2009年12月2日水曜日

経済学A 第10回

 今回は為替について学びました.ちょうどタイムリーな話題ですので,今後もニュース等でよく耳にすると思います.

【授業の内容】
 まず,為替レートの見方を説明しました.円高・円安というのはわかっているようで間違えやすいですからね.ポイントは1ドル=100円が意味する100円は,1ドルを買うために必要な金額である,ということです.だから1ドル=80円になれば,1ドルの値段が安くなった(ドル安)ことであるし,80円で買えるようになったということは円の価値が上がった(円高)ことでもあります.
 つまり円高とは(通常はドルと比べ)円の価値が高まったことであり,相対的に他国の通貨が安くなったことを意味しています.

 さて,最近,円高で景気が悪化しているというニュースをよく聞きますが,どうして我々が持っているお金の価値が高まることが不景気につながるのでしょう.実は私たち家計にとっては円高は(直接的には)それほど悪いことではなく,むしろ海外の商品を安く買えるため,メリットの方が大きいようです.海外旅行に行くときには,特に円高のありがたみがわかるでしょう.
 しかし日本経済の屋台骨とも言える自動車や家電などの輸出企業にとってみれば,円高は恐ろしいものです.なぜなら1ドル=100円の時,日本で3万円のデジカメはドルに直すと300ドルです.つまりアメリカでは300ドルで販売されているとしましょう.ここで円高になり,1ドル=80円になれば,このデジカメは375ドルです.25%も値上がりしてしまいました.すると,アメリカでは日本製のデジカメは割高となり,売上も落ちてしまうでしょう.
 また,少し見方を変えて,アメリカに進出し,現地で生産し,現地で販売している日本企業のことを考えてみましょう.ある年には現地で300万ドルを稼いだとします.このお金は,1ドル=100円の時(円安)には日本円に直すと3億円ですが,1ドル=80円の時(円高)には2億4000万円になります.つまり円高になったせいで,海外で稼いだお金が日本円に直すと減少してしまうのです.

 このように円高は我々消費者にはメリットがありますが,輸出企業にとってはデメリットになります.ただし,企業の利益が減ると,我々家計の所得も減るでしょうから,間接的には消費者にとっても望ましくないことかもしれません.

 さて,この為替相場なのですが,値動きがあるため,投機目的で為替を売買する人も存在します.現在では輸出・輸入で使うお金よりも投機のために売買されるお金の方がはるかに巨大です.1997年のアジア通貨危機の発端も,投機目的のためにタイの通貨バーツが売買されたためです.

 後半は外貨預金について説明しました.外貨預金はその響きから「安全」であると勘違いされがちです.確かに日本の銀行に対する預金は非常にリスクが低いのですが(その分,リターンも低い),外貨預金には為替リスクが存在します.リターンが高い背景には,やはり高いリスクが隠れていました.

 来週はこの関連で,貿易について説明したいと思います.

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