2010年6月5日土曜日

経済学A 第8回(6/1)

 前回に引き続き,資産運用の知識として株式について説明です.

【授業の内容】
 前回の復習として,ギャンブルを期待値で考えてみました.期待値からすると,宝くじは非常に割りの悪いギャンブルです.宝くじするぐらいなら,公営ギャンブルをした方がまだマシだと思いますが,なぜか宝くじは人気があります.僕の自宅の近くにも宝くじ売り場がありますが,いつも賑わっているような気がします.なぜ人は宝くじを好むのでしょう?
 僕の推測では,人々は宝くじが当たる確率を過大に評価しているからだと思います.宝くじの1等が当たる確率はおよそ1000万分の1だそうです.1年間に交通事故に遭う確率が0.9%(国交省),1年間に窃盗の被害に遭う確率が約1.4%(警察庁)ですから,それぞれ3年連続で被害に遭うよりも低い確率ですね.わかりにくいか…?9つのサイコロを一斉に振って,すべて1が出る確率がだいたい1000万分の1です.ありえませんね.しかし多くの人は,自分に1等が当たる確率を(頭ではもっと低いとわかっていても)なんとなく1000分の1ぐらいの確率で当たると思っているんじゃないですかね.
 というわけで,金儲けの手段として宝くじを選ぶことは実に馬鹿馬鹿しいのですが,「ひょっとしたらお金持ちになれるかも?」という夢を買っているのだと思えば300円は妥当かもしれません.「じゃあパチンコの方が得だ!」と思う人は,機会費用も考えてください.宝くじと違ってパチンコの機会費用は高いですよね?合理的に考えるとギャンブルはしないのが正解でしょうね.ちなみに違法なのでやってはいけませんが,仲間内での麻雀は期待値が100%なので,平均的には損でも得でもありません.(仲間内でお金が移動しているだけなので当たり前ですね)

 今回はやや実践的な内容として,「毎年1万円もらえる魔法のカード」をいくらで買うかを考えてもらいました.実はこれを考えてもらったのは株価の分析方法の1つであるファンダメンタル分析を理解するためです.ファンダメンタル分析とは,将来受け取れるであろう配当の現在価値の合計が株価であるという考えです.そのため将来受け取れる配当が多くなると予想されれば株価は高くなります(魔法のカードで言えば,毎年もらえる額が増えれば,このカードの購入希望価格も上がるでしょう).また配当の現在価値であるので,利子率が関係することもわかります.
 結論としては,このファンダメンタル分析が重視するのは,その企業の将来の配当,そしてそれを決めるであろう,将来の利潤,売上げ,今後の新商品,研究開発など多岐にわたります.このため,ファンダメンタル分析で株価を予想しようと思えば,その企業について詳しくなることが第一条件です.
 一方,テクニカル分析という分析方法もあります.こちらはファンダメンタル分析とは異なり企業業績は重視せず,その企業の株価の過去の推移であるチャート図から,将来の値動きを予測するというものです.過去を見れば将来がわかる,というとなんとなくそれらしいですが,特に理論的な裏付けはありません.むしろ「こういう動きをした後は,こうなることが多かった」という経験則の集合体と言うべき分析方法です.この分析法のメリットとしては,なんと言っても「わかりやすく,とっつきやすい」ということでしょう.デメリットとしては,「テクニカル分析に従えば儲けられるという実証結果が得られていない」という点です.分かりやすく言うと,テクニカル分析の言うとおりに売買するのも,サイコロの出た目で適当に売買するのも似たようなもんだ,ということです.致命的ですね….つまり将来の予測には使い物がならないということです.しかし「テクニカル分析で儲けた」という人は後を絶ちません.実際,「テクニカル分析 万円稼いだ」というキーワードで検索するとたくさんヒットします.それもそのはず,株というものは全体の株価の平均が下がっているのでなければ,適当に買っても半分ぐらいの人は儲かるからです.そのためテクニカル分析で儲かった一握りの人が「テクニカル分析は正しい」というのでしょう.

 さて,株というのはリスクのあるものですが,そのリスクを減らすこともできます.リスクヘッジの例として,猛暑になるか冷夏になるかという気象リスクを考えてみました.猛暑になったら,自分が持っているすべての株が下がってしまった,というのではリスク対処になりません.猛暑の時,ある株は下がったが,あの株は上がった,となるような組合せをする必要があります.最大のリスクヘッジは分散投資です.ケインズは「卵は分けて持て」と言いました.ただし,分散投資をするとリスクが減る代わりにリターンも下がります.

 結論としては,リスクとリターンは比例します.リスクの低い金融商品はリターンも低く,リターンが高い金融商品はリスクが高い,というのが一般的な結論なのです.そのため,リスクが低くリターンが高い商品(「確実に儲かりますよ!」という商品)はありません.甘い話には騙されないように.

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