2010年10月22日金曜日

ミクロ経済学ベイシックⅡ 第6回(10/20)

 今回は独占市場の残りの形態である寡占と独占的競争です.

【授業の内容】
 まず簡単に前回やった複占の復習をしました.売り手が2社である市場に,ゲーム理論のナッシュ均衡の概念を応用しました.

 寡占とは売り手が少数である市場であり,現実的にもよくあるケースと言えます.ビール市場はその典型でしょうね.さて,売り手が少数だと各企業はどのような行動を取るのでしょうか.ここでは全企業が同質的な財を同じ価格で販売している状況を想定しました.そのうちの1社がもし値上げをしたら,ライバルたちはどのような反応を見せるでしょうか.おそらくライバルたちは値上げをしません.なぜなら今まで通りの価格で販売すれば,値上げした1社の販売量だけが少なくなり,その分,他の企業の商品はより多く売れるからです.結果,値上げした1社の販売量はガタ落ちとなるでしょう.
 逆に値下げをするとどうでしょう.ライバルたちが値下げをしなかったら,値下げをした1社にお客さんをほとんど奪われてしまうことになりそうです.そのためライバルたちは必ず値下げに反応して値下げをしてきます.そのため,最初に値下げした1社はせっかく値下げしたのに,あまり需要は増えないでしょう.このように値上げと値下げについて,ライバルたちは非対称的な動きをすることがわかります.
 結果として,企業の個別需要曲線は現在の価格を分岐点として屈折した形を取ります.また限界収入曲線もグラフに描くことができます.この限界収入と限界費用が等しくなる点で生産量が決まるのですが,限界収入曲線の形状の特徴から,寡占市場では,少しぐらい限界費用が増減しても生産量や価格が変化しないことがわかります.値上げも値下げもそれほど魅力的な選択でないため,余程コストが大きく変動しない限り,積極的に価格を変更しないのです.
 ライバルの値下げに追随する動きは,最近では牛丼業界で見ることができそうです.

 独占的競争とは売り手の数が多数の場合に,各企業がいかにして利潤を得るかを説明するものです.売り手が多数の場合,同質的な財を生産していては利潤は出ません.なぜなら似た様な財を多数の企業が売っていれば,消費者は価格が最も低い企業の財を選ぶため,結果として価格の値下げ合戦になってしまうからです.それは前期に学んだ内容ですね.そのため,利潤の最大化を目的とする企業は財を差別化し,一時的な独占状態を築こうとします.缶コーヒーのノベルティグッズなども差別化の一例でしょう.またユニクロが暖かい下着(?)などを販売するのも差別化ですね.
 しかしこの独占状態は永遠ではありません.なぜなら新規参入が可能なので,1社が儲けているとわかれば,どんどん他の企業が参入して同じような財を販売し始めるからです.これにより長期的には完全競争市場となり,どの企業も利潤を得られません.ユニクロの下着も1年も経たないうちに,似た様な商品が他の企業から販売されました.
 このように独占的競争においては利潤をだすためには常に新たな差別化をしなければなりません.ファッション業界で毎年新たな流行が生まれ,あっという間に廃れていくのは,上記のような企業の論理が背景にあるのかもしれませんね.

0 件のコメント: