略.

 このような場合,賃金率が変化すると労働時間はどう変化するのでしょう.バイトの時給が上がると労働時間は増えますか?一見増えるように思えますが,どんどん時給を上げていけば余暇を0にするまで労働時間は増えていくのでしょうか.そんなことはありませんよね.ある程度まで時給が上がれば所得は十分多くなるので,余暇の方が重要になってくることでしょう.これもスルツキー分解で考えれば,なぜバイト代が増えると労働時間も増えると単純に言い切れないのかがわかります.皆さん,テキストを参考にスルツキー分解で考えてみましょう.

 後半は次回からしばらくのテーマとなる生産者理論です.今回は生産者(企業)の目的,利潤と収入・費用の関係,そして企業の生産活動のイメージを伝えました.
 まず企業の目的ですが,単純に利潤の最大化です.実際の企業も(短期的にはともかく長期的には)利潤を出せなければ潰れてしまいますもんね.では利潤とはどのように定義されるのでしょう.その説明のために,まず記号を確認しておきましょう.
P:価格
x:量(ここでは生産量)
π(パイ):利潤
R:収入
TC:総費用
VC:可変費用
FC:固定費用

 さて利潤ですが,次のように収入から総費用を引いたものとして定義されます.
π=R-TC
 この収入(R)は,
R=P×x
 で表されます.いくらで何個が売れたか,つまり価格と量をかけたものが収入です.今は基礎なので,税などは無視します.また総費用は,
TC=VC+FC
 で表されます.ここは説明が必要ですね.可変費用(VC)とは生産量が増加することにより増えていく費用のことです.具体的には材料費などが適当ですね.一方,固定費用(FC)は生産量に関係なくかかる費用のことで,埋没費用(サンクコスト)とも呼ばれます.テナント代など,起業のための初期投資はこれに当てはまりますね.

 最後に,これから分析する企業のイメージを持ってもらいました.まずは,個人経営のパン屋さんを想定してみました.職人さん1人で起業し,パン焼きはもちろん,接客や経理もやっています.1人でもなんとかこなすことはできますが,レジを任せられるバイトがいれば,もっとパンの生産量を増やせるはずです.とはいえ,パンを焼くオーブンは1台しかないので,バイトが入ったからといって生産量は2倍までは増えません.ここからバイトを1人,また1人と増やすとどうなるでしょう.もちろん人手が増えれば生産量は増えるでしょうが,重要なのはその増加量です.おそらくバイトを雇えば雇うほど,その人が生産増加に貢献できる量は減っていくのでしょうね.これを労働の限界生産力逓減と呼びます.
 次回は大規模な工場を想像してみましょう.

【今回出てきた重要語句】
利潤,収入,総費用,可変費用,固定費用(上で説明したため,説明は省略)

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