2010年12月1日水曜日

経済学A 第10回(11/30)

 今回は為替です.来週(場合によっては再来週も)まで連続したテーマです.

【授業の内容】
 為替というのはある通貨と他の通貨との交換比率のことです.円高,円安というのはよく聞く言葉ですし,円高不況という言葉があるように,円高は悪いことのようですが,なぜ?誰にとって?悪いのでしょうか.

 まず確認として円とドルを例に,円高,円安の例を説明しました.1ドル=80円が1ドル=100円になると,「円が増えたから円高?」というように混乱しがちですが,80円,100円というのは1ドルの値段なので,ドルが80円から100円へと値上がり,つまりドル高になったということです.またドルが値上がりしたのは,その比較対象である円と比べてのことなので,この場合はドル高は円安と同じことです.

 円高不況という言葉を聞いたことがあるかもしれません.どうして我々が持っているお金の価値が高まることが不況(景気悪化)につながるのでしょう.実は私たち家計にとっては円高は(直接的には)それほど悪いことではなく,むしろ海外の商品を安く買えるため,メリットの方が大きいようです.海外旅行に行くときには,特に円高のありがたみがわかるでしょう.
 しかし日本経済の屋台骨とも言える自動車や家電などの輸出企業にとってみれば,円高は恐ろしいものです.なぜなら1ドル=100円の時,日本で3万円のデジカメはドルに直すと300ドルです.つまりアメリカでは300ドルで販売されているとしましょう.ここで円高になり,1ドル=80円になれば,このデジカメは375ドルです.25%も値上がりしてしまいました.すると,アメリカでは日本製のデジカメは割高となり,売上も落ちてしまうでしょう.
 また,少し見方を変えて,アメリカに進出し,現地で生産し,現地で販売している日本企業のことを考えてみましょう.ある年には現地で300万ドルを稼いだとします.このお金は,1ドル=100円の時(円安)には日本円に直すと3億円ですが,1ドル=80円の時(円高)には2億4000万円になります.つまり円高になったせいで,海外で稼いだお金が日本円に直すと減少してしまうのです.

 このように円高は我々消費者にはメリットがありますが,輸出企業にとってはデメリットになります.ただし,企業の利益が減ると,我々家計の所得も減るでしょうから,間接的には消費者にとっても望ましくないことかもしれません.

 さて,この為替相場なのですが,値動きがあるため,投機目的で為替を売買する人も存在します.現在では輸出・輸入で使うお金よりも投機のために売買されるお金の方がはるかに巨大です.1997年のアジア通貨危機の発端も,投機目的のためにタイの通貨バーツが売買されたためです.

 後半は外貨預金について説明しました.外貨預金はその響きから「安全」であると勘違いされがちです.確かに日本の銀行に対する預金は非常にリスクが低いのですが(その分,リターンも低い),外貨預金には為替リスクが存在します.リターンが高い背景には,やはり高いリスクが隠れていました.
 ここ数年よく聞くようになったFX取引についても少し説明しました.「FXは儲かる!」,「FXで大金持ちに!」という甘い話に騙される人も少なくありません.しかし以前に話したように「リターンが高い(大金が稼げる)金融商品はリスクも高い」のです.FXは,高いレバレッジで行えば,あっという間に元本すべてを失い,さらに借金を背負ってしまう可能性もあります.レバレッジにもよりますが,FXは様々な金融商品の中でもリスクの高い商品です.知り合いに「上手くいくから一緒にやろう」と誘われても,簡単に応じてはいけませんよ.

 最後に為替制度について説明しました.今回説明したように,日本円は,為替レートが刻々と変化する変動相場制なのですが,中には為替レートを固定している通貨もあります.かつては日本も1ドル=360円の時代がありました(僕は生まれてませんが).また,固定相場制を基本として,上下数%の変動を認めるペッグ制を採る通貨もあります.

 来週はこの関連で,貿易について説明したいと思います.

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