2009年7月17日金曜日

経済学A 第14回

 この講義もそろそろ大詰めですね.今回は財政と税について説明しました.リカードの等価定理なんて知っておくと役に立つ考え方ではないですか?

【授業の内容】
 冒頭に,「政府は消費税を上げるべきか?」という質問をしたところ,8~9割の学生が「上げるべきではない」と否定的な意見でした.果たして,今回の授業を受けた現在,その意見は変わったでしょうか?

 まず,復習も兼ねて「大きな政府」と「小さな政府」の違いを確認しました.簡単に言うと,大きな政府派の国では,税率が高い(負担が大きい)けれど,その分だけ社会保障などがしっかりしています.問題点は,政府が積極的に介入するために市場メカニズムに歪みが出るでしょうし,民間企業の活力が失われるかもしれません.
 一方,小さな政府派の国では,社会保障は十分とは言えないでしょうが,その分だけ税率も低く(負担が小さく)なっています.こちらは民間企業による競争を重視しているため活力はあるでしょうが,競争が激しいだけに当然,勝つ人(豊かな人)もいれば負ける人(貧しい人)も出てきます.つまり格差,そして貧困という問題が発生します.
 どちらも一長一短であり,どちらが優れていると簡単には判断できませんが,それでも皆さんは「自分がどちらの世界を望ましいと思うか」を決める必要があるでしょう.

 さて,日本は大きな政府なのでしょうか?それとも小さな政府でしょうか?今回時間が足りなかったので十分に説明できませんでしたが,小さな政府の国と言って良いでしょうが,日本は税率が低く,その割に政府支出が多い国です.収入より支出が多いので当然ながら借金をしています.政府は国債と呼ばれる借用証書を発行してお金を借り入れることができます.その額は戦後徐々に増え,バブル崩壊後に急激に増えました.日本が大きな借金を抱えていることは多くの人が認識しているとおりですね.
 それにも関わらず,現政権は,定額給付金やエコポイントなどいろんな政策で我々の生活を支えてくれています.しかし,そのお金はどこから来ているのか考えてみると,喜んでばかりはいられないかもしれません.政府による借金はいつか,誰かが返す必要があります.それは将来の皆さんであり,皆さんの子孫です.政府が支出を抑えて,抜本的に財政状況が改善しない限り,必ず将来増税する必要があります.(意図的にインフレを起こすという手段もありますが割愛します).

 さて,政府の主な収入は税収です.皆さんは税金との関わりは少ないでしょうが,世の中には様々な種類の税金があります.それらを,国税と地方税,直接税と間接税と言う区分をしてみました.
 直接税の代表は所得税です.所得税のポイントは累進課税制を採っている点です.このおかげで,所得税は貧しい人に優しく(非課税,あるいは低税率),豊かになるに従い税率が高くなっていくため,結果的に豊かな人と貧しい人の格差が縮小します.このように所得税は公正な税金であると言えます.このような利点がある一方,所得税は職業によって脱税しやすい・しにくい,という不公平が存在します.興味があればクロヨンとかトーゴーサンという言葉について検索してみてください.
 一方,間接税の代表は消費税です.消費税の利点はなんといっても税の負担者が脱税できない点です(納税者はできるかも…?).しかし,公平に老若男女,貧富の差も無視して,みんなに一律の5%という税金を課すため,相対的に貧困層に負担が重い税金であると言えます.
 「税金はどれもイヤなもの」と考えるのではなく,それぞれの税金の種類について理解を深め,そしてその税金が我々のところにどのように返ってくるのか,ということを考えると,必ずしも増税が悪いことばかりとは言えないのではないでしょうか.しかし,冒頭のアンケートのように,増税のイメージは悪いので選挙前にはどの政治家も良いことばかり言っているような気がします.僕はむしろ「歳出の無駄を省いても財源が足りなければ増税します.そしてこういうことに使います.」とはっきり言ってくれる人に投票したい気がしますが,そんな候補者は選挙には負けそうな気がしますねぇ….

【テストについて】
 期末テストは必修問題と選択問題の部分からなります.そして選択問題は,学科により選択できる問題が異なるので気をつけましょう.
 基本的に出題範囲は,初回から第15回(次回)までのすべてについて満遍なく出すつもりです.ノート等の持ち込みはできません.

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