2009年12月10日木曜日

経済学Ⅰ 第10回

 前回に関連して貿易の話です.リカードの比較生産費説,そして自由貿易について説明しました.

【授業の内容】
 貿易は国全体としてみると非常に良いものです.それを絶対優位,比較優位の説明と共に紹介しました.
 絶対優位の例として,漁師と農家を挙げました.魚釣りの得意な漁師,米作りの上手い農家は,それぞれ魚,米の生産に関して絶対優位を持っています.魚釣りについては漁師に絶対優位があり,米作りについては農家に絶対優位があるといいます.逆に漁師は米作りに絶対劣位にあり,農家は魚釣りに絶対劣位にあります.
 このようなケースでは,両者は絶対優位にある財(モノやサービスのこと)の生産に集中し(特化),それを相手と交換することで,自給自足の場合より,両者とも豊かになれます.それを数値例で確認しました.つまり分業は効率的なのです.

 続いて,上のケースと異なり,一方の国はなんでも得意だけど,もう一方の国はすべて苦手,というケースを考えました.それぞれ得意な分野があればよいのですが,それがない場合です.
 この場合,一方の国に絶対優位がなくても,(クローンのような国同士でない限り)必ず比較優位はあります.比較優位とは,どちらの財の生産も得意だけど,より得意なもの,あるいは,どちらも苦手だけど,まだましなものを示しています. 絶対優位がない場合でも,それぞれの国が比較優位にある財の生産に特化して,それを輸出しあうことで,両国とも豊かになれます.これが貿易の持つ素晴らしい力です.戦争とは違い,勝者と敗者は生まれません.

 このようにすばらしい自由貿易ですが,現実には自由な貿易を妨げる様々な障壁が存在します.関税や輸入割り当てなどです.なぜ輸入障壁が存在するのかというと,自由貿易を行うと国際的に優位にある財の生産規模は大きくなりますが,逆に劣位にあり,他国より生産効率の悪い産業は衰退してしまうからです.

 ただ,国全体としてみると自由貿易により豊かになれることはわかっているため,各国はFTA(自由貿易協定)を競って結んでいます.

 次週は全学共通教育センターのテストのためお休みです.

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