2008年7月3日木曜日

開発経済学 第13回

 今日はガバナンスでした.

【授業の内容】
 ガバナンスとは何かを定義するのは非常に大変です.世銀やUNDPによる定義を読んでもいまいちピンときません.そのためガバナンスとは何かについては後回しにして,とりあえず世界銀行がガバナンスの指標として挙げている6つの項目について説明しました.それは,「発言と説明責任」,「政治の安定と非暴力」,「政府の効率性」,「規制の質」,「法による支配」,「汚職の抑制」です.規制の質の例としては,世界各国でビジネスを開始するまでにかかる日数やコストを紹介しました.
 悪いガバナンスは資本の効率的な配分を歪めることで,直接,また経済成長を通じて間接的に社会的厚生を悪化させます.以前に説明した援助との関係で言えば,Burnside and Dollar(2000)は,ガバナンスが良好な場合のみ援助は有効に働くと指摘しています.またMauro(1997)は汚職は各国の成長率を鈍化させることを明らかにしています.
 しかし,ガバナンスが悪いと必ず経済成長しないのか,ガバナンスが良ければ必ず成長するのか,というとそうでもないのです.ガーナ,マラウィ,マリなどのようにガバナンスが比較的良いにもかかわらずあまり成長していない国もあれば,バングラデシュ,インドネシアなどガバナンスに問題がありそうなのに成長している国もあります.

 それはさておき,ガバナンスを改善するためにはどうすればよいのか,ガバナンスの意味する内容が広範であるだけに,その対策も様々です.立法・司法,市民的自由,経済政策など多岐にわたります.

 後半は移行経済について説明しました.社会主義経済から市場経済への移行です.政治体制と経済成長の関係についての研究からは,政治体制と経済的なパフォーマンスには相関がない,というのもあれば,民主主義国家の方が経済成長のばらつきが少ない,というのもあります.
 ただ,UNDPも2002年の人間開発報告で指摘するように,民主主義はたとえ最高のものを保障しないとしても,最悪の結果になるのを防ぐように思われる,のではないでしょうか.

 その後,中国とインドの事例を紹介しました.どちらも改革・開放で成長しましたが,現在のジンバブエは逆に規制・閉鎖を選んで破滅に向かっているように思えます.良好なガバナンスの下では現在のような状況にはなっていないでしょうし,UNDPの指摘が当てはまるように思えます.

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