2010年6月5日土曜日

開発経済学 第8回(6/4)

 今回は農業です.途上国の貧困を考えるなら,農業についても知る必要があります.

【授業の内容】
 まずマルサスの予言を紹介しました.食糧生産は算術級数的にしか増えないのに対して,人口は幾何級数的に爆発的に増える,というものです.これにより近い将来,食糧不足,飢餓が訪れる(マルサス的悪夢)と,マルサスは考えたのですが….

 なぜ開発経済学として農業を学ぶのかというと,途上国の多くは農業国であり,途上国の貧困層の多くは農業に従事しているためです.貧困を無くすためには,農業に取り組まなければならないのです.
 とはいえ,我々にはなかなか農業は身近ではありませんので,まず農法と同じ面積での扶養可能人数を紹介しました.焼畑農業,陸稲に比べ,灌漑施設を整備した水稲は,桁違いの収量を得られることがわかりました.しかし今でも東南アジアなどでは焼畑農業は少なくありません.なぜでしょう.

 続いて農業の経済学的側面を紹介しました.まず農業は他の産業とどこが違うのか紹介しました.また,農業をマクロ,ミクロの両面から考察しました.
 マクロ的には,プレビッシュ=シンガー命題を改めて紹介しました.これは一次産品の工業製品に対する交易条件は長期的に悪化の傾向を辿る,というものでした.つまり農業を中心とした経済発展は不可能だという悲観的な結論です.
 ミクロ的には,二重経済のところでも紹介した,労働の限界生産力が逓減することから,どうすれば農家が豊かになるか(貧しくなるか)を説明しました.

 さて,マルサスの予言ですが,幸いにも(今のところ)外れました.なぜなら1960~1980年代にかけて,緑の革命と呼ばれる,食糧生産の急増が起きたからです.
 緑の革命が起きた理由は,次の3つです.
1.高収量品種(品種改良)
2.灌漑設備の普及
3.化学肥料

 結果として,人口爆発に負けないペースで食糧生産も増加したため,世界規模での飢餓は起きませんでした.しかしこれからも人口はまだまだ増加するようです.第二の緑の革命は起きるのでしょうか?それは遺伝子組換え作物により起きるのでしょうか?

 さて,授業で紹介したように,農業はリスクのある産業です.天候などの一時的ショックにより,貧しい農家はいともたやすく,更なる貧困へと転げ落ちてしまいます.一時的ショックが起きた場合,誰かがちょっとした援助をしてくれれば助かるのかもしれません.
 ということで,次回はこれに関連してマイクロファイナンスを紹介します.

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