2010年12月1日水曜日

ミクロ経済学ベイシックⅡ 第11回(12/1)

 今回もリスクの続きです.

【授業の内容】
 前回少し説明したリスクに対する選好の分類(リスク回避者,リスク中立的,リスク愛好家)から始めました.

 多くの人は(多くの場合)リスク回避者であると考えられます.だからこそ自動車に乗るほとんどの人は強制保険だけでなく任意保険にも入っているのでしょう.
 リスク回避者を前提に,A(50%の確率で年収が1000万円だが,50%の確率で年収0円)という仕事と,B(確実に年収500万円)という仕事について考えました.
 どちらも年収の期待値は同じく500万円です.違いはリスクが存在するかどうかです.リスク回避者の効用曲線からは,Aの仕事から得られる効用の期待値(年収の期待値ではない)が,Bの仕事から得られる効用よりも低いことがわかりました.逆にリスク愛好家の効用曲線は,Aの仕事から得られる効用の期待値が,Bの仕事から得られる効用よりも高いことを示しています.
 リスク回避者の効用曲線についてもっと考えてみると,Aの仕事と同じ効用を持つのは,確実に何万円をもらえる仕事なのか,ということもわかってきます.言い換えれば,リスクを避けるために年収をどれぐらい下げられるかです.この金額はリスク・プレミアムと呼ばれます.逆にリスク愛好家が,リスクを背負うために犠牲にできる金額は負のリスク・プレミアムと呼ばれます.

 我々,リスク回避者は,リスクを避けるために様々な保険に入ることがあります.先ほどの自動車保険もその例ですね.これも確率的に考えれば平均的な個人は,保険に入ってももとがとれません.つまり平均的には受け取る金額より支払う金額の方が大きいのです.ではなぜそのような保険に入るかというとリスクを避けるためです.リスクプレミアムより安い金額であれば,人は保険に入ることで効用を高めることができます.その理由を図を使って説明しました.また,保険に入ることは,保険会社にとっても利潤が増えるので,加入者,企業どちらにとっても喜ばしいことです.保険の発明はまさにパレート改善ですね.

 ただし,前回も少し触れたように,問題は我々が確率をきちんと把握できていない点です.我々はめったに起きない事象の確率を過剰に高くとらえる傾向があるようです.事故を起こすことも確率から考えると,必要以上に高い保険に入っているのかもしれません.
 怖がりすぎるのではなく,また怖がらなさすぎるのでもなく,確率通りに適切に怖がるというのはなかなか難しいものです.

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