2009年7月11日土曜日

経済学Ⅱ 第13回

 今回も市場の失敗です.市場の失敗の例として,独占市場を説明しました.

【授業の内容】
 以前に完全競争市場の条件を説明しました.その条件のうち,「多数の売り手と多数の買い手の存在」,「自由な参入と退出」という条件が破られる場合を今回は採りあげます.このような場合,社会的に見て望ましくない資源配分となってしまいます.

 独占とは,財の売り手が1社(狭義の独占,完全独占),あるいは少数しか存在しない場合を言います.売り手が少ない場合はどんなことが起きるのでしょう.

 自由な参入と退出が可能な市場に,もし1社しか企業が存在しなかったらどうなるでしょう.その場合,ライバルがいないので,その企業は財を高い値段で売りつけることができます.自分たちで価格を決め,高い利潤を得ることができるでしょう.
 しかし,参入が可能な場合,(潜在的な)ライバル達はその状況を見て,「あんなに儲かるんなら,我々も参入しよう」と思うはずです.新規参入が起きれば,生産量が増えるため,自動的に価格は安くなります.かつては高い値段で売ることができた財も,ライバルがそれより安い値段で販売してしまうと,それに対抗して値下げせざるを得ないでしょう.もしその状況でも利潤があるならば,さらなる新規参入を生むでしょう.こうして,どんどん価格は下がり,生産量は増加します.結果として市場で価格が決定されるため,各企業は価格を決定できません.当然ながら利潤も減っていき,最終的には0になります.
 まとめてみると独占市場では(完全競争市場と比べ),価格は高く,生産量は少なく,利潤は多くなりますが,社会的余剰は少なくなります(死荷重が発生する).
 実際に,NTTの民営化前後(民営化前は日本電信電話公社)の通話料を比較すると,大きく下がっていることがわかりました.

 さて,独占はなぜ生まれるのでしょう.授業では3つに分類しました.
・資源独占
・政府による独占(の認可)
・自然独占

 独占は社会的余剰を減少させてしまうため,基本的に望ましいものではありません.そのため多くの国では独占を禁止する法律があります(日本:私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律).

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