2007年7月3日火曜日

経済学A 第13回

 今回は開発経済学でした.僕の専門でもあります.専門だけに言いたいことが山ほどあるので(話せと言われれば丸1日ぐらいなら話せると思います),どれを話そうかと悩みました.

【授業の内容】
 まず,皆さんが普段あまり知ることのないであろう途上国の現状について,データを使って説明しました.いくつか質問をしましたが,現実は皆さんが考えるよりも深刻であったのではないでしょうか.日本のフリーターも所得だけでみると,世界の中でかなり裕福であることがわかりました.
 次に貧しい国はなぜ貧しいままなのか,考え得る原因を列挙しました.病気,人口増加率の高さ,経済政策,教育,不平等などいくつも指摘できますが,1つの説得力ある答えとして,「貧しいが故に貧しい」という貧困の悪循環(ヌルクセ)を説明しました.貧困というのは結果であるとともに,将来貧しい原因にもなるのです.だれかがこの悪循環の鎖を断ち切らなければなりません.かつては,トリクルダウン仮説,つまり一部の人であっても豊かになれば,しずくが滴るように貧困層にも恩恵があるはずだ,という仮説が信じられていましたが,DrezeとSenの実証的な研究により仮説が誤りであり,成長は貧困削減の必要条件であるが十分条件ではないことが指摘されました.

 さて,途上国の暗い面ばかり紹介しましたが,貧困を撲滅するため先進国は協力して途上国に援助を行っています.その一例としてミレニアム開発目標(MDGs)を挙げましたが,2006年現在,日本はそこでの目標(国民総所得の0.7%をODAとして拠出)には届いていません(やっぱり暗いですね…).しかし,ODAに代表される二国間援助だけでなく,国際機関(国連,世界銀行など)や多くのNGOが貧困問題に真正面から取り組んでいます.貧困削減に取り組む民間の例として,昨年度のノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌスとグラミン銀行を紹介しました.また今年(一部で)話題となっているニコラス・ネグロポンテによるOLPCプロジェクト(One Laptop per Child,こども1人に1台のノートパソコン)も紹介しました.きっと皆さんにも途上国の人々のためにできることが何かあるのではないでしょうか?この講義により皆さんが少しでも途上国に関心を持ち,行動してくれれば僕にとっては非常にありがたいことだし,そうなれば授業は大成功だと言えます.

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