2009年7月4日土曜日

経済学Ⅱ 第12回

 今回も市場の失敗です.市場の失敗が発生するケースのうち,外部性がある場合です.

【授業の内容】
 前回確認したとおり,競争的な市場で価格や量が決まることが最も望ましいのですが,なんらかの原因で市場が上手く働かないことがあります.今回は,財の取引に外部性が発生することによって財が過剰に生産されたり,過小にしか生産されない,つまり最適な規模の生産がされないことを見ていきます.

 外部性とは,経済主体同士の経済活動が,その取引とまったく関係のない第三者に与える影響のことを指します.その影響が良い影響であれば外部経済(あるいは正の外部性),逆に悪い影響であれば外部不経済(負の外部性)と呼びます.外部経済の例としては,果樹園と養蜂や,教育を紹介しました.外部不経済の例としては,環境汚染や公害などがあります.環境問題は経済学の視点から捉えると,まさしく外部性の問題です.例え空気を汚染したとしても,もしそれが密閉された自宅の部屋で起きたのであれば問題はありません.空気の汚染を自分で起こして,自分で被害を受けるだけです.そういうケースでは,過剰に空気が汚染されることはないでしょう.しかし,現実の環境問題では,ある国が環境を汚染すると,その国はもちろん,周辺の国,あるいは世界全体が悪影響を受けてしまいます.そのため自分が受ける被害は世界全体の被害のほんの一部に過ぎないので,ついつい環境汚染を軽視しがちです(過剰に環境が汚染される).
 また,外部性は,その影響が市場を通じて波及するかどうかで,金銭的外部性技術的外部性に分類されます.金銭的外部性の例としては,鉄道の駅ができたことで周辺の土地が値上がりすることが挙げられます.また技術的外部性の例としては,自宅の前に高層マンションが建てられたことで日当たりが悪くなったことなどが挙げられるでしょう.

 さて,このような外部性が存在するとき,それが外部経済なら,財は社会的に見て過小に生産されます.逆にそれが外部不経済なら社会的に見て過剰に生産されます.そのため経済全体の厚生は低くなってしまうため,なんらかの是正措置が必要になります.その方法として授業では3種類を挙げました.まずはピグー税です.これは外部性を発生させている経済主体に課税,もしくは補助金を与えることで最適な生産をさせようというものです.続いて,経済主体自身による内部化があります.最後に交渉を挙げました.この交渉については,当事者間の交渉に取引コストがかからないのであれば,外部性により発生する非効率性を改善できるというコースの定理が知られています.

 最後に消費における外部性として,スノッブ効果とバンドワゴン効果を紹介しました.どちらも普段の消費で少しは心当たりがあるのではないでしょうか.

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