2010年6月27日日曜日

ミクロ経済学ベイシックⅠ 第11回(6/25)

 今回は生産者理論の山場として,損益停止点と操業停止点を説明しました.

【授業の内容】
 前回わかったこととして,(限界費用が逓増する場合には,つまり費用逓減産業では)価格と限界費用が等しくなるように生産すると利潤を最大化できることがわかりました(最適な生産).
 ただし最適な生産をしたとしても黒字になるかどうかはわかりません.また場合によっては生産自体を止めたほうが赤字が少なく済む場合もあります.それを今回は具体的な例を使って説明しました.その説明のために,新たに平均総費用(ATC)平均可変費用(AVC)という2つの費用を取り入れました.
 平均総費用とは,総費用を生産量で割ったものであり,生産量1単位あたりにどれだけ総費用がかかっているかを示すものです.そのため,価格と平均総費用を比較することで利潤が黒字なのか赤字なのかがわかります.なぜなら,価格とはその財を1単位生産したときに入ってくるお金であり,平均総費用は財1単位を生産するのに出て行ったお金だからです.財を1単位生産して入ってくるお金より出て行くお金の方が大きければ赤字になりますよね.逆なら黒字です.このことから,価格と平均総費用が等しくなる点を損益分岐点と呼びます.この点よりも高い値段で販売できるなら黒字になり,安いと赤字になります.
 平均可変費用とは,可変費用を生産量で割ったものであり,生産量1単位あたりにどれだけ可変費用がかかっているかを示すものです.この平均可変費用を価格と比べることで企業が生産すべきかどうかがわかります.そのために,まず可変費用と固定費用を復習しましょう.例として,皆さんが移動販売のメロンパン屋を始めたとしましょう.この場合の総費用を可変費用と固定費用に分類しましょう.生産を開始する前にまず固定費用がかかります.これは生産量に関係なく発生する費用であり,この例では,移動販売に必要な車の取得や,メロンパンを焼くためのオーブン,開業に必要な事務手続きなどの費用がこれにあたります.これらに100万円がかかったとしましょう.この時点での利潤は-100万円です.ここから生産を開始します.メロンパンを生産すれば1個あたり150円のお金が入ってきます.ただし,それがすべて儲けになるわけではなく,メロンパンを生産することで新たに発生する費用があります.それが可変費用です.この例では小麦粉などの材料費や燃料代がそれにあたります.1ヶ月経って,パンが1000個売れたとします.収入は1000×150=15万円です.その間の可変費用が10万円(平均可変費用が100円)であれば,利潤は15万円-(100万円+10万円)=-95万円となり赤字です.ではこの企業は生産を止めたほうが良いのでしょうか?そうではありません.固定費用は仕方ないものとして,生産することによって赤字が減少したからです.価格が150円に対して平均可変費用が100円と,平均可変費用が価格を下回るため,生産すればするほど赤字は少なくなるので,この企業は生産すべきです(ただし,この儲けでは生活できない,あるいは機会費用と比べて割りに合わないという意味で言えば生産すべきではないのでしょうが…).

 このような関係は図示することもできました.配布した問題をやって理解を深めましょう.

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