2010年6月12日土曜日

ミクロ経済学ベイシックⅠ 第9回(6/11)

 今回はスルツキー分解を利用して,労働供給と,異時点間での消費最適化を説明し,その後,生産者理論の基礎知識を説明しました.

【授業の内容】
 前回までスルツキー分解を,2財の消費に適用していましたが,今回はそれを労働供給や,異時点間の消費に適用しました.

 まず,所得と余暇から効用を得る個人を想定することで,個人がどれだけ働くか(労働供給)を理解しました.賃金というのは労働者が労働力を売る際の値段であり,1単位の余暇を持つために失うお金(機会費用)でもあります.そのため,賃金率(例:時給)の上昇は,余暇時間を増やす際のコストの増加と捉えることができます.そのため,余暇を減らし,労働時間を増やして所得を増やそうという代替効果が生まれます.また,賃金率の上昇は個人を豊かにするため,所得効果も発生します.所得の増加により,余暇を増やそうという気持ちが生まれてくるでしょう.
 余暇について注目すると,代替効果では減少しますが,所得効果では増加します.これのどちらが大きいかは断言できません.みなさんに手を上げてもらったときも,「時給が上がるとバイト時間を増やす」,「減らす」,「変えない」というように実際に意見がわかれましたよね.

 さて,続いてスルツキー分解を異時点間の消費にも応用しましょう.こちらは今期の消費と来期の消費をどのような組み合わせで選ぶかを考えました.ただし,そこに貯蓄というシステムを入れたのでやや複雑になりました.今期に貯蓄したお金には利子がつくため,来期には貯蓄額より多くのお金を使えます.今期の消費と来期の消費の組み合わせを予算線として図示することが可能です.この場合も利子率の変化は相対価格の変化と同様に予算線の傾きを変化させます.

 最後に,来週への予告編として,生産者理論の前提条件や基礎的な記号や概念を紹介しました.これまでは消費者の立場(普段の我々ですね)でモノを考えましたが,これからは企業(あるいは経営者)の立場で考えなければなりません.
 企業の目的はなんでしょうか.異論はあるかもしれませんが,とりあえず利潤の最大化であると定義しました.つまり今後は利潤を最大化するためにどうすべきかを考えるのです.さて,利潤(π:profit)とは?ここでは単純に収入(R:Revenue)から総費用(TC:Total Cost)を引いたものとします.

 π=R-TC

 続いて収入(R)も考えてみましょう.企業はなんらかの財を生産し,それを販売することで収入を得るため,財の価格(P:Price)に生産量(x:quantity)をかけたものが収入になります.

 R=P×x

 また総費用ですが,こちらを可変費用(VC:Variable Cost)と固定費用(FC:Fixed Cost)に分解しました.

 TC=VC+FC

 可変費用とは生産量が変化すると増減する費用です.例としてお弁当屋さんを想定しましょう.お弁当屋さんは当然ながらお弁当を生産します.お弁当を普段は1日50食作っているとして,翌日が運動会のためお弁当の生産を倍の100食に増やすとします.すると材料費は普段よりも多くかかるでしょう.そのため材料費は可変費用だと考えられます.逆に,店舗のテナント代はお弁当をたくさん作るかどうかに(短期的には)関係ありません.お弁当を作らなくてもたくさん作っても家賃は一定です.そのためテナント代は固定費用だと言えます.
 ここで「短期的には」と言いましたが,経済学では「短期」とは多くの場合,生産設備を変更できないぐらいの期間であり,「長期」は生産設備を変更できるぐらいの期間のことです.もしこのお弁当屋さんが一気に規模を拡大し,1日10万食のお弁当を作ろうと思うと,現在の店舗ではとても無理で,工場を建設したりする必要がありそうです.このような工場建設まで考えれば,テナント代も可変費用と言えなくもありませんが,短期的には固定費用と考えてよいでしょうね.

0 件のコメント: