2009年12月4日金曜日

経済学Ⅰ 第9回

 今回は日経新聞を題材に,前回まで説明してきた金融政策を復習し,その後,為替について説明しました.こちらも実は金融政策と大きなかかわりがあることがわかりました.

【授業の内容】
 ちょうど今,日銀は貨幣供給量を急増させています.貨幣供給量の増加は経済にどのような効果を持つのか,これまでの説明を振り返ってみます.
 大きく分けて,その効果は2つです.1つは物価上昇です.現在のようにデフレ傾向がある場合には,デフレを止める効果があるかもしれません.
 もう1つの効果は,利子率を低下させ,それにより民間投資を増やし,結果として景気を回復させることです.前回までの話ではこのような効果がありました.しかし,今回,新たな第3の効果について説明しました.それはまた後ほど.

 為替レートとは,ある国の通貨と他の国の通貨を交換する時の比率(レート)です.テレビのニュースでは,最後に日経平均と並んで,1ドル=100円とか,説明していますね.あれが為替レートです.最近は急激に円高になったとよく報道されています.さて円高とはどのような変化でしょう.
 円高・円安というのはわかっているようで間違えやすいです.ポイントは1ドル=100円が意味する100円は,1ドルを買うために必要な金額である,ということです.だから1ドル=80円になれば,1ドルの値段が安くなった(ドル安)ことであるし,80円で買えるようになったということは円の価値が上がった(円高)ことでもあります.
 つまり円高とは(通常はドルと比べ)円の価値が高まったことであり,相対的に他国の通貨が安くなったことを意味しています.

 さて,どうして円高,つまり我々が持っているお金の価値が高まることが不景気につながるのでしょう.実は私たち家計にとっては円高は(直接的には)それほど悪いことではなく,むしろ海外の商品を安く買えるため,メリットの方が大きいようです.海外旅行に行くときには,特に円高のありがたみがわかるでしょう.
 しかし日本経済の屋台骨とも言える自動車や家電などの輸出企業にとってみれば,円高は恐ろしいものです.なぜなら1ドル=100円の時,日本で3万円のデジカメはドルに直すと300ドルです.つまりアメリカでは300ドルで販売されているとしましょう.ここで円高になり,1ドル=80円になれば,このデジカメは375ドルです.25%も値上がりしてしまいました.すると,アメリカでは日本製のデジカメは割高となり,売上も落ちてしまうでしょう.
 また,少し見方を変えて,アメリカに進出し,現地で生産し,現地で販売している日本企業のことを考えてみましょう.ある年には現地で300万ドルを稼いだとします.このお金は,1ドル=100円の時(円安)には日本円に直すと3億円ですが,1ドル=80円の時(円高)には2億4000万円になります.つまり円高になったせいで,海外で稼いだお金が日本円に直すと減少してしまうのです.

 このように円高は我々消費者にはメリットがありますが,輸出企業にとってはデメリットになります.ただし,企業の利益が減ると,我々家計の所得も減るでしょうから,間接的には消費者にとっても望ましくないことかもしれません.

 では為替と金融政策にはどのような関係にあるのでしょう.実は金融政策は為替レートにも影響を与えます.
 例として,今回のように日銀が貨幣供給量を増加させると,日本では様々な金利が低下するでしょう.すると,海外の投資家にとっては,日本の銀行に預けてもあまり利子が増えないので,魅力がなくなります.そのため,円を売り,他国の通貨(たとえばドル)を買って,その国の銀行に預けるようになるでしょう.この過程で円が売られ,ドルが買われるため,円安ドル高が進むでしょう.そうすると,日本の輸出企業にとっては条件が良くなります.いいことづくめですね.

 来週は貿易について説明します.

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