2009年12月19日土曜日

経済学A 第12回

 今回は日本の財政と税について説明しました.日本ではちょうど国債発行額,あるいは財政規模について議論されていますね.


【授業の内容】
 この授業で理解してもらいたいのは,
・何のために税があるのか?
・日本の財政状況
・税の種類と特徴
 の3点です.特に最後は,税金はただ単にお金を取られるだけではなく,国の性質を作り上げるものだということを理解してほしいです.

 以前に,大きな政府と小さな政府について説明しました.大きな政府とは,市場を信頼しておらず,積極的に市場に介入する政府であり,小さな政府は対照的に最低限の介入しか行いません.そのため,当然ながら,大きな政府は大きな財政規模(政府の収入と支出のこと)を必要とするし,小さな政府の財政規模は小さくなります.

 さて,現在の日本の財政を見てみると,いびつな状況になっていることがわかります.収入をはるかに超える支出をしているため,膨大な収入不足を借金(国債発行)でなんとかまかなっている状況です.一般家庭なら,お金を借りられないような状況ですが,国にはまだ信頼があるため,市場からお金を借りることができています.
 余談ですが,「このような膨大な借金総額(国債発行残高)を抱えて大丈夫なのか?」ということについて,以前から論議されています.楽観的な人は,「日本には国債発行残高をはるかに超える資産がある(国民の預貯金などの資産です)ので,まだまだ借金より資産の方が多いから問題ない.また借金の貸し手も日本の企業,あるいは日本の個人がほとんどなので,子供が自分の親にお金を貸してるようなものだから心配ない」と言います.確かにもっともらしい話ですが,では「国債発行残高はいくらまでなら大丈夫」なのでしょうか?おそらく今の10倍になれば誰も日本政府にお金を貸さなくなるでしょうが,2倍なら大丈夫なのか?3倍なら大丈夫なのか?はっきりとはわかりませんが,どこかに臨界点があるはずです.それを超えると,一気に市場は日本政府を見放し,日本政府は誰からもお金を借りられず破産してしまうでしょう.
 それはまだ先の話かもしれませんが,少なくとも日本の財政状況の未来には明るい兆しはありません.思っているほど先ではないかもしれません….

 さて,余談がながくなりましたが,本題に戻ります.国の収入の根幹は税金です.基本的に,政府は,国民,あるいは国内の企業から税金を集めて,それを使っています.例えば一般道路は無料ですが,無料であるので儲かりません.そのため民間企業は作ろうとしません.それでも道路は必要なので政府が代わりに作ります.警察や消防なども同じですね.

 その重要な税ですが,日本にも様々な種類の税があります.それらを分類しました.まずは国税と地方税ですが,これらは単に国に納めるか,地方に納めるかの違いだけでした.もう1つの分類方法は,直接税と間接税です.直接税とは,税の負担者がそのまま納税するタイプの税であり,所得税や住民税,法人税などがこれにあたります.もう1つは間接税です.こちらは税の負担者が直接納めるのではなく,負担者と納税者が異なります.例としては消費税があります.消費税の負担者は我々消費者ですが,納めるのは小売店などです.

 なぜ税が国の性質を決めるのかは,直接税と間接税の違いによります.直接税である所得税は,累進課税性という性質があり,貧しい人には負担は軽く,豊かな人には重い負担を与えます.そのため,貧富の差が縮小するという,公正な税です.相続税なども同じく貧富の差を縮小する直接税です.ただし直接税は脱税できるという欠点を抱えています.サラリーマンなどの給与所得者は所得を把握されやすいため脱税は困難ですが,自営業者などは比較的脱税がしやすくなります.
 一方の間接税の代表である消費税は脱税が不可能です.そういう意味では完璧な税ですが,ただし貧困層と高所得層に同じ税率を課すことになり,相対的に貧困層にとって負担が大きくなります.

 最後に,日本が大きな政府か小さな政府かを判断するために,国民負担率と潜在的国民負担率を紹介しました.どちらで見ても,日本は小さな政府であると言ってよいでしょう.

3 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

人間生活学部の経済学Aを受講している者です。
記事と関係無い内容で申し訳ないんですが、
第9回補講用レポートのレポート用紙をダウンロードしたいのですが、ファイルがどこにあるのかが分かりません。
授業で配布されたものは持っているので手書きで提出することも出来るのですが、出来ればパソコンで打ちたいので、よかったらファイルの場所を教えてください。

水ノ上 智邦 さんのコメント...

ごめんなさい。すっかり忘れてました…。

先程、ファイルDLのページにアップしました。確認してみてください。よろしくお願いします。
http://wwt.bunri-u.ac.jp/mizunoue/DL%20file/economicsA/report%20lec.09.doc

匿名 さんのコメント...

確認、ダウンロード共に出来ました!
ありがとうございます。