2010年4月22日木曜日

経済学A 第2回(4/20)

 今回は経済学的な思考の練習として,「大学進学は合理的か?」と「ダイヤモンドはなぜ高い?」という2つのテーマについて考えました.

【授業の内容】
 まず「ダイヤモンドはなぜ高い?」かを考えました.みなさん当たり前だと思っているかもしれませんんが,常識を疑ってみましょう.ダイヤモンドが高いのには理由があるのでしょうか?僕の質問に対する皆さんの回答は次の3つでした.
仮説.1 ダイヤモンドには需要がある
仮説.2 ダイヤモンドは希少である
仮説.3 ダイヤモンド自体に価値がある
 なかなか鋭い意見ですが,実はそれぞれの仮説は間違いではありませんが,完璧な答えでもありません.なぜなら仮説.1に対する反論として世界中の誰もが切実に需要する(モノやサービスのこと)として,水や空気がありますが,値段はほぼタダです.また仮説.2に対する反論としては,希少であっても価格が安い財はたくさん存在することが挙げられます.例としては僕が描いた油絵があります.それよりはるかに多く存在するピカソの絵には高い値段が付けられています.最後の仮説.3ですが,ダイヤは天然の鉱物の中で,もっとも光の反射率が高く,硬度も高いようです.「じゃあ高いのも納得だ」と思うかもしれませんが,そのような価値だけで評価するなら,人工ダイヤモンドと天然ダイヤモンドはほぼ同じ値段で売られているはずですが,なぜか両者の値段は大きく違います.
 結論としては,仮説.1~3のそれぞれでは十分ではなく,すべて(特に1と2)が揃って初めてその財の価格は高くなります.いわゆる需要と供給ですね.供給より需要の方が高ければ(ダイヤなど)その財の価格は高くなりますが,需要が高くてもそれを上回る供給がある財(空気や水など)は非常に安価です.

 続いて,「大学進学は合理的か?」について考えました.みなさんはすでに入学しているので今更言われても困るかもしれませんが,経済学的に見て,果たして大学進学は合理的なのでしょうか?それとも割りに合わない非合理的な行動なのでしょうか?
 経済学では選択肢を考える時には,それぞれの選択肢のメリットとデメリットを考えます.この例でも,「大学進学」と「高卒として就職」それぞれのメリットとデメリットを挙げ,比較しました.
 そこまではそれほど難しい話ではありませんし,なかには「普段からそんな風に考えている」という人もいるかもしれません.今回はさらに一歩踏み込んで機会費用という新たな概念を紹介しました.
 機会費用とは,「その選択肢を選ばなかった時の次善の選択肢から得られたであろうもの」のことです.今回の例では,大学進学の機会費用とは,大学に進学しなかったときの選択肢である,高卒として就職した時に得られていたもの(お金だけに限らず)です.高卒として働くと仮に年収250万円とすれば,皆さんが大学で学ぶ4年間で1000万円のお金を稼ぐ機会があったはずです.皆さんはその機会を捨てて(機会費用を払って),大学進学を選んだのです.さらに学費も加わるので,大学進学はかなり高価な選択です.それに見合った所得が将来得られないのであれば大学進学は(あくまで金銭的には)非合理的です.
 しかし,データで見てみると,大卒者の生涯所得は学費を差し引いても,高卒者に比べ高いことがわかりました.ただし,これはあくまで平均値を比較しただけです.大卒でもずっとフリーターをしていれば,高卒者の平均よりも当然生涯所得は低くなりますし,高卒者でも自身で事業を起こして高所得者になるケースはもちろんあります.

 最後に,今回の総まとめとして,「どうすれば将来高い所得が得られるか?」を需要と供給を用いて考えました.実はダイヤモンドの価格を考えることと,労働者の賃金を考えることはほぼ同じです.なぜなら,賃金はみなさんの労働力につけられた価格であるからです.そのためダイヤと同じように高く売るためには,需要が高く,供給が少ない種類の労働力を売れば良いのです.つまりどこにでもいる労働者ではなく,少数の人しか持っておらず,かつ企業が求めている能力を大学の4年間で身につけることです.要するに求められている専門能力を身につければ良いのだと思いますよ.何を学びたいかも重要ですが,何が求められているかも重要です.中国語なんか狙い目ではないでしょうか?

【追加4/29】
 書き忘れていました.
 期末試験についてですが,「持ち込みありが良い」という意見があったので,前回学んだインセンティブにするため,次のような条件にしました.
僕から「静かにしなさい」と注意される回数が10回未満:持ち込み選択可
同じく10回以上:持ち込み不可
 選択可になれば,第14,15回あたりの終盤で,「持ち込みと,持ち込みなし」とどちらが良いかを訪ね,希望する人数が多い方にしましょう.

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