2009年12月8日火曜日

経済学A 第11回

 今回は前回との関連で貿易について説明しました.

【授業の内容】
 まず前回のアンケートの質問に答えました.「大臣のコメントが為替に影響を与えることはあるか?」ですが,あります.外国為替市場で売買しているのは,投機目的の機関投資家が多く,彼らは常に市場の動向を探り,将来を予想できるヒントを探しています.一国の大臣のコメントは,政府による介入があるかどうかを占うかなり重要なヒント(あるいは答えそのもの)だからです.

 続いて,前回も少しふれた貿易ですが,貿易は国全体としてみると非常に良いものです.それを絶対優位,比較優位の説明と共に紹介しました.
 絶対優位の例として,漁師と農家を挙げました.魚釣りの得意な漁師,米作りの上手い農家は,それぞれ魚,米の生産に関して絶対優位を持っています.魚釣りについては漁師に絶対優位があり,米作りについては農家に絶対優位があるといいます.逆に漁師は米作りに絶対劣位にあり,農家は魚釣りに絶対劣位にあります.
 このようなケースでは,両者は絶対優位にある財(モノやサービスのこと)の生産に集中し(特化),それを相手と交換することで,自給自足の場合より,両者とも豊かになれます.それを数値例で確認しました.つまり分業は効率的なのです.
 また,経済学的に良い状態の目安として,パレート最適(パレート改善)という概念を紹介しました.やや消極的な判断ですが,パレート改善が良い変化であることには多くの人が賛成するでしょう.それぞれが絶対優位を持つ場合,分業・交換することでパレート改善が可能でした.

 続いて,上のケースと異なり,一方の国はなんでも得意だけど,もう一方の国はすべて苦手,というケースを考えました.それぞれ得意な分野があればよいのですが,それがない場合です.
 この場合,一方の国に絶対優位がなくても,(クローンのような国同士でない限り)必ず比較優位はあります.比較優位とは,どちらの財の生産も得意だけど,より得意なもの,あるいは,どちらも苦手だけど,まだましなものを示しています.
 絶対優位がない場合でも,それぞれの国が比較優位にある財の生産に特化して,それを輸出しあうことで,両国とも豊かになれます.パレート改善が可能なのです.これが貿易の持つ素晴らしい力です.戦争とは違い,勝者と敗者は生まれません.貿易に関与した両国がともに勝者になれる(Win-Win関係)のです.
 僕は大学時代,この話(リカードの比較生産費説と言います)を聞いて,目から鱗が落ちるように驚いたのですが,皆さんも少しは驚いてくれましたか?

 今回もアンケートです.携帯からアクセスできない場合は次のリンクを選んでください.
http://enq-maker.com/ard4Zxy

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

絶対優位と比較優位についてWikipediaよりすごくわかりやすかったです。

水ノ上 智邦 さんのコメント...

コメントありがとう。

今回はわかりやすかった、という意見がたくさんありました。最近難しかったからかもしれませんね。

Wikipediaを僕も見てみましたが、確かにややこしそうですね…。