2010年6月5日土曜日

ミクロ経済学ベイシックⅠ 第7回(5/28)

 今回はスルツキー分解です.

【授業の内容】
 スルツキー分解とは,ある財の価格が変化したときに,消費がどのように変化するかを,代替効果と所得効果に分解するものです.このミクロの内容でもっとも抽象的で理解しづらい(説明しづらい)ところです.

 まずは復習として,予算線の傾き,そしてシフトがそれぞれ,相対価格の変化,(実質)所得の変化を表すことを確認しました.特に実質所得という概念は今回初めて出てきました.実質所得に対する言葉として名目所得があります.名目所得とは,我々が普段の生活で認識する所得のことだと思って良いです.それに対して,実は,所得が何万円というのは豊かさとあまり意味がありません.本当の豊かさとは,そのお金でどれだけ財を購入できるかで判断できるはずです.そのため,所得だけでなく,物価にも注目して,そのお金がどれだけ購買力を持っているかを示すのが実質所得と考えてください.
 例として,もしあなたがチョコレートしか買わない人だとします.その時,一ヶ月のおこづかいが30000円で,チョコレートは300円としましょう.するとあなたの所得はチョコレート100枚分の豊かさです.数年後,もしおこづかいが60000円に増えたとするとあなたは豊かになったのでしょうか?2倍に豊かになったと考えがちですが,本当の豊かさ(実質所得)は,チョコレートの物価も考慮しなければなりません.もしその時チョコレートが600円にまで値上がりしていたとすれば,実質所得はチョコレート100枚分であり,まったく豊かさに変化はありません.

 スルツキー分解に行く前に,上級財と下級財についても説明しましょう.上級財とは,所得が上がると(下がると)消費が増える(減る)財のことです.例として,高級料理があるかもしれません.僕ももっと給料が増えれば,もっと高級な料理を食べる回数が増えるはずです.これだけでなく,我々の周りのかなり多くの財は上級財でしょうね.そのため,上級財は普通財と呼ばれることもあります.
 一方,所得が上がると(下がると)消費が減る(増える)財もあります.例えばインスタントラーメンです.僕が職を失い失業保険で暮らすようになれば,今よりきっとカップラーメンを食べる回数は増えるでしょう.つまり下級財とは廉価品(やすもの)のことですね.下級財は劣等財とも呼ばれます.

 さて,ようやく難関のスルツキー分解です.授業ではバーベキューを想定しました.限られた予算のもと,牛肉と豚肉を買うことにします.ここでは牛肉は上級財,豚肉は下級財だと仮定します.つまり予算がたくさんあれば牛肉が多くなりますが,あまり予算がなければ豚肉ばかりのバーベキューになるということです.
 ここでもし牛肉の値段が上がったら牛肉と豚肉の消費はどうなるでしょう.まず値上がりした牛肉を買わなくなるでしょうね.それだけでなく,牛肉が高くなったことで相対的に豚肉がまずます割安に感じられるようになるため(相対価格の変化),豚肉を買おうという気持ちが出てきます.この変化を代替効果と呼びます.代替効果とは,相対価格の変化による消費の変化のことです.
 また上記のような変化以外にも,牛肉が値上がりしたことで,実質所得が下がります.牛肉が値上がりしたので,買うことができる牛と豚の組み合わせが減ってしまい,少し残念なバーベキューになりそうです.このように実質所得が下がることで,牛肉と豚肉の消費はどうなるでしょう.牛肉は上級財であると仮定しているので実質所得の減少により消費が下がるはずです.逆に豚肉は下級財なので消費は増えそうです.この効果を所得効果と呼びます.
 最終的な消費は,この代替効果と所得効果を合わせたものになります.

 以上がスルツキー分解なのですが,わかりにくいですよね….

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